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11月, 2017の投稿を表示しています

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井戸端スポーツ会議 part 51「大相撲の暴力事件について」

大相撲で暴力事件が発生. 暴力沙汰を起こした横綱・日馬富士が引退することになりました. ■ 日馬富士が引退会見 (NHK) 大相撲の平幕 貴ノ岩に暴行した責任を取って、29日、引退した横綱 日馬富士の記者会見が、師匠の伊勢ヶ濱親方も同席して午後2時すぎから福岡県太宰府市で始まりました。 (中略) 日馬富士は引退の理由について「親方と話して、横綱としてやってはいけないことを自分がやってしまった」と話しました。そのうえで届け出が29日になったことについて、「場所中だったので、頑張っている力士たちに頑張ってほしいということから本日になりました」と話しました。 本件そのものについて論じることは無いのですけど,関連してお話ししておきたいことはあります. なお,日馬富士の引退については,私は至って「当然だろう」という立場です. 大相撲というスポーツ選手が持っている社会的影響力と,一般常識的な判断からすれば,引退もしくは追放が順当だと思うからです. 今回の事件は,例えば教育界で取り沙汰される事の多い「体罰」との関連が指摘できると思います. これについて私なりの見解を一つ. 本当かどうか定かではありませんが,日馬富士サイドの主張としては,貴ノ岩が無礼な態度・行動をとったから,先輩力士として「鉄拳制裁」をしたということになっています. 私はこの「鉄拳制裁」そのものを悪く言うつもりはありません.そういうものがあっても不思議ではないからです. しかし,「鉄拳制裁」それ自体は違法行為であることは押さえておく必要はある,そう思います. これは体罰にも同じことが言えます. 体罰そのものは違法行為です.それが当事者以外に知れたら,逮捕されたり処罰されるものです. しかし,体罰そのものを否定するつもりはありません. 法律違反だからって,それが全て「悪」だということはないからです. 体罰を使ってでも教育することで,それが巡り巡って日本の社会をより良くすることにつながるという覚悟があるのであれば,それは認められることだと思います. ただし,角界の鉄拳制裁や,教育界の体罰のいずれにも言えることは,当事者間で納得できる行為であれば,それはそれで成り立つのですが,それが外部に知れたらアウトということです. 鉄拳制裁や体

いじめの正体

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待ちに待った和田慎市先生の新著が出ました. これまでにも当ブログで記事にさせていただいている,和田先生の新刊です. 和田先生のホームページはこちら. ■ 先生が元気になる部屋 (和田慎市ホームページ) 和田先生とは,当ブログをご縁に,何度か直接お会いして情報交換をさせてもらっています. 最近は,現役の高校教諭の先生方を交えた会として盛り上がっております. ■ 学校教育対談 ■ 学校教育対談(2回目) ■ 学校教育対談(3回目) ■ 学校教育対談(4回目) ありがたいことに和田先生から本書を献本いただきましたので,早速読んでみました. これまでにお話いただいていた「いじめ問題」がまとめられており,とても有意義な内容です. 帯には「『いじめは絶対になくならない』ここから出発する以外に,いじめ克服の道はない」とありますが,まさにその通り. 教育現場でいじめ問題を取り扱ってこられた和田先生からの,実用的な提言が並んでいます. 特に,第2章は「いじめ問題」を考える上では重要な示唆を得られます. 「いじめに関する7つの誤解」と題されたここでは, 1.いじめは根絶しなければならない 2.児童生徒の自殺は,いじめが原因である可能性が高い 3.いじめは犯罪だから法制強化し,厳正に対処する 4.いじめかどうかは被害者の判断による 5.学校(教師)は,いちはやくいじめに気づくはずである 6.学校は隠蔽体質なので,いじめはすべて保護者・教育委員会に報告する 7.重大ないじめは,積極的に外部機関に解決を依頼するとともに,世間にも広く伝えるべきである といった,よく見聞きするこれら7点が,学校現場の実態から非常に乖離したものであることを説明してくれています. 難しい話ではありません. ようするに,世間一般の皆さんが思うほど, 「いじめ問題は簡単ではない」 「子供の自殺は単純ではない」 ということを丁寧に解説した本です. 学校現場に携わっている方々からすれば,当たり前すぎて「何を今更」と思われることかと思いますが,いやいや,世間一般では本書で取り上げられていることが「当たり前」ではないから問題なのです. だからこそ,本書は学校現場ではない人が「いじめ問題」を考える上で手にしてほしいですね. もしくは,学校教育に携わって

けっこう役に立つ私のブログ記事

お久しぶりです. ここんとこブログ更新が滞っておりました. 卒業論文の指導がかなり忙しくなってしまい,おまけに今年はこの時期になって実験をやろうとする学生もいたりして,かなりてんてこ舞いです. そのくせ,どの学生もとても熱心に取り組むので,こちらとしてもやり甲斐はあったりします. 嬉しんだか辛いんだか. 学部生の卒業研究については,大学院生が指導してくれる研究室もあるかと思います. でも,私のところはそういう大学ではないので,どうしても私がやらざるを得ないんです. 私も大学院生から実験計画とかデータ処理,図表の作成方法などを教わった口なので,教員自身が卒業論文の基本的な部分も教えるのは大変だなぁって感じます. と同時に,もっと大学教育を「卒業論文の研究」に向けて体系立てて組めないものかと考えたり. かと言って,最近は「卒業論文」は邪魔者扱いになっていたりする現実も見えたりします. でも,卒業論文は大事ですよ. ここで学生の学術的思考力は一番伸びますから. 大学で勉強する価値は,卒業論文にあります. ところで,研究や論文作成の基本的な事柄について,いよいよ面と向かって指導している場合ではないと思った時は,「そこんとこは自分でネットで調べて」ってなりますよね. 私としてはあまり推奨しておりませんでしたが,ついに忙しさの度が過ぎたのでネットを使わせることにしたんです. 私の学生としても「ネット情報には気をつける」くらいのリテラシーはあるので「え? それでいいんですか?」って感じで聞き返すんですけど,モノは使いようということを知るのも大事です. そうは言っても,一応は私の指導ですから,私の息のかかったネット情報を使うのが筋ってものです. だから私のブログを紹介しておきました. どうせバレないだろうから. t検定の使い方が分からないという学生がいました. エクセルでたくさんのデータを比較検定したいということなので,面倒なので以下の記事を紹介しておいたんです. ■ t検定:対応のある/なしの違いは何か ■ エクセルExcelでの簡単統計(t検定) なんせ,対応のある/なしについての説明が面倒です.ここを理解するのに苦労する学生は多いんですよ. 統計学の本を読んでくれれば分かる話なのですけど,そういうことをするのは意外

体育学的映画論「メッセージ」

これ,つまるところガンダムですよね. ハリウッド版「ニュータイプ論」. 現在公開中の『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が,昨年に製作したSF映画が 『メッセージ』 (2016年)です. ブレードランナー2049も良かったですが,SF映画としてはこちらの方が遥かに出来が良いと思います. まあ,ブレードランナー2049はファンサービスとして作られたものかもしれませんので,それなりの楽しみ方をするものなのでしょう. 【以下,ネタバレを含みつつ話していきます】 映画を楽しむ上では以下の話を読まない方がいいかと思います. 観てから読むことを推奨します. ネタバレを含む映画のあらすじは,ウィキペディアで読むことができます. ■ メッセージ(映画) (wikipedia) 非常に質の高いSF映画です. 近い将来,「死ぬまでに観ておきたい映画◯選」などと形容されるようになることと思われます. 次元の異なる知的生命体とどのようにコミュニケーションをとればいいのか? というのがこの映画の基本的なストーリーになっています. 突如,世界中の地域に現れたUFOに対し,各国は独自に対応を始めるというもの. 学者たちによるエイリアンとの交流が描かれるのですが,「どうやって交流できることになったのか?」といった細かい経緯はぶった切られていて,「エイリアンとのコミュニケーションをどのようにとるのか?」という点に絞った展開が無駄がなくて良い. 言語学や数学などを駆使した,エイリアンが使う言語を解読してゆく過程が非常に興味深いんです. 「ほうほう,なるほど.へえ〜,そういうふうに解釈するわけねぇ〜」と,引き込まれること間違いありません. めちゃくちゃ難しい話なのに,むちゃくちゃ分かりやすく映画にしてくれています. これは圧巻です. でも,この映画の一番大きなテーマは「もしも “刻” が見えるようになったら」というものです. だから冒頭述べたように,ニュータイプ論なんですよ. 実は,この映画の構成自体が,主人公である言語学者・ルイーズの「認識」そのものを示しているんです. 原作は テッド・チャン著『あなたの人生の物語』 というタイトルなのですが,まさにこの映画は「ルイーズの人生の物語」と言えます. どういう事かというと,

どうして「絶対理解してくれない高等教育論」なのか

前回の記事, ■ 絶対理解してくれない高等教育論 その理由編です. 大学に代表される高等教育に関する,デタラメな政策が止まりません. 現政権はそれを加速させています. 本ブログではずっと以前から繰り返しているように, おそらくはもう大学教育は致命傷を負っているので手遅れです. まだ本格的に表在化していないだけで,そのうち 「どうしてこんな事態になるまで放置したのか?」 などと言い出すに決まっています. でもそれは,決して国民自身の判断を問うようなものではなく,きっと「大学側の情報発信や主体性が弱かった」とか,「文部科学省にヴィジョンが無かった」とか,もしくはその時になってもまだ「時代に取り残された象牙の塔」などと言うに決まっています. 5年前の記事でも取り上げましたが, 大学改革を始めたのが間違い なんです. ■ 反・大学改革論 改革をすれば良くなるという意味不明な信仰が,将来の,少なくとも向こう50年くらいの日本人の知性を破壊してしまいました. 享保の改革とか天保の改革とか,とにかく「改革」と名のつくことは碌な結果にならないというのは学校の授業で教わることですが,この麻薬のような中毒性を喜ぶ人は多いものですね. この破壊は自己回復不可能です. これからまた100年くらいの時間をかけて直さなければなりませんが,まだ絶賛破壊中ですので,そのスタートラインに立つ日はずっと先のようです. 少なくとも,私達の世代が引退するくらいの時には,そのスタートラインに立てるように頑張っていきたいものですね.期待薄ですが. さて,そんな高等教育に関するデタラメっぷりですが,これをまともな方向で是正しようと考えても,絶対理解してくれません. 絶対理解してくれないのには理由があります. 前回の記事でもお話ししたように,例えば「大学無償化」は,現状のまま取り組んだり,現政権が目論む「民間経営的手法」を促進させる政策と抱き合わせることによって,教育現場を壊滅させることができます. これをまともな方向で是正しようとすれば,その一つとして考えられるのは, 「大学無償化」と合わせて「卒業基準の厳格化」をすることで教育現場は救済されます. 大学教育を無償化(現実的には格安化)する代わりに,簡単には卒業できない仕組みへと徐々にシフトさせるも

絶対理解してくれない高等教育論

大学等の高等教育を無償化させたり,学部の切り売りを促したりといったニュースが続いています. ■ 「教育無償化」高等教育に8000億円 2兆円配分の大枠 (毎日新聞2017年11月9日) 政府は教育無償化など2兆円規模の政策パッケージについて、配分の大枠を固めた。大学など高等教育の無償化に約8000億円を配分。幼児教育・保育の無償化では、0~2歳児に100億円程度、3~5歳児は8000億円程度を充てる。高等教育と0~2歳児については、無償化の対象を住民税非課税世帯(年収約250万円未満)に限定する方針。 ■ 私大に「学部の切り売り」認める…大学再編促す (読売新聞2017年11月8日) 18歳人口の減少で経営悪化した大学の「学部の切り売り」を認めることで大学再編を促す。(中略)学部の譲渡が可能になれば、経営が行き詰まった大学が学部の一部を他大学に売却し、当面の運転資金を確保できる。また、経営の効率化を図りたい大学の場合は、不人気学部を切り離し、研究成果が顕著な学部や人気学部を強化できるようになる。 具体的な方策が見えていないのでなんとも評価し難いのですが,どれもこれもデタラメ臭さが漂っています. 以前の記事でも取り上げましたが,私は大学無償化には反対していません. どのような方策になるかにもよりますが,多くの国民が高等教育を受けられる状態にすることは,国家として望ましい在り方だからです. ただ,「学部切り売り」とかいう政策を考えているところからして,おそらく碌な思想・信条に基づいていないことが推測されます. 現政府には注意が必要です. 教育無償化に反対する人のなかには, 「そんなことしたらFラン大学をのさばらせるだけだ」 という人がいます. お気持ちはわかりますが,ご安心ください. そんなことにはなりません. 「高等教育(大学)無償化」については,ある教育政策と抱き合わせることで,現在のFラン大学であっても有名大学と変わらない教育が実現できるのです. 昨今のニュースでも取り上げられているように,現在の日本の大学は,研究レベルや教育水準の低下が著しいんです. 「このままではノーベル賞がとれなくなる」 という懸念もされていて,まあ,ノーベル賞はどうでもいいですけど,まともな学術研究

私の天皇論

今上陛下が生前退位の意向を表明されてからというもの,ネット上でもこの議論をよく目にするようになりました. 平成30年を節目として譲位することが計画されているようです. 元号が変わることが決まっていると,なんだか楽しみですね. 私は生前退位には賛成します. 死ぬか心身がボロボロになってからじゃないと譲位できないというのは惨い話です. 歴史的には天皇の生前退位はいくらでもあったのですから,あとは在位中の天皇の意向に沿っても良いのではないかと思います. 私としては「天皇」のことについて何か論じるほど知識も関心も無いので扱ってこなかったのですが,一臣民として天皇をどのように捉えているかブログしておくことも良いかと思いキーを叩いています. 今回は,生前退位の件で取り沙汰されることの多かった,「万世一系」「男系継承」という点について. まず明らかにしておいた方がいいであろう私の考え方として,日本に天皇をおくことについては諸手を挙げて賛成しています. 今の日本の在り方を象徴する存在として,天皇と皇室は無くてはならないものです. しかし,天皇と皇室を廃止するような動きがあったとしても,これに頑なに反対するつもりはありませんし,何かしらの事件・事故等で皇室の皆さんがいなくなったとしても,日本が混乱して立ち行かなくなるような事態にはならないだろうと楽観してもいます. 右翼系の人のなかには情熱的に皇室を捉えている方々がいます.皇室がなくなったら日本ではなくなる,と考えている人も少なくありません. 別に彼らを批判しようってわけではありません. むしろ,熱心な人達だなぁ,と感心している次第です. 逆に,皇室や天皇制を廃止しようと訴えている人たちを批判するつもりもありません. 彼らは彼らで,天皇に代わる何かを用意して日本国と日本人をやっていけるのでしょう. 別にそれでも構わないと思いますよ. 作家で元東京都知事の極右政治家とされる石原慎太郎は,「皇室は役に立たない」とか「天皇を最後に守るべきものではない」と言っているようですが,これは私も別の意味で賛成します.賛成するというのは,石原氏の考え方にではなく,表現に対してであって,私は真逆の意味で言っています. つまり,皇室は役に立つためにあるので

体育学的映画論「クリーピー 偽りの隣人」

神奈川県座間市で起きていた事件と似ている.ただそれだけの理由で取り上げてみた映画です. 今回の事件のニュースを見て,きっと他のとろこでも「状況がこの映画と似てる」と言わているかと思います. 神奈川県座間市で起きていた事件というのは,こういうやつです. ■ 座間のアパート、計9遺体発見…住人の男を逮捕 (読売新聞2017.10.31) 神奈川県座間市のアパート一室から複数の遺体が見つかった事件で、室内からは計9人の遺体が見つかったことが捜査関係者への取材でわかった。遺体はいずれも切断され、クーラーボックスなどに入っていた。 どうしてこんな事件が出来たのかというと,自殺幇助をほのめかして誘っていたようなんです. ■ 「一緒に死のう、自殺手伝う」書き込みで家誘う (読売新聞2017.11.2) 神奈川県座間市のアパート一室で男女9人の切断遺体が遺棄された事件で、白石隆浩容疑者(27)(死体遺棄容疑で逮捕)は、ツイッターで自殺志願者を探しだしていたことが捜査関係者への取材でわかった。(中略)「一緒に死のう。1人で死ぬのは嫌なので」「自殺を手伝う」などと書き込んで接近し、自宅に誘っていた。遺体で見つかった9人のうち、女性の8人とはツイッターで知り合ったという。 精神的に異常をきたしている人が,精神的に異常な人に吸い寄せられていくのはよくあることです. でも,意味がわからない事件ですよね.私もそうですが,世の大多数の人々には受け入れ難い話です(受け入れるのもおかしいけど). 黒沢清監督「クリーピー 偽りの隣人」 (2016年)は,そんな精神異常者たちが作り出す箱庭を眺めているような気分にさせてくれる映画です. 案の定,こういう映画は世間からのレビュー・評価がとても低い. ■ Yahoo映画「クリーピー 偽りの隣人」 たしかに一般人を喜ばせるためのエンターテイメントの構成にはなっておらず,一応はストーリーができているものの,出来事を映し出すだけになっています.だから,分かりやすい物語だと構えて見てしまうと退屈になってしまうのです. この作品には視聴者に対する大きなフェイクがあります. それは,劇中に登場する人物のほとんどが精神異常者だということです. 精神異常者の設定である香川照之演じる西野とその娘は,紛うこと無