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こんなホームページの大学は危ない

いろいろと大学のことについて記事にしてきたのですが,もっと具体的に「目で見てわかる」大学論をしてみようと思います.

ホームページについてです.

心当たりのある大学のホームページを参照しながら楽しんでもらえたらと思います.

私も様々な大学の先生方とお話をする機会が増え,その内部情報なども知るようになりました.
いろいろな大学を渡り歩いている先生からは,それぞれの大学でどのような事が行われているのか?どのような教育が為されているのか?とても興味深いお話をお聞きすることができます.
特に “ブラックな大学” のお話は刺激的です.

そんなわけで今回は,
大学の内部状況をホームページから推察できないか?
という,ある意味実践的な調査をお届けします.


 
ライザップイングリッシュ



これを論じるにあたって,【大学サイトランキング】なるものがあることを知りました.
そういうサイトがあるようですので見てみましたが,結局,有名大学が上位にランクされているだけで,面白味に欠けます.

ここで論じたいのは,有名大学ではなく中・小規模の大学でして,その中でも,
一見,普通そうな大学なんだけど,実は内部はドロドロでダーク...
という,受験者,採用者にとって可能な限り避けたい大学を炙り出すことを目的としています.

つまり,これまでの記事で紹介したような,「大学らしい教育」,「学問の探求」といったものを放棄,乃至,手を抜いている大学を推察?予測?推測?するものです.

かなり主観的なものですが,判別率といいますか,感度には自信がありますので参考にしてみてください.
以下の項目に該当するものが多いホームページの大学は,ブラック大学とみてよいでしょう.
※当然,判別率と感度には個人差がありますので,ご了承ください.
特に「大学」というものを詳しく把握しようがない高校生やその保護者,高校教員の方々に向けて書いております.
※あと,同業者(大学人)であれば,「あー,それあるある!」ということで楽しめます.






では,先に項目一覧です.

◆構成
(1) やたら派手
(2) 非常に見やすい
(3) 入試情報がたくさんある
(4) 教員紹介がない(非常に簡略)


◆使用写真
(1) 写真が多い
(2) 学生がジャンプしている写真がある
(3) 学生の顔をアップで写した写真がある
(4) 写真がやたらと(フラッシュなどで)動く


◆アピールポイント
(1) 夢を叶える
(2) 面倒見の良さ
(3) 社会で役立つ知識
(4) 大学へのアクセス
(5) オープンキャンパス情報満載
(6) 学内イベント(公開講座や発表会)の「事後報告」が多い
(7) ローカルな行事開催や受賞について取り上げている
(8) 就職率の高さ
(9) 就職先について具体的な企業名をあげている


◆その他
(1) 「採用情報」の内容が不可解
(2) 大学名を変更する(変更している)


いろいろなカテゴリに分けることができるのでしょうが,まぁ,とりあえず上記のようにしてみました.
それぞれどのような理由によるか,解説していきましょう.
※★の数は,判別のための重要度を表しています.



まずはHPの構成について

(1) やたら派手★★
(2) 非常に見やすい
これを言ったら身も蓋もないのですが,そもそも中・小規模の大学なのにホームページに力を入れている時点で問題なのです.
ホームページで引っ掛かる学生を取りたい.そんな想いがあるからです.
だいたい,ホームページなんかを見て 「この大学いいかも」 と考えるような受験生をターゲットにしなきゃいけないことの証左ですから,そんな大学は危ないのです.
ためしに東京大学や京都大学のホームページを覗いてみてください.その適当っぷりには清々しさがあります.小さい文字がズラズラ並んでおり,お年寄りには厳しいホームページです.
実際にグーグルかなんかで「京都大学」と打ってみましょう.検索結果に,
【 ホーム ― 京都大学 】
と表示されます.ホームページを作成したことがある人なら分かってくれると思いますが,このように表示されるのはホームページに手を抜いている証拠です.



(3) 入試情報がたくさんある★★★
これはもちろん,受験者数を増やすための目論見です.
中には,張り切りすぎて入試情報によってトップページが埋め尽くされる大学もあります.
こういうのを見ると,いたたまれない気持ちになります.



(4) 教員紹介がない(非常に簡略)★★★
そういう大学は,ブラック過ぎて教員がすぐ辞めるからです.よって,そもそも教員紹介のページを作っていないことがあります.
もしくは,氏名の一覧を出すだけで,どんな略歴なのか書いていない場合もあります.
ちなみに,教員紹介のとこに教員の「趣味」なんてものを紹介しているのも「アットホームさ」を狙っているので怪しいです.



次はHPに使用している写真について

(1) 写真が多い
「やたら派手」とも関連しますし,下で紹介することとも通じますが,特に自分とこの学生を被写体として使いまくっている場合は要注意ですね.


(2) 学生がジャンプしている写真がある★★★
“絵になる写真” が無いもんだから,思わずやっちゃった.そんなところです.
ブラック大学ほど学生がジャンプしている写真は多いものです.
そんな大学の広報担当は落ち着いていられないんです.だから「躍動感」に突破口を見出そうとしてしまう.その結果です.
バリエーションとして「意味もなく学生がバンザイしてる」とか「どこかに向かって走ってる」というのもあります.


(3) 学生の顔をアップで写した写真がある★★
その顔が満面の笑みだったり,フォーカス効果をかけてたりすると,なお危険です.
アップの写真には「幸せそうな学生でしょ」ということを訴えたい思いが詰まっています.
ということは,そんなに幸せな学生は多くないということの証左でもあります.


(4) 写真がやたらと動く
要は「やたら派手」ということと一緒です.ただ,有名大学にもホームページに凝るところがありますので,そこんとこ気をつけといてください.あくまで中・小規模の大学で,という意味です.



アピールポイントの判定は重要です.

(1) 夢を叶える★★
(2) 面倒見の良さ★★
(3) 社会で役立つ知識★★
この手の「学生中心主義」なアピールは危険だと思って間違いないでしょう.
変種として,「資格取得のためのバックアップ体制」などという,入学した学生なら誰でも思い知る「結局それって自分の頑張り次第じゃん」というアピールを全面に押し出す大学は危険ですね.



(4) 大学へのアクセス★★
「◯◯駅から何分で通える」とか,「県外からのアクセスも良好」といったことを威風堂々とアピールしているものです.
ついでに学生寮の素晴らしさについて紹介していることも多いです.
とにかく入学者を増やしたい,そんな想いの結晶です.



(5) オープンキャンパス情報満載★★
これは「大学に一度足を運んでもらったらこっちのもの」,そんな想いの結晶です.
年間,やたらとオープンキャンパスを開催しています.そんなにオープンにしたいのなら,普段から来学OKってことにしたらいいのに,でもそれは諸事情あって困るんです.



(6) 学内イベント(公開講座や発表会)の「事後報告」が多い★★★
トップページによくある「お知らせ」とか「ニュース」みたいなところに掲載されることが多い内容です.
学内イベントをやたらと掲載しますが,ここで特に注目して頂きたいのは,それが「事後報告」であることです.
「こんなに大盛況でした」「学生たちのためになりました」といったことをアピールしたいことによります.
こういうのは,学内イベントを “実は営業活動です” と白状しているようなものなのです.
普通の大学なら「仕事だ」「使命だ」 と思ってやっていますから,「事後報告」なんてする必要ないわけで,「事前案内」としてのお知らせしかしません.



(7) ローカルな行事開催や受賞について取り上げている★★★
上記と同様,「お知らせ」とか「ニュース」みたいなところに掲載されています.
全国的で学術的なものではなく,よく言えば地域密着,悪く言えばどうでもいい行事や受賞について取り上げているものです.
普通の大学の感性なら,とてもじゃないけど恥ずかしくて載せないのですが,「とりあえずアピールになるんじゃないか」という思惑が働いて載せちゃったのです.



(8) 就職率の高さ
強い大学なら気にしていません.



(9) 就職先について具体的な企業名をあげている★★
「本学は就職に弱いと思ってるでしょ?でもね,こんな有名企業に就職した学生もいるんですよ」ということです.
その時点ですでに自分でゲロってるわけで.
「ほら,◯◯銀行,◯◯研究所,◯◯学校,ねッ!どうですか?」って言っても,実はパートだったり非常勤だったり.



 
ライザップイングリッシュ




その他,ちょっと捻った内容を紹介しておきます.

(1) 「採用情報」の内容が不可解★★★
大学のホームページには教員や職員の採用情報が載っています.一般のホームページ利用者は全くといっていいほど見ないところですが,そこにヒントが隠されていることもあります.
教員採用条件で笑わせてもらったのが,学位について「修士が望ましい」と堂々と載せているもの.
これの何が面白いかというと,普通,大学教員の採用条件は「修士以上が望ましい」とか,「博士の学位を有すること.またはそれに準ずる研究業績を有する」とするものです.
つまりその大学は,「博士を持っていたり,研究業績が多い人が来てもらっては困る」ということなのです.すなわち,その大学の「教員」は「大学教員」ではなく,営業マンであることを意味します.
あとは,担当科目が幅広く,脈略がない場合です.一体何の専門家を呼びたいのか分からない.とりあえず動ける奴を確保したい.そんな大学は学問をする気がありません.
でもこれは一般の人には判別しづらいですかね.



(2) 大学名を変更する(変更している)★★
ホームページの内容とはズレるかもしれませんが,これは業界では結構有名です.
「大学の歴史」みたいなページで調べてみてください.
名前を変えている大学,これから変える大学というのは,逆に「変えることができる」というわけですから,そんなに大学名に影響力がないということの証左です.
そして,その大学名の変更に乗じ,学内の様々なシステムも変更していることの表顕でもあります.
内部のシステムをコロコロ変えるというのは,危ない組織の典型です.そこらへんは企業の方々も分かってくれるかと思いますが.







※後日,危ない大学による「ヤケクソ戦術」の展望を解説した記事を書きました.
崖っぷちの大学が生きる茨の道
合わせてご覧ください.

というわけで,上記のことを参考に,いろいろな大学のホームページをご覧になってみて下さい.
各大学の頑張り具合が手に取るように分かる..,かもしれません.

※すべての大学のホームページが,上記で述べた内容と符合するわけではありません.どんな大学のホームページも,いずれかの項目は当てはまるものです.
問題なのは,その適合具合と範囲です.
あくまで個人的に楽しむ程度にしておいてください.


※最近(2017年以降)はブラック大学についてのネット記事が増えてきましたね.
この2012年当時の記事を反映した時代になっているようです.
学生でも見分けられるブラック大学チェックリスト|経営難大学でみられる15の現象(大学生応援.com)
【速報】文部科学省が存在価値のない「ブラック大学」253校を公開処刑!あなたの出身校は入っていないかチェックしよう(NetGeek 2015.2.14)


※後日,続編として
こんなパンフレットの大学は危ない
を書きました.


 
  
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※さらに,もし奉職した大学が「危ない大学」だった場合の対策を書いています.
危ない大学に奉職してしまったとき「スパイ対策法」
危ない大学に奉職してしまったとき「イベント企画対策」
危ない大学に奉職してしまったとき「高校訪問対策」
危ない大学に奉職してしまったとき「教員評価制度対策」
危ない大学に奉職してしまったとき「新学部・学科名の候補を出せと言われたとき対策」
危ない大学に奉職してしまったとき「授業評価アンケート対策」
危ない大学に奉職してしまったとき「本気の高校訪問対策」

    




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