2018年4月17日火曜日

モリカケ問題とか日報問題を,大学教育で例えてみる

「その問題というのは,例えて言うなら,総理大臣と懇意にしていた会社が特別に利益を得られる仕組みになっていたようなものだ.だから政府や総理大臣は,その疑惑をすぐに払拭できるよう準備していないといけいないし,それが出来ないのであれば責任をとって退陣しなきゃいけないでしょう.それと一緒だよ」
などという例え話が通用しなくなっているのが現代日本なのです.
もう既に末期症状だと思います.

「メディアは疑惑ばかり報じるだけで証拠を出さない」とか,「総理は悪魔の証明を求められている」などと,おおよそ民主主義国家の国民とは思えない言動をしている人が結構います.
少なくとも我が国の首相は王様ではありません.政府も教会ではない.
国民は,政府や政治家を常に疑ってかからないといけないし,政府と政治家の側も,疑惑をかけられたらそれをすぐに払拭できる証拠を用意しておくのが健全な状態というものです.

例えば,夫が女と週に何度も食事していて,ラブホテルへ一緒に出入りしているところを,妻が写真に収めて「この女は誰なのよ!」と迫ったとします.
その夫が「こいつとは何もないよ.浮気だというのならその証拠を出せ!」と反論してきたからって,
「そうね,これは浮気を示す決定的証拠じゃないから疑惑のままね.その女とやってるところをおさえることが出来るまでは,夫を信じるわ」
なんて悠長な妻はいないでしょう.
「浮気してるんじゃないか?」という疑惑,それ自体が夫婦関係の問題になっているわけですから.
国家運営で言えば,この政府は議会制民主主義を進行していく上で信頼できるのか? ということが問題となっているわけですよ.
「じゃあ,代わりは誰かいるのか!?」なんて,トンチンカンにもほどがある.そんなの,離婚してから考えればいい.

夫が本当に潔白なのであれば,妻からの信頼を取り戻すために証拠をこれでもかと出し,件の女を呼び出して事実関係を証言させるはず.国家運営で言うなら,公文書公開とか証人喚問ですね.
もちろん,それだけじゃ妻は納得しないだろうから(都合のいい証拠しか出さなかったり,女と口裏合わせしているだろうから),ラブホテルに女と同行した退っ引きならない事情や,その事情を知る関係者を集めるなどして,疑惑を払拭するために説得するものです.
ところが,それに応じず「疑惑をかけられているのは俺なんだから,証拠を出すのはそっちだ」とか,「ほら,あの女も俺とは何もなかったと証言しているじゃないか」などと言い出すような奴とは離婚するに限ります.
そんな男は信頼できないでしょう.同様に,そんな態度をとる政府はどう考えてもおかしい.

さらに言えば,夫がホントに本当に潔白だったとしても,妻が納得する証拠提出と説得ができない男や,特定の女と日常的に食事したりラブホテルに行く行為を普通だと思っている男は,その時点で離婚です.
前者は無能だし,後者はバカです.
「浮気の証拠が出てこないのだから大丈夫だろう」などと考えてる場合ではありません.
こいつに「夫」としての資質があるのか? ということが問われているんです.

モリカケ問題とか自衛隊日報問題に揺れる安倍政権というのは,「証拠がないなら無罪」とか,「悪魔の証明」などといった次元で論じられるものではないので,こうした色恋沙汰で例えることもできるのですが,もうちょっと上品に例えることもできます.

これを大学教育現場で例えてみましょう.
大学教育において,教員−学生間に生じる「疑惑」と,その対処が求められるものに試験結果の根拠説明があります.
最近の大学って,期末試験とか中間試験をとても厳密にやるようになってきています.昔のような適当な試験方式はだんだんなくなっているんですよ.

具体的に言うと,学生は授業の成績を左右する試験の結果については,その採点に疑惑や不服がある場合は,大学事務(主に学生課とか教務課)を通じて訴えることができるようになっています.
以前(20年くらい前)であれば,学生が教員の研究室に直接出向いて交渉されていたのですが,徐々に「コンプライアンス重視」とか「説明責任」といったことが浸透してきて,現在のように大学事務局を窓口にするようになりました.

「教授のところに地酒を持参して懇願したら,テストの点数が可になった」とか,「胸元がパックリ開いた服で訪問して訴えたら,特別に追試を受けることができた」などという話を聞いたことがある40代以上の大卒の人は多いでしょう.
実際,そういうことは以前はたくさんあったんです.そういう意味では,昔の政治も似たようなものかもしれない.
でも,今はそういうことができないような成績管理システムになっていたり,採点方式の公平公明性が強化されてたり,教員が勝手に成績変更できないようになっていたりします.

ようするに,学生としては自分の成績が「おかしい」と疑惑をもったら,それを自由に訴えればいいという形式になっています.
このため,昔と現在の成績評価に関する最も大きな違いとしては,現在では「試験の採点手続きや,成績・点数の割合が説明できるようになっている」ことにあります.
つまり,現在の大学教員は,「どうしてA君が75点で,B君が80点なのか? この5点の差は何から生じているのか?」ということを,きちんと説明するよう求められているんです.

え? 昔は違ったのかって?
そうです,昔は適当に採点していた先生方が多かったみたいですね.なんとなく,こいつは80点だろう,こいつは65点だな,って感じで.

そんなことしてると,「なんで私が65点なんですか!」って怒ってくる学生が出てくるわけですけど,あんまり煩いからそいつを80点に変更したら,それを聞きつけた80点の学生が「訴えたら点数が上がるんすか!」って怒り出して面倒なことになっちゃったから,ちゃんと窓口用意して,教員が勝手に成績変更できないようにしようと.そういう経緯があって現在のシステムになっています.

あと,どうしてこの学生が「70点」なのか,その割合もきちんと説明できないとダメになっている大学がほとんどです.
実際,いろいろな大学のシラバス(履修要項)を見てもらえれば,成績の算出方法が掲載されています.
出席30%,レポート10%,テスト60%などと書かれることが多いですね.担当教員によって,この割合や項目が違いますが,つまりは点数の割合を説明できるようになっています.
ちなみに,最近は「出席」を点数化させることを嫌がる大学も増えています.授業に「出席」するのは当たり前だから,これを成績の点数にするのはダメでしょう,っていう理屈です.

もちろん,レポートやテストも,どうしてその点数になったのかを説明できるよう求められています.
なので,レポートやテストの結果(つまり,解答用紙)は規定期間を過ぎないと破棄できないようになっています.こういうのを「根拠資料」って言います.
教員自身ではなく,大学事務で保管するところもあるそうですが,たいていは成績確定する年度内もしくは1年間,あとは卒業年の目安である4年間とかです.
その期間は,学生からの成績評価に対する訴えや調査があった場合に備えて,「どうして◯点なのか?」に答えられるようにしています.

最近では,教員側も「どうして君が◯点なのか」を後々説明するのが面倒なので,授業内でフィードバックできる仕組みにしている先生方もいます.
例えば,出席1回で3点,遅刻は1点,課題提出1つが10点満点で,グループワーク1回参加が5点ですよ,といったリストを第1週目の授業から学生に渡しておいて,学生自身に自分の成績点数が明確に分かるようにするものです.これだと学生は「僕は少なくとも80点だな」とか,授業期間の途中で「俺は欠席が多いから,今から全部出席したとしても単位が出ないな」ということが判別できます.

まぁとにかく,一部の学生にとってはそれほどでもないけど,他の一部の学生にとっては大変重大な関心事である「成績評価」に対する説明責任を果たせるよう,大学は準備されています.
長くなりましたが,これが疑惑を持たれた政府と同じです.

実際,「私が◯点なのは,どういう理由からですか?」なんて訴えてくる学生はほとんどいませんよ.極めて稀です.
たいていは,教員の裁量を信じて「あぁ,私はこういう点数なんだな.まっ,単位をくれているから良しとしよう」って感じで何事もなく過ぎることです.
でも,その評価基準に疑義を持った学生が現れるのもたしかで,どうして君が◯点なのか? ってことを説明できなきゃいけないのが大学当局,担当教員ということになります.

学生からの「これって,いい加減に採点した結果じゃないんですか?」という疑惑に対し,「その採点を適当につけたと言うなら,その証拠をお前が出せよ」なんて態度が通用するわけないでしょう.
「あなたが◯点なのは,これこれ云々の結果ですよ」って回答できなきゃいけないのが当たり前です.成績評価っていうのは,それだけシリアスなものだからです.

それが国家運営・行政だったら尚の事でしょう?
誰かが「それって不公平じゃないですか?」とか「間違ったデータに基づいて話を進めてていませんか?」などと疑惑をかけたら,その疑惑が的外れであることを明瞭に示すことができなきゃダメなんですよ.それが議会制民主主義の行政を行っている担当者の責任です.

それが出来ずに,いつまで経ってもツッコミを受けているような安倍政権は,その時点で退陣したほうが日本のためです.
もしかすると,本当に安倍政権は潔白なのかもしれない.でも,身の潔白を証明するのにここまで混乱を引き起こしているのは,行政を取り仕切る能力がないものと考えるのが妥当です.

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