2012年6月30日土曜日

エヴァンゲリオンは竹取物語である

「エヴァンゲリオンは壮大な近未来 “竹取物語” である.
日本最古のSFを,日本最新のSFとして焼き直したものである」

エヴァ好きの学生がいまして,「結局,あのストーリーで伝えたかったことは何なんでしょうか?」と聞いてきたので,このように答えました.

他に意見を同じくする人はいないものかとググったら,やっぱりおりました.以下のサイトでも紹介されています.同志一名,少し安心しました.
http://homepage3.nifty.com/mana/sinwa.htm

あれって1995年の作品ですよね.90年以降に生まれた学生はリアルタイムで見ているわけじゃないですよね(私もリアルタイムじゃないけど).

最近になって新劇場版(2007年〜)が制作されていますが,旧作のほうから興味持って見ている大学生もいるようです.


さて,エヴァンゲリオンのどこらへんが竹取物語なのか?というところを説明しましょう.

まず「竹取物語」のストーリーをささっと紹介しておきます.竹取物語は,
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正式には「竹取の翁の物語」という.
月の都で罪を犯した「かぐや姫」.罰として下界への流刑処分となり,刑に服するため竹の中で嬰児となっていた.

それを見つけた “竹取りのお爺さん”.女の子を「かぐや姫」と名付けてお婆さんと一緒に大切に育てる.

「かぐや姫」は普通の人間よりも早く成長するようで,たった3ヶ月で成人.

都で噂されるほどの美人であるかぐや姫は,連日多くのプレイボーイから求婚される.

彼らを鬱陶しく思ったかぐや姫.結婚条件として無理難題をふっかけ,彼らを次々と不幸と死に追いやる.

ついには時の帝もかぐや姫ゲットに乗り出し天皇パワーで追い詰めるが,「実は私,ヒトじゃないのです」とかぐや姫.“発光体”に姿を変えてみせ,帝の度肝を抜く.

いつの日からか,かぐや姫は涙を流すようになる.四六時中泣き続けるかぐや姫.聞けば服役期間が終了するため,月に帰らなければならないとのこと.

「そうはいくか!」とお爺さん.帝の協力を得ることもでき,弓兵の大量投入により自宅を対空防御要塞とする.

ついに夜空からやってきた飛ぶ車を伴う天人たち.用意した弓兵は精神攻撃と脱力感に苛まれて動けない.やっとの思いで射た矢も天人や飛ぶ車には当たらない.

お爺さんと天人の押し問答.かぐや姫からも諭され,嫌々ながらも見送るお爺さん.せめてもと,かぐや姫は形見として帝とお爺さんに手紙と「不死の薬」を置いていく.
「天の羽衣」を着せられたかぐや姫は,下界での記憶をなくし,「天人」として月に帰る.

嘆き悲しむお爺さん.今更「不死」を望む気持ちになれない.
かぐや姫からの手紙に感動した帝.部下に駿河国にあるという日本一高い山で不死の薬と手紙を燃やすよう命じる.
大勢の兵士を使ったプロジェクトであったため,以来,人はその山を「富士の山」と呼んだ.
今でも富士の山からは煙が立ち昇っている.
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これが竹取物語のあらすじです.

では,エヴァンゲリオンのストーリーと竹取物語の類似性を説明していきます.
かなり直接的に類似性の高い設定として,「かぐや姫=綾波レイ(リリス)」が挙げられます.
ざっと挙げると,

■竹の中から産まれた女の子「かぐや姫」 ≒ 試験管の中で産まれた女の子「綾波レイ」

■普通の人より早く成長するかぐや姫と綾波レイ

■「かぐや姫」に群がる求婚者 ≒ 「リリス(綾波レイ)」に群がる使徒

■普通の人だと思って追い詰めたんだけど「かぐや姫」の正体を知ってビックリの帝 ≒ 「アダム」だと思って追い詰めたのに「リリス」だと知ってビックリの渚カヲル

■「かぐや姫」を溺愛するお爺さん ≒ 「綾波レイ」を溺愛するゲンドウ
※そして両者は,“シンジ”に関わる人物という共通点もある(お爺さん=神事の役人,ゲンドウ=シンジの父親

■「かぐや姫」の「涙」 ≒ 「綾波レイ」の「涙」

■天人から「かぐや姫」を守るための自宅の要塞化 ≒ 使徒から「リリス」を守るための第三新東京市とネルフ本部

■お爺さんを振り切り,天の羽衣をまとって記憶をリセットし,本来の「天人」として月へ帰る「かぐや姫」 ≒ ゲンドウを振り切り,本来の体である「リリス」と融合し,ヒトを黒き月へと還元する「綾波レイ」

それ以外にも以下のようなものが.
■罪を犯したかぐや姫が嬰児になって竹の中に封印 ≒ 第一使途「アダム」を復活させたヒトの罪,そして「アダム」の胎児状への還元とベークライトによる封印

■謎の力により天人や飛ぶ車に矢が当たらない ≒ ATフィールドにより使徒に通常兵器は効かない

■不死の薬 ≒ エヴァによる永遠の命

■手紙と不死の薬を燃やして「富士山」に ≒ エヴァと融合して「人類の生きた証を永遠に残す」

そして2つの物語にとって重要なテーマである
■「月に還る」
「かぐや姫」は天人に導かれて月へ ≒ ヒトは「綾波レイ」に導かれて黒き月へ

以上,そんなところです.

かなり類似性が強いでしょ.

そういうわけで,件の学生が聞いてきた「あのストーリーで伝えたかったことは?」というのも,この2つの作品は似ています.

それは,
「排他と差別を乗り越える」
です(だと私は思っています).

かぐや姫って,当初から自分が天人であることを知っていたようですし,そうしたところからも,ずっと下界の人間を見下し,侮蔑していたんだと思います.群がる求婚者たちへの仕打ちはその現れだと思います.
でも,最後に帝やお爺さんにしたためた手紙では “天人” という自分の立場を嘆いています.
別れ際になって,帝への想いやお爺さんへの感謝の気持ちが強くなっている自分に気がついたのでしょうね.

それでも出自や立場には逆らえず,下界での記憶を消す機能がついた「天の羽衣」を着させられるシーンはあまりにも残酷です.
記憶を無くしたかぐや姫は,何事もなかったかのように「天人」の一人として月へ帰ります.
結構,悲壮感漂う物語なんですよね.

エヴァンゲリオンも同じです.
ヒトと使徒との確執.
自分と他者とを分つATフィールド.
パターン青(Blood type BLUE).
人類補完計画.
などなど,排他と差別,そしてそれを乗り越えるストーリー構成になっています.

結末としては,どちらかって言うと “20世紀版竹取物語” であるエヴァンゲリオンの方が “救い” がある物語なんじゃないかと思います.

この記事を書いていたら,もう一度この2つの物語をしっかり分析してみたくなりました.