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大学経営難時代に,大学教員は今後どうすればいいのか?

日本の大学が抱えている課題を踏まえて,今後どうすればいいのか?
の内容について,その記事を読んでくれた大学教員のお一人から,お問い合わせメールをいただきましたので,そのお話です.

上記の記事では,経営が立ち行かなくなるであろう将来の大学において,「今後どうすればいいのか?」と題して以下の4点を取り上げています.
すなわち,
(1)進学率を70%まで引き上げる
(2)移民を大量に受け入れる
(3)教員一人あたりの担当授業数を減らす
(4)卒業基準を高める
の4点です.

しかし,これは「日本国」として取り組む対策ですよね.
これについて,
「大学教員が個人レベルで取り組めることは何かないのか?」
というのが,その先生からのご質問です.

その先生には,以下のような返信をさせていただきました.




(1)大学教員が個人レベルで取り組めることは何もない


正直なところ,何も無いと思います.
過去記事には,教員個人レベルで取り組めそうなことをいろいろ書いていますが,実際,国レベルで動いてくれないと本質的な効果を発揮しないものばかりです.

大学というのは,例えて言うなら商店街です.
その商店街において,大学の教員とは,その中の「個人商店」という位置づけと言えます.

大学教員を「学校の教師」や「会社の社員」のように捉える人がいますが,実際は全然違います.
大学教育には独立性が認められていないといけませんし,それでこそ大学教育が可能になります.

それを,学校の授業や会社の業務のように扱い始めると,いよいよその国は黄昏を迎えます.
ちなみに,世界に先駆けて日本の大学はその段階に突入しました.
このブログで幾度となく取り上げている日本の大学にまつわる課題は,最近は諸外国でも問題視されるようになっているそうです.
日本と同じ道を辿ることが無いよう,注意してほしいですね.


さて,大学教員と商店街の共通性について話を戻します.
商店街がさびれてしまうと、個人商店がどれだけ奮励努力しても客入りや客の質は上がりませんよね.
それと同様,大学の経営難を教員が立て直すことはできません.

もっと言えば,商店街の会長が頑張ってもダメなのと同じように,理事長や学長が工夫をしたってダメです.


もちろん,カリスマ的な教員(つまり、超有名店)がいれば,そのおかげで大学(商店街)が繁盛するということも考えられますが,そんな稀有な取り組みを全国展開なんかできません。
ですから.さびれた商店街を再生するためには、個人商店みんなが一致団結して何か特殊な取り組みをするか,自治体や国が交通網の整備などをして再開発するしかないのです.

大学では,教職員が一致団結して経営再生することは不可能です.
まず,同じ船に乗っているという自覚がありません.
口ではそう言ってるかもしれませんけど,本音では違います.
というのも,個人商店は「店」を動かすことができませんが,職員や大学教員は動くことができます.
ヤバいと思ったら異動すればいいのですから.


ですので,メールを頂いた先生には,
「出来る限り好きに気ままに仕事をする」
ということをご提案させていただきました.

少しでもストレスを溜めずに仕事をすることが,結果的に学生のためになると思います.

だいたい,大学の現状を改善する,って言って何か学生や日本や人類のためになったことがあったでしょうか?

実際のところ,将来的には経営難でツラい想いをする大学は増えるでしょうが,潰れる大学はそんなに多くは無いと思います(多い/少ないは個人の主観によるでしょうけど).

そんな将来を前に,不安を煽って働かせたがるのが経営陣です.
でも,経営努力したって学生は来ません.
実際,この15年間ほど,大学は経営努力を高めてきましたが,事態は一向に改善していないのがその証左です.
むしろ悪化していますよね.

中には,偏差値操作や受験方法を工夫して「見せかけの優良大学」になるよう頑張っている大学もありますが,そんなことにエネルギーを使うより,教職員が幸せに研究教育をできる大学を目指したほうが,学生や社会のためになるはずです.

でも,そんな充実した大学教育を展開するには,教員の個人レベルの取り組みでは焼け石に水だと思います.
せめて,焼けてない石を見つけて水をかけましょう.





(2)大学が経営努力することは害悪でしか無い


そもそも,現状の研究教育活動を進めていくのであれば,大学は「黒字経営」ができない業態です.
こういう状態について,
「黒字経営にならない方が異常だ.自立してやっていけないなら淘汰されるべき」
という指摘がありますが,それは研究や教育に対するその国の民度の話になるので,別で議論すべきことです.

現状,大学は黒字経営ではやっていけないので,社会的な支援が必要になります.
これは諸外国でも同様です.
例えばアメリカの大学などは,「卒業生の寄付」という社会的支援でまかなっています.
一方,日本では卒業生が出身大学に寄付することはほとんどありません.

日本の大学は,多いところでも年間50億円〜80億円ですが,アメリカの大学では500億円〜1千億円くらいになります.

詳細は以下の記事をご参照ください.
アメリカの大学での寄付金活動
寄付金収入が多い私立大学157校ランキング

「大学は黒字経営しろ」
って言ってる大卒の人に言ってやりたいのは,国が教育予算を割かないタイプの大学経営では,卒業生が出身校を支えるのが常識だよ,ってこと.
せめて,年間10万円〜20万円くらいは寄付してあげてください.

もしくは,めちゃくちゃ高い学費を払うか.
アメリカはもちろん,オーストラリアの大学もこのタイプです.

そんなわけですから,寄付が気に入らないなら,税金から出すしかありません.
大学は,「個人の利益」を高めるために存在しているのではありません.
国や社会の学術レベルを高める機能として存在しています.

そんな機能を持っている大学は,在学生からの学費だけでは経営が成り立たないのです.
かならず何らかの形で社会的支援を受けなければならない機関です.
そんな組織が経営努力したら,社会や国にとって碌なことにならないのは自明の理ですよね.


しかし,そんな国民への不満を叫んだところで虚しい遠吠えになってしまいます.
ですから,日本にふさわしい手段で対応するしかありません.
で,それが例の,
(1)進学率を70%まで引き上げる
(2)移民を大量に受け入れる
(3)教員一人あたりの担当授業数を減らす
(4)卒業基準を高める
という4つの方法なのです.

特に,(2)の「移民を大量に受け入れる」というのは必須だと思います.
日本社会を不安定にしないと,日本の大学経営は立ち行かなくなります.
本来なら教育費を上げて対応すべきところなのでしょうが,それは期待できません.
かなり残念な状態ですが,それが日本人の民度だと思って諦めるしかないのです.

もっと言えば,今の日本政府が進めている移民政策は,そういう自暴自棄な部分が入っていると私は捉えています.