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【自分の意見への批判とその反論の書き方】超便利:授業内レポート(小レポート,リアクションペーパー)作成のコツ

を読んだだけでは書けず,絶望に打ち震えるほどレポートを書くのが苦手な学生のために用意した記事です.

そんな君は,以下のフォーマットに合わせて書いてみることをオススメします.
※なお,普通にレポート文章を書くことができる人は,これを読んでもあまり得しません.あくまで「絶望にうち震えるほど苦手な学生用」です.

基本構成の詳細については,
の記事を読んでください.

授業内レポートで低評価されないための基本構成
1.問題意識の表明
2.自分の意見(仮説)
3.自分の意見を裏付ける根拠
4.自分の意見を批判する意見
5.自分の意見を批判する意見への反論
6.再度,自分の意見または結論


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今回は「4」と「5」について焦点をあてましょう.

一連の記事である,
で用いられている具体例をここでも使用します.

その具体例では,以下のような展開にしてきました.
基本構成の「1」〜「3」を書き終えるとこんな感じになりました.
《例》現在の学校教育は,子供たちの「生きる力」を育むという理念のもと進められている.しかし,この「生きる力」とは具体的にどのようなものを指すのか,その捉え方や評価は学校や教師に委ねられている部分が大きい.それゆえ,指導現場において「生きる力」が具体的にどのようなものか示される必要があるだろう.具体的に「生きる力」を示す指導例として,元気な挨拶の実施が考えられる.なぜなら,挨拶は人間が日常生活を営む上で最小限の生活規範とされ,コミュニケーションを始める上での重要な第一歩だからだ.


少なくない学生,なかでも大小・長短問わず「レポート課題」で悩んでいる学生の特徴は,「自分の意見を批判する意見」を書かないことです.
だから,これに「4」と「5」を付け加えれば,君のレポートは劇的にレベルアップします.

この一連の記事で紹介しているのは「授業内レポート」の類です.
もっと自分の意見や論拠を付け加えたくなるかもしれませんが,そんな余裕は時間と紙面の都合上無いことが多い.

だから自分の意見を示す文章は早々に切り上げて,今回紹介する【自分の意見を批判する意見】と【自分の意見を批判する意見への反論】を書くことに注力します.

では,今回の《例》も文章を使って,「自分の意見を批判する意見」を書いてみましょう.


自分の意見を批判するには,大きく分けて2つのパターンが考えられます.

1:その理屈の弱点や矛盾点を突く

2:大局的に見る

細かく腑分けすれば山ほど出てきますが,基本としてこれを覚えておいてください.


今回の《例》であれば,1のパターンなら,
挨拶が出来たからといって必ずしも良い人間になるとは言いがたい(挨拶の有無で人間の価値は決まらないのでは?)
とか,
挨拶を徹底したとしても,それは教師の指導によって「やらされている挨拶」だ(心のこもった挨拶ではないのでは?)
といったものが思いつきます.

え? それが思いつかないから困っている?
そうですね.そんな時は手元にあるスマホや携帯電話で「自分の意見の反対論」を探しましょう.
反対論を探す場合,自分の意見のキーワードに,
「デメリット」
「批判」
「無駄」
「コスト」
「無意味」
といったものを付けて検索すると良いでしょう.

今回は「挨拶指導 デメリット」で検索しました
すると,小学生が挨拶運動するメリットとデメリットを教えてください。 というYahoo!知恵袋が出てきました.

それを読んでもらえれば,「自分の意見」に対する反対論を書くヒントがみつかるでしょう.

例えば,上記で示したもの以外に「知らない大人に挨拶すると事件に巻き込まれる可能性」という考えもあることが分かります.


2つ目のパターンが「大局的に見る」というものです.
この批判方法は簡単ではありますが,言わばこじつけになるとろこもあります.
しかし,視野を広くしてレポートを書いていることがアピールできるかもしれません.

例えば今回の《例》であれば,「挨拶指導」をより俯瞰的に見て,別の観点からの指導を挙げることでそれっぽくなります.
例えば,
コミュニケーション能力を高めるため挨拶を徹底するよりも,挨拶ができない生徒の個性に目を向けた教育が大事
とか,
挨拶は人間のコミュニケーションの一つである以上,指導せずとも自然と身につく
なんてことを書くのです.
この批判をネットから検索してもいいですが,たいていは本人の屁理屈能力でなんとかなるものです.


さてさて,大仕事なのはこの次.
【自分の意見を批判する意見への反論】です.

まずは屁理屈でもいいからと「自分の意見への反対論」を出したわけですが,その理論を批判し返すことで,君のレポートの見栄えは良くなります.

姑息であることを承知で言えば,再反論しやすいものを「4」で書いておくと良いかもしれません.

以下では,《例》となる「自分の意見への反対論」を,「指導された挨拶は,やらされている挨拶論」に対するものとして具体例を考えてみます.

例えばこんな感じにします.
「挨拶は人間が日常生活を営む上で最小限の生活規範とされ,コミュニケーションを始める上での重要な第一歩だからだ.
 その一方で,挨拶指導を徹底することによって生徒が挨拶するようになったとしても,それは「やらされている挨拶」だと捉えられることがある.しかし,挨拶を必要としない国や文化は非常に少なく,こうした礼儀作法を習慣づけることは人間社会における「生きる力」の一つと言えよう.
前回の記事で,
「生きる力の指導の一つが『挨拶』かよ・・・,なんだか陳腐だなぁ」
と思った君もいるかもしれませんが,こういう「4」と「5」を加えただけで,「たかが挨拶指導」が「されど挨拶指導」と受け取られるようになるものです.

コツとしては,「2」と「3」のところで「自分の意見」全てを言い尽くさず,その余力をこの「5」,つまり「自分の意見への反対論への再反論」の部分に当てるといいでしょう.
そうすれば,時間と紙面(文字数)を節約して高評価を受けるレポートやリアクションペーパーが書けます.

今回の「しかし〜」から始まる「5」に相当する部分は,ウィキペディアなどで「挨拶」を調べることによって,挨拶の意義や教育的価値となる意見を探すことができます.


UZUZ


ところで,最後の「6」である【再度,自分の意見または結論】ですが・・・.
授業内レポートやリアクションペーパーでは,この部分は不要かもしれません.
結論を書くほど長く論じていないからです.
文章量の条件や,感覚的に「あったほうがいい」と思ったら書いてください.

しかし,「まとめ」や「結論」が必要なケースもあります.
それは,「問題意識の表明」で「私はこれを問題だと考えて述べます」と宣言したことへの回答が「2」〜「5」の中で提示できていない場合です.

今回の例であれば,「指導現場において「生きる力」が具体的にどのようなものか示される必要がある」というものでしたので,それを「結論」として書きます.

この例文だと「まとめ」を入れるとクドくなってしまうようにも思いますが,パターンに則れば以下のようになります.
学校で生徒に元気な挨拶をさせるよう指導することは,「生きる力」を育む具体的な指導方法の一つと位置づけられる.
ようするに,「1」を踏まえた上で,形を変えて「2」の【自分の意見】をもう一回書くわけです.

これまで作ってきた《例》の文章を,全部まとめて以下に示しておきますね.
《例》現在の学校教育は,子供たちの「生きる力」を育むという理念のもと進められている.しかし,この「生きる力」とは具体的にどのようなものを指すのか,その捉え方や評価は学校や教師に委ねられている部分が大きい.それゆえ,指導現場において「生きる力」が具体的にどのようなものか示される必要があるだろう.
 具体的に「生きる力」を示す指導例として,元気な挨拶の実施が考えられる.なぜなら,挨拶は人間が日常生活を営む上で最小限の生活規範とされ,コミュニケーションを始める上での重要な第一歩だからだ.
 その一方で,挨拶指導を徹底することによって生徒が挨拶するようになったとしても,それは「やらされている挨拶」だと捉えられることがある.しかし,挨拶を必要としない国や文化は非常に少なく,こうした礼儀作法を習慣づけることは人間社会における「生きる力」の一つと言えよう.
 学校で生徒に元気な挨拶をさせるよう指導することは,「生きる力」を育む具体的な指導方法の一つと位置づけられる.
以上,430文字です.
これくらいの文字数が授業内レポートやリアクションペーパーの分量でしょう.

あとは,必要な文字数に応じて「2」〜「5」の部分を増やしたり,繰り返せばいいのです.
「繰り返す」というのは,例えば,
・・・・・・こうした礼儀作法を習慣づけることは人間社会における「生きる力」の一つと言えよう.
 二点目として,体を清潔に保つ習慣を指導することも,具体的な「生きる力」の指導例と言える.なぜなら・・・・
ということで,挨拶指導の次は「体を清潔に保つ指導」を挙げて「2」〜「5」を書いていくわけです.

え? それはさすがに分かります,って? 
でもそこに躓いてレポートに悩んでる学生もいるんです.

 

では最後に,一連の記事でテーマ例としてきたものも同様に示しましょう.
まずはテーマ例a〜cそれぞれ,「1」〜「3」までを書いたものです.

テーマ例a:「消費税増税について」
20XX年に増税予定とされている消費税の議論が活発だ.しかし,消費税を増税するための根拠については議論の余地がある.賛否両論に沸く消費税率の引き上げ根拠を明確にすることは,この問題を考える上で非常に重要である.
増税の根拠としては,社会保障財源の確保とされている.なぜなら,消費税の増税であれば,特定の者に負担が集中せず,高齢者を含めて国民全体で広く負担できるとされているからだ.



テーマ例b:「交通事故について」
近年,交通事故の発生件数は低下傾向にある.その一方で,高齢者の事故の割合増加が問題となっている.高齢者が起こす事故の背景を分析できれば,交通事故を減らす一助となるはずだ.
高齢者の自動車運転事故が多い要因としては,加齢による視野の縮小と判断力の低下,そして認知症が疑われている.このため,高齢者自らが運転しなくてもいい制度づくりが必要である.



テーマ例c:「身体運動と健康」
身体運動が心身の健康改善に効果的であることが知られている.しかし,定期的に運動を継続できる人は少ないという課題もある.運動を継続できなければ,せっかくの運動効果も期待できない.この課題を解決することは有益だと考えられる.
運動を継続するための戦略には様々あるが,そのうちの一つとして,具体的な目標設定がある.



以下,それぞれ記述例を説明していきます.


テーマ例a「消費税増税について」の場合
このテーマ自体,「議論の余地がある」「賛否両論」なのですから,「自分の意見」という名の一般論(今回の場合は財務省の言い分)への反論という形をとることになります.
この手のレポートが課されるということは,たいてい授業内でその反対論が紹介されているはずですが,もし君がサボって寝ていた場合はネット検索しましょう.

素直に「消費税増税 反対」で検索すると,消費税増税反対のページ というサイトが出てきます.
それを読むと,いろいろと反対意見が出ていますが,なるべく「自分の意見」に対する反対論を選んだほうがいいのです.
そうじゃないとトンチンカンなレポートになりますので.

今回の「自分の意見」これでしたね.
なぜなら,消費税の増税であれば,特定の者に負担が集中せず,高齢者を含めて国民全体で広く負担できるとされているからだ.
つまり,「消費税は特定の者に負担が集中しない」の逆の意見が選択されます.だからこの部分を読むことになります.
低所得者ほど負担増
消費税は、収入のない子どもにもかかります。その負担は、低所得者ほど重く、高額所得者ほど軽い、逆進的な不公平税制です。まさに憲法の応能負担原則に反します。
次は,これに対する反論をつくるわけですが,授業ノートや配布資料がなく,自分でも思いつかない場合はやっぱりネット検索です.

「消費税 逆進性 対策」
として検索すると,その名も消費税逆進性対策のウェブサイトが出てきました.
これを引用すれば,以下のような文章が書けるでしょう.
なぜなら,消費税の増税であれば,特定の者に負担が集中せず,高齢者を含めて国民全体で広く負担できるとされているからだ.
その一方で,消費税は収入のない者にも負担を強いることになるため,低所得者ほど負担増となる逆進性があるとされている.しかし,これについては食品には課税しないなどの軽減税率を導入したり,低所得者に給付金をつけることで対応できる.
そんな感じで書いていくわけです.


ところで,私が担当している初年次教育では,この「消費税増税問題」をテーマに練習用のレポートを書かせたことがあります.
私がこのテーマを選んだわけではありません.
学生が選んだのです.

そして,上記の「1」〜「6」の構成を指示して書かせたところ,当初は増税賛成派の学生が多かったのですが,【自分の意見を批判する意見】と【自分の意見を批判する意見への反論】の作業をしているうちに,最終的にはなんと消費税増税反対派が増えてしまいました.

つまり,財務省の「消費税増税した方がいい理由」を自分の意見としてその反対論を探しているうちに,
「いくらなんでも「特定の者に負担が集中しない」ってのは嘘だろ」
「反対論をいろいろ読んでいくと,これじゃ消費税増税を弁護しきれない」
ってことが分かってきたようです.
とても興味深い現象でしたし,これが大学生の学びの一歩だと思いました.



テーマ例b「交通事故について」の場合
このテーマの場合,自分の意見は「高齢者自らが運転しなくてもいい制度づくりが必要」というものでしたので,その反対論を探すことになります.
ネット検索で「高齢者 運転させない デメリット」とやると,もし高齢者の運転を規制するとしたらデメリットは何ですか?というYahoo!知恵袋のページが見つかりました.
そこを読むと,
シルバーパスの無料化(減額)が必要になるかもしれない
地方山間部の高齢者の足を奪うことになる
というのが見つかります.
それに対する反論も入れて書くと,例えばこんな感じに.
このため,高齢者自らが運転しなくてもいい制度づくりが必要である.
しかし,制度として高齢者に運転させないようにすると,その対策が必要になる.バスや電車の使用を強制するため,シルバーパスなどの無料化を訴えられるであろうし,地方山間部の高齢者にとっては足を奪うことになる.しかし,シルバーパスにかかる費用で重大な交通事故が減るのであれば有意義な出費であろう.また,自動車運転を必要とする高齢者のための法律を別で用意することで対応すれば良いだろう.
より規模の大きなレポートや論文であれば,シルバーパス無料化の費用を計算する必要もあります.
新しい法律を用意するっていうのであれば,具体例を示す必要もあるでしょう.
でも,とりあえず授業内レポートではここまででしょうか.

レポートに【自分の意見への反対論】を探して書かせることを条件にするだけで,「ボクの考えた理想的な社会」がどれだけ難しいのか分かってくれます.
少なくない学生は,シルバーパスや地方の高齢者のことなんか考えもせず,自分が住んでいる世界,そして若者の世界から見た「理想論」をレポートしたがります.
それを諌める上でも,「4」と「5」を書かせるレポート指導は重要なのです.


テーマ例c「身体運動と健康」の場合
このテーマ,実はとても面白い反応を学生から引き出す可能性を秘めているのですが・・・.
さて,自分の意見は「運動を継続するためには目標設定が効果的」というものでしたから,これに対する反対論を書くわけですね.
上述した「反対論を探すキーワード」を使ってネット検索してみましょう.すると,
そのサイトには効果的な目標設定についても書かれているので,これを使ったらこういう文章例ができます.
運動を継続するための戦略には様々あるが,そのうちの一つとして,具体的な目標設定がある.しかし,目標設定すればそれで解決するというわけではない.実現可能な目標を設定しなければ効果的ではないとされているため,最終目標を達成するために自身が努力できる範疇の目標を用意する必要があるとされる(参考資料1).

「先生,でもこれだと「目標設定するから運動が継続できるんじゃなくて,運動を継続できている人だから目標設定ができているんじゃないですか?」
などと言い出す学生が必ず現れます.

いや,実はとても重要な問いです.
プロ選手や必要に迫られたダイエット目的の人ならまだしも,運動を継続できている人の大多数の人は「運動をするための目標」なんて持っていませんよね.多種多様な理由がいろいろと作用しているのです.

こういうレポートを書かせると,人が何かの行為に及ぶまでにはたくさんのものが相互作用していることを分かってくれるようになります.
これを身につけておくことは,大学での学びを受ける上での必要条件です.



最後の最後に,
これまで適当にレポートを書いて提出していた君に告ぐ.

この長い記事を読みきったくらいだから,自分自身に対する問題意識,そしてやる気はあるのでしょう.
そこは大事にしてください.

こうしたレポートを書く習慣をつけていれば,徐々に物事を見る思考回路が変わってくるはずです.授業で先生が何を言っているのか,その真意が分かってきます.
今まで,「コイツ,つまんねー」とバカにしていた先生が,とんでもなく重大な話をしていたのだと気づく瞬間が訪れます.
その時,知識の蓄積ではない,大学ならではの学びが君の身体に宿るのです.


関連書籍として,学生時代は,こういう本を手元に置いておくといいですよ.

   


UZUZ




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■自分の意見への批判とその反論の書き方 ←今ここ
最終奥義(読むことをオススメします)

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