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危ない大学に奉職してしまったとき「授業評価アンケート対策」
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ついにこれを取り上げる日が来ました.
学生からの授業評価アンケートに悩んでいる人は参考にしてみてください.
特に危ない大学にお勤めの方々におきましては,お客様である学生からの評判が良くないとペナルティが設けられている場合もありますよね.
繰り返しアンケート結果が芳しくなかったりすると,つまりイエローカードが累積すると,「研修」とか管理職からの「叱責」を受けることになります.
それが任期付教員であれば,契約更新をしてくれない大学もあるでしょう.
「えっ.それって大学の授業の質を高めることにつながるからいいじゃん」
という人もいましょうが,残念ながらそうはなりません.
詳しくは■反・大学改革論2(学生からの評価アンケート)を読んでもらえればと思いますが,今回はタイトルの通り,
授業評価アンケートが教員の評価につながる危ない大学に奉職している先生方
に向けた記事です.
どうしていいか分からず,困り果てて思わずググってこの記事を見つけた人もいるのでしょうか.
※本記事は,要領のいい先生にとっては「そんなの誰でも知ってるよ!」という内容ですが,まぁ,要領が悪くて困り果てている先生向けということで.
以下を読んでいただく前に私から一言.
まず,「魅力ある満足度の高い授業」という授業を目指すことは教員として当然のことです.私も頑張ってこれを目指しています.
ところが,この「魅力ある満足度の高い授業」というのは,そうした授業を展開する上での哲学・思想がズレていると,「今そこで受講している学生」が,「今そこで満足する授業」になってしまいやすいのです.
(ま,以下ではその方略を紹介するわけですが・・・)
今そのときは「つまらないなぁ」とか「納得できない」と思っていても,時間が経つことで「あっ,そうか.あれってこういうことか」となることは多いものです.
さらには,その時には内容を受け入れることすら出来きず,聞き入れることなく完全に内容を忘れてしまう授業だってあるでしょう.
でもそれは,学生の側にその授業から発せられる内容を受け取るための準備(レディネス)が不十分であったという場合も多いと思います.私自身,今思えばそうだったと自覚できるものもたくさんあります.
でも,そうした授業が「本当にダメな授業」と一緒くたにされて「魅力のない満足度の低い授業」として断罪されているのが実際のところではないでしょうか.
大学の授業で学生が学ぶことは,各教員が授業で扱うモノに対する「考え方」です.
「経済学」であれば,その教員が「経済」や「経済学」というものをどのように捉えているのか,その「考え方」を学ぶのです.
ときどき,「大学で学んだことは実社会では役に立たない」とか「5年もすれば価値は下がる」などと言われることもありますが,これこそ大学の授業を「何かに役立てるための “パッケージ” を手に入れる場」だと勘違いしている典型です.
大学教員が学生に受け取ってもらいたい事とは,この世界を見つめる上での羅針盤となる「モノの考え方」なのです.
具体的な例で言えば,学生が将来一人で,もしくは誰かと或る “それ” について議論しなければいけない際に,より正しい結論や答えを紡ぎだすための体力をつける時間が大学の授業と言えるでしょう.
それはどのような科目であれ関係ありませんし,何年経っても価値は下がるものではないのです.
誤解を恐れずに言えば大学の授業に「答え」はなく,「考え方」が問われているのであって,それゆえ「教師」ではなく「(答えを探し求めている者)研究者」が授業を行っているのではないでしょうか.
はい,前置きが長くなりました.
「そんな誰でも分かってる事をドヤ顔で言われたところで,授業の評判が芳しくないと先が無いんだ」という先生方にとっては,昨今の大学を取り巻く空気は毒ガスのように感じることでしょう.
というわけで,上の話が無かったかのような「授業評価アンケート対策」を以下よりどうぞ.
授業評価アンケート対策のコンセプト
アンケート項目はいろいろありますが,結局は,
・分かりやすい
・居心地が良い
・受講した成果を実感できる
ことが重要だと思われます.
1)アンケートをとる時の授業は楽しくする
普段の授業とあまりに差をつけてはいけませんが,学生が比較的「有意義だった」「楽しかった」と思える取って置きの内容にして,その直後にアンケートをとれば高得点が期待できます.
感のいい学生は「アンケートがあるから今日の授業は楽しかったんだ」と思うでしょうから,そのさじ加減には気をつけてください.逆効果になってしまうかもしれません.
ちなみに,私は敢えてこの作戦とは逆のことをしています.というのも,それを狙っているんじゃないかと思われるのが気に入らないからです.
でも,特にそこら辺を気にしないのであれば効果的であることに違いはないです.
2)すぐに役立つ内容を盛り込む
硬派な先生からしたら「ふざけんな!」というものでしょうが,今の大学教育では「すぐに役立つ授業」に対する魅力は大きいのです.
とにかく授業を「すぐに役立つ」ものになるよう気を配ります.もの凄く気を配ります.とことん気を配ります.めちゃめちゃ気を配るんです.
これについては,「そうなんでしょうけど,私が受け持っているタイプの科目では無理なんですよ」というステレオタイプな言い訳をする先生方がたくさんいます.
はい.それは全くもって正論ですが,残念ながら危ない大学では通用しません.
無理やり「すぐに役立つ」ネタで授業を埋め尽くすのです.今どきの大学では学術性よりも目先の利益が優先されるのですから.
3)就活に役立つ内容を盛り込む
すぐに役立つだけじゃなく,就活に役立つ内容にすると学生の食いつきは抜群です.
例えば私の場合はこんな感じ.
体育の授業では,何かのタイミングに学生を1人〜3人ほど皆の前に出てきてもらって話す機会を作ります.準備体操とか仕切り役とか,優勝者の一言コメントみたいなヤツです.
もっと具体的に言えば,例えば脈略無く前に出てきてもらって突然「はい.なにかやって」って言います.たいてい,学生は気の利いた事をやることはできません.そこですかさず用意しておいたネタを放り込みます.
鉄板はジャンケンゲーム(詳細はレクリエーション系のサイトや書籍で).「大勢の前に立たされて,『なにかやって』って言われることだってあるぞ.そういうの聞いたことあるだろ.そんな時のために,これを覚えておくといいぞ.何の準備も用意も無くても,その場を盛り上げられるからな」って.
それで学生は,「へぇー.おもしろーい.しかも役に立つぅ.覚えとこぉ」って.
そういうのをちょいちょい挟んでいくんです.授業への満足度は高まります.
※なお,「先生,あの時に教えてもらったやつが役に立ちました.ありがとうございます」ってことになったのは本当です.あながち悪いことではないのかもしれません.
4)笑っちゃうくらい簡単な内容にする
ある意味で究極の「この授業の内容が理解できた」です.
元来,理解できたかどうかに度合いとか尺度なんか無いはずですよね.「理解できた」と感じたとき,それはその人が考えることをやめたときに他ならないのですから.そうでしょ.
マジメな話はさておき,授業評価アンケートに困っている先生方って,大学の授業を難しく考え過ぎなんです.
学生が理解しにくい,もっと言うなら,危ない大学に来ている学生なんかでは「理解しようとすらしない」内容を授業で展開してもダメです.
「おいおい,それってヤバくね?」って思うくらい簡単にするくらいがちょうど良いのです.
「これがテストに出まーす」って言いながら,さも重要そうな事のように演出して,めっちゃ簡単なことを覚えさせるのです.あっ,これが最重要ポイントですね「演出をする」.
理解できた気にさせればOKです.自分が本当に理解できているかどうかなんて,学生の側が判断できるわけないでしょ.
「いやいや,それじゃそもそも大学に来た意味が・・」
というところでしょうが,危ない大学でそれを言ってはいけません.
5)笑っちゃうくらい簡単な小テストにする
最終テストはどうでもいいです.授業評価アンケートには関係ないから.
授業期間の途中で行われる簡単な小テストは,学生に「この授業の内容が理解できた」と思わせる具体的な作戦です.
記述式のテストが良いでしょう.選択式問題は作るのが大変です.穴埋め問題だと点数を誤魔化すことができないので却下.レポートだと学生の負担が大きいので,授業評価アンケートに響きます.
ということで,なんとでも書けそうな記述式問題に回答させて,ガッカリさせない程度にそれっぽい点数をつけて返却するのです.
5)日常的に触れる事と授業内容をリンクさせる
「すぐに役立つ」とか「就活に役立つ」と似ているのですが,つまり,今そこで展開されている授業が,今の学生自身にとってどういう価値があるか認識できる伝え方にする,ということです.
授業で扱われている知識が自分自身の事として認識できないと,授業を聞く価値がないと思うようになり,何をやっているのか意味不明ということになって,結果,授業評価アンケートに響きます.
6)断定する
ようするに「答え」を教えていくのです.これが唯一絶対的な「答え」だ,と.
もっとも,冒頭でも述べたように大学の授業は「答え」としての知識を伝えるところではありません(一部の授業を除く).
それがなんとなく身に沁みている先生方としては,どうしても “言い切る” ことができない.すると学生からは「なんだか回りくどいし,モゴモゴした感じがする面倒くさくて分かりにくくて眠い授業をする先生」という評価になります.
少々オーバーなくらいに面白おかしく断定的な物言いをするのです.
お手本はワイドショーなんかによく出ているタレント教員達です.彼らのようにいい加減な物言いをします.
7)グループワークをさせる
履修者の人数にもよるのですが,グループワークは授業評価アンケートの点数を高める上で効果的です.
やり方についての詳細は,それを扱ったウェブサイトや書籍にあたってください.
と言っても,肝心の大学・高等教育ならではの学びはほとんど期待できないのですが,この際どうでもいいでしょう.
そもそもグループワークが注目されているのは「授業評価アンケート的」なもののスコアを高めることができるからです.授業評価アンケートの点数アップに効果があるのは当然です.
8)雑談できる時間を設ける
90分間,ずっと講義をすることで授業評価アンケートの点数を高めることは困難です.
グループワークにも通じることですが,ようは学生自身が自由にできる時間が確保されれば,授業の居心地が良いことにつながります.
「ちょっと休憩」と言って5分くらい普通に雑談させるも良し.
テーマを与えておいて「それについて隣の人と話し合って,この用紙に書いて提出してくれ.一緒に話し合った者の名前を書いて出すように.点数に影響するぞぉ」と言って小規模グループワークをさせるのも良し.この場合,その場で簡単に発表させてもいいですし,次回に優れたものを公開してもいいでしょう.
私語ではなくワイワイガヤガヤできれば,それだけで授業評価アンケートには好影響です.
※ここで,「私語」を止める方法をご紹介しておきます.私語に悩む先生も多いでしょうから.
「静かにしろ!」と叱っても学生は私語をやめません.叱ってもダメなんです.
一番最初(第一週の開始時)が極めて肝心です.「初回だから・・」とか,「まだ気にならない程度の私語だから・・」と甘く見てはいけません.
私語だと気がついた時点で,“叱らずに”,黙って私語が収まるまで待ちます.例え小さな私語であったとしてもです.
私語をしている学生の方を向いて,10秒くらいなら黙っておきましょう.
どうしても収まらない場合,「おい.気づいてくれ」と落ち着いた口調で言います.
これを2〜3週ほど繰り返せば,大抵の私語はなくなっていきます.
多くの先生方はこの「黙って待つ」ことができないのです.10秒って以外に長いですからね.
私も当初は,わざとらしさと恥ずかしさ,それに手持ち無沙汰を感じていたのですが,そこを我慢してやります.
私語がダメな理由をその都度説明するとウザい先生ですし,威嚇するような態度をとる必要もありません.
私語がやんだら,抑えた笑顔で「ありがとう」と言えば,逆恨みされることも少ないです.
9)映像メディアを乱用しない
なにかにつけてビデオ上映をしたがる先生がいます.自分で説明することに自信がない先生がやってしまいがちな罠です.
あと,60分もののビデオを流しておけば,残りの時間は感想文的なレポートを書かせて授業1時間分を楽できるっていう算段もあるのでしょう.
ですが,何の脈略もないビデオ上映は授業評価アンケートには逆効果ですので,大変かもしれませんが通常の授業のほうが安全です.
むしろ,動画を使用するのであれば,以下のようにします.
10)授業内容と合致した非常に短い動画を利用する
その時間の授業で取り扱う内容と合致した動画を,数分程度に短く編集or操作して見せます.動画はダラダラと流しっぱなしにするのではなく,授業の進行に沿ってピックアップしていきます.
故に,自作映像の場合は動画編集技術がないといけないですし,既存メディアであれば予めどこをどう見せるか周到に準備しなければいけません(っていうか,それが教員の務めか).
私がやってみた例で言えば,「身体」とか「人間」に関するテーマを授業で取り上げた時は,『イノセンス GHOST IN THE SHELL 2』というSFアニメ映画のワンシーンを見せて,その難解なセリフ回しに関する解説をしながらSF映画と体育スポーツとの関連を楽しんでもらいました(我ながらこれは結構イケました).
他にも,私が学生の頃にお世話になったスポーツ史の先生の場合は,古代ローマの剣闘士の様子について映画『グラディエーター』を見せながら “演出して観客を魅了する仕掛けとは何か” を解説していました.やっぱりこういう方法はウケがいいです.
先生方のなかには,映画1本120分丸々全部,2週間かけて上映し,そこで考えたことをレポートさせる方法をやってしまう人がいますが,これは最近の学生にはマズいです.
ポイントとしては,あくまで動画は授業を進めるツールとして利用することです.その動画(映像作品)自体を楽しませようとすると,見透かされたり,その思惑とは逆の効果が出てしまいます.
11)しゃべり方,板書やスライドの示し方も一応気をつける
なんだかんだで重要です.授業評価アンケートの項目になっている場合も多いですから.
気にしておくと良いでしょう.
まあ,これについてはいろいろな書籍が出ているので,それを参考にしてください.
真っ当な授業をしたい.出来ている.という人にとっては全く意味のない記事だったかと思いますが.
それでも,上記のようなことに手を出さなければいけない人がいるようでしたら,参考になれば幸いです.
授業評価アンケート対策のための書籍
その他の危ない大学対策は,
■危ない大学に奉職してしまったとき「スパイ対策法」
■危ない大学に奉職してしまったとき「イベント企画対策」
■危ない大学に奉職してしまったとき「高校訪問対策」
■危ない大学に奉職してしまったとき「教員評価制度対策」
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■危ない大学に奉職してしまったとき「本気の高校訪問対策」
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特に危ない大学にお勤めの方々におきましては,お客様である学生からの評判が良くないとペナルティが設けられている場合もありますよね.
繰り返しアンケート結果が芳しくなかったりすると,つまりイエローカードが累積すると,「研修」とか管理職からの「叱責」を受けることになります.
それが任期付教員であれば,契約更新をしてくれない大学もあるでしょう.
「えっ.それって大学の授業の質を高めることにつながるからいいじゃん」
という人もいましょうが,残念ながらそうはなりません.
詳しくは■反・大学改革論2(学生からの評価アンケート)を読んでもらえればと思いますが,今回はタイトルの通り,
授業評価アンケートが教員の評価につながる危ない大学に奉職している先生方
に向けた記事です.
どうしていいか分からず,困り果てて思わずググってこの記事を見つけた人もいるのでしょうか.
※本記事は,要領のいい先生にとっては「そんなの誰でも知ってるよ!」という内容ですが,まぁ,要領が悪くて困り果てている先生向けということで.
以下を読んでいただく前に私から一言.
まず,「魅力ある満足度の高い授業」という授業を目指すことは教員として当然のことです.私も頑張ってこれを目指しています.
ところが,この「魅力ある満足度の高い授業」というのは,そうした授業を展開する上での哲学・思想がズレていると,「今そこで受講している学生」が,「今そこで満足する授業」になってしまいやすいのです.
(ま,以下ではその方略を紹介するわけですが・・・)
今そのときは「つまらないなぁ」とか「納得できない」と思っていても,時間が経つことで「あっ,そうか.あれってこういうことか」となることは多いものです.
さらには,その時には内容を受け入れることすら出来きず,聞き入れることなく完全に内容を忘れてしまう授業だってあるでしょう.
でもそれは,学生の側にその授業から発せられる内容を受け取るための準備(レディネス)が不十分であったという場合も多いと思います.私自身,今思えばそうだったと自覚できるものもたくさんあります.
でも,そうした授業が「本当にダメな授業」と一緒くたにされて「魅力のない満足度の低い授業」として断罪されているのが実際のところではないでしょうか.
大学の授業で学生が学ぶことは,各教員が授業で扱うモノに対する「考え方」です.
「経済学」であれば,その教員が「経済」や「経済学」というものをどのように捉えているのか,その「考え方」を学ぶのです.
ときどき,「大学で学んだことは実社会では役に立たない」とか「5年もすれば価値は下がる」などと言われることもありますが,これこそ大学の授業を「何かに役立てるための “パッケージ” を手に入れる場」だと勘違いしている典型です.
大学教員が学生に受け取ってもらいたい事とは,この世界を見つめる上での羅針盤となる「モノの考え方」なのです.
具体的な例で言えば,学生が将来一人で,もしくは誰かと或る “それ” について議論しなければいけない際に,より正しい結論や答えを紡ぎだすための体力をつける時間が大学の授業と言えるでしょう.
それはどのような科目であれ関係ありませんし,何年経っても価値は下がるものではないのです.
誤解を恐れずに言えば大学の授業に「答え」はなく,「考え方」が問われているのであって,それゆえ「教師」ではなく「(答えを探し求めている者)研究者」が授業を行っているのではないでしょうか.
はい,前置きが長くなりました.
「そんな誰でも分かってる事をドヤ顔で言われたところで,授業の評判が芳しくないと先が無いんだ」という先生方にとっては,昨今の大学を取り巻く空気は毒ガスのように感じることでしょう.
というわけで,上の話が無かったかのような「授業評価アンケート対策」を以下よりどうぞ.
授業評価アンケート対策のコンセプト
アンケート項目はいろいろありますが,結局は,
・分かりやすい
・居心地が良い
・受講した成果を実感できる
ことが重要だと思われます.
1)アンケートをとる時の授業は楽しくする
普段の授業とあまりに差をつけてはいけませんが,学生が比較的「有意義だった」「楽しかった」と思える取って置きの内容にして,その直後にアンケートをとれば高得点が期待できます.
感のいい学生は「アンケートがあるから今日の授業は楽しかったんだ」と思うでしょうから,そのさじ加減には気をつけてください.逆効果になってしまうかもしれません.
ちなみに,私は敢えてこの作戦とは逆のことをしています.というのも,それを狙っているんじゃないかと思われるのが気に入らないからです.
でも,特にそこら辺を気にしないのであれば効果的であることに違いはないです.
硬派な先生からしたら「ふざけんな!」というものでしょうが,今の大学教育では「すぐに役立つ授業」に対する魅力は大きいのです.
とにかく授業を「すぐに役立つ」ものになるよう気を配ります.もの凄く気を配ります.とことん気を配ります.めちゃめちゃ気を配るんです.
これについては,「そうなんでしょうけど,私が受け持っているタイプの科目では無理なんですよ」というステレオタイプな言い訳をする先生方がたくさんいます.
はい.それは全くもって正論ですが,残念ながら危ない大学では通用しません.
無理やり「すぐに役立つ」ネタで授業を埋め尽くすのです.今どきの大学では学術性よりも目先の利益が優先されるのですから.
3)就活に役立つ内容を盛り込む
すぐに役立つだけじゃなく,就活に役立つ内容にすると学生の食いつきは抜群です.
例えば私の場合はこんな感じ.
体育の授業では,何かのタイミングに学生を1人〜3人ほど皆の前に出てきてもらって話す機会を作ります.準備体操とか仕切り役とか,優勝者の一言コメントみたいなヤツです.
もっと具体的に言えば,例えば脈略無く前に出てきてもらって突然「はい.なにかやって」って言います.たいてい,学生は気の利いた事をやることはできません.そこですかさず用意しておいたネタを放り込みます.
鉄板はジャンケンゲーム(詳細はレクリエーション系のサイトや書籍で).「大勢の前に立たされて,『なにかやって』って言われることだってあるぞ.そういうの聞いたことあるだろ.そんな時のために,これを覚えておくといいぞ.何の準備も用意も無くても,その場を盛り上げられるからな」って.
それで学生は,「へぇー.おもしろーい.しかも役に立つぅ.覚えとこぉ」って.
そういうのをちょいちょい挟んでいくんです.授業への満足度は高まります.
※なお,「先生,あの時に教えてもらったやつが役に立ちました.ありがとうございます」ってことになったのは本当です.あながち悪いことではないのかもしれません.
4)笑っちゃうくらい簡単な内容にする
ある意味で究極の「この授業の内容が理解できた」です.
元来,理解できたかどうかに度合いとか尺度なんか無いはずですよね.「理解できた」と感じたとき,それはその人が考えることをやめたときに他ならないのですから.そうでしょ.
マジメな話はさておき,授業評価アンケートに困っている先生方って,大学の授業を難しく考え過ぎなんです.
学生が理解しにくい,もっと言うなら,危ない大学に来ている学生なんかでは「理解しようとすらしない」内容を授業で展開してもダメです.
「おいおい,それってヤバくね?」って思うくらい簡単にするくらいがちょうど良いのです.
「これがテストに出まーす」って言いながら,さも重要そうな事のように演出して,めっちゃ簡単なことを覚えさせるのです.あっ,これが最重要ポイントですね「演出をする」.
理解できた気にさせればOKです.自分が本当に理解できているかどうかなんて,学生の側が判断できるわけないでしょ.
「いやいや,それじゃそもそも大学に来た意味が・・」
というところでしょうが,危ない大学でそれを言ってはいけません.
5)笑っちゃうくらい簡単な小テストにする
最終テストはどうでもいいです.授業評価アンケートには関係ないから.
授業期間の途中で行われる簡単な小テストは,学生に「この授業の内容が理解できた」と思わせる具体的な作戦です.
記述式のテストが良いでしょう.選択式問題は作るのが大変です.穴埋め問題だと点数を誤魔化すことができないので却下.レポートだと学生の負担が大きいので,授業評価アンケートに響きます.
ということで,なんとでも書けそうな記述式問題に回答させて,ガッカリさせない程度にそれっぽい点数をつけて返却するのです.
5)日常的に触れる事と授業内容をリンクさせる
「すぐに役立つ」とか「就活に役立つ」と似ているのですが,つまり,今そこで展開されている授業が,今の学生自身にとってどういう価値があるか認識できる伝え方にする,ということです.
授業で扱われている知識が自分自身の事として認識できないと,授業を聞く価値がないと思うようになり,何をやっているのか意味不明ということになって,結果,授業評価アンケートに響きます.
6)断定する
ようするに「答え」を教えていくのです.これが唯一絶対的な「答え」だ,と.
もっとも,冒頭でも述べたように大学の授業は「答え」としての知識を伝えるところではありません(一部の授業を除く).
それがなんとなく身に沁みている先生方としては,どうしても “言い切る” ことができない.すると学生からは「なんだか回りくどいし,モゴモゴした感じがする面倒くさくて分かりにくくて眠い授業をする先生」という評価になります.
少々オーバーなくらいに面白おかしく断定的な物言いをするのです.
お手本はワイドショーなんかによく出ているタレント教員達です.彼らのようにいい加減な物言いをします.
7)グループワークをさせる
履修者の人数にもよるのですが,グループワークは授業評価アンケートの点数を高める上で効果的です.
やり方についての詳細は,それを扱ったウェブサイトや書籍にあたってください.
と言っても,肝心の大学・高等教育ならではの学びはほとんど期待できないのですが,この際どうでもいいでしょう.
そもそもグループワークが注目されているのは「授業評価アンケート的」なもののスコアを高めることができるからです.授業評価アンケートの点数アップに効果があるのは当然です.
8)雑談できる時間を設ける
90分間,ずっと講義をすることで授業評価アンケートの点数を高めることは困難です.
グループワークにも通じることですが,ようは学生自身が自由にできる時間が確保されれば,授業の居心地が良いことにつながります.
「ちょっと休憩」と言って5分くらい普通に雑談させるも良し.
テーマを与えておいて「それについて隣の人と話し合って,この用紙に書いて提出してくれ.一緒に話し合った者の名前を書いて出すように.点数に影響するぞぉ」と言って小規模グループワークをさせるのも良し.この場合,その場で簡単に発表させてもいいですし,次回に優れたものを公開してもいいでしょう.
私語ではなくワイワイガヤガヤできれば,それだけで授業評価アンケートには好影響です.
※ここで,「私語」を止める方法をご紹介しておきます.私語に悩む先生も多いでしょうから.
「静かにしろ!」と叱っても学生は私語をやめません.叱ってもダメなんです.
一番最初(第一週の開始時)が極めて肝心です.「初回だから・・」とか,「まだ気にならない程度の私語だから・・」と甘く見てはいけません.
私語だと気がついた時点で,“叱らずに”,黙って私語が収まるまで待ちます.例え小さな私語であったとしてもです.
私語をしている学生の方を向いて,10秒くらいなら黙っておきましょう.
どうしても収まらない場合,「おい.気づいてくれ」と落ち着いた口調で言います.
これを2〜3週ほど繰り返せば,大抵の私語はなくなっていきます.
多くの先生方はこの「黙って待つ」ことができないのです.10秒って以外に長いですからね.
私も当初は,わざとらしさと恥ずかしさ,それに手持ち無沙汰を感じていたのですが,そこを我慢してやります.
私語がダメな理由をその都度説明するとウザい先生ですし,威嚇するような態度をとる必要もありません.
私語がやんだら,抑えた笑顔で「ありがとう」と言えば,逆恨みされることも少ないです.
9)映像メディアを乱用しない
なにかにつけてビデオ上映をしたがる先生がいます.自分で説明することに自信がない先生がやってしまいがちな罠です.
あと,60分もののビデオを流しておけば,残りの時間は感想文的なレポートを書かせて授業1時間分を楽できるっていう算段もあるのでしょう.
ですが,何の脈略もないビデオ上映は授業評価アンケートには逆効果ですので,大変かもしれませんが通常の授業のほうが安全です.
むしろ,動画を使用するのであれば,以下のようにします.
10)授業内容と合致した非常に短い動画を利用する
その時間の授業で取り扱う内容と合致した動画を,数分程度に短く編集or操作して見せます.動画はダラダラと流しっぱなしにするのではなく,授業の進行に沿ってピックアップしていきます.
故に,自作映像の場合は動画編集技術がないといけないですし,既存メディアであれば予めどこをどう見せるか周到に準備しなければいけません(っていうか,それが教員の務めか).
私がやってみた例で言えば,「身体」とか「人間」に関するテーマを授業で取り上げた時は,『イノセンス GHOST IN THE SHELL 2』というSFアニメ映画のワンシーンを見せて,その難解なセリフ回しに関する解説をしながらSF映画と体育スポーツとの関連を楽しんでもらいました(我ながらこれは結構イケました).
他にも,私が学生の頃にお世話になったスポーツ史の先生の場合は,古代ローマの剣闘士の様子について映画『グラディエーター』を見せながら “演出して観客を魅了する仕掛けとは何か” を解説していました.やっぱりこういう方法はウケがいいです.
先生方のなかには,映画1本120分丸々全部,2週間かけて上映し,そこで考えたことをレポートさせる方法をやってしまう人がいますが,これは最近の学生にはマズいです.
ポイントとしては,あくまで動画は授業を進めるツールとして利用することです.その動画(映像作品)自体を楽しませようとすると,見透かされたり,その思惑とは逆の効果が出てしまいます.
11)しゃべり方,板書やスライドの示し方も一応気をつける
なんだかんだで重要です.授業評価アンケートの項目になっている場合も多いですから.
気にしておくと良いでしょう.
まあ,これについてはいろいろな書籍が出ているので,それを参考にしてください.
真っ当な授業をしたい.出来ている.という人にとっては全く意味のない記事だったかと思いますが.
それでも,上記のようなことに手を出さなければいけない人がいるようでしたら,参考になれば幸いです.
授業評価アンケート対策のための書籍
その他の危ない大学対策は,
■危ない大学に奉職してしまったとき「スパイ対策法」
■危ない大学に奉職してしまったとき「イベント企画対策」
■危ない大学に奉職してしまったとき「高校訪問対策」
■危ない大学に奉職してしまったとき「教員評価制度対策」
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■危ない大学に奉職してしまったとき「本気の高校訪問対策」
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