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日本の最高神


米原万里 著『打ちのめされるようなすごい本』 を読んだのですが,打ちのめされませんでした.

いろいろな本のレビュー本です.米原氏がそれらの本を読んで打ちのめされたということでしょう.実際にそれらの本を読んでみんことにはわかりません.

でも,考えてみれば本を読んで “打ちのめされる” と形容されるほどの経験は私にはありませんから,打ちのめされたと言えるだけ幸せ(?)なのかもしれませんね.


さて,先日はカルト教団をネタにしましたので,今日は伝統的な神様について取り上げます.

世界にはいろいろな神話があります.日本神話を含め,北欧神話,ギリシャ神話,ローマ神話,エジプト神話などなど.
そしてキリスト教やイスラム教,ユダヤ教といった一神教.
神話にはさまざまな神様が描かれています.

でもそれら世界の神々の中でも,特に異質な神様がいます.
それというのが実は日本の神様でして.
「天照大神」
世界広しと言えどなかなか「最高神」が女神というのも珍しいのです.

その他,世界の最高神と言えば,ギリシャは「ゼウス」,ローマは「ユピテル」,エジプトは「ラー」,北欧神話では「オーディン」,インドでは「シヴァ」,世界最古の神であるメソポタミア神話では「ギルガメッシュ」.皆,例外無く男神です.
それに,キリスト教やイスラム教の一神教も男の神様です(男でも女でもないとされることもあるが,「神は自分の姿に似せてヒト(男)を作った」の節からして男であったとする説がある).

やっぱり古代の人々の間では男尊女卑の影響が強いのか,主神・最高神,唯一神は男をモデルとして描かれています.
しかし,日本では一転,最高神は 「天照大神(アマテラスオオミカミ)」 と呼ばれる女神で,エジプトのラーと同様,太陽を司る神様です.

彼女の住所は伊勢神宮です.
かなりガードが固い武闘派で,弟の須佐乃袁尊(スサノオ)といえど自宅前に来たからって剣とか弓矢を持って追い返そうとします.
でもすぐにふてくされる性格のようで,その弟に自宅をメチャクチャにされたからって 「もーいいし..」 ってな感じで岩穴にひきこもって下界を真っ暗にして困らせたこともあります.
そのうえ,鏡に映った自分の顔を見て「誰?この美人」と言ってみたりするナルシスト.

かなり やな感じの女です.


とは言え,よくよく考えてみれば日本人らしいじゃありませんか.
太陽のような暖かいものに女性を当てはめるとは.

季節豊かな地域に住む日本人にとって,太陽は恵みをもたらす象徴だったでしょうし,今でもそれを感じる日本人は多いでしょう.
冬のツーリングでの極寒キャンプ.死にそうな思いで朝起きて浴びる太陽は格別のものがあります.思わず手を合わせたくなるのもうなずけます.
さまざまな局面において,慈母の存在として女性の神格が与えられることには納得です.

それに,日本はなんだかんだ言って女性に権力を与えるというか象徴的存在になってもらう場面が少なくありません.
日本国の黎明期を支えた存在として,すぐに卑弥呼が思いつきますし.

ある説によれば,日本人が男性優位になってきたのは奈良時代以降,中国・朝鮮半島から儒教が伝来して以降だということで,特にその傾向が強まったのは江戸時代・明治時代以降からだとのことです.

ということで,それまでの日本の文化というのは物理的・肉体的優位性から男性が権力を握ることが多いながらも,女性を神聖視する(巫女や預言者は女性である)という,今の日本からすれば,さながらエキゾチックな文化を持っていたのかもしれません.


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