2011年9月27日火曜日

大学教員になる方法3

「2」の続きです.

これまでをまとめますと,
(1)研究業績や教育歴は多い方がいいけど,それで採用されるわけではない.必要最低限確保されていればいい.
(2)採用側(大学)のニーズにピッタリとハマる人物であることをアピールしなければならない.
(3)上記2つのことを知るためにも,大学の内部情報の収集が雌雄を決する(かもね).

といったことでしょうか.


今回は,具体的な細かいことをQ&A方式でとりあげます.


Q. そうは言っても研究業績が多い方が採用されるのでは?

A. 研究業績が多い人が採用された,という求人は元々「研究重視の教員を求めている求人」であることが多いので,結果的に並の人たちより研究業績が多い人が採用されているだけです(当たり前の論理だけど).
5本より6本,40本より45本の人が採用される,というようなスケールの競争ではありません.
業績やなんかで上位数名に絞ったら,あとはニーズにどれだけ合致している人物か?が争点になります.


Q. やっぱりコネ?

A. はい.
私も大学人になってから身に染みて感じていることなのですが,“採用する側として” も,やっぱりコネが必要です.
というのも,僅か1名の教員を採用するのに,どこの馬の骨とも知れない人を引っぱってくるよりも,「私が保証しますから」という内部の推しがあったほうが採る側としては安心なのです.
特に昨今の教育現場を見る社会の目は厳しいもので,教育者としての倫理や道徳,社会性を持った教員を採用しないと,何か問題を起こされたら大学は酷い目に遭います.
特に中・小規模の大学では,完全にオープンな公募は “やりたくない” のが本音ではないでしょうか.
格好がつく程度の業績さえあれば,あとは人間性などの部分をいかに確保できるか?が採用する側の考えです.


Q. では,コネをつくるには?

A. とりあえず仕事を頑張ることです.それしか私は知りません.
あとは,コネの作り方を解説した本などを読んでください.
仕事先や学会の飲み会に参加するのも大事です.
そこに就職口が落ちていることが多いです.


Q. ぜんぜん業績が無くても採用されたりするの?

A. はい.
特に,年齢が高くなるに従って多いのではないでしょうか.
よくあるのが「人脈を持っている」という採用.
ぜんぜん教育歴や研究業績が無くても,学科を立ち上げるにあたって,とか,大学が進めるプロジェクトなどで政治的なところを担当してくれる人は必要です.
議員や市長などと通通の人が誰かいないと立ち行かないですから.
よく「天下り」などと揶揄されたり,「意味不明人事」などと叩かれますが,実は採る側としては熱望している人材でもあります.


Q. 若いうちに採用されるためのコツは?

A. 周りの人たちを見ると,職歴がたくさんある人が採用されているのかも?という傾向を感じます.あくまで主観ですが.
一つのことをじっくりやってきた人よりも,若くてもたくさんの職を転々とした人の方が,大学の仕事をする上で何かと潰しがきく,と思われるのかもしれません.
なので,いろいろな仕事をバラエティ豊かにやってきたかのようにみせる履歴書づくりが大事なのかもしれません.
つまり,見る側にひっかかる釣り針を多く垂らしておくのです.


Q. では,採用に結びつく履歴書づくりのコツは?

A. うまくハッタリをかますことです.
でも,こういうのって就活とか転職とほぼ同じ感じだと思います.
よほど輝かしい業績があるわけでもない限り,魅せ方が大事です.
教育機関での生活が長く,研究畑でずっとやってきた人たちは自己アピールが苦手なようですので,自分でも恥ずかしくなるくらいの事を書いて丁度です.
とは言え,見る側が求めるものを書くように努めなければなりませんが.
それに,経歴詐称になるほど盛ってもいけませんし.
さじ加減が難しいですが...
ある高名な先生の言葉です.
「ウソ書いちゃいけないけど,ホントのことを書く必要もない」


Q. 他に採用されやすい人の特徴は?

A. これまでに書いたことと重複する部分もありますが,「異なる専門を2つ以上持つ」というのも聞きます.
フランス語が専門(学位をとってる)だけど,コンピューターもプロ並みに強い(学位はないけど),楽器が演奏できる(コンサートはしてないけど)とか.
ようは,その人に今後「大学の業務」をしてもらいたいわけですから,何かそれの足しになることがあればポイントは高くなります.
私の場合,専門とまで呼べないのですが「文章技術の指導経験がある」という経歴が功を奏し,「○○の授業を担当してもらえるかもしれない」ということで採用までこぎつけました.
専門外の部分がたくさんミラクルコンボを起こしてくれたのです.


※後日,
を書きましたので,こちらも参照ください.
         

2011年9月22日木曜日

大学教員になる方法2

「2」ということで,前回の続きです.

なかなか 「大学教員に至るまでの道」 がブログとかで話されることは少ないですから,ひとつのネタとして聞いてください.
大学教員を目指している人は参考にしてみてください.

今回はもう少し,“採用” に至るまでの “採る側” の身の内をお話ししましょう.
※ただし,これらは全ての大学にあてはまるわけでも,金科玉条の法則でもありませんので,あしからず.

前回お話ししたことをおさらいしながら,詳しく説明したいと思います.

採る側のニーズに合致すること.
これは我々の間では「タイミングが重要」などと表現されることです.
大学教員というのは採用人数がしっかり決まっています.
思いつきで2人も3人も採れるわけではないので,停年の教員がいてポストが空いたり,新しく学科ができるなどして出来たポストだったりに採用することになります.

もうその時点で大学側は「こういう人を採りたい」というイメージが出来ている場合が多いのです.
任せる業務や欲しい能力,性格や年齢といったことまでも打ち合わせ済みです.
それにいかに合致するか,が全てです.

大学教員はそれぞれ専門性があり,さらにその専門は細分化されています(専門バカとも揶揄されます).
そのポストで求められる専門性と自分の専門が合致しなければ,どんなに業績があろうと能力が高かろうと採用されることはありません.
これは学校と一緒で,理科の先生を採ろうとしているところに,国語の先生が応募しても無駄ということと一緒です.

出てくる求人や公募が,いかに自分の専門と合致しているか? で採用の可否が決します.
たまたま自分の専門と得意分野が合致したポストが出てくれば,労せずとも採用ということになります.

私も以前,業績とか教育歴がほとんどないのに書類審査を通ったことがあります.
え?こんな私でいいの?と逆に心配になりましたが,タイミングというのはそういうものです.
その大学側も人事で話し合ったかなにかで「え?こんな若僧でいいの?」ということになったと推察され,結局もごもごお詫びを言ってきて流れました.
後日談としては,その大学のその人事は無しになったようです(適切な人材が来なかったら無しということもありうる).

このあたりは大学教員を目指している人なら周知のことですし,一般にも理解されやすいでしょう.

しかし,採る側のニーズが決まっているなかで,それとは自分が少しハズレていたとしても,大ハズレでなければ逆転採用の可能性があります.
それこそが「適切な自己アピール」です.

いかんせん大学教員を目指してる人というのは学術的な研究生活をしてきている人が多いので,これまでの自分の研究業績とか職歴の輝かしさをアピールしがちです.
でも,前回も話しましたが,それは大学にとっては価値が小さいというのが本音です.

ようは,その研究だったり職歴がどのように大学のためになるのか,が大事で.
さらに言うなら,
大学側がイメージしている「こういう人を採りたい」に,いかにハマるか,なのです.

なので企業研究ならぬ大学研究が大事だったりします.
大学が求めている教員像とは?これからの大学の方針は?
といった内部情報を知ることができたら半分採用されたようなものです.

だからこそ,その大学に知り合いや先輩,友人がいる人は強いのです.
さながらOB訪問みたいなものです.おおいに活用すべきです.

具体的には,教育歴(具体的な内容),教育スタイル,人脈,性格(例えば改革派or保守派,派手or寡黙など)といったことや,その大学が進めようとしているプロジェクトに必要な能力とかを調べときます.

それに沿うように履歴書,業績書,自己アピール書類を作成すればOK.
余計なことは書かずに,求められる能力を推せれば 「あれ?この人は専門がちょっと外れてるけどウチで活躍してくれそうだね」ということになります.

あとで聞いたのですが,実は私がそうやって決まったのだそうです.
求人の専門とはちょっとだけハズレているけど,それを補完する部分をアピールできれば採用されます.

大学の仕事は教育と研究だけじゃないので,それ以外の能力が採用を決します.
小さい大学ほどそうだと思いますよ.


※後日,
を書きましたので,こちらも参照ください.
         

2011年9月20日火曜日

大学教員になる方法

現在,私の自宅の隣にある高速道路に自動車が全く走っていません.
あまりにも静かなもんで,何かあったんじゃないかとニュースを見ていますが,特に何もないようで.
その高速道路と交差するように走る新幹線の風を切る音だけが響きます.
ここ数十分,1台も走っていないのは流石に変なんじゃないかと思ってるんですが.

まぁ,静かだからいいけど.


さて,ここ最近はずっと飲み会だらけでして.
それも軽く飲むわけではなく,いずれもガブガブ飲む会です.
今日はやっとアルコール無しの夜になりそうです.

トドメは昨日の会.そのまま泊まって直接職場の大学へ.そんなんで今日は朝帰りならぬ夜帰りです.
そんなこともあろうかと,しっかり着替えを用意して参加しております.
でも,今日は一日中頭がボーッとしてて,職員さん達の話も右から左な状態でした.
あれ,さっきの人,何しに来てたんだっけ?てな感じです.

極めつけは午後から大学院の後輩(別の大学の非常勤講師をやってます)が学会発表資料の作成を手伝ってくれ,と言ってきまして.
今の私の脳ミソでは電話やメールじゃ対応しきれないと思って,私の大学に来てもらい一緒に作業することにしました.
働かない頭を無理矢理回し,なんとか形になるようこぎつけました.
やっぱSPSSは便利ですね.


そんで,その帰りに後輩と飯を食べながら話したのが「大学の教員になる方法」というものです.
彼も不安定な非常勤講師から常勤の大学教員になれるよう頑張っている一人ですので.
いろいろと話し込みました.


大学教員になるためには,業績(つまり論文の数)が多ければ損をしないのは周知のことですが,それ以外にどんなものが必要になってくるのでしょうか.

私自身の経験や,いろいろな大学人からこれまでに聞いたことを総合的にまとめてみたいと思います.

20代後半〜30代前半で大学教員になろうと思ったら,業績はその分野としてカッコ悪くない程度あれば十分です.
目安としては,大学院を修了した年から,年に1本ずつ書いていったペースくらいです.
修士を24歳で出た人であれば,30歳の時に5〜6本くらいだと思います.
その間,博士をとる人もいるかもしれませんが,業績の数としてはこんなもんのはずです.
ちなみに業績は学術論文だけじゃなく,著書も含まれることが多いですね.

だいたい,公募や求人には「過去5年間の業績を別刷で3〜5本出せ(コピー可)」というパターンが多いですから,そういう意味でもちょうど良い数だと思います.

ただ,ここからが重要で,業績(だけ)が多ければ多いほど採用に近づくか,と言われれば否です.
その求人が上で挙げた「業績を重視」する採用基準であれば,それこそ多ければ多いほどいいのですが,実はそういった採用基準のケースは稀です.

大学教員であっても普通,採用したい側のニーズに合致した人を採用します.
業績が多い人を採用したい,なんてニーズは普通ありません.

最近の大学は学生の教育に力を入れています.
業績が多いことは大学教員としての魅力も高いのですが,それだけというのも困ります.

小さい大学ほどその傾向があるように感じるのですけど,「問題を起こさない」「何でもやってくれる」「ちゃんとしてる」という部分が必要条件になるんではないかと.

30歳前後での大学教員の採用基準というのは,
研究をメインにやってもらうための「研究者タイプ」
と,
教育をメインにやってもらうための「教育者タイプ」
のいずれかですが,どちらも自己アピールの仕方が重要です.

どうしても大学教員ということで,「私のこれまでの研究」とか「私がこれからやりたい研究」の話でアピールしがちですが,実は採用する側としてはいたって興味薄なところなのです.
そうではなくて,「あなたを採用することで本学にどういったメリットがあるのか?」
が大事なのです.
当たり前ですが,その点に尽きます.

自分のやっている研究テーマや分野がどれだけ社会にとって,大学にとって重要なのか,を説くことは無意味かもしれません.

さしずめ一般の就活の面接などで,
「私は大学時代に野球部に入部してセカンドをやっていました.セカンドというのは重要なポジションです.セカンドにとって大事なことは全部知っています.誰にも負けません.」
なんていう自己アピールに,「そうですか.それが弊社にとってどんなメリットがありますか?」と聞きたくなるのと一緒です.

なにも野球部やセカンドがダメだと言っているのではありません.
アピールの仕方がマズいんです.
場合によっては引き合いに出す必要も無い物だということなのです.

ノーベル賞候補ものの大規模な研究プロジェクトに関わることでない限り,研究テーマで自己アピールすることは,大学時代のクラブ活動やアルバイトを自己アピールに使う就活学生と一緒になってしまいます.

自分がプロ野球選手になれるかもしれない,という学生であれば「野球」をアピールすることは必須なのでしょうけど.
同様に,ノーベル賞候補ものの研究プロジェクトに関わっている人であれば「私の研究」をアピールしなければいけません.

でも,大学教員の世界だからといって猫も杓子も「研究」が全てではありませんから.
自分がアピールできることを今一度練ってみる必要があります.

※後日,
大学教員になる方法「強化版」
を書きましたので,こちらも参照ください.
         

2011年9月12日月曜日

Excelで大量のデータを処理したいとき

今回はExcelで大量のデータを処理したい時のヒントを紹介します.
Excelでのデータ処理に慣れている人にとっては「そんなの知ってるよ」 「もっと便利な方法がある」というものです.

今までExcelは使ったことがあるけど,最近になって大量のデータを扱う作業をしなければならなくなった.
Excelを紹介したサイトとか書籍にあたっても,なんかイメージが沸かない.
という人を対象にしています.


例に出すデータは以下のようなものです.体力測定の結果ですね.
※以下のような見にくい画像は,画像をクリックすれば元の大きさで見れます.

私たちの分野ではよくあるエクセルデータです.
そして,できるだけ早く,かつ楽に処理したいデータでもあります.
じっくり向き合っていても何か返事が返ってくるわけでも,得するデータでもない,そんなデータです.

まずは上記のように,いわゆる “打ち込み作業” は終わっているものとします.


では,データ処理の開始です.

入力作業では上記のように1行目に項目名を入れてリストを作ることが普通かと思います.
そしてデータ処理にかかるのですが,ここで大量データを処理する際のヒントをひとつ.

例えば,以下のようにサンプルが10個くらいだったら,平均とか標準偏差なんかを一番下の行に入力することが多いですよね.それで問題ないですし.

実際,Excelの入力・操作設定としても,「一番下の行」 もしくは「一番右の列」に合計値や平均値を算出するようになっています.
これは当然といえば当然の設定です.
だって通常の数値表は,一番下と一番右に合計値や平均値を示すのがルールみたいなものなので.

しかし,何百何千という行や,数十の列を使ってデータを打ち込んだ場合は,一番下とか一番右の列に合計値や平均値を算出していたら画面を大きく動かさなければならないし,追加データがあるたびに合計値や平均値の算出セルを移動,作り変えをしなければなりません.
なので,以下のようにデータ表の一番上に作ってしまうのが得策です.


上部に7行ほど空けておき,
・平均値を示す「平均値(AVERAGE)」
・データのばらつきを示す「標準偏差(STDEV)」
・最大の値を示す「最大値(MAX)」
・最小の値を示す「最小値(MIN)」
・データが入力されたセルを数える「数値の個数(COUNT)」
などを入力します.
必要に応じて,最頻値を示す 「=MODE」 とか中央値を示す 「=MEDIAN」 といった関数を入れます.

細かいところですが,これらの関数の参照範囲はデータの1行目から65536行目,つまり最下の行までです.
以下では,「平均値」のところの参照範囲を例として示しました.見てみてください.
こうしておけば,途中でデータを追加しても関数の参照範囲を変更しなくても大丈夫,参照漏れ無しということで幸せになれます.


「平均値」 「標準偏差」 「数値の個数」 は統計処理としての数値という意味しか持ちませんが,「最大値 (MAX)」 と 「最小値 (MIN)」 についてはデータ処理としての作業としても便利な関数です.

以下の例をご覧ください.
学年のところの最大値が6,最小値には0が表示されています.
このデータ表は大学生の体力測定データです.大学生は4年生までしかないのに,こういう数値が入っているということは,入力ミスがあることを示しています.

バーっと見てわかる量であればいいのですが,効率的に入力ミスを探すには「フィルタ」機能を使うのも手です.
以下のように項目を入力したセルを選択し,
Excel2007であれば,ここにある「フィルタ」をクリックします.
すると,項目を入力しているセルがこんなふうになります.

例えば身長の入力なんかでよくあるミスは,小数点を打ち間違えたり打ち忘れたりするパターンです.以下のD列のように,1765cmとか1.711cmなんてことがあります.

すかさずフィルタを使って直しましょう.
セルの右端にある下矢印をクリックします.
昇順にすれば,

小さいものから順番に表示されます.おかしい数値を直します.


降順にすれば,
大きいものから順番に表示されるようになります.ありえない数値を直しましょう.


注意してほしいのは,この方法では “完璧に直せたという保証があるわけではない” ということです.
完璧に直すためには,データを入力した元の資料(例えば測定用紙など)と照らし合わせる確認作業をしなければなりません.

この方法を単独で利用する場合は,
(1) 緊急に必要なデータで,
(2) それほどの精度を必要とせず,
(3) なんかの適当な報告書のため
の処理として有用という程度です.

あとは確認作業を終えた後の,さらなる念押しの確認作業としても使えます.
小数点の位置とかは見間違うこともありますし.ヒトの目だけでは心配な時の最後の確認ですね.


画面をスクロールする作業をしていると,平均値とか最大値を見なおしたりするのに大変ですよね.
なので,今回の例であればB列8行目を選択しておいて,「表示」タブの「ウィンドウ枠の固定」のところの「ウィンドウ枠の固定」をクリックすれば,

以下のように統計算出セル群と整理番号の部分を固定して,画面を上下左右に動かすことができるようになります.
一番左側に注目してください.行が7行目で固定されています.
これは知る人ぞ知る超便利技です.


もとに戻したい時は,同じ「ウィンドウ枠の固定」のところを選択して「ウィンドウ枠固定の解除」をクリックすればOKです.
とりあえずはこんなとこでしょうか.
細かいテクニックというのは,こういった技の組み合わせとかバリエーションだったりしますので.
アイデア次第というところがあります.

他にも便利な技を思い出したら,また紹介したいと思います.


いよいよ卒論や修論を追い込みにかかる時期になりました.
頑張ってください!

2011年9月5日月曜日

ノンパラメトリック検定で多重比較したいとき

先日は台風が凄くて,大学の野外実習が中止になってしまいました.
残念そうな学生も多かったのですが,ずっと地味な宿舎に泊まってネットもできずの生活から解放された私は嬉しい部分もあったりで.


さて,前回からの続きです.
現在の(私が確認しうる限りの)SPSSでは3群以上のノンパラメトリック検定を行なった後に多重比較検定を行なう手順がありません.
SPSSはとても普及している統計ソフトですので,このソフトが持つ機能が統計処理の基準だと思われている節があります.
てっきりノンパラメトリック検定は3群以上での多重比較ができない,3群以上の比較は分散分析をしないといけない,と考えている学生や院生が多いようです.

今回はSPSSとExcelの両方を合わせて使って,ノンパラメトリック検定での多重比較をやってみます.


ノンパラメトリック検定(nonparametric test)というのは,t検定や分散分析といったパラメトリック検定(parametric test)とは違い 「母集団の正規性や等分散性を仮定しない検定」 のことです.

実験ではN数(対象数)が5とか,多くても20なんていうことがしばしばあります.
でも,こんな少数では母集団の正規性が認められることは少なく,最近では統計処理手法としてノンパラメトリック検定を薦める記述を目にすることが多いですね.

「母集団の正規性,等分散性」 なんていう意味不明なことは後で勉強しとくから,とりあえずノンパラメトリック検定での多重比較を教えてほしい,という人を対象にして以下に説明します.


例として取り扱うのは以下のデータです.
SPSS for Windows ver11.0を使用しています.

※後日,エクセルでもこの作業ができるよう,
クラスカル・ウォリスの検定をエクセルでやる
フリードマンの検定をエクセルでなんとかする
を取り上げましたので,ご参照ください.

クリックしたら画像が元の大きさで見れます.

これをノンパラメトリック検定の中にある「K個の独立したサンプルの検定」を選択すると,

以下のような画面がでるので,Kruskal-Wallisを選択して検定します.

すると,以下のような検定結果が出て,有意であることが認められました.
ここまでだと,3群以上のノンパラメトリック検定の一つであるKruscal-Wallisの検定により,有意差が認められるデータであることがわかっただけで,具体的にどことどこの群間に有意差があるかを検定したことにはなりません.
なので,多重比較を行なうことになります.

以前の記事ではt検定を用いた多重比較を紹介しました.
参考記事◆対応のあるt検定と多重比較

それと基本的には変わりません.
ノンパラメトリック検定であっても,2群比較を行ない,ボンフェローニ(Bonferroni)の方法でP値を修正をすればOKです.

SPSSにおけるノンパラメトリック検定での2群間の比較は以下のようにします.

※後日,エクセルでノンパラメトリック検定をする方法を記事にしました.
マン・ホイットニーのU検定(エクセルでp値を出す)
ウィルコクソンの符号付順位和検定(エクセルでp値を出す)
ご参照ください.
ここではMann-WhitneyのU検定を選択しました.そしてOKを押します.

それで検定結果はこんなふうに出ます.正確有意確率というところを見るんだそうです.0.690となっていますね.有意ではありません.

SPSSの 「2個の独立サンプルの検定」 はグループ化変数をひとつずつ変えてやっていかなければなりません.
4群なので,全部で6通りの組み合わせです.
それを全部やって,結果をExcelに貼り付けるんですが.
そのExcelに貼り付ける方法はというと,まずは以下のように 「検定統計量」 のところをクリックして四角い枠をつけた状態にします.
そしてコピー,
それをExcelの適当なところに貼り付けますと,以下のようにデータがExcelで扱えるようになります.
例では,縦方向に組み合わせ毎のP値をコピーしています.
ここでは最後の3*4の組み合わせをコピーし,あとの部分は邪魔なので消しました.
では,さっそくこれらのP値を多重比較のP値に修正しましょう.
まずは有名なボンフェローニの方法です.
D列2行目に以下のような式を放り込みます.

=B2*6

めちゃくちゃ簡単ですが,これがボンフェローニの検定です.多重比較する組み合わせの数をP値に乗じるだけです.
今回は4群なので6を乗じていますが,3群であれば3を,5群であれば10を乗じます.

これをオートフィルしてしまうのもいいのですが,今回はボンフェローニの検定以外にも,Excelで簡単にできるP値の多重比較補正を紹介します.

次はSidakの検定です.サイダックと読むんでしょうか.
数式は以下のとおりです.E列2行目に入れました.

=1-(1-B2)^(6/1)

ボンフェローニの検定の改良版ということだそうですが.
たしかにボンフェローニの検定よりはP値を甘く出してくるようです.
今回は4群なので,べき乗する値を「6/1」にしていますが,3群であれば「3/1」に,5群であれば「10/1」にします.

これをオートフィルします.


次はライアン(Ryan)の方法を紹介します.
ライアンの方法のメリットは,ボンフェローニやサイダックといった修正方法よりも群数が多くても有意になりやすことです.
オートフィルで一気に,とはいけませんが,比較的簡単に計算できるので便利です.

この方法は平均値の大きさで多重比較する順番を決め,その順番ごとに計算する際の数値を少しずつ変える,というもの.
まず,以下をご覧ください.
各グループの平均値を出しました.
グループ1,2,3,4の順で大きくなっています.

ライアンの方法では,平均値が最大・最小の群から多重比較を始めます.
「1*4」がそれに該当しますので,そのP値を修正する計算式を以下に示します.

=B4*6

次は最大・第2最小,最小と第2最大を比較します.
例では「2*4」,「1*3」に該当します.

「2*4」は,
=B6*4


「1*3」は,
=B3*4

最後に,残りの組み合わせを以下のように計算します.
画像は省略します.

「1*2」は,
=B2*2

「2*3」は,
=B5*2

「3*4」は,
=B7*2

ライアンの方法を使う上で重要なのは,P値に乗ずる数値です.
それは,以下のようにして決めてください.

=(群数×((群数-それまでの検定回数)-1)÷2

(群数-それまでの検定回数) という数学や統計学が強い人からするとクールではない表現をしていますが,ここが肝です.
1回目の検定であれば0ということで計算してください.

具体例がないとイメージしにくいでしょう.
例えば4群であれば,1回目の検定は,

=(4×(4-1)÷2
であり,P値に6をかけます.

2回目の検定では,

=(4×(3-1)÷2
で,P値に4をかけます.以下,3回目は・・・,と続きます.



これが3群の検定であれば,1回目の検定では

=(3×(3-1)÷2
でP値に3をかけ,2回目の検定では,

=(3×(2-1)÷2
なので1.5をかける,ということです.

どうしてそんな計算式なのか?というのは,ライアンの方法を紹介した書籍やサイトをみてください.
ここではあくまで,目の前にあるデータを処理したい人用のサイトですので,統計学としての解説はすっ飛ばします.


全部を計算して,ボンフェローニとサイダック,そしてライアンを比べてみました.


ボンフェローニよりもサイダックのほうがやや甘め.
ライアンはさらに甘めです.
「2*3」のグループの組み合わせでは,ボンフェローニとサイダックでは有意差なしと判断されていますが,ライアンでは有意差ありということになっています.

一気にバーっと計算しちゃいたいならボンフェローニとサイダック.
一個ずつでも,有意差を出していきたいならライアン,ということになるでしょうか.


もちろん,今回紹介したP値の修正方法はノンパラメトリック検定にしか適用できないわけではありません.
t検定による多重比較にも適用できます.
対応のある/なしも関係ありません.
Excelだけで多重比較したい場合はこれらを利用するとよいでしょう.

Excelで多重比較まとめ
に文字通りまとめましたので,こちらもご参照ください.

統計的有意にこだわらないのであれば,
効果量(SE:effect size)をエクセルで算出する

次回は,Excelで膨大な量のデータを計算する上でのヒントを紹介します.


※後日,こんな怪しいブログよりも信頼性が高いものに触れてもらうよう,
独学で統計処理作業をスキルアップさせるための本
という記事を書きました.参照してください.


エクセルや手計算で多重比較をしたい方は,以下の2冊がオススメです.