2014年4月11日金曜日

危ない大学に奉職してしまったとき「スパイ対策法」

前回の記事では,いわゆる「危ない大学」に勤める教職員なら実感していただけるであろう現象をご紹介しました.
「教職員用」危ない大学とはこういうところだ
ということで今回は,そんな危ない大学に勤めてしまったんだけど,当面,転職することはない.もしくは,そこでなんとかやっていこうという人にとって参考になる事柄をご紹介しようと思います.
境遇が似ているのであれば,一般企業,役所なんかでも参考になるはずです.
今回はまず「学内スパイ対策法」についてです.

学生版については
危ない大学に入学してしまったとき
をご参照ください.

ここでいう危ない大学とは,その多くが経営難の大学ではありますが,まだそこまで苦しんでいるわけでないのに,内部に向かってさも “経営難であることを煽る大学” というのも含まれています.
反・大学改革論のシリーズ
などの記事でご紹介していることと照らし合わせてお読みください.

ではさっそく,「学内スパイ対策法」
危ない大学ではスパイがはびこります.教員,職員,そして学生もスパイになっています.
誰と誰の仲がいいのか?上層部のことをどう思っているのか?大学の方針との親和性は?
あと,これは自分の能力と関係するのでどうしようもないところですが,どのような授業をやっているのか?というところも諜報活動されることがあります.
とにかく気を許してはいけません.特に若手教員や高学歴教員は要注意です.大学がまさかそんなところだとは知らなかった,という人が多いでしょう.

気をつかってくれる先輩教員,親切丁寧な職員,人懐っこい学生,そう思っていたら彼らがスパイだったというのは十分あり得ます.
差し障りの無い話をするだけにととどめておき,大学教育,教養や学問の重要性というところは話してはいけません.
経営難に陥っている組織・団体というのは,高尚で理想論のような話を嫌います.正論を吐く人間はできるだけ遠ざけたいのです.
「経営難」と言ってるくらいですから,霞を食って生きるような思想は受け入れられません.彼らにとっては教育理念よりも収支バランスが重要なのです.

そもそもなんで大学で諜報活動があるのか?というところですが,それはもちろん効率的な大学経営をしていくためです.経営方針と合わない教員は潰さないといけませんので.
あと,もちろん「スパイ」を買って出る人たちにも利があるわけでして.諜報活動をすることで,雇い主への忠誠を示しているわけです.
私の感覚的にはほぼ後者の理由が大きいように思えます.

経営難の大学は経営者(多くの場合,理事長)が大きな力を振るわなければ成り立ちません.なんだかんだで大学教員というのは独立性が強いですから,それを抑えるためには恐怖政治が求められます.
しかも,大学は一応教育機関ですし,経営者の都合でなんでもかんでも粛清するわけにはいきません.
ですから,解雇,更迭を目指した圧力をかけるための情報が必要になるわけでして,そのためにスパイが重用されるのです.場合によってはトラップをしかけます.
これは善い悪いの話ではありません.求められてしまう,のです.
経営方針とマッチングしない者は,たとえ学長であろうと事務局長であろうと粛清トラップ発動.そういう状態になります.

大学教員人事は,圧倒的な買い手市場です.経営者としては「代わりはいくらでもいるんだ」と強気ですし.売り手である教員としても,学位をとって30代半ば以上にもなって,そこから別の大学や仕事を探すのは厳しいという状況の人が多いのです.

そういう世界で何が起こるかというと,最も権力がある層へのゴマすり,賄賂,朝貢です.
普通の大学であれば,権力が分散しているので派閥闘争などという可愛らしい現象で済みます.派閥闘争をしている大学で働く皆様は,とても幸せな方々だと思います.
本気で経営難に陥っている大学では,派閥闘争は起こせません.とにかく権力の一極集中が起きます.そして,教職員は一極集中した権力の一員になれることを切に願うようになります.そうした中において政治力が小さい教職員がとる代表的な活動.それがスパイ活動なのです.

さてこのスパイへの対策ですが,右も左も分からない若手教員や,名門大学しか知らずに赴任してきた先生方におきましては,まずは「とにかく自分の意見を言わない」ことです.
本気で学生教育や学術研究なんかしようものなら,睨まれてしまいます.
おいおい,教員としての実力が高ければ,スパイされても大丈夫だろ?なんていう世間知らずなお子様がいますが,残念ながらそうはなりません.

スパイが何をスパイしているのかというと,もちろん教員の能力,思想信条であることに違いはありません.ただここで問題になるのは,そのスパイにとって都合のいい情報しか雇い主には報告されないということです.
スパイはスパイです,監査員ではないことを肝に銘じてください.

スパイは,雇い主(多くの場合,経営陣)が欲しがる情報を伝える一方で,スパイ自身の能力を相対的に高めるような情報を巧妙に紛れ込ませます.だって,その人がスパイを買って出る理由というのは,スパイ自身が雇い主に気に入られたいからでしょ.
それゆえ,スパイされた教員の能力が高くても,スパイ自身がその人を気に入らなければ「あいつ,能力ありそうで実は大学にとってやっかいな存在ですよ」なんて報告がいきます.

ですから,脇をしめてかからなければいけないのです.
経営難な大学だからってんで,「ここは私が奮起しなければ」などと必要以上に学生教育に精を出してはいけません.ポジティブな意味でも目立ち過ぎてしまうと,あなたのマイナス点を探そうとスパイがまとわりつきます.ここまで来ると,もはやスパイですらないのですが.
まずは学生や教育のことを頭から外してください.残念ながら「危ない大学」というのは,そういう大学だからこそ「危ない」のです.

ひたすら大学の方針に沿った仕事を進めます.あと,文部科学省が出している「これからの大学教育」みたいなのに沿うことも,自分を守るためには重要です.
そこに少し自分の色を出してもいいのでしょうが,基本は経営陣と文部科学省のやり方に準じます.と言っても,2014年現在はどこも一緒で,それは何かというと「就活に役立つ」「ビジネススキルを高める」「コミュニケーション能力を高める」,あと,可能であれば「グローバルな視点で考えられる」という点に,バカバカしくとも注力して授業を展開すれば問題ありません.ただ,やり過ぎると「できる奴だ」と思われ,逆に睨まれるので気をつけましょう.

慣れてきたら,どんな人がスパイなのか分かってくるはずです.その段階になったら,スパイから情報を入手するというのもいいでしょう(くれぐれも慎重に).
スパイは権力層と通じていますから,そこで何が求められているのか,これからの経営方針や今後の転換といった情報を引き出すことができます.それに調子を合わせておくのです.

自分の政治力に限界を感じたら,自分もスパイ活動をするというのも手です.
スパイになる方法ですけど,やはり現役スパイに近づくのが手っ取り早いです.
学内の誰か,それも反経営陣として代表的な人でいいので,その人をスパイして(実際にしなくても良い),現役スパイにこう言うんです.
「知ってます?◯◯先生って理事長のやり方は気に入らないって,飲み会で話してましたよ.大丈夫なんですかねぇ」って.
現役スパイはこう返すと思います.「それは有名ですよ.他にもあの人は云々・・・」と話が盛り上がっていきます.
スパイはスパイの話に飛びつきます.きっとあなたをスパイ仲間として迎え入れてくれるでしょう.
あなたは終始,“経営陣に逆らうとは,けしからん” という態度で話しときます.
ここで注意していただきたいのは,ひたすら媚びへつらう姿勢を貫くことです.弱者・小者を装います.そうしないと怪しまれますから.

これであなたも立派なスパイです. 何年かすれば,きっと目つきも悪くなるでしょう.
そこから先は,徐々に自分の色を出していきます.
一匹狼の情報屋,様々な人と関わるダブルスパイ,権力者の腰巾着,最も蔑まれるものの実は一番楽な金魚のフン,ナウい大学経営知識を学んで経営者の懐刀.
そんなところを目指します.

そういう教員生活は嫌だという人は,共に健全な大学を細々と目指していきましょう.
私は今,充電中です.