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5月, 2019の投稿を表示しています

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ゲーム・オブ・スローンズを完走した|かつて『伝説のオウガバトル』というゲームがあってだな

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実はずっと見てました「ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)」. 非常にクオリティの高い舞台や衣装,それによる映像が長期間にわたって展開され,「ROME」とならぶ,伝説的な連続ドラマと言えるでしょう. これがついに最終章を迎えました. 2011年から始まったドラマなので,9年かけて作ってきた大作です. 子役だった俳優も,すっかり大人になっています. この手の長編ドラマにありがちなのは,着地点が見つからなくなって無理やり終わらせるパターン. この私のブログ名でもある 「デウス・エクス・マキナ(Deus ex machina)」 という手法が用いられることもしばしばあります. しかし,本作は切れの良いところで終わらせることにしたようです. ところが,この最終章と結末に不満を持っている人も多いとのこと. ■ 「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」ファンが作り直しを求めて署名活動70万人超え (シネマカフェ 2019.5.17) 8シーズンを通して世界中の人気を集めた「GoT」が、あと1話で完結する。しかし、ファンたちからは、ファイナルシーズンである今シーズンの内容に「納得がいかない」という不満が噴出。「ファイナルシーズンの全話を撮り直してほしい」との嘆願書を作成。署名活動が展開中だ。 署名活動を始めたファンは、「デヴィッド・ベニオフと、D・B・ワイスは、参考にできるもの(たとえば原作小説)がないと、嘆かわしいほど無能な脚本家であることを自ら証明してしまった。『GoT』のファイナルシーズンは筋の通ったものであるべき」として、「有能な脚本家を起用の上、ファイナルシーズンを作り直して」と製作局のHBOに訴えている。 私としては,この最終章の流れと結末は「納得がいく」ものでした. でも,納得がいかない人がいることも分かりますよ. 群像劇系のドラマを長期にわたってやってしまうと,各キャラのバックグラウンドや生き様といったものへの思い入れが深くなってしまうので,何をやっても批判が出るものです. これはちょうど,政策論争とか,いじめ問題への対処とよく似ている.そんな気がします. 【以降,ネタバレがあるので結末を知りたくない人は見終わってから読んでください】 『伝説のオウガバトル』 というテレビゲームをご存知ですか? 19

映画「空母いぶき」の見どころを徹底解説

結局見てきました. 若松節朗 監督「空母いぶき」 . ■ 空母いぶき (wikipedia) いつだったか,満員電車に揺られながら,ふと見上げた広告画面に映っていたのが本作. その時は,「絶対おもしろくねぇよコレ」と思って無視. そうこうするうち,出演している俳優・佐藤浩市の発言がなにやら問題を起こしているとかでニュースになり. そこでどうやら,本作が結構な意気込みで作られた邦画であることを知りました. 「大作映画は観てあげなければいけない」 そんな義務感にかられる私です. 原田眞人 監督の 「関ヶ原」 も,そんな理由で観て撃沈した一つです. ■ 体育学的映画論「関ヶ原」 日本の大作映画の打率は低いし,当たっても飛ばなかったりアウトになるのが特徴です. 今作がいよいよ公開となった時に,どれほど期待されているのかと思って調べてみました. Yahoo映画とか映画.comのレビューを見ると,試写を見たという人たちによる,その時の評価は 5段階中の「2.5」 . 恐ろしく低評価ではありませんか! こんな低評価の映画,なかなかお目にかかれない. そんなわけで,逆に興味が湧いてきたのでどんな映画なのか調べてみたんです. 映画.comの解説にはこうあります. 「沈黙の艦隊」で知られるかわぐちかいじ原作のベストセラーコミック「空母いぶき」を、西島秀俊と佐々木蔵之介の共演で実写映画化。国籍不明の軍事勢力から攻撃を受ける中、それぞれの立場で国民の命と平和を守るため奔走する者たちの姿を描く。世界が再び「空母の時代」に突入した20XX年。日本の最南端沖で国籍不明の軍事勢力が領土の一部を占拠し、海上保安庁の隊員を拘束する事態が発生。未曾有の緊張感に包まれる中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とした護衛艦群を現場に派遣するが……。 そんな映画です. この時点で嫌な予感がしますが,そのあとに続けてこんな解説があります. 監督は「沈まぬ太陽」「ホワイトアウト」などの大作を手がけてきた若松節朗。脚本は「機動警察パトレイバー」の伊藤和典と「亡国のイージス」の長谷川康夫。「ローレライ」「亡国のイージス」などで知られる作家の福井晴敏が企画に携わっている。 ダメだ. これはダメ映画になるに違いない. 私が嫌いな映画を作った

アクティブ・ラーニングへの批判的な記事が減ってきましたね

かつて,こんな記事を書きました. ■ 昨今の大学用語辞典 2014年に書いたので,もう5年前になります. 「昨今の大学教育で散見される事柄」について, 辞典風にまとめた記事 です. 5年前ですから,かなり時代が過ぎてきた気もしますが,書いている内容について時代遅れになった気はしません. むしろ,より加速したような気もします. そんな記事の中では, 「アクティブ・ラーニング」 も取り上げました. そこではこう書いています. 【アクティブラーニング】 (1)学生の思慮または自己言及の機会を奪うための手段.(2)何かが積極的になったように見える消極的な学習. なお,一般的にアクティブ・ラーニングというのは以下のように解説されています. アクティブ・ラーニングは学修者が能動的に学習に取り組む学習法の総称である。これにより学習内容を確かに修得しつつ、座学中心の一方的教授方法では身につくことの少なかった21世紀型スキルをはじめとする汎用的能力、ひいては新しい学力観に基づくような「自らが学ぶ力」が養われることが期待されている。(wikipedia: アクティブ・ラーニング より) アクティブ・ラーニングの声が喧しくなってきたのは,2010年頃です. ちょうど,私が大学教員になった時と重なります. 以前は「アクティブ・ラーニング」に対する批判的なニュースや意見が散見されていましたので,私としても,わざわざ出しゃばらなくてもいいかなって思っていました. ところが,最近はそんな記事をとんと見なくなりました. 理由としては,アクティブ・ラーニングが既定路線になってきたらだと思います. アクティブ・ラーニングを頑張って批判したところで得がない,といったところでしょうか. 当初の, 「アクティブ・ラーニングが効果的」 という声は,次第に, 「アクティブ・ラーニングが望ましい」 という空気を呼び,そのうち. 「アクティブ・ラーニングにしなさい」 という指示めいたものになってきました. 今では,猫も杓子もアクティブ・ラーニング. 実際のところは,講義型の授業がまともに展開できない教員の逃げ道として宣伝されたものです. もちろん, 「私は教育力が無いから学生から舐められています.だからア

大学経営難時代に,大学教員は今後どうすればいいのか?

■ 日本の大学が抱えている課題を踏まえて,今後どうすればいいのか? の内容について,その記事を読んでくれた大学教員のお一人から,お問い合わせメールをいただきましたので,そのお話です. 上記の記事では,経営が立ち行かなくなるであろう将来の大学において, 「今後どうすればいいのか?」 と題して以下の4点を取り上げています. すなわち, (1)進学率を70%まで引き上げる (2)移民を大量に受け入れる (3)教員一人あたりの担当授業数を減らす (4)卒業基準を高める の4点です. しかし,これは「日本国」として取り組む対策ですよね. これについて, 「大学教員が個人レベルで取り組めることは何かないのか?」 というのが,その先生からのご質問です. その先生には,以下のような返信をさせていただきました. (1)大学教員が個人レベルで取り組めることは何もない 正直なところ,何も無いと思います. 過去記事には,教員個人レベルで取り組めそうなことをいろいろ書いていますが,実際,国レベルで動いてくれないと本質的な効果を発揮しないものばかりです. 大学というのは,例えて言うなら商店街です. その商店街において,大学の教員とは,その中の「個人商店」という位置づけと言えます. 大学教員を「学校の教師」や「会社の社員」のように捉える人がいますが,実際は全然違います. 大学教育には独立性が認められていないといけませんし,それでこそ大学教育が可能になります. それを,学校の授業や会社の業務のように扱い始めると,いよいよその国は黄昏を迎えます. ちなみに, 世界に先駆けて日本の大学はその段階に突入しました. このブログで幾度となく取り上げている日本の大学にまつわる課題は,最近は諸外国でも問題視されるようになっているそうです. 日本と同じ道を辿ることが無いよう,注意してほしいですね. さて,大学教員と商店街の共通性について話を戻します. 商店街がさびれてしまうと、個人商店がどれだけ奮励努力しても客入りや客の質は上がりませんよね. それと同様,大学の経営難を教員が立て直すことはできません. もっと言えば,商店街の会長が頑張ってもダメなのと同じように,理事長や学長が工夫をしたってダメです. もちろん,カリスマ的な教員(

偏差値40の大学生は「普通の日本人」です|または,日本人の3割は日本語が読めない

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今回の記事は,誰に向けたものか自分でも分からないのですが. 多分,大学教員とか大学生とか,あとは受験生・高校生あたりが,なにかの参考になるかと思います. (1)偏差値とは何か 本題の前に,偏差値について解説しておきます. 大学や学生の学力レベルを評価する指数として,「学力偏差値」が普及しています. 一般的には,学校や予備校・塾などが,自分とこの生徒の模試成績を元にして発表しているものを指します. 意外に思われるかもしれませんが,大学教員には「偏差値」がどのようなものか知らない人が多いです. なんかよく分かんないけど,「うちは50らしい」とか,「70くらいでしょ?」とか,「去年より5ポイント下がったらしいよ」っていう話題にはするけど,どうやって算出しているのか知っている人はほとんどいません. 偏差値は,それを算出するための母集団(生徒たち)が違えば異なります. ベネッセや河合塾などが代表的です. ■ 大学偏差値一覧 (ベネッセ) ■ 入試難易予想ランキング表 (河合塾) 塾の生徒たちの模試成績を元に偏差値を出して,その大学に入学できた生徒の値が当てはめられているようです. ちなみに,偏差値の算出式は, wikipedia「偏差値」より であり,学力偏差値としては, その生徒の偏差値 = 10 ×(その生徒の点数 − 全生徒の平均点数)÷ 標準偏差 + 50 で求められます. 母集団が違えば・・・,ということですが,大学進学を目指す生徒や,予備校や塾に通う生徒の学力レベルの差は小さいものです. そして,この偏差値は以下のようにして表すことができます. ここでは,仮に「100名」の生徒が理想的な正規分布に従った場合を示しました. この人数の割り合いは,標準偏差に基づくものです. 以下の図は,ウィキペディアからの引用です. wikipedia「標準偏差」より 人数配分を,おおよそ対応させています. そして,この標準偏差を元にして作成しているのが「偏差値」ですので,学力偏差値として表すと以下のようになります. 平均値が「偏差値50」になります. そして,標準偏差1つ分ごとに,10移動していきます

日本の大学が抱えている課題を踏まえて,今後どうすればいいのか?

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前回の記事, ■ 文科省は大学をイジメる前にやるべき事があるだろ|日本の大学の特徴を再確認しよう では,日本の大学における予算や人事などを国際比較し,諸外国と比べて極めてトンチンカンな経営をしていることを解説しました. ただでさえ無意味な経営を続けているのに,それに輪をかけてデタラメな教育政策が執行されています. これは,日本の大学(に限らず教育界)の「方針」のあやふやさが表出しているのです. そんな日本の教育界と同じ境遇にある国があります. 韓国です. 韓国の教育界では,「国外からの意見を聞こう」ということで,外国人識者を招聘しているそうなのですが,その一人に日本からは内田樹氏がいるそうです. その内田氏いわく,韓国教育界では,日本と同様,不登校やグローバル化,少子化,高い自殺率,首都への一極集中,格差社会といった問題に直面しており,例えば大学では,苛烈な学力競争や優秀な卒業生の国外流出が課題となっています. その詳細は,以下の書籍をどうぞ. 今回の記事では,ボロボロになっている日本の大学が,今より少しはマシになるための方略として,「韓国の大学」をとりあえずの目標とすることを考えてみます. まずは現状確認から入りますが,これまで過去記事で論じてきたことと似ているので,面倒な人は 「(3)今後どうすればいいのか?」 まで飛んでもOKです. | (1)日本の大学は衰退している 「実はすごい日本の大学」と思いたい右派・保守系の人たちはカチンとくるでしょうが,残念ながら,日本の大学は今後も凋落の一途です. もう,私たち30代の研究者が現役の期間では手遅れでしょう. あと数年もすれば,韓国の大学にも追い抜かれることは間違いないのです. ■ 日本の科学研究はなぜ大失速したか 〜今や先進国で最低の論文競争力 (現代ビジネス 2017.4.5) ■ 日本の 論文発表数 減少の実情と研究者にできること (エナゴ学術アカデミー 2018.8.8) 現在,日本の学術レベルは停滞. その一方で,研究レベルをメキメキと向上させている中国やインドにも抜かれて世界6位となりました.ちなみに,韓国は9位まで順位を上げてきています. 以下に,文部科学省が出している論文数のデータをご覧ください. 文部科学省201