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『21 Lessons』を読む|これからの人類の教育について

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『21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考』を読んだので,その感想を述べます 『サピエンス全史』 や 『ホモ・デウス』 の著作で有名な,ユヴァル・ノア・ハラリ氏が最近上梓した 『21 Lessons(トゥエンティワン・レッスンズ)21世紀の人類のための21の思考』. 出版されたのは先週くらい. 出来たてホヤホヤの本です. 読了したので,この本で語られていること,考えさせられたことを皆様にもお裾分けしたいと思います. 興味が湧いた人は,実際に手にとって読んでみてください. 今回は,その中でも我々教育関係に携わる者として「教育」の部分に焦点を当ててみます. 本書の中では,第5章にあたるところです. まず,この本の性格ですが,ハラリ氏がこれまでに出してきたものから位置づけると,『サピエンス全史』が人類の過去,『ホモ・デウス』が未来に焦点を当てたものであるのに対し,今回は「現在(近い将来)」についてです. これはハラリ氏自身が本書内でそのように述べていますし,実際にそのようになっています. 「現在(近い将来)」 とはどの範囲のことかと言えば, 今から先,10年〜20年程度のこと が語られています. もちろん,ハラリ氏も本書内で言うように, 「将来のことを完全に予測・予言することはできない」 わけなので,ここで氏が語っているのは,『サピエンス全史』によって考察された人類のこれまでの歩みと,『ホモ・デウス』で予見した,人類が求めるであろう遠い将来の姿から, 「現在の人類の振る舞いから察するに,おそらくこんな状態になっていくであろう」 ということを分析しているのです. 例えば,「雇用」や「政治」について言えば,この先,人工知能技術や検索アルゴリズムなどが高度に発展してくると,そうしたテクノロジーの方が,人間の理性的判断や直感といったものよりも「有益」で「正確」になってしまうことが考えられます. 現在においても,多くの人々は「グーグル検索」にひっかかるものを「正しいもの」「この世に存在するもの」として認識するようになっていますし,Amazonのオススメ商品やフェイスブックのコミュニティ検索についても,以前よりも精度の高い結果が示されるようになっています. こうしたテクノロジーがさらに発達し,いろいろな職業

分水嶺となるか? 香港民主派の躍進についての一考察

これからの中国は,いわゆる「中国」ではなくなるかもしれない 今年(2919年)を代表するであろう国際ニュースの一つ,香港の民主派による政治運動. 逃亡犯条例改正問題に端を発する香港の反政府デモは,中国・香港区議選は「民主派」の勢力が勝利するという結果を招きました. ■ 香港区議選 民主派が8割超え圧勝 香港メディア (NHKニュース 2019.11.25) 香港で、24日投票が行われた区議会議員選挙について、香港メディアは、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の80%を超す380議席以上に達し、圧勝したと伝えました。親中派は惨敗し、一連の抗議活動で市民の要求を拒み続けてきた香港政府に対する不信感が明確に示された形です。 これについて,中国共産党がどのように動くか分析するコメントやニュースが飛び交っています. 曰く, 「香港に対する中国政府の圧力が高まるに違いない」 「選挙結果をくつがえす政策を強行するのではないか」 「民主派の議員や活動家が大量粛清されるのではないか」 といったものです. 私としては,今後の中国政府がどのように動くか,かなり注目しています. とは言え,私にとって中国というのは他人の国. 「対岸の火事」として眺めている部分が大きいことは否定しません. ただ,対岸の火事だとしても, これが今後の日本や東アジアにおける重要な分水嶺となる事件である と認識しています. 実際のところ,「対岸の火事」だと思って眺めている人は多いのではないでしょうか? そして,この事件のことを, 「民主化を叫ぶ勢力 v.s. それを阻む中国共産党」 という図式で捉え, 「あの中国で民主化を叫ぶ勇気ある運動が発生しているけど,どうせ鎮圧されるであろう悲しき出来事の一つ」 という見方をしている人は少なくないでしょう. ですが今回の事件. 見方を少し変えると,「中国」がアジアの覇権を握るか否かの重大な歴史的転換点になるかもしれないのです. それこそ,20年後,30年後の世界史の教科書に載るかもしれない. 教科書の記述としては,例えばこういうこと. 「2019年に発生した香港民主派勢力による「高度な自治」の要求は,それを中国政府が認めることによって沈静化した.これを皮切りに,中国は共産主義体制をとりつつ,アジ

学習性無力感と北朝鮮の核ミサイル

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もし北朝鮮がブチ切れたら消える日本の地域はここです 最近は北朝鮮が日本周辺にミサイルを撃ってきても,さほどニュースにはならなくなりました. 直近のところですと,10月31日に弾道ミサイルを撃ってきましたが,特段騒ぎ立てるほどのものではなくなりました. ■ 北朝鮮から弾道ミサイル発射か 排他的経済水域外に落下か (NHKニュース 2019年10月31日) 2017年頃には,大学にも「学生に向けて,ミサイルが着弾した際の対処方法を周知徹底してください」といった趣旨の通達が来ていたくらいです. 以下のような資料が出回っていたのを覚えている人も多いでしょう. 当時の大学における弾道ミサイル対策の記事はこちらです. ■ 大学と弾道ミサイル ですが,もともと日本では「弾道ミサイル対策」なんかできません. ミサイル攻撃を受けたらどうにもできないのです. 何もできないのに政府は無意味な啓蒙活動を展開していたわけで,当時の私も,この「北朝鮮弾道ミサイル問題」については極めて冷めた見方をしていました. ■ ミサイルを連射している件 その後, 「どうせ日本に弾道ミサイルは飛んでこない.飛んできたとしても,どうにもならない」 ということが一般にも周知され,日本社会は学習性無力感を得るに至りました. その一方で,北朝鮮の核ミサイル対策を叫ぶ声があることも事実です. 先般,建設予定地の選定に問題があったとされる陸上型イージス・システムである,「イージス・アショア」もその一つです. ■ イージス・アショア配備 “秋田市が最適”その根拠が… (NHKニュース 2019.6.6) 実際のところ,「イージス・アショア」は無用の長物です.「長物」ですら無い. 核ミサイル対策を重要視したがる人に多いのが, 「無いよりあった方がマシ」 「段階的に配備することが大事」 というのがありますけど,こういう人たちって実際に起こり得る「核ミサイル攻撃」を甘く見過ぎているんじゃないかと思うんですね. 核ミサイル攻撃は絶対に防げない|だから外交上極めて有効な戦略になる 誤解してほしくないのは,「ミサイル防衛(MD)」の研究開発が無駄だと言っているわけじゃないんです. むしろ私は,国のプロジェクトとしてドンドンお金をかけ

「桜を見る会」で問題になっている話は直ぐに鎮静化できる

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一般社会ではよくあること|対策と処理も簡単(のはず) 毎年ずっとやっていて,来年も予定されていた「桜を見る会」. この予算の怪しさがツッコミを受けて大騒ぎになっています. ■ 「桜を見る会」めぐり安倍首相を刑事告発へ (日テレNEWS24 2019.11.18) まとめると,以下のようになります. 一人5000円で参加できるとしているが,高級ホテルを使った飲食がこの金額で足りるわけがなく,その不足分を安倍晋三の事務所や後援会が出しているのではないか? もしそうなら,公職選挙法違反「饗応の禁止」に該当するので逮捕される事案のはず. ということです. まあ,限りなく黒に近い「白」の話ですね. こういう話は大学の運営においてもよくあることで,領収書を都合よく帳尻を合わせすれば済むものです. ましてや,まだ開催されていない予定のものですから,いかようにも偽装・誤魔化しは可能なはず. ところが,いつまで経っても事態は鎮静化せず. ついには来年の「桜を見る会」を中止するという,意味不明な展開になります. さらには,総理自ら記者の前で釈明をするまでに至りました. ■【報ステ】『桜を見る会』疑惑 総理が異例の釈明(19/11/15)(ANNニュースCH YouTube) 言っちゃなんですが,安倍晋三という政治家はウヨク系を操って支持率を獲得するのが得意である一方で,こうした裏工作を隠蔽することが不得手のようです. もしくは,あまりに裏工作すべき事が多過ぎて,サポートスタッフの手が追いつかないのかもしれません. 森友加計学園問題にしてもそうで,もっとスマートに隠蔽できたであろうことを,凡ミスの連発で尻尾を隠せず進めていました. あの杜撰な隠蔽活動には,マジで笑ってしまいました. ■ モリカケ問題とか日報問題を,大学教育で例えてみる ■ 「悪魔の証明」を振りかざす奴 今回の件であれば,会場となっているホテルニューオータニに, 「伝統ある名誉なイベントですので,ギリギリの値段でご提供させていただきました」 というコメント付きで費用・予算見積もりや領収書を出させれば済むことです. その裏でホテルニューオータニには, 「今回のことを円滑に処理できれば,また末永く

ターミネーター:ニュー・フェイトが期待はずれだった人は,これを読めば面白く見れるはず

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この記事を読めば,ネタバレ最少でターミネーターを見る準備ができるはず(ネタバレ無しとは言っていない) 『ターミネーター:ニュー・フェイト』は,サラ・コナー役にリンダ・ハミルトンを抜擢し,映画史に残る伝説的な作品『ターミネーター2』の正統続編として注目されていました. 日本公開されて一週間. その一般レビューを「映画.com」や「Yahoo!映画」などで読んでみると,概ね好意的な評価を得ているものの,批判的なレビューも散見されます. その理由として多く見られるのは, 「ターミネーターらしさが無い」 「設定に納得がいかない」 というぼんやりとしたものです. では,「ターミネーターらしさ」や,この映画の魅力となる「設定」とは何なのか? 実は,それらは本作でもしっかりおさえられていたのですが,いかんせん,コアなターミネーター・ファン以外の人にも楽しんでもらうために,甘めの味付けが過ぎてしまった感があります. 結果,中途半端なSF設定と,複雑なテーマ性とが干渉してしまい,ちょっと頭が追いつかない映画ファンに混乱を招いているようです. その典型的なものが,本日付の「Yahoo!映画」のレビューに上がっていましたので,ここに引用しておきます. ちょっと長い引用になりますが,本作の混乱を示す典型的なものだと思いますのでお読みください. そして素晴らしいアクションなどなどあり、サラ・コナーなども現れて話は進むのですが、ここで衝撃的なセリフがあるのです。グレースによると「スカイネットなんて聞いたことない。ジョン・コナーなんて知らない。」との事です…。ええっ!?ではやはり未来は変わっているって事なの?(@_@) 自分なりに解釈すると、つまりスカイネットによる審判の日は回避されたが、結局、人類は独自に高度な軍事用AI「リージョン」を完成させ、そのリージョンの暴走によってまた人類は危機を迎えているというのが、今作での基本的な流れだと思います。つまりは、スカイネットとは別なAIによる人類抹殺計画を阻止するために、ターミネーター1と同様なストーリーが展開されるのです。 しかし、そうだとするとここで大きな疑問が生まれます…。それは、ではどうして冒頭でジョン・コナーは死ぬ必要があるの?ジョン・コナーはもう解放軍のリーダーじゃない

大学入学共通テストは,計画当初の2014年からデタラメだった

「大学入学共通テスト見切り発車問題」有識だった有識者もいたらしい 大学入試改革(新しいセンター試験である)として位置づけられる,「大学入学共通テスト」がボロカスに言われている問題について,以下のようなニュースが入ってきました. ■ 英語民間試験、9月に有識者ら「見切り発車」懸念…文科省押し切る (読売新聞 2019.11.14) 2020年度からの大学入学共通テストで導入予定だった英語民間試験について、文部科学省の有識者会議で今年9月、委員から「見切り発車でいいのか」などと導入に懸念を示す意見が相次いでいたことがわかった。文科省では今後、ほかの有識者会議についても議事録を公開し、民間試験の課題を直前まで解決できなかった経緯などを検証する方針だ。 とは言え「今年9月」の話だそうで. そりゃちょっと遅過ぎやしないかとは思いますが,それでも「共通テスト」の杜撰な計画を指摘する有識者がいたことは事実のようです. 私としても,共通テストのデタラメな進行っぷりを論じようと,以前から文部科学省のホームページで会議の議事録を探していたんです. でも,やっぱり肝心な部分は非公開だったようで,今回ようやく「公開」することになったとのこと. どうりで見つからないわけです. もっと言えば,計画段階での議事録が欲しいくらい. 一体誰がこんなブッ飛んだテストを考えたのか? 一体どんな経緯で進行してきたのか? 以前の記事でも指摘したように,大学業界ではずっと以前から, 「英検とかTOEICの成績で点数をつけるらしい」 「記述式テストをやるらしい」 といった噂に対し, 「いや無理でしょ,バカじゃねーの」 と言っていました. それに,知り合いの先生たちとも,この「センター試験が新しく改革される」ということについては, 「どうせ文科省における,教育業界の利権と天下りの事案でしょ?」 ということで冷めた見方をしていたところです. 今年の8月に書いた, ■ 大学改革の宿悪|大学入試改革となって溢れ出しました でも指摘したように,この話の発端は,2014年からです. そもそも,このブログでは幾度となく述べているように,教育業界に自民党が関わると碌なことがありません. さらに,今回はベネッセが中心になりました. ベネッ

「こんなホームページの大学は危ない」の答え合わせ

2012年に書いた記事なので,もう7年前になります. ■ こんなホームページの大学は危ない 当時「危ない大学」と噂されていた(その後,実際に潰れた)大学のホームページに見られる共通項を,面白おかしく論じたものです. あれから7年. 現在の「危ない大学」たちのホームページを見てみると,ここで紹介されていたものを隠すようになっていることに気がつきます. そう・・・. 危ない大学にお勤めの皆様は,あの記事で論じたことをやっても逆効果であることを自覚されたようです. 自慢になってしまうかもしれませんが,こうした近年の大学ホームページの変化に,私の記事が貢献しているのかもしれません. なぜかって? 実はあの記事,当時はバズって何万PVもされていた記事なんです. 掲示板サイトでも取り上げられていて, 「自分とこの大学のホームページが,これに当てはまっているか確認しろ」 といった調子で拡散されていました. その後も閲覧数は伸ばしているので,結構な数の大学教員や職員に見てもらえたはずです. 民間企業・広告業界と同じ発想で,安直に「学生募集」と「大学の魅力」を訴えるホームページを作ってみたものの,それでは肝心要の, 「大学としての格調と権威」 を捨て去ることになり,むしろ学生募集や魅力アップにつながらないことを訴えました. 我ながら良い仕事をしたと思います. 当時,入試倍率の低下や定員割れという事態にバビった大学経営者が,付け焼き刃で作ったホームページの特徴が以下のようなものでした. 例の記事から以下に引用します. ◆構成 (1) やたら派手 (2) 非常に見やすい (3) 入試情報がたくさんある (4) 教員紹介がない(非常に簡略) ◆使用写真 (1) 写真が多い (2) 学生がジャンプしている写真がある (3) 学生の顔をアップで写した写真がある (4) 写真がやたらと(フラッシュなどで)動く ◆アピールポイント (1) 夢を叶える (2) 面倒見の良さ (3) 社会で役立つ知識 (4) 大学へのアクセス (5) オープンキャンパス情報満載 (6) 学内イベント(公開講座や発表会)の「事後報告」が多い (7) ローカルな行事開催や受賞について取り上げている (8) 

それなりの出来だった『ターミネーター:ニュー・フェイト』

体育学的映画論『ターミネーター:ニュー・フェイト』 本日公開の映画, ティム・ミラー監督 『ターミネーター:ニュー・フェイト』 を見てきました. ■ ターミネーター:ニュー・フェイト (公式サイト) ターミネーター役であるアーノルド・シュワルツェネッガーはもちろんのこと,主人公の一人としてサラ・コナー役にリンダ・ハミルトンが抜擢されたことが話題となっています. 私個人的な感想としては,劇場で見るだけの価値はありました. つまり,1800円を払って大画面&高音響環境で楽しめる映画です. 「ターミネーター2からの正統な続編」 と銘打って製作されたようですが,あまりそういうことを意識しなくてもいいかと思います. ただ,これまでの過去3作品である,『ターミネーター3』『ターミネーター4』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』は無かったことになっている世界です. これら3作品のことは忘れて見る必要があります. 日本公開は本日11月8日からですが,アメリカでは11月1日から公開されています. そのアメリカでの現時点での興行収入について,以下のような映画ニュースも出ているようです. ■ 『ターミネーター』新作、首位デビューも苦戦 (シネマトゥディ2019.11.5) 首位は死守したものの、不振に終わったシリーズ5作目『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のオープニング興収(2,701万8,486ドル・約30億円)とほとんど変わらない興収しか上げられず、苦戦している。 Varietyによると製作費は1億8,500万ドル(約204億円)であり、ここから驚異的な巻き返しを見せない限り1億ドル(約110億円)の損失になりそうだという。 私がさっき見てきた映画館も,お客さんはほとんど入っていませんでした. 上記のニュースが影響しているのかもしれませんね. どうして興行収入が振るわないのか? その理由は後ほど分析してみますが,現時点でのウィキペディア情報によると,アメリカの映画評論家たちからの評価は悪くないようです. 本作は批評家から好意的に評価されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには268件レビューがあり、批評家支持率は71%、平均点は10点満点で6.2点となっている。( ターミネーター:ニュー・フェ

沖縄はなぜイジメられるのか

ようするに,「ひがみ」から惹起された「マウンティング」 今回は,このブログで何度も取り上げている「沖縄問題」について,あまり公言されないことを指摘してみます. 沖縄は,なにかとトピックがあるたびに論争になります. 先日も「首里城火災事件」がありましたが,そこでも原因や事情が不明確な現在までにも,苛烈な「沖縄的な問題」にスポットが当たっている状況です. なかでも目立つのは,ウヨク系の人たちからの執拗なマウンティング. 「米軍基地がなければ経済的に自立できない」 「南国気質が色濃くて,無能な人間が多く,日本の足を引っぱっている」 「米軍基地問題を盾にした補助金をあてにしていて,タカリ根性がある」 「自由奔放な性格な人が多く,教育レベルも民度も低い」 よく見聞きするものとしては,上記のようなものでしょうか. たしかに沖縄は,日本のなかでも特殊な背景をもった地域と言えます. しかし,こうした「特殊」な存在,つまり「マイノリティ」は,人間社会においてイジメの対象となりやすいのです. これは,「北海道」にも同じことが言えるかもしれません. 沖縄がイジメを受けるのは,冷静に事情を分析すれば「そりゃ仕方ないね」と言われるものなのに,早漏思考であるウヨクが,我慢できずにヒステリーを起こしてしまうことに由来します. その最たる例が, 「米軍基地がなければ経済的自立しない」 とか, 「沖縄は不必要に莫大な補助金を受け取っている」 といったトンデモ理論です. これについては,先般の記事でもそのデタラメぶりを解説しました. ■ 沖縄基地問題|もうそろそろ補助金漬けで優遇されているわけではないことを知るべき ■ 沖縄基地問題に関する正しい「補助金批判」をしよう 政府がアホなのはこの際脇に置いておきましょう. しかし,なぜに沖縄は本土の,特にウヨク系から叩かれなければいけないのか? ノンポリの人であれば,こうした事情を疑問に思う人は多いでしょう. 沖縄という存在は,ウヨクにとって遠ざけておきたい腫れ物 バッサリと結論から言いますね. 沖縄とは,「国家主義」にシンパシーのあるウヨクが大事にしている, 「国民や民族としての連帯」 について,ウヨク自身が過去に裏切ってきた地域なのです. もっと

東京オリンピック・札幌マラソンについて

東京大会・札幌会場 最近,現在話題の土地に出張することが多い今日このごろ. 先日の記事では沖縄・首里城のことを取り上げましたが,実は10月に沖縄出張してきたところでした. だから首里城炎上は結構な勢いで驚きました. そして先日は,東京オリンピックにおけるマラソン会場に指名されている北海道・札幌に出張してきました. 北海道のスポーツ関係者から,いろいろと事情を伺ってきたので,今回はその中から出せる範囲の表現で記事にしてみます. マラソンが北海道の札幌に変更された件ですが,てっきり私はすぐに鎮静化するものと思っていたんです. だって,8月のマラソンを東京都心でやるなんて意味不明な暴挙ですし,涼しい場所に移動できるものなら移動した方がいいだろうと. むしろ,IOCは可能な限り 「開催都市で競技をする」 ということにこだわる傾向があるはずですから,日本の北国でやることはできないと思っていました. 朝5時にスタートする,いや3時にスタートする. ボランティアは前日入りからの,徹夜仕事になる. そんな感じで,「平和の祭典」とは名ばかりの戦時サバイバルな様相を呈していましたので,北海道開催への変更は「ま,そりゃそうだよね」という感じで落ち着くもんだと. ところが,連日のニュースを眺めてみても,JOC,IOC,陸連,東京都,北海道・札幌市といった面々による責任や罪のなすりつけ合いが凄いですね. そこに外野のヤジが飛び回って,火に油を注いでいます. 札幌開催ってどうよ? いやもう,どうでもいいよこんなニュース. もともと私が「オリンピック」に興味がないからかもしれませんが,安全で能率的に,快適な大会運営ができればそれでOKじゃないんですか? IOCが独断で決めたとか,決定までのプロセスが強引だったとか,東京の小池知事に事前相談がなかったといったものは「マラソン開催」とは関係ない話. 少しでも快適な場所で競技開催できるのであれば,それはそれで進めれば良いことです. 「日本の選手は,東京開催時と同じコースでリハーサルできていたのに」 というMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の話題も出てきますが,そんなの日本代表だけの都合であり,他国の選手にとっては関係ありません. ホスト都市である東

大学入学共通テストが混乱しているのは,ちゃんと大学教員から意見を聞いてないからだ

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大学不要時代の断末魔 大学入試改革のニュースが賑わうここ最近. 数年前から注目されていた 「大学入学共通テスト」 のトラブル・問題がここに来て噴出しています. 新しく改革される大学入学共通テスト(以降,新テスト)の実施は,2020年度(2021年1月予定)からです. あれよあれよという間に,もう1年になってしまいました. ここ最近のニュースでは,荻生田文部科学大臣の 「身の丈発言」 に湧いているところです. ■ 大学入学共通テスト 英語試験延期 身の丈発言、火消し優先 官邸、文科省押し切る (毎日新聞 2019.11.2) 経産大臣,法務大臣と立て続けに辞任していましたので,てっきり文科大臣も辞めているのかと勘違いしそうなほど. 「身の丈発言」で槍玉に上がったのは,「英語」のテストでしたが,そもそも,今回の大学入試改革は, その改革思想全てが問題だった のです. 要するに,「大学入試」を利用してビジネス・利権作りしたい人たちの思惑が渦巻く中から誕生した,誠に残念なムーブメントと言わざるを得ません. もっと端的に言えば,この「大学入試改革」に限らず,現政府はなにかと「現場で働いている人」とか「専門の研究者」の意見を全く無視し,その代わりに「有識者」と称される素人,もとい,政治的意図をもったロビイストの意見を尊重したがります. これが絶望的にヤバい. 今回のような「入試改革」であれば,現場で働いていて,しかも統計学的な作業をする研究者でもある私達にとっては,当初からどう考えてもダメダメな改革でした. ところが,そういう我々の常識的な意見が反映されているフシが全くなく,現在に至りました. 荻生田発言以降,新テストが抱える問題について活発にニュースで解説されるようになっていますが,より本質的な部分だけに絞って整理して考えてみます. 英語の民間業者利用について お金がかかるとか, 受験できない地域が出るとか, 対応に追われる民間業者がかわいそうだとか, そんな分かりやすくも些末な話で騒がれている英語のテストですが,そんなことよりも本質的な問題を抱えています. まず,最も基本的な指摘から. ご案内の通り,民間業者やテスト方法が1つではありません. 異