2009年1月8日木曜日

世論調査批評への反論


“数字はどこまで信用できるのか” というサブタイトルに世論調査を多角的な視点で捉え,その信頼性について語っているものだと それこそ “信用” して衝動買いしたのがこの本,吉田貴文 著『世論調査と政治』です.久しぶりの突っ込みどころ満載本です.こんな本があることを知ったというだけでも価値があったと思って気を鎮めています.
この「世論調査」や「国民意識調査」の不確実性は他の書籍でも取り上げられており,調査する上で注意しなければいけないポイントや,調査それ自体の裏を読むことの大切さが語られて久しいのです.今度はどんな視点から語られるのか興味があったのですが…,全然.著者が世論調査をする側の人間であることからも,調査する側の視点で書かれていることは貴重かもしれませんが,端的に言って,これまでに出た “世論調査断罪本” に対する言い訳や反論にならない反論,釈明に終始していました.
著者プロフィールを見て納得というか,あの朝日新聞の世論調査担当でした.“世論調査断罪本” では,やれ質問が恣意的だの,なんの目的でやったのか不明だのと目の敵にされている朝日ですから,少しくらいは反論しとかなきゃいけないと考えたのでしょうか?
得るものが全くなかったというわけではないし,突っ込みながらもそれなりに楽しく読ませてもらいました.著者が最後に言う「それでも世論調査は民主主義国家には必要だと思う」との考えは,なんだかんだで答えが見つからないもので,政治と世論調査の関係の複雑さを改めて感じさせてくれました.
支持率の変動を報じる報道を国民が知ることによって,その結果が “真の支持率” に影響している,という可能性は大ですが,ではどのような方法であれば政治に対する国民の声を調べることができるのかはとても難しい.自民党幹部の「我々は内閣支持率を気にしていない.人気度みたいなもので,その時々でコロコロ変わる.本当に気にしなければならないのは政党支持率」との考えには納得.政治に疎い人は,先のこと,複雑なことを考えずに雰囲気に流され付和雷同しますから.
世論に振り回され,本当の意味での善い政治ができないことはあってはならないですが,一方で世論を無視してでも行なう政治が果たして “本当に善い政治” であるのか,それを調べるのも世論調査ですから堂々巡り.
世論の支持をパワーにした悪政としてはヒトラー政権が有名ですが,世論を無視した悪政は星の数ほどあるわけで.「民主主義には世論調査が必要」あとはその方法や評価指標に工夫や磨きをかけなければいけないのでしょう.