投稿

7月, 2018の投稿を表示しています

注目の投稿

井戸端スポーツ会議 part 55「学徒動員」

スポーツの記事なのに「学徒動員」とはどういうことか? 2020年オリンピック東京大会のことなんです. 先日,学生の頃から仲が良かったとは言え,中年にもなった我々大学教員が,故あって合宿所で一泊することになり. そこで研究とか教育の話をお酒を交えて(面白おかしく)議論する機会がありました. その話題の中に「オリンピック東京大会における,学生ボランティアをどうするか」というのがあったんです. ぶっちゃけ,結構困っています. 以前から「学生ボランティアを出せ」とか「海外チームの合宿地・練習地を用意しろ」といった類の要望はあったんですけど,このたび文部科学省・スポーツ庁より大学に以下のような要求が入りました. ■ 東京五輪・パラ「授業避けて」国通知、ボランティア促す (毎日新聞 2018.7.27) スポーツ庁と文部科学省は26日、2020年東京五輪・パラリンピックの期間中にボランティアに参加しやすいように全国の大学と高等専門学校に授業や試験期間を繰り上げるなど柔軟な対応を求める通知を出した。 多くの大学は7~8月が試験期間となる。通知では学生がボランティアをすることへの意義を説き、大会期間中は授業や試験を避けることを促した。授業開始時期の繰り上げや祝日の授業実施は学則などに基づき、学校の判断で特例措置を講じることができる。 当初の想定以上に学生ボランティアが集まっていないから,とのことです. 当たり前です. 文部科学省はこれまでに「大学は授業をシラバス通りしっかりやれ」「学生は授業に出席することが義務」「大学は学生が授業に出席しているかどうか管理しろ」といった圧力をかけてきました. 大学の授業なんてのは数回休むのは当たり前だと思っている30代以上の人たちには想像できないでしょうが,今の大学でその感覚は通用しません. 結果,現在の大学生は授業にちゃんと出席するようになり,授業に出席することが目的となっています. その帰結として,大学も学生も,「授業出席」に支障をきたすようなシステムや行為を極力排除するようにりました.「部活の試合があるので休みます」とか「ゼミの活動で休みます」なんて理由は,授業を欠席できる理由になりません.これはボランティア活動も同じ.普通に「欠席」です. 一応,各大学独自の規定によって授業担当教員宛

やっぱり多くの国民に等しく大学教育が受けられる機会を与えることは重要だと思う

前回の記事では,昨今話題の女子大とトランスジェンダーの問題を取り上げましたが,もう一つ最近の話題である「大学教育無償化」について,それを推進する方向での意見を提示しておきます. このブログでは,7年くらい前から「大学教育はチャラいことせずに硬派にいこう」と主張する一方で,「難関大学,高偏差値大学以外は役に立たないから潰せ」というのも間違いだと繰り返してきました. で,そのこころは「大学教育をあまねく国民に享受させよう」というものです. 「無謀だ」 「そんな予算がどこにある」 「低偏差値の子供を大学に行かせてもお金の無駄」 といったご意見もあるかと思いますが,これは次代を担う子供をどのように育てるのか? という日本人としての心意気の問題だと考えられます. 私としては,現状,国防費や福祉予算は据え置いても教育にかけた方が,皆さんが気にする「コスパ」は良いと思っています. 何年か前に,ある学会で研究のポスター発表をした際に,その場で安藤寿康先生という方とディスカッションする機会がありました. 我々の研究に興味を持ってもらえたようで,いろいろ興味深い質問をいただきました. 私はその時は安藤先生のことを,質問をしてきた研究者の一人として捉えていたのですけど,あとでこの学会に講演者として招かれた先生であることを知りまして. その講演内容が非常に面白かったことと,私が常々考えていた体育・スポーツ論や教育論とも親和するものだったので,その後,著書も読ませていただきました. 例えば以下のようなものです.   一言で言えば, 「人間のパフォーマンスは,育った環境条件が同じであれば『遺伝』の影響が大きい」 というもの. さらに言えば, 「教え上手な教師に習おうと,教え下手な教師に習おうと,その子供にとっての中長期的な教育効果に差は無くなる」 ということも,様々な研究データを根拠として主張されています. これについては,御本人も講演や著書でも「安易に受け取られて誤解されることが多い」と困っているようですが,決して「遺伝で全てが決まる」わけでもないし,「教育を受ける意味がない」というわけでもないことが重要です. つまり,教育においては「学校で教師から指導を受ける」という環境条件が同じであれば,あとはそこで子供がどのように育つのかは遺

続・女子大に「体は男性、心は女性」の学生を受け入れられるか?

最近,こんなニュースが大学界を騒がせています. ■ 「心は女性」の男性受け入れへ…お茶の水女子大 (読売新聞 2018.7.3) ■ 心と体の性不一致学生入学検討へ (NHK 2018.7.3) いきなり出てきたものではなく,この話題はかなり以前から取り沙汰されていました. 私も1年くらい前に記事にしたことがありますし,仲間内でも「もしトランスジェンダーの学生が希望してきた,どうするんだろうね」などと話していたものです. ■ 女子大に「体は男性、心は女性」の学生を受け入れられるか? 今回の記事は,その続きとします. なお,この話題は日本に限ったものではありません. ■ 【スミス大学】アメリカの名門女子大、トランスジェンダーの入学が可能に (ハフポスト 2015.5.4) アメリカ・マサチューセッツ州にある名門女子大「スミス大学」が5月2日、トランスジェンダーの学生の入学を2015年秋入学から許可すると発表した。男性に生まれたが、女性としてのアイデンティティを持つ学生は入学の対象となる。一方で、女性に生まれた後に男性のアイデンティティを持つ学生の入学は許可されない。 過去記事でも書いているように, 私は「どっちでもいい」と思っていますし,結局のところ「大学次第」だと考えています. 大学の教育方針に沿うのであれば,生物学的性差も社会学的性差も「こうでなければならない」という判断基準はないと思いますよ. 「この際,女子大の存在意義を見直したほうがいいのでは?」などと言い出す人もいますが,事はそんなに大げさにする必要はありません. 女子学生だけの環境で学びたいという要望が存在しており,女子だけで学ばせたほうが学習が円滑に進むという教育者たちの経験則と現実がある のですから,この上なにを論じる必要がありましょうか. 同じことが「男子校」にも言えるわけですから. もし「女子大」とか「女子校」の存在意義を論じるとすれば,少なくとも日本の女子大学が誕生した理由である「女性の高等教育機会の提供」は既に達成されているものと考えていいでしょう. かつて,日本の高等教育(大学)には女子は遠ざけられていましたので,それを補うものとして女子大学が設置された経緯がありました. しかし,その差は非常に小さくなってきており,2017年の内閣府調査によれば,大

田舎暮らしへの失望に失望

昨日,こんなニュースを見ました. 昨日に限らず,この手のニュースはしょっちゅう目にします. 田舎育ちの都会生活中の私ですから,この手のニュースには感慨深いのでコメントしておこうと思いました. 以下,お暇だったら読んでください. ■ 恐怖の実話!悪夢と化した「夢の田舎暮らし」 (Yahoo!ニュース 2018.7.7) 子どもが産まれたら、人も土地も開放的なところで育てたい──。 東京生まれの東京育ちだった石沢友美さん(仮名)は、子どもを身籠もったと同時に、東京・吉祥寺から山梨県峡北地域のある集落に移住を決めた。3年前、32歳のことだった。 (中略) だが住み始めてほどなく、最初の“事件”に直面する。ゴミが出せないのだ。 移住に当たっては役所の窓口にも何度か足を運び、生活の仕方などをいろいろと聞いたつもりだった。だが、ゴミが出せない、というのはまさかの展開だった。 「高さは人の背丈ほどもあって、幅はそれこそプレハブ小屋並みの長さの立派なゴミ集積所があるのは知っていたんです。市の有料のゴミ袋を買ってそこに出せばいいものと、頭から考えてしまっていて……」 移住して間もなく、ゴミ出しに出向いたとき、目の合った人から「あんた、名前は?」と訊かれ、丁重にあいさつを返した。 するとほどなく、自宅に地元集落の役員だという初老の男性が現れたのだ。 「あれ(ゴミ集積所)は組(集落)のもんだから、組に入っておらんもんはあそこには出せん」 友美さんはこう応じた。 「では、ちゃんと会費をお支払いして組に参加させていただけませんか」 だが、組長(町内会長)と相談してきたという男性が再び自宅を訪れ、こう告げた。 「悪いけんど、組長がうちの組にはよそから来たもんは入れんっちゅうとるから」 「じゃあ、ゴミを出せないの?  そんなバカなことって……」 バカはお前だ.と言いたい. 都会だって,ゴミ集積所は指定の場所にしか出せないでしょう? お金を払ったからって,誰でも捨てられるゴミ捨場なんて怪しい要求が成り立つわけがない.都市部でもゴミの集積・処分問題は深刻な課題だというのに. それと一緒だということが分からないのですね. (こういう「社会的課題」に対する無頓着が「都会VS田舎」問題の本質にあるのですが,それは後述します) 生粋の

大学が置かれた現状を再確認

イメージ
大学教育に関するニュースがたくさん出てきた今日このごろ. 実は切実な問題である・・, ■ 「心は女性」の男性受け入れへ…お茶の水女子大 (読売新聞 2018.7.3) の話でもしてみようかと,女子大での仕事経験のある私は考えていたのですけど,もうちょっと「世間の賑わし度」の高い方から取り上げます. 昨日からのニュースで出てきたコレ↓ ■ 東京医大理事長が便宜依頼、学長と息子合格指示 (読売新聞 2018.7.5) 文部科学省の私立大学支援事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で逮捕された同省前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(58)(4日付で大臣官房付に異動)に対し、東京医科大学(東京)の理事長が支援対象の選定で同大に便宜を図ってもらえるよう依頼していたことが関係者の話でわかった。その見返りとして、理事長と同大の学長は、佐野容疑者の息子を同大に合格させるよう学内に指示していた。 各業界には,これといった証拠がないことや,それを公に晒すと自分の身も危ないから口にされていないだけで,よくある悪巧みというものが存在します. 今回の話もそれです. 当然ながら,そんな話題ですからその他の大学さんたちは以下のような反応になる↓ ■ 他大学「ありえない」選定の名誉欲しさに焦り? (読売新聞 2018.7.5) 私立大学の支援事業を巡る受託収賄事件で、問題となった事業の対象に選ばれた他の大学からは「あり得ない事件だ」と驚きの声が上がった。東京医科大は2016年度に落選しており、翌17年に選定された際には大学のホームページでPRしていた。専門家は「『選ばれた大学』という名誉欲しさに、焦りがあったのでは」と指摘している。 絵に描いたようなカマトトですね. 何度も例に出している,「高校野球の特待生は違反です,に対する反応」と同じ類のもの. ■ 井戸端スポーツ会議 part 47「森友・加計学園問題と野球特待生」 プロ入り前の選手に対する,スカウトからの「食事代(という名の賄賂)」なんかもその一種です. あのさぁ,それが横行していることなんて,最初から知ってたでしょ? ってことなんですよ. 実際,このニュースが出てきた時,私はこんな大騒ぎになるとは思いませんでした. やっぱり,その時々の世間の関心や嗜好が大きく影響

桂歌丸さん逝く

サッカー日本代表が,ベルギー代表に惜敗したことで持ちきりです. 今日も学生や教員の話題はその話題一色でした. 私としては,「案の定」な展開と結果だったこともあり,そんなに興味はありません. とは言え,ベルギーを焦らせて本気出させたところは評価できます. 言い換えれば,それだけの実力差があったということですけど. 多分,良い意味でも悪い意味でも,これからサッカー日本代表は受難の時代がくると思います.例の「負けてるのにパス回し」の事件も含めて. どういう事かというと,サッカー日本代表に対する評価がそれなりに高まったことから,マークされる存在にはなったこと. これにより,これまでと違って勝ちにくくなるだろうし,特にワールドカップ予選リーグで勝ち上がることは難しくなるでしょう. ちょうど,現在のイランとか韓国の立場みたいなものですね. 安定して勝てるようになるには,今後,もう一つブレイクスルーが必要になるかと思います. いえ,そんなことより重大ニュースは桂歌丸さんが逝去されたことです. 昨日は私にとって休日でもあったので,朝からずっとHuluやニコ動で「笑点・大喜利」を見ていたんです. 「いやー,やっぱり歌丸さんは別格だなぁ・・」って見ていたところだったし,円楽(楽太郎)さんとの「やるかジジイ!」と「歌丸死亡ネタ」に安定感を感じていたところに飛び込んできたニュース. あぁ,この日が来ちゃったかぁ・・,と. 私にとっては格別の思い入れがある方だったので,かなりショックです. よく,歌丸さん司会時代を懐かしむ声がありますが,私は5代目円楽師匠が司会で,歌丸さんが回答者だった時代が笑点・黄金期だったと思っています. 木久蔵さんと楽太郎さんの間に入って,歌丸さんが両者に絶妙なツッコミと返しで,しかもわざとらしくなくコントロールする姿は,まさに神業でした.私も子供ながらに「この人はヤバい」と尊敬の念を抱いたものです. まさに「歌丸半端ないって」 それより何より,歌丸さんの良さを引き出していたのが円楽さんの司会です. youtubeとかニコ動に過去の大喜利がありますので,ぜひ見てみてください.すごいですから. 今の大喜利がどうのこうのというわけじゃないんです.今も面白いことは認めます.十分に楽しませてもらっているから. ただ,歌丸さん