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農林中央金庫2兆円の損失と米価の関係について

ちょっと旬が過ぎた話題かもしれませんが,まだよく分かっていないという人のために

未だにネット内で見ることがあるコメントの一つに,これ↓があります.

JAは「金融事業に手を出して赤字を出している」「資産運用での損害を補填するために米価を吊り上げている」

実態としては,逆です.

JAの「代表的な仕事(役割)」の一つに,米や青果物などを農家から集荷して, 市場で販売する,というものがあります.

しかし,この事業は赤字なのです.

なぜ赤字なのかというと,「農家から集荷して販売する」という作業にかかるコストよりも,その手数料が安いからです.
当たり前のことですが,そういうことです.

じゃあ手数料を高くすればいいじゃないか,と思われるかもしれませんが,そんなことしたら農家の負担が増えます.これも当たり前のこと.
JAは農家を守るために組織されている団体ですから,そんなことはなるべくしたくありません.

勢い,「だったら米や青果物の付加価値を高めて価格に転嫁できるように努力すればいいじゃないか!」と言い出す人もいますが.
あのー,ちょっとちょっと,今はその「価格」が高すぎるということで騒ぎになっているんじゃないですか?
JAが販売価格を上げる努力をしちゃったら,消費者の負担が大きくなるってことですよね(我々農家としては嬉しいのだが,皆さんは嬉しくないよね).

じゃあどうすればいいか.
シンプルに考えれば,集荷販売サービスの赤字を補填する事業を展開できれば,農家と消費者の負担はそのままに,JAの機能を維持することができるはずです.

そこでJAが考え出したのが,農家(より正確に言えば,組合員・准組合員)から預かっている口座預金を元手にした資産運用です.
その額,約150兆円とされています.
そのうちの100兆円を農林中金が運用していて,JAの赤字を補填をしています.

で,最近,この農林中金の資産運用が失敗したというニュースが話題になったわけですね.
これが槍玉にあがっているんです.
いろいろなところで,
「JAは農林中金がやらかした2兆円の損失を補填するために,米価格を操作している」
という陰謀論みたいなのが広がっていますよね.
この言説を見聞きした人もいるのではないでしょうか?

しかし,これはネットニュース等のコメント欄だけで見るもので,テレビや大手ネットニュースメディアでは取り上げられていません.
そんな状況に,
「なぜメディアは,農林中金の2兆円損失と米価格の関係を報道しないんだ!」
と吠えるコメントもあったりしますが,実際,ここに関係性は見いだせないんです.
大手メディアが取り上げないのは,それらが陰謀論めいたものだからです.

以前は,ちょっとアレなジャーナリストやコメンテーターがそんなことを述べていた時もありましたが,現在では誰もこれについて触れる人はいなくなりました.
もうそろそろいい加減,ネットニュースのコメント欄でも駆逐されてほしいものです.

なお,農林中金の2兆円損失について,わかりやすく解説されている動画があったのでご紹介します.
サムネ内タイトルで釣っている感がありますが,中身は物凄く中立的です.
JAの赤字補填の仕組みを知る上でも有益なので,ぜひ御覧ください.

■日本最大級の金融機関である農林中央金庫の含み損が2兆1,923億円に。JA農協はどう動く?
https://youtu.be/lsvsF0_18to?si=zCQOB2d-oOzbdPuC



動画内でも解説されていますが,たしかに,冷静に考えたら100兆円とか150兆円の規模の組織にとって,2兆円なんてわずかなものですよね.

一時的に損失が出たとしても,トータルで見た時に資産が微増になってさえいれば,それだけでJAにとっては目的達成になるのですから,そこまで目くじらを立てるものではないのでしょう.

ちなみに,こちらの農林中金の損失を解説した動画では,「JAは資産運用を頑張るよりも,農家のサポートを充実させた方が...」という趣旨のことを述べている部分がありますが,前述したように,実際には,農家へのサポートを充実させるために農林中金が資産運用している,というのが実態です.

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