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例の双眼鏡
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正月休みで実家・高知に帰っています. 2017年大晦日の記事は,お盆休み中の記事で紹介した例の双眼鏡について. 「ニコン 12cm 双眼望遠鏡Ⅱ型」 カツオ漁船に取り付けてあったものを,父が譲り受けてきたものです. こういうやつ↓ 無骨なデザイン. なかなかのデカさで,手に持って見ることはできません.重量は15kgあります. その時の記事はこちらです. ■ お盆休み:実家の様子 その後,知り合いの鉄工所の人に相談して三脚に取り付ける器具を作成したとのこと. 今回帰省してみましたら,完成しておりました. それがこちら↓ 15kgの重量があるのでそれなりの三脚が必要なのですが. その三脚は,これまた知り合いの建設業の人から,使わなくなった測量用の三脚を譲ってもらったそうです. 取り付けるために特注した器具はというと,こんな感じ. 三脚上部に,コの字型にした金具で支えています. 両サイドには双眼鏡を仰俯角ティルトさせる機構が残っていたので,それを活かすための金具も用意しました. 作りは至ってシンプルで,回転する軸を金具で挟むようにしています. これにより,旋回と仰俯角が自由にとれるようになりました(ようするに,普通の仕様). 見え方も気になりますので,さっそく目の前の山を観察してみます. 普通にiPboneのカメラで撮ったアングルがこちらでですが. 双眼鏡を通すとこうなります↓ 小型のものや安物とは比べ物にならないほどの視界です. さすがデカいだけのことはある. ちなみに,この双眼鏡を設置しているのは父が手作りした「庵」です. 山を切り分けて小屋を建て,水場や電気を引いています. 全体像はこんな感じ. こういうのは男の趣味というやつですね.
体育学的映画論「スターウォーズ/最後のジェダイ」
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見てきましたよ,「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を. 内容が内容だけに,きっと批判レビューが多いものと想定しておりましたが,やっぱり多いようですね. ただ,私個人的にはかなり高評価な映画でした. スターウォーズ・シリーズの中では最も好きな作品になったかもしれません. 【以下,ネタバレを含みつ書いていきます】 上映時間も2時間半だし,内容も詰め込みすぎな感が否めないのですが,それでもこれは2つに分けたりせずに1本に収めてよかったと思います. 本作は,これまでのスターウォーズの物語を「そのまま引き継いだ」作品として労作だと私は見ていて,だからこそ長大な上映時間にもなっている. なので,本作のテーマは「スターウォーズは続くよ,どこまでも」といったところでしょうか. スターウォーズ・最後のジェダイは過去作の繰り返しです.ようするに,「歴史は繰り返す」ということ. だからこそ,今作では「ジェダイとは何か?」とか「フォースとは何か?」「光と闇とは何か?」といったことに言及しています. どうしてそうなるのか? 具体的な項目を立てて考えてみましょう. (1)ルーク・スカイウォーカーとカイロ・レン この2人の関係は,完全にオビ=ワン・ケノービとダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)の繰り返しです. アナキンの内部に広がる暗黒面を阻止しようと,オビ=ワンがアナキンと戦ったように,ルークもレンの内部に広がる暗黒面を阻止しようと暗殺しようとしています. そして,両者は結局のところ失敗したようです. そして,オビ=ワンがルーク達を逃がすためにベイダーと一騎打ちの後,霊体となって死んだように,ルークもレイ達を逃がすためにレンと一騎打ちの後,霊体となって死にます. きっと,続編ではレイの前に霊体となって現れて助言することでしょう. ただ,今作のルークは長髪髭面,座禅組んで浮いてたりと,完全に麻原彰晃でした. 次回作でレイに「カイロ・レンをポアしなさい」などと助言しないことを切に願います. (2)ルーク・スカイウォーカーとレイ 一方のこの二人の関係は,オビ=ワンとルークですね. 今作でルークがレイに協力しようと決意したきっかけは,R2D2が再生した,レイア姫がオビ=ワンに宛てたメッセージ映像でした. R2D2はルークに「お前も
道徳教育は体育でやりましょう
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「昨今喧しい『道徳教育』は,体育でこそ実現できるものだ」 そんな記事を書こうと思っていたら,大学の体育教員控室に置いてある雑誌にこんなのがありました. 体育科教育という我々の業界の雑誌でして,その12月号の特集が「いま,体育と道徳の関係を問い直す」「体育から発信する『学びに向かう力,人間性等』の育成」っていうやつだったんです.タイムリーでした. 興味のある方は御一読ください. 過去記事でも述べたことですが,体育は人間らしさを育てる上で重要な機会です. 体育ではスポーツを教材として扱う事が多いのですが,この「スポーツ」をきちんと楽しむためには人間らしさ,すなわち,倫理,道徳,人間性が求められます. スポーツには,これらから惹起される「スポーツマンシップ」とか「フェアプレー精神」をもって取り組まないと,最初はそうでもなくても,途中からつまらなくなったり飽きたりします. 以前にも言いましたが,バカはスポーツができません.バカなのでなんとなくバカ騒ぎをするも,途中から投げ出します. ですから,「スポーツを楽しもうとする営み」に取り組むことは,自然と道徳教育につながるのです. 人が何かを学び取るためには,その行為によって自分が楽しい思いをするであろうことが予想されなければいけません. 道徳教育であれば,道徳的に振る舞うことがどれだけ自分にとって価値あるものかを実感できなければ,道徳を身に着けることにはならないでしょう. 一部の気合いの入った人たちは,(道徳教育に限らないけど)熱弁をふるって,怒ったり喚いたりすることで道徳の重要性を説くことが多いですね. 最近は「いじめ問題」なんかでもそうなんですけど,とにかく怒鳴り散らすことが熱血的な教育だと考えているフシがあります.悲しいかな,そういうのって教育関係者以外の人に多いです.そんな人たちが教育現場に向かって「もっと道徳教育を徹底しろ」などと要求し,それに必要なのは「修身教育」とか,はたまた「人権教育」を説くことだなどとデタラメなことを言い出します. でも,そんなものは子供はもちろんのこと,人には効果的に伝わらないですよ. 人が説得を受けるのは,自分がその行動を採用することによって楽しい思いをすることが予想できる状況においてです. 道徳教育であれば,「道徳的」とされる行動をとることが,自分自
体育学的映画論「0.5ミリ」
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チャンネルが合わないと全然おもしろくない映画です. たぶん,私も10年前の自分ならおもしろくないと思ったはず. 30代という,この歳になったからこそハマった映画と言えます. ■ 0.5ミリ (wikipedia) チャンネルが合った映画ですので,何か評論しようって話ではないのかもしれません. 映画で捉えているものが,すんなり入ってきます. 久々に凄い映画を見た.いやぁ~,ええもん見たなぁって思える映画には,なかなか出会えるものではないですから. にしても上映時間が長い.3時間超え. でも,あっという間に感じるほどのめり込めます. この 『0.5ミリ 』の原作者であり監督をした安藤桃子氏は私と同世代です. 小説版が2011年,映画は2014年に撮られたもので,2017年現在における我々「30代半ば」の者たちがなんとなく感じている「世代の見方」を写し撮っているように思います. 逆に,おそらくは20代以下の人が見ても退屈と感じる映画です. 30歳くらいになったら,以前にも増して世代間の違いを意識するようになってくるんですよ.それは別に「違い」を評価しようっていうわけじゃなくて,意識するってことです. 中年や高齢者との違いはもちろん,この歳になると20歳くらいの人との年齢差を感じるようになる.それも同じ民族・文化圏で育った者同士での差を感じるわけです. 劇の終盤で,主人公がつぶやきます. 「死にそうな爺さん相手にしてるとさ,時々思うの.私の知らない歴史を生きてきた人が,おんなじ世界に生きているんだなって.戦争とか私知らないし.今日生まれる子も,明日死ぬ爺さんも,みんな一緒に生きてんだよ.お互いにちょっとだけ目に見えない距離を歩み寄ってさ.心で理解できることってあるんだね」 あぁ,分かる分かるその感覚. 以前は頭で理解できていたことですが,最近は心の底からそう思うようになりました. 歴史を大切にするっていうのは,史実を追い求めたり知識を整理することではなくて,その民族と社会の生き様を語り継ぐことなんだなぁって. 劇中に出てくる老人たちとのエピソードは,どれも破天荒なものばかりですが,実はいずれも「普通」な人たちなんです. そこら辺に住んでいる普通の老人に目を向けると,普通でないものが見えてくる.「介護」がそれを浮き彫りにさ
例のNHKの判決
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NHKの受信料を支払う必要のない私にとっては,価値があるんだか無いんだか難しい話題です. でも,それだけに関心はあったりするわけで. どうやらテレビなどの受信機を持っていれば,NHKの受信料を支払わなければならない状態にあることが認められたようです. ■ NHK受信契約、テレビあれば「義務」 最高裁が初判断 (朝日新聞2017.12.6) NHKが受信契約を結ばない男性に支払いを求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、テレビがあればNHKと契約を結ぶ義務があるとした放送法の規定は「合憲」とする初めての判断を示した。事実上、受信料の支払いを義務づける内容だ。 ただ,現在支払いを拒否している人が,違反しているからってんで一斉検挙なんてことにはならず,以下のように・・・ ■ NHK受信契約、成立には裁判必要 最高裁 (日本経済新聞2017.12.6) NHK受信契約をめぐる6日の最高裁判決は、受信契約が成立する時期について「裁判で契約の承諾を命じる判決が確定すれば成立する」とした。「契約を申し込んだ時点で自動的に成立する」とのNHK側の主張は退けた。契約を拒む人から受信料を徴収するためには、今後も個別に裁判を起こさなければならない。 とのこと. NHKが嫌いな人にとっては腹立たしい話でしょうが,冷静にフェアに考えてみれば当然の判断だと思います. だって,法律を読めばどう考えたって「支払わなくていい」ということにはならないからです. 「テレビを持っていれば支払う」ということになっている以上,NHKの番組に不満があるから受信料を支払わない,などというチンピラみたいな主張が通るわけがない. 払いたくなければテレビを持たなければいいんです.私みたいに. 日本のテレビっていうのは,基本的にNHKを見るための装置です. ついでに無料で民放も見れる仕組みになっているわけで. これは別に日本独自のシステムではなく,その他の国でも採用されています. もちろん,そういう国でも公共放送の受信料を「廃止しろ」とか「安くしろ」っていう不満は出ているそうで,私の知り合いのヨーロッパ人も,そんな政治話が母国でしょっちゅう持ち上がると言っていました. むしろ,このNHK受信料の問題点とは,徴収する気が弱いNHK側に問題があります. 普
井戸端スポーツ会議 part 51「大相撲の暴力事件について」
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大相撲で暴力事件が発生. 暴力沙汰を起こした横綱・日馬富士が引退することになりました. ■ 日馬富士が引退会見 (NHK) 大相撲の平幕 貴ノ岩に暴行した責任を取って、29日、引退した横綱 日馬富士の記者会見が、師匠の伊勢ヶ濱親方も同席して午後2時すぎから福岡県太宰府市で始まりました。 (中略) 日馬富士は引退の理由について「親方と話して、横綱としてやってはいけないことを自分がやってしまった」と話しました。そのうえで届け出が29日になったことについて、「場所中だったので、頑張っている力士たちに頑張ってほしいということから本日になりました」と話しました。 本件そのものについて論じることは無いのですけど,関連してお話ししておきたいことはあります. なお,日馬富士の引退については,私は至って「当然だろう」という立場です. 大相撲というスポーツ選手が持っている社会的影響力と,一般常識的な判断からすれば,引退もしくは追放が順当だと思うからです. 今回の事件は,例えば教育界で取り沙汰される事の多い「体罰」との関連が指摘できると思います. これについて私なりの見解を一つ. 本当かどうか定かではありませんが,日馬富士サイドの主張としては,貴ノ岩が無礼な態度・行動をとったから,先輩力士として「鉄拳制裁」をしたということになっています. 私はこの「鉄拳制裁」そのものを悪く言うつもりはありません.そういうものがあっても不思議ではないからです. しかし,「鉄拳制裁」それ自体は違法行為であることは押さえておく必要はある,そう思います. これは体罰にも同じことが言えます. 体罰そのものは違法行為です.それが当事者以外に知れたら,逮捕されたり処罰されるものです. しかし,体罰そのものを否定するつもりはありません. 法律違反だからって,それが全て「悪」だということはないからです. 体罰を使ってでも教育することで,それが巡り巡って日本の社会をより良くすることにつながるという覚悟があるのであれば,それは認められることだと思います. ただし,角界の鉄拳制裁や,教育界の体罰のいずれにも言えることは,当事者間で納得できる行為であれば,それはそれで成り立つのですが,それが外部に知れたらアウトということです. 鉄拳制裁や体
いじめの正体
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待ちに待った和田慎市先生の新著が出ました. これまでにも当ブログで記事にさせていただいている,和田先生の新刊です. 和田先生のホームページはこちら. ■ 先生が元気になる部屋 (和田慎市ホームページ) 和田先生とは,当ブログをご縁に,何度か直接お会いして情報交換をさせてもらっています. 最近は,現役の高校教諭の先生方を交えた会として盛り上がっております. ■ 学校教育対談 ■ 学校教育対談(2回目) ■ 学校教育対談(3回目) ■ 学校教育対談(4回目) ありがたいことに和田先生から本書を献本いただきましたので,早速読んでみました. これまでにお話いただいていた「いじめ問題」がまとめられており,とても有意義な内容です. 帯には「『いじめは絶対になくならない』ここから出発する以外に,いじめ克服の道はない」とありますが,まさにその通り. 教育現場でいじめ問題を取り扱ってこられた和田先生からの,実用的な提言が並んでいます. 特に,第2章は「いじめ問題」を考える上では重要な示唆を得られます. 「いじめに関する7つの誤解」と題されたここでは, 1.いじめは根絶しなければならない 2.児童生徒の自殺は,いじめが原因である可能性が高い 3.いじめは犯罪だから法制強化し,厳正に対処する 4.いじめかどうかは被害者の判断による 5.学校(教師)は,いちはやくいじめに気づくはずである 6.学校は隠蔽体質なので,いじめはすべて保護者・教育委員会に報告する 7.重大ないじめは,積極的に外部機関に解決を依頼するとともに,世間にも広く伝えるべきである といった,よく見聞きするこれら7点が,学校現場の実態から非常に乖離したものであることを説明してくれています. 難しい話ではありません. ようするに,世間一般の皆さんが思うほど, 「いじめ問題は簡単ではない」 「子供の自殺は単純ではない」 ということを丁寧に解説した本です. 学校現場に携わっている方々からすれば,当たり前すぎて「何を今更」と思われることかと思いますが,いやいや,世間一般では本書で取り上げられていることが「当たり前」ではないから問題なのです. だからこそ,本書は学校現場ではない人が「いじめ問題」を考える上で手にしてほしいですね. もしくは,学校教育に携わって
けっこう役に立つ私のブログ記事
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お久しぶりです. ここんとこブログ更新が滞っておりました. 卒業論文の指導がかなり忙しくなってしまい,おまけに今年はこの時期になって実験をやろうとする学生もいたりして,かなりてんてこ舞いです. そのくせ,どの学生もとても熱心に取り組むので,こちらとしてもやり甲斐はあったりします. 嬉しんだか辛いんだか. 学部生の卒業研究については,大学院生が指導してくれる研究室もあるかと思います. でも,私のところはそういう大学ではないので,どうしても私がやらざるを得ないんです. 私も大学院生から実験計画とかデータ処理,図表の作成方法などを教わった口なので,教員自身が卒業論文の基本的な部分も教えるのは大変だなぁって感じます. と同時に,もっと大学教育を「卒業論文の研究」に向けて体系立てて組めないものかと考えたり. かと言って,最近は「卒業論文」は邪魔者扱いになっていたりする現実も見えたりします. でも,卒業論文は大事ですよ. ここで学生の学術的思考力は一番伸びますから. 大学で勉強する価値は,卒業論文にあります. ところで,研究や論文作成の基本的な事柄について,いよいよ面と向かって指導している場合ではないと思った時は,「そこんとこは自分でネットで調べて」ってなりますよね. 私としてはあまり推奨しておりませんでしたが,ついに忙しさの度が過ぎたのでネットを使わせることにしたんです. 私の学生としても「ネット情報には気をつける」くらいのリテラシーはあるので「え? それでいいんですか?」って感じで聞き返すんですけど,モノは使いようということを知るのも大事です. そうは言っても,一応は私の指導ですから,私の息のかかったネット情報を使うのが筋ってものです. だから私のブログを紹介しておきました. どうせバレないだろうから. t検定の使い方が分からないという学生がいました. エクセルでたくさんのデータを比較検定したいということなので,面倒なので以下の記事を紹介しておいたんです. ■ t検定:対応のある/なしの違いは何か ■ エクセルExcelでの簡単統計(t検定) なんせ,対応のある/なしについての説明が面倒です.ここを理解するのに苦労する学生は多いんですよ. 統計学の本を読んでくれれば分かる話なのですけど,そういうことをするのは意外
体育学的映画論「メッセージ」
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これ,つまるところガンダムですよね. ハリウッド版「ニュータイプ論」. 現在公開中の『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が,昨年に製作したSF映画が 『メッセージ』 (2016年)です. ブレードランナー2049も良かったですが,SF映画としてはこちらの方が遥かに出来が良いと思います. まあ,ブレードランナー2049はファンサービスとして作られたものかもしれませんので,それなりの楽しみ方をするものなのでしょう. 【以下,ネタバレを含みつつ話していきます】 映画を楽しむ上では以下の話を読まない方がいいかと思います. 観てから読むことを推奨します. ネタバレを含む映画のあらすじは,ウィキペディアで読むことができます. ■ メッセージ(映画) (wikipedia) 非常に質の高いSF映画です. 近い将来,「死ぬまでに観ておきたい映画◯選」などと形容されるようになることと思われます. 次元の異なる知的生命体とどのようにコミュニケーションをとればいいのか? というのがこの映画の基本的なストーリーになっています. 突如,世界中の地域に現れたUFOに対し,各国は独自に対応を始めるというもの. 学者たちによるエイリアンとの交流が描かれるのですが,「どうやって交流できることになったのか?」といった細かい経緯はぶった切られていて,「エイリアンとのコミュニケーションをどのようにとるのか?」という点に絞った展開が無駄がなくて良い. 言語学や数学などを駆使した,エイリアンが使う言語を解読してゆく過程が非常に興味深いんです. 「ほうほう,なるほど.へえ〜,そういうふうに解釈するわけねぇ〜」と,引き込まれること間違いありません. めちゃくちゃ難しい話なのに,むちゃくちゃ分かりやすく映画にしてくれています. これは圧巻です. でも,この映画の一番大きなテーマは「もしも “刻” が見えるようになったら」というものです. だから冒頭述べたように,ニュータイプ論なんですよ. 実は,この映画の構成自体が,主人公である言語学者・ルイーズの「認識」そのものを示しているんです. 原作は テッド・チャン著『あなたの人生の物語』 というタイトルなのですが,まさにこの映画は「ルイーズの人生の物語」と言えます. どういう事かというと,
どうして「絶対理解してくれない高等教育論」なのか
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前回の記事, ■ 絶対理解してくれない高等教育論 その理由編です. 大学に代表される高等教育に関する,デタラメな政策が止まりません. 現政権はそれを加速させています. 本ブログではずっと以前から繰り返しているように, おそらくはもう大学教育は致命傷を負っているので手遅れです. まだ本格的に表在化していないだけで,そのうち 「どうしてこんな事態になるまで放置したのか?」 などと言い出すに決まっています. でもそれは,決して国民自身の判断を問うようなものではなく,きっと「大学側の情報発信や主体性が弱かった」とか,「文部科学省にヴィジョンが無かった」とか,もしくはその時になってもまだ「時代に取り残された象牙の塔」などと言うに決まっています. 5年前の記事でも取り上げましたが, 大学改革を始めたのが間違い なんです. ■ 反・大学改革論 改革をすれば良くなるという意味不明な信仰が,将来の,少なくとも向こう50年くらいの日本人の知性を破壊してしまいました. 享保の改革とか天保の改革とか,とにかく「改革」と名のつくことは碌な結果にならないというのは学校の授業で教わることですが,この麻薬のような中毒性を喜ぶ人は多いものですね. この破壊は自己回復不可能です. これからまた100年くらいの時間をかけて直さなければなりませんが,まだ絶賛破壊中ですので,そのスタートラインに立つ日はずっと先のようです. 少なくとも,私達の世代が引退するくらいの時には,そのスタートラインに立てるように頑張っていきたいものですね.期待薄ですが. さて,そんな高等教育に関するデタラメっぷりですが,これをまともな方向で是正しようと考えても,絶対理解してくれません. 絶対理解してくれないのには理由があります. 前回の記事でもお話ししたように,例えば「大学無償化」は,現状のまま取り組んだり,現政権が目論む「民間経営的手法」を促進させる政策と抱き合わせることによって,教育現場を壊滅させることができます. これをまともな方向で是正しようとすれば,その一つとして考えられるのは, 「大学無償化」と合わせて「卒業基準の厳格化」をすることで教育現場は救済されます. 大学教育を無償化(現実的には格安化)する代わりに,簡単には卒業できない仕組みへと徐々にシフトさせるも
絶対理解してくれない高等教育論
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大学等の高等教育を無償化させたり,学部の切り売りを促したりといったニュースが続いています. ■ 「教育無償化」高等教育に8000億円 2兆円配分の大枠 (毎日新聞2017年11月9日) 政府は教育無償化など2兆円規模の政策パッケージについて、配分の大枠を固めた。大学など高等教育の無償化に約8000億円を配分。幼児教育・保育の無償化では、0~2歳児に100億円程度、3~5歳児は8000億円程度を充てる。高等教育と0~2歳児については、無償化の対象を住民税非課税世帯(年収約250万円未満)に限定する方針。 ■ 私大に「学部の切り売り」認める…大学再編促す (読売新聞2017年11月8日) 18歳人口の減少で経営悪化した大学の「学部の切り売り」を認めることで大学再編を促す。(中略)学部の譲渡が可能になれば、経営が行き詰まった大学が学部の一部を他大学に売却し、当面の運転資金を確保できる。また、経営の効率化を図りたい大学の場合は、不人気学部を切り離し、研究成果が顕著な学部や人気学部を強化できるようになる。 具体的な方策が見えていないのでなんとも評価し難いのですが,どれもこれもデタラメ臭さが漂っています. 以前の記事でも取り上げましたが,私は大学無償化には反対していません. どのような方策になるかにもよりますが,多くの国民が高等教育を受けられる状態にすることは,国家として望ましい在り方だからです. ただ,「学部切り売り」とかいう政策を考えているところからして,おそらく碌な思想・信条に基づいていないことが推測されます. 現政府には注意が必要です. 教育無償化に反対する人のなかには, 「そんなことしたらFラン大学をのさばらせるだけだ」 という人がいます. お気持ちはわかりますが,ご安心ください. そんなことにはなりません. 「高等教育(大学)無償化」については,ある教育政策と抱き合わせることで,現在のFラン大学であっても有名大学と変わらない教育が実現できるのです. 昨今のニュースでも取り上げられているように,現在の日本の大学は,研究レベルや教育水準の低下が著しいんです. 「このままではノーベル賞がとれなくなる」 という懸念もされていて,まあ,ノーベル賞はどうでもいいですけど,まともな学術研究
私の天皇論
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今上陛下が生前退位の意向を表明されてからというもの,ネット上でもこの議論をよく目にするようになりました. 平成30年を節目として譲位することが計画されているようです. 元号が変わることが決まっていると,なんだか楽しみですね. 私は生前退位には賛成します. 死ぬか心身がボロボロになってからじゃないと譲位できないというのは惨い話です. 歴史的には天皇の生前退位はいくらでもあったのですから,あとは在位中の天皇の意向に沿っても良いのではないかと思います. 私としては「天皇」のことについて何か論じるほど知識も関心も無いので扱ってこなかったのですが,一臣民として天皇をどのように捉えているかブログしておくことも良いかと思いキーを叩いています. 今回は,生前退位の件で取り沙汰されることの多かった,「万世一系」「男系継承」という点について. まず明らかにしておいた方がいいであろう私の考え方として,日本に天皇をおくことについては諸手を挙げて賛成しています. 今の日本の在り方を象徴する存在として,天皇と皇室は無くてはならないものです. しかし,天皇と皇室を廃止するような動きがあったとしても,これに頑なに反対するつもりはありませんし,何かしらの事件・事故等で皇室の皆さんがいなくなったとしても,日本が混乱して立ち行かなくなるような事態にはならないだろうと楽観してもいます. 右翼系の人のなかには情熱的に皇室を捉えている方々がいます.皇室がなくなったら日本ではなくなる,と考えている人も少なくありません. 別に彼らを批判しようってわけではありません. むしろ,熱心な人達だなぁ,と感心している次第です. 逆に,皇室や天皇制を廃止しようと訴えている人たちを批判するつもりもありません. 彼らは彼らで,天皇に代わる何かを用意して日本国と日本人をやっていけるのでしょう. 別にそれでも構わないと思いますよ. 作家で元東京都知事の極右政治家とされる石原慎太郎は,「皇室は役に立たない」とか「天皇を最後に守るべきものではない」と言っているようですが,これは私も別の意味で賛成します.賛成するというのは,石原氏の考え方にではなく,表現に対してであって,私は真逆の意味で言っています. つまり,皇室は役に立つためにあるので
体育学的映画論「クリーピー 偽りの隣人」
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神奈川県座間市で起きていた事件と似ている.ただそれだけの理由で取り上げてみた映画です. 今回の事件のニュースを見て,きっと他のとろこでも「状況がこの映画と似てる」と言わているかと思います. 神奈川県座間市で起きていた事件というのは,こういうやつです. ■ 座間のアパート、計9遺体発見…住人の男を逮捕 (読売新聞2017.10.31) 神奈川県座間市のアパート一室から複数の遺体が見つかった事件で、室内からは計9人の遺体が見つかったことが捜査関係者への取材でわかった。遺体はいずれも切断され、クーラーボックスなどに入っていた。 どうしてこんな事件が出来たのかというと,自殺幇助をほのめかして誘っていたようなんです. ■ 「一緒に死のう、自殺手伝う」書き込みで家誘う (読売新聞2017.11.2) 神奈川県座間市のアパート一室で男女9人の切断遺体が遺棄された事件で、白石隆浩容疑者(27)(死体遺棄容疑で逮捕)は、ツイッターで自殺志願者を探しだしていたことが捜査関係者への取材でわかった。(中略)「一緒に死のう。1人で死ぬのは嫌なので」「自殺を手伝う」などと書き込んで接近し、自宅に誘っていた。遺体で見つかった9人のうち、女性の8人とはツイッターで知り合ったという。 精神的に異常をきたしている人が,精神的に異常な人に吸い寄せられていくのはよくあることです. でも,意味がわからない事件ですよね.私もそうですが,世の大多数の人々には受け入れ難い話です(受け入れるのもおかしいけど). 黒沢清監督「クリーピー 偽りの隣人」 (2016年)は,そんな精神異常者たちが作り出す箱庭を眺めているような気分にさせてくれる映画です. 案の定,こういう映画は世間からのレビュー・評価がとても低い. ■ Yahoo映画「クリーピー 偽りの隣人」 たしかに一般人を喜ばせるためのエンターテイメントの構成にはなっておらず,一応はストーリーができているものの,出来事を映し出すだけになっています.だから,分かりやすい物語だと構えて見てしまうと退屈になってしまうのです. この作品には視聴者に対する大きなフェイクがあります. それは,劇中に登場する人物のほとんどが精神異常者だということです. 精神異常者の設定である香川照之演じる西野とその娘は,紛うこと無
体育学的映画論「ブレードランナー2049」
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この週末はあっちこっち飛び回って結構忙しいのですが,ちょっと無理して ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ブレードランナー2049』 を見てきました. これは10月27日(金)に公開された映画. 仕事が一段落してからとも思ったのですけど, リドリー・スコット監督『ブレードランナー』 (1982年)のファンの一人としては居ても立ってもいられず,スケジュールにねじ込んだところです. 以降,ネタバレは最小限にしますが,関係が深い話が出てきます.ご注意ください. でも,ブレードランナーのことをあまり知らない人にとっては,むしろ以下を知った上で見たほうが良いかもしれません.ご参考まで. さて,前評判では賛否両論でしたけど,私としてはかなり楽しめました. さまざまなところで論じられていることですが,この『ブレードランナー2049』は前作を含めて万人受けする映画ではありません. 今でこそ1982年の『ブレードランナー』はSF映画の最高峰として有名になっているようですけど,公開当時はアメリカでも難解なクソ映画として酷評されていたとのこと. 生命科学や哲学の論考を好む人達に好かれるタイプの映画であり,家族で楽しむエンターテイメントでもなければ,デートで気軽に鑑賞して話題にすることもできません. かくいう私も,子供の頃にテレビで放送されていた『ブレードランナー』を見た時はイマイチ話がわからず楽しめなかったんです.でも,何度か見ているうちに,どうして人造人間たちが反乱を起こしているのか?とか,なんで人造人間は最後にデッカードを助けたのか? なぜデッカードは寿命が尽きるはずのレイチェルと共に逃亡したのか? その際に玄関に落ちていた折り紙がなぜユニコーンなのか? とか,大人になるにつれていろいろ解釈できるようになってきます. つまり,見る度に魅力が増してくるのがブレードランナーという映画の特徴なんですね. 大学生以降では1年に何回か見る映画になっていたので,その都度借りたりネット上で探すのが面倒になって,7年くらい前についにDVDを購入しました. 私がDVDを購入するのは極めて珍しいことです. 今回の『ブレードランナー2049』は,前作の世界観をそのまま引き継いでいます. ブレードランナーって「陰鬱なゴミゴミした街に汚い雨が降っている」という世界が象徴的ですよね.
体育学的映画論「関ヶ原」
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どうしても映画館で見ておきたかったので,先週末の台風が近づく雨の中見てきました. 別に動画配信になってからでも良かったような気もするのですが,やっぱり日本を代表する合戦「関ヶ原の戦い」はスクリーンで見ておくべきだと思ったのです. 結果,残念な思いをしたところです. そうは言いましても,昨年一番の残念な思いをした映画, ■ 体育学的映画論「デスノート Light up the new world」 でも述べたように,監督や役者さん,スタッフの皆さんがせっかく作ってくれた映画ですから,こき下ろすような批評はしたくありません. どうしてこんな出来になってしまったのか? どうして(少なくとも私の)心に響かない作品なのか? といった点をしっかり考察することによって,(少なくとも私の)今後の映画鑑賞の足しになればと思います. 以下,この記事を読んだ皆様の参考になれば幸いです. 以降より映画のネタバレを含みますが,史実に基づく関ヶ原の戦いがテーマなので,ネタはももともとバレてるだろうとも言えます. 今回の「関ヶ原」は,ここ最近の(って言い出して久しいのだろうけど)日本映画にありがちな,「どうしてこうなった?」が満載の映画です. むしろ,その点を考察することで日本映画の質の向上,そして、今後の展望が見えてくるとも言えます. まず,とにかく中途半端ですよね. この一言に尽きると言っても過言ではない. 徹底して中途半端な作品です. 中途半端であることにかけては他の追随を許さない.そんなところを目指した作品だと言われてもおかしくありません. 本作はテーマがてんこ盛りです. ・原作・司馬遼太郎による解説と語りを基にした展開 ・関ヶ原に至るまでの経緯を猛スピードで追うスタイル ・石田三成と女忍者との恋愛模様 ・各武将の生き様の紹介 ・エキストラを大量動員した壮大な合戦 ・よく分からない素性の登場人物(朝鮮人兵士とか医療班とか) 史実と違うとか,余計な色恋沙汰を入れるなとか,そんな批判もありますが,私としてはどれもそれらはそれらで魅力的だと思いました. でも,いかんせん全てが中途半端だった. 私的には,どうせなら石田三成と女忍者の恋愛模様にフォーカスを当てた方が良かった
選挙結果の話
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選挙結果が出ましたね. 自民圧勝というのか,現状維持というのか,評価はいろいろでしょうけど. 先日お話ししたように,私は選挙・投票には滅多に行きません.今回も行きませんでした. 選挙結果にも関心がないとも言いましたが,全く目を通していないわけではありません. それなりに国情は分析しています. 「投票しなかった奴は政治に口出しするな」と言い出す人もいますが,投票した奴だからと言って口出しできる道理もありません. 選挙なんて所詮は人選びです.裁判員制度とかみたいに抽選で決めたっていいくらいだと思います. そもそも,「我こそは選挙で投票した者であるぞ!」ってドヤ顔したところで,その選挙結果にあれこれ言っても無駄ですよね.もう結果は出ているんだから. これはちょうど,我々の業界で言うところの「オープンキャンパスの来場者数」とか「入試志願者数」に対する講釈と似たところがあります. そんな話を以前したこともある. ■ オープンキャンパスの来場者数を想う 実のところ,選挙と大学のオープンキャンパスや志願者数争奪戦はよく似ています. 「政治家と国民」「大学と学生」,いずれも始まってからの取り組みの方が大事なのに,その入口に立ったところがゴールと思ってしまっている. これは日本人の特性なのかもしれませんね.もしかすると,学校や大学教育の取り組み方を改善することで,半世紀くらいすれば選挙や政治への視座も変わってくるのかもしれません. いずれにせよ,選挙で投票することが国民の政治的主張の表明であるという勘違いは早急に是正されるべきです.取り返しのつかないところまで行く前に. ところで,私の地元の選挙区・高知2区では,「保守王国・高知」を示す結果が出ておりました. 無所属の広田一氏が,元農水大臣であった自民党・山本有二氏を破って当選したのです. ■ 山本前農相が比例復活 高知2区は無所属候補勝利 (西日本新聞2017.10.22) もちろん,山本有二氏は農水大臣であった昨年にTPPを強行採決する旨の発言が物議を醸しており,これが響いたことは間違いありません. ですが,高知県は農林水産業で成り立っている地域です.そんな地域出身である山本氏が農水大臣をやっているのに,政府のTPPの方針にホイホイついて行くような姿は地元民にどのように映ったか.
今日は選挙ですね.お疲れ様です
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今日は選挙ですね. 昨年の参議院選挙の時もそんな記事を書きました. ■ 今日は参議院選挙 その時にも話したことですが,私は選挙には関心がありません. 選挙結果を動かすことになる部分での情報や話題の提供をすることにしています.その方が私一人投票に行くよりも有効だからです.私が1票投ずるよりも,私の考え方に動かされた誰か2名が投票してくれる方が,世のため私のためになるのですから. 方法としてはこのブログはもちろん,大学での授業とか井戸端会議などがあげられます. それが私なりの政治参加と言えるでしょう. ちょうどいい機会なのでここで告白しておくと,私自身が選挙に行くことは滅多にありません. 投票日に暇で時間を持て余している時には行ったことがあります. たまに興味本位で行けば気分転換にもなりますし. でも,今日みたいに雨が降っている日は絶対に行かない. 細かい話は上記記事で書いているので繰り返しませんけど. でも,こういうこと言うと怒り出す人がいます. 「投票しなかった奴は政治に口出しする資格はない」とか,果ては「選挙で決まった結果が気に入らないなら日本から出て行け」などと言い出す人です. こういった人が人間社会には一定数いるのは仕方がないことです. もしかすると,いつもあまり時間がとれずに,選挙とか政治のことを深く考えられない人もいるかと思いますので,そのためかもしれません. でも,心の底から本気で「投票しなかった奴は政治に口出しできない」と考えている人っているものです.けどこれは,「選挙と政治」について丁寧に考えてくれれば間違っていることはすぐに分かります. よく,「きちんと筋道立てて考えれば誰でも分かることだ」と言う人がいます. 私も授業とか論文指導でも同じことを学生に言いますし,このブログでも使うことがありますけど,実はこれは嘘です. どんなに丁寧に時間をかけて考えても,分からない奴はずっと分かりません. 私が授業やブログでこれを言うのは,ちょっと煽って聞き手の思考への動機を促すためです.本心からではありません.手遅れな奴には無意味です. 世の中の人全てに叡智を授けられるような教育方法はないのが現状なのです. 例えば,「投票しなかった奴は・・・」などと熱り立っている人に,選挙で投票することが政治参加することにな
体育学的映画論「ダンケルク」
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先月から公開されているクリストファー・ノーラン監督作品 『ダンケルク』 (2017年)を,先日ようやく見ることができました. 公開前からかなり期待していたのですが,その期待を裏切らない迫力ある映画でした. ネット配信されるようになったらもう一度見てみようとは思いますが,これは映画館で見ることをオススメします. 「追い詰められた軍隊」について,戦地での緊迫感や絶望感を追体験できる映画です. 特に,映画冒頭にある「最初の弾丸」からの銃撃戦で「生き残るために逃げている」側にいることを意識付けられ,没入感は最高. そう言えば,三谷幸喜監督の映画に『ラヂオの時間』(1997年)というのがあるのですが,そこで「頭にマシンガンの音が必要なんだ.そこで惹きつけておかないと客が食いつかない」とマシンガンの効果音に拘る場面があります.なんだかそれを思い出させられました. あとは終始,ハンス・ジマーによる不安を煽る重低音の音楽が(いい意味で)ダラダラと流れつづけており,気分が滅入ります. 予告映像にもありますが,浜辺にて帰国用の船を待つ兵隊の行列. 爆撃や機銃掃射を受けても,彼らは行列を崩さない.東京人もびっくりの 「行列のできる浜辺」 です. 私が過去記事で言いたかったことを「戦争」を通して間接的に表現しているとも言えます.その意味でもとても興味深い. ■ 整列乗車はマナーではない 陸・海・空それぞれのシーンで異なる時間軸により話が進んで行き,最後に3つが統合されるという手法をとっているのですが,これも小説を読んでいるようで面白かった. とりあえず,英国ジジイがカッコよすぎる映画です. 映画評なんかを見てみますと,ストーリーがないので退屈だとか,「ダンケルクの戦い」を事前に知っていないと意味がわからないなどというコメントが散見されます. たしかに,ただひたすらダンケルク港からの撤退作業を見させられているのは事実です. でも,私としては「こういう戦争映画が見たかった」と感じさせられたのも事実でして. 戦争映画の描き方の転機となる作品になるのではないかと思うんですよ. それはもしかすると,近代以降における「戦争」を考えるテーマにもなるかもしれません. つまり,「近代戦争とは,そもそも『ストーリーがない』のではないか?」という問題提起. 現
最近の自宅周辺の外食事情
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関東に移住してしばらくは味付けの違いに辟易しており,仕方なく自炊することも多かったのですが,ここ数年は自分好みの料理を出してくれるお店を見つけて安定しております. 自宅周辺と勤務先の間にある,うどん,寿司,ラーメン,中華をローテしているところです. 安定するまで2年かかりました. もともと,外食に限らず同じ店に繰り返し足を運ぶタチではあります. 理髪店もずっと馴染みのお店ですし,衣服もずっと自宅近くのAOKI.毎朝・毎晩通うコンビニも,自宅前のセブンイレブンです. 同じ店を使い続けると,当たり前ですけど「常連客」になります. 常連客って楽なんですよ.きっと店側もそうです. そういう関係がなにかと楽だし,楽だから「楽しい」. 理髪店なら「いつもの感じで」で済ませられるし,ちょっとした追加注文するにしても話が通りやすい.床屋談義は月に一度の楽しみになります. 服を買うにしても,いつもの店なら馴染みの店員が対応してくれるので,最近のファッション事情なんかをいろいろ教えてくれます.私は服選びで悩みたくないので,その店員に任せることにしています.そこらへんの詳細は,過去記事にしたことがあります. ■ 若手研究者用:スーツの上手な買い方・着方 さて,外食の話ですけど,私は30歳を越えてから寿司屋に足を運ぶようになりました. もちろん回転していない店です.独身貴族ならではの楽しみだと思っています. 私が通っている店はそんなに高級なところではなく,安くあげれば3000円くらいで満腹になります. けど,腕は確かなようでして,いつも繁盛していて予約無しで入ることは難しいですね. 私はいつも予約して行っています.一人なので席を取るのは簡単です. 何回か通っているうちに私を覚えてくれて,注文もスムーズになりました. そのうちこっちが何も言わなくても「次,玉子握りますね」とか「お味噌汁を出していいですか?」,最後は「お茶を出してもいいですか?」ってなります. いつも混んでいる店ですが,たまにポッカリと空いている時があるものです. 私は普段口をきかないのですけど,こういう時だけですね,大将と話しをするのは. 私も高知の港町出身ですから,それなりに魚の話題では盛り上がれます.魚料理や寿司屋について,いろいろ話が聞けるのは楽しいものです. 混ん
パイナップルの食べ方
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どうでもいい話ですけど,高知つながりでもう一つ. 毎年,実家からパイナップルが送られてきます.しかも,年に何回か. 母の園芸の趣味が発展してゆき,15年くらい前から実家ではパイナップルが栽培されているんです. 過去記事の■ “日本一”の故郷を撮る でも紹介しましたが,こんな感じです↓ 先日も「今年最後だから」などと言いながらパイナップルが3個送られてきました. 実際,これを処理するのが大変です. 大学院生だった頃は,院生室の皆で分け合って食べていたのですけど,今となっては「パイナップルを分け合う」ような環境にもなく. 私が家族持ちなら楽しく食べるイベントになるのでしょうけど,そうではないので「処理」という言葉がぴったりなのが哀しいですね. パイナップルは新聞紙にくるまれて送られてきます. 高知からなので高知新聞にくるまれています. 冒頭の写真や見慣れたパイナップルと比べると果実が強いオレンジ色ですが,これが完熟したパイナップルの証拠です. ここではキッチンの電球の色の影響もありますが,普通に売られているものと比較すると真っ赤です. これを切っていきます. まずは実の上下を切り落とします. 次に,側面の皮を削ぎ落とします. 遠慮なく大胆に切り落として構いません.「処理」なので. 「もったいない」からと細かく削っていたら面倒くさいことこの上ないですし. あと,新聞紙の上で切れば,あとの片付けが楽です. 皮を削ぎ落としたら,次は「芯」の周りにある果肉を削っていきます. これも大胆に切り落としていく感じです. ここまでくると部屋中にパイナップル臭が充満し,トロピカルな雰囲気を漂わせます. 一旦部屋を出た後,また帰ってきた時の匂いが凄いです. 芯だけになりました. 普通はこの「芯」は捨ててしまうのですが, 実はこの芯の周りにある果肉こそがパイナップルで最も美味しいところ です. さしずめ「マグロのなかおち」「ヒラメのエンガワ」みたいなもの. なので,以下のように削っていきます. 一般に売られているパイナップルでは「芯」の周りは美味しくないかもしれません. 繊維質ばかりで食べられたものではないかと思います. ここが美味しく食べられるのは,ちゃんと完熟したパイナッ
高知と映画(全体とは部分の総和以上のなにかである)
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どうして高知の映画の話題なのかと言うと,私が高知出身だからです. 知らない人がいたらと思い,念のため. 先日,こんなニュースがありました. ■ 「0.5ミリ」の安藤桃子監督が高知に映画館オープン (映画.com 2017.10.7) 安藤サクラ主演の「0.5ミリ」などで知られる映画監督の安藤桃子氏が企画・運営する映画館「ウィークエンドキネマM」が10月7日、高知市内でオープン。父で映画監督、俳優の奥田瑛二、エッセイストの安藤和津ら奥田ファミリーも応援に駆けつけた。(中略)安藤監督は外観、内装から、作品選び、配給まで全面プロデュース。映画館前の通りには出店で賑わう中、呼び込み、チケットのもぎり、上映前には作品紹介の“前説”も。「ザ・トライブ」の上映の際には、通りかかった10代の若者グループに丁寧に説明し、勧誘に成功。「目標は高知の映画人口を増やすこと。映画をきっかけに町が賑わいを取り戻せたら」と言葉に力を込めた。今後は、トークショーやイベントなども企画しているという。 映画そのものの凋落もありますが,過疎化が進む高知では映画館が軒並み潰れているのが現状でした. なぜ安藤監督が高知で映画館を始めたのか? というと,以下のような理由なのだそうです. 安藤監督は13年、「0.5ミリ」を高知で撮影したことがきっかけで移住。その際、04年に廃館になった高知東映の存在を知り、復館できないものかとの思いを強くした。 なんと,高知に移住されていたんですね. 父、奥田は07年11月から約4年間、山口県下関市で自身のミニシアター「シアターゼロ」を運営しており、奥田ファミリーで映画館を経営するのは2館目となる。「シアターゼロ」の立ち上げも手伝った安藤監督は「父が下関の映画館で苦労する姿、喜ぶ姿を見てきた。独立プロで映画を作ってきた人間としては、映画の入り口から出口までやってみたいとの思いが最初からありました」と話した。 奥田は「僕は映画人として、監督をやって、興行もやり、全てを経験したけども、奇しくも親子で、新たに映画のシステム全体を経験する人が生まれることはうれしい。僕が下関でやってきたことを受け継いでくれたかなと思うと、感無量です」と喜んでいた。 お父様である奥田瑛二氏も,山口県で同じことをやっていたのだそうです. 私は体育・スポーツ科学の研究者・教育者
体育学的映画論「鬼龍院花子の生涯」
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ちょっと前の話ですが,本学の野球部の数名が不祥事を起こしました. 当事者間での示談で済んだので表沙汰にはならなかったのですが,週刊誌あたりが嗅ぎ付けるとそれなりに危ない事件ではあったんです. 最近の大学では,初年次教育で担当しているクラス(主に「基礎演習」などと呼称される)を,学校で言うところの「ホームルーム担任」のように扱っているところが少なくありません. 学生生活の相談事や,今回のような学生の不祥事があったら,その担任の教員が対応するという次第です. うちの大学もそうでして,私もその担任をやっています. 不祥事を起こした野球部の一人が私が担任をしていたクラスの学生でしたので,担任である私も呼ばれて「面談指導」をやることになりました. 知らない人は驚かれるのですが,今の大学はこういうことをやるんです.「学生課」とか「教務課」あたりが処理するわけじゃありません. 学科長と,当該学生たちの担任である私ともう一人の先生が面談を担当しました. 事の次第を聞き取り,彼らの反省の弁を聞くということだったのですが,私にはそのうちの一人がどうも反省しているように見えなかったんですね. 「はいはい,反省してるって言えばいいんでしょ」みたいな態度でふんぞり返って,薄ら笑いを浮かべる場面もあったりで. さすがの私も,それにキレてしまったようなんです. 私と面識のある人は知っているかと思いますが,私はとても優しく心穏やかな人物です.私が怒るところはもちろんのこと,機嫌が悪いところも見たこと無いはずです.パワフルプロ野球なら「安定感」と「ピンチ◯」が必ずついているでしょう. だから「キレた」と言っても,結構穏やかにキレたはずなんです.怒鳴り散らすようなことはしていません. 「君たちがやったことは,とても大変なことなんだよ.そんな態度でいると,今に取り返しのつかないことになってしまうよ.なめてかかってはいけませんよ」という趣旨のことを言ったと思います. あんなに優しく朗らかな私がブチ切れたのですから,これが学生(だけでなく他の先生も)には衝撃的だったらしく,泣き出しそうな奴もいました. 以後,彼らは反省したようで,授業でも大人しくなったようですし,野球部内での素行の悪さもおさまったと聞いています. 中高生とは違い,さすがに大学生になったら聞き分けが