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人気のない教員はクビにされて当然なのか?

っていう番組から出演依頼を受けていたんですが・・・

前回・前々回の記事で取り上げていた話題をもう少し.
そこで話していた件ですが,これがその番組動画です.


【評価社会】授業アンケで低評価→失職も?先生が生徒に評価される社会ってダメ?|アベプラ
https://youtu.be/P7GQYihwDfU?si=1PyaY8QDGzA0mmYP


教員に対する評価はどこまで必要なのか?
学生から評価を受けるようになった教育現場からの見解を話してほしい.
という話が来たんです.
このブログを通じての依頼でした.

「今の私では現在の大学現場のことを話せないので...」ってことで,知り合いの管理職&IR担当もしたことある大学教員の方をご紹介しようと思っていたんですが,その先生からも頑として断られちゃって.

今回,その番組が配信されたので,中身を見てみたんです.
上記の先生にもお知らせして,内容についてお伺いしました.


えぇ,ちょっと...,私達が想定してたことと違うかなって,そんな感じです.
「私達が出演しなくてもよかったですね」ってことを話したところです.

まあ,出演者の都合で番組内容が変わってきたところもあるでしょうし.
話が来たときも「大学現場のことを話してもらえる人がいない」ということでしたので,当日の収録では,どちらかっていうと学校教育のところにフォーカスしたものになっていますね.

ちなみに,取材を受けた際に私がお話したことと同様のことは,ゲスト出演されていた石渡嶺司氏がコメントしてくれています.
私からの見解を資料としてまわしてくれていたのか,もしくは大学関係者であれば皆同様の見解を持つのか,そんなところかなと.

ただ,おそらくこの話って,動画タイトルにもあるように「評価社会」について議論を波及させようという意図があったのかもしれないな,と.
そんなふうに受け取りました.
ちょっと不自然にMCの平石さんがそのあたりに触れてたりしたんで,そんな感触があります.

けどね,「評価」の社会的影響を論じるのってメチャクチャ難しいので,かなり整理して挑まないといけないテーマですからね.
ひとまずは「学生が教員を評価することの妥当性」みたいなところで議論するのが,当面はいいように思います.


「学生による授業評価アンケート」の次案を考えるべき

繰り返しになる部分が多いのですが,本件についての私の見解をまとめておきます.

まず,今回の番組で例示されていたような「授業がまともに成立させられない教員」については,「授業評価」とかいうレベルの話じゃないと思います.
そもそも,そんな教員は「授業」だけが問題ではないことが多く,教職員間でのトラブル,学生生徒とのトラブル,もっと言えば,社会人としての未熟さがあったりします.

これは「教員としての資質」「社会人としての基本的スキル」の話なので,可・不可の部分の話です.

一方で,この手の話でよく問題にされるのは,「授業の魅力」と表現するほうがいいでしょう.
この部分を「学生による授業評価アンケート」が対象としています.

実際,授業がまともに成立していないのであれば,大学の場合はたくさんの学生が教務課に駆け込みます.
(ただ,そうやって駆け込んでくる学生にもヤベェ奴らが多いので,教務課の人としてはその判別作業に苦労するようです.仲良くしていた教務課の人曰く,「香水が異常にキツい学生は要注意」だそうですよ)

授業の魅力を高める目的でアンケートをとっているのであれば,私としてもこういう活動に否定的ではありません.
しかし,問題としたいのはこのアンケートの効果です.

実際問題,前回記事でも紹介しましたが,チャットGPTがまとめてくれたように「妥当性が低い」し,「効果が低い」んですよ.
教育成果との相関性もないんだから,何を評価しているのか疑問です.

とは言え,「やる意義はある」という人もいるようですから,頭ごなしに全否定はしませんが.

けど,私としてはこのアンケート活動,もうやめたら? って思います.
かなり莫大なエネルギーを注いでるでしょ?
お金も人材も時間も,相当なものです.

コスパって言葉は好きではないですが,コスパの面から言えば最悪なものです.

そんなことより,授業評価アンケートの次の案を考えてはどうでしょうか?
私の経験からしても,学生からの授業の評判を聞いても参考になりません.

だって,大学の授業の場合,授業で伝えたいことや,要点というのは,開講している教員本人が握っているからです.
これは学校教育における授業と大きく異なる点です.

だとすれば,大学の授業における「授業の魅力」を高めるには,「魅力的な授業を展開しやすい環境づくり」の方が効果的だと思います.

前々回の記事でも述べましたが,授業評価アンケートを実施し始めた2000年頃には,授業の質が上がったというレポートがあがっていたようです.
でも,それは授業評価アンケートをやり始めたからではないのでは? というのが私の意見でしたね.

なぜなら,今から30年ほど前から,大学現場ではパソコンを使ってプレゼンアプリ(パワポなど)でスライドをプロジェクター映写する,という方法が可能になってきたのです.
そこでは,手軽に分かりやすいスライドを映写できて,写真や動画も扱えるようになりました.

それまでは,黒板への板書が基本で,OHP(もはや若者は知らないのでは?)とかビデオ映写が可能な視聴覚室に移動して見る,といったメッチャ面倒なことをする必要がなくなった時代でもあるのです.

もっと言えば,インターネットが普通に使えるようになり,そのウェブコンテンツも豊富になりました.
専門の先生しかアクセスできない白書的なデータもネットで簡単に入手可能になったし,パブメドやサイニーなどで,論文データやその図表もオリジナルから引っ張れるようになった.

かつては2〜3ヶ月かけて作っていた授業資料が,ものの2〜3時間でできるようになりましたよね.

控えめに言って,革命的なんです.

今の30代以下の人たちは,当たり前過ぎてピンとこないでしょうけど,ここ30年ほどで起きている「IT革命(もはや死語)」は伊達じゃないのです.

私が担当していた体育・スポーツ系の実技授業においても,携帯やスマホで高画質な動画撮影ができるようになったので,それを利用して課題をやらせていたりもしました.
こんなこと,30年前には夢のようなテクノロジーです.

そうしたテクノロジーの利用可能性が,「授業の魅力」を高めている主因だと私はみています.

授業評価もある程度は取り組むべきことではありますが,そんなことより,教員が作りたいと思う授業を,なるべく自由自在に作れるような環境整備の方を優先すべき時期にきているのではないかと思うんです.

例えば,魅力的だと評価されている授業のパターンを分析して,自分の授業に取り入れる方法を紹介するサイトを,文科省が主導して用意するとか.

文科省の皆さんも,そのあたりに注力してくれたほうが,大学の授業の質を高めることにつながると考えてほしいですね.

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