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テレビのない生活の音楽

私の自宅にはテレビがありません.
テレビを見なくなって,かれこれ15年になります.
そんな話を先日しました.
テレビのない生活を15年送ると
テレビのない生活のすゝめ

そして,テレビのない生活に特段のメリットや恩恵があるわけではないことも,そこで述べてきた通りです.
テレビのない生活とは,不便なわけでも自慢できるものでもない,実際のところどうでもいいものです.まだまだ珍しい存在なので,レアキャラとしての価値があるくらいでしょうか.
珍しい話題なので,せっかくですからもう一つ記事を書いておこうと思いました.
似たような境遇の人,これからそうなる人にとって参考になるかもしれません.

「テレビも新聞も見ずに.どうやって世間のニュースを知るんですか?」
という疑問を持つ人もいるようですが,これについては上述した過去記事でも述べたように,
「特に問題を感じない」
ですし,そもそも,
「いち早くニュースを知ったところで,正しい判断ができなければ意味がない」
ということをお話しましたね.

さて,この “ニュース” 以外によく聞かれるのが,
「最近のブームとか音楽とかどうやって知るんですか?」
というものです.

たしかにこれは「知りません」.知るつもりもないし.
テレビやラジオを中心としたコマーシャルを展開する分野からは,完全に取り残されます.
「AKB48」というアイドルがいることを最近知りました.私の中でアイドルと認知しているのは「安室奈美恵」とか「華原朋美」あたりが最後になります.
あぁ,他にもそう言えば「モーニング娘」ってのがいたな,って感じです.でも,彼女たちについては高校の同級生が熱心なファンでしたが,ちょっと気持ち悪くてついていけませんでした.

そう・・.
ついていけませんでした,テレビに映っている世界に.
今思えば,テレビが故障したのも僥倖だったのです.

テレビがなくなると,流行りの音楽,すなわちテレビから流れてくる音楽が無くなります.途端に「最近ブームの◯◯」っていうものへの関心もなくなるんです.
不思議なものです.

なので,音楽への興味も足かせが取れたように自由になりました.
なんというか,本当の意味で「気の向くままに音楽を聞けるようになった」のです.

最初のうちは,映画を見ることが多い手前,映画音楽とか,あとは「イージー・リスニング」っていう分野に手を出していました.
イージー・リスニング(wikipedia)
どっかで聞いたことがあるなぁって思うけど聞き流せる音楽っていうんでしょうか.
本を読んだりネットをしながら聞ける音楽として役立てていました.

ところが,そのうち “イージー” じゃない重厚なものにも手を出したくなるのが人間というものです.最初は釣り堀で魚釣っていても,そのうち海や川で釣りたくなるのと一緒です.

私は学生時代にTSUTAYAでひたすら映画を借りていた,というお話をしたことがありますが,実は同時に音楽CDも借りていました.
始めのうちはイージー・リスニング系統を借りていましたが,そうこうするうち「この曲の元になったクラシック音楽やジャズを聞いてみたい」ということになります.

そんなこんなで,今ではクラシックかジャズしか聞きません.
クラシックとかジャズって,高校生の頃までは嫌いだったのに.人の好みは自分自身でも分かりませんね.
これもテレビを見なくなったことの作用だと思います.

その転機となった曲,当時の私に影響を与えた曲を3点紹介させてください.

ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」第一楽章
いまだによく聞きます.まさに「田園」って感じの曲です.
なんかのCDにこの部分だけ入っていて,それを聞いたのが最初です.
この曲がどれだけ凄いのか,ってことではなく,20歳の私にとって「これがクラシック音楽の魅力だ」ということを強烈に印象づけた曲なのです.
一般人である私にとって,ベートーヴェンなんて「運命」くらいしか知らないですし,聞いたこともなかった曲なだけに「クラシックって意外と凄いじゃないか」と感じさせた思い出深い曲なんです.
ご存知ない方はぜひ.

パッヘルベル:カノン
パッヘルベルのカノンというやつです.
これもクラシックを知らなかった私にとっては印象深い曲でして,ミロのヴィーナスの如きパーフェクトボディな曲ですから,一時期ハマりました.で,いろいろな人がいろいろアレンジしているのをたくさん聞いてきましたが,やっぱり普通のもので丁寧に演奏されたものが良いと思います.
マンネリ気味な曲ですが,気が向いたときには聞きたくなる曲です.

ホルスト:木星
木星以外の「惑星」全体も良い曲です.
こういう壮大で物語性の強い曲が「スターウォーズ」なんかの映画音楽に影響を与えたんだろうなって,ちょっと評論家じみた生意気な意見を持つようになるきっかけになりました.
さらに,ちょうどその頃,平原綾香が「ジュピター」っていう歌を出していましたね.テレビを持っていない私は平原綾香のジュピターなんて知りませんでしたが,オリジナルである「木星」は知っていたので,図らずも大学でドヤ顔できたことが懐かしい思い出です.
ちなみに,その後すぐキャサリン・ジェンキンスが「我が祖国よ,汝に誓う」っていうネトウヨが泣いて喜びそうなナショナリズム満載のイギリス聖歌を出しています.
いかにもイギリスらしい曲と歌詞ですが,平原綾香のジュピターが霞んで見えるほど魂と気合が入った一曲です.


上に挙げたのは,私にとって記念すべき思いました位置づけとなっている曲です.「これが最強の◯◯」というものではありません.
ラーメンの話題でも述べましたが,人の嗜好というのはそういうものではないと思うのです.
じゃあ,どのラーメンが一番旨いのか?

その人の生活に合った音楽というのがあるのだろうし,聞く音楽に合った生活になっていくものだろうし.
ラーメンも音楽も何事も,「因果関係」は見出だせなくとも相関関係が成り立つのではないかと思えてきます.

そう言えば,最近はプロの「演奏家」の方との共同研究をしています.身体活動という意味ではスポーツも演奏も同じことですから.
研究がてら目の前で演奏してもらったり歌ってもらうことも多いのですが,やっぱり生演奏と録音では違いが大き過ぎます.別物です.
カップラーメンと店で食べるラーメンの違いとでも言いましょうか.

なのでここ最近は,録音された音楽を聞いて「これは良い曲だ」「良い演奏だ」などと評価・判断するのもバカらしくなってきました.
録音された音楽は,あれはあれで独自の鑑賞対象と見做した方がいいですね.