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ゲーム・オブ・スローンズを完走した|かつて『伝説のオウガバトル』というゲームがあってだな

実はずっと見てました「ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)」.
非常にクオリティの高い舞台や衣装,それによる映像が長期間にわたって展開され,「ROME」とならぶ,伝説的な連続ドラマと言えるでしょう.

これがついに最終章を迎えました.
2011年から始まったドラマなので,9年かけて作ってきた大作です.
子役だった俳優も,すっかり大人になっています.


この手の長編ドラマにありがちなのは,着地点が見つからなくなって無理やり終わらせるパターン.
この私のブログ名でもある「デウス・エクス・マキナ(Deus ex machina)」という手法が用いられることもしばしばあります.
しかし,本作は切れの良いところで終わらせることにしたようです.


ところが,この最終章と結末に不満を持っている人も多いとのこと.
「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」ファンが作り直しを求めて署名活動70万人超え(シネマカフェ 2019.5.17)
8シーズンを通して世界中の人気を集めた「GoT」が、あと1話で完結する。しかし、ファンたちからは、ファイナルシーズンである今シーズンの内容に「納得がいかない」という不満が噴出。「ファイナルシーズンの全話を撮り直してほしい」との嘆願書を作成。署名活動が展開中だ。
署名活動を始めたファンは、「デヴィッド・ベニオフと、D・B・ワイスは、参考にできるもの(たとえば原作小説)がないと、嘆かわしいほど無能な脚本家であることを自ら証明してしまった。『GoT』のファイナルシーズンは筋の通ったものであるべき」として、「有能な脚本家を起用の上、ファイナルシーズンを作り直して」と製作局のHBOに訴えている。

私としては,この最終章の流れと結末は「納得がいく」ものでした.
でも,納得がいかない人がいることも分かりますよ.
群像劇系のドラマを長期にわたってやってしまうと,各キャラのバックグラウンドや生き様といったものへの思い入れが深くなってしまうので,何をやっても批判が出るものです.
これはちょうど,政策論争とか,いじめ問題への対処とよく似ている.そんな気がします.



【以降,ネタバレがあるので結末を知りたくない人は見終わってから読んでください】





『伝説のオウガバトル』というテレビゲームをご存知ですか?

1993年に発売されたスーパーファミコン用のシミュレーションRPGで,GOTと似たような世界観を舞台にしたファンタジーです.

「オウガバトルサーガ」というシリーズになっています.
オウガバトルサーガ(wikipedia)
私もめちゃくちゃハマったゲームの一つです.


実際,「GOT」のことを「オウガバトルサーガ」とそのシリーズ作品で補完しながら見てきました.
GOTで扱われているものは,たいていオウガバトルシリーズで見ることができます.


GOTの原作,ジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』は1996年に発表されました.原作はまだ未完です.

だからといってパクリだと言いたいわけではありません.
両者は似てはいますが,それを言い出したら「オウガバトルサーガ」もいろいろな神話や戦記物からアイデアが盛り込まれています.


GOTの展開と結末にしても,やっぱりオウガバトルサーガとよく似ています.
なので,GOTの結末にも納得がいくのです.

っていうか,原作が未完の現在,このドラマの終わらせ方は,さすがにオウガバトルサーガを意識したものになっている気がします.






(1)デナーリス・ターガリエンの最後は伝説のオウガバトルのバッドエンド

後出しジャンケンみたいで気分が良くないですけど,物語中盤(シーズン4)くらいから,私はデナーリス姐さんは最後に殺されると予想していました.

なぜならこの人は,『伝説のオウガバトル』でいうところの,「初見プレイヤー」みたいなことをしているからです.

伝説のオウガバトルの初見プレイヤーの「勇者」は,ほぼ間違いなく「バッドエンド」を迎えます.
このデナーリス・ターガリエンのように.

人々を虐げている「帝国」や「抑圧者」を倒し,開放していくことで人気を得ていたつもりのプレイヤーは,すべての敵軍を倒しきったところで仲間に殺されるのです.


「開放」という状況でイケイケドンドンの時は善行に見えても,やっていることは軍事力と大量破壊兵器(ドラゴン)による虐殺と圧制です.
判断をトップの胸三寸で決めるのは,昇り調子の時は気にならなくても,倒すべき敵を滅ぼしたあとは恐怖でしかありません.


そんなトップを,周囲の家臣が暗殺する.というストーリーが自然の流れ.

『伝説のオウガバトル』にもそんなエンディングがありました(このゲームはマルチエンディング方式です).
似たような現代史に,ヒトラー暗殺計画がありますね.

ですが,彼女を暗殺した人が「あの人」だったのが,この物語をより悲しいものにしています.





(2)ジョン・スノウは伝説のオウガバトルのワールドエンド


デナーリスに対し,ジョン・スノウは『伝説のオウガバトル』をワールドエンド(グッドエンディング)した勇者です.

オウガバトルの勇者は,王者としての器があるのに,それを頑なに拒否して仲間と一緒にどっかに旅立ちます.

一方,ジョン・スノウはというと,最後はあんな状況だったので,きれいな旅立ちにはなりませんでした.
しかし,北の壁に送られた先で,友と一緒に旅立ちます.
状況はよく似ています.

「勇者」の終わり方としての,一つのパターンなのでしょうね.


実際,デナーリスとジョン・スノウは,伝説のオウガバトルにおける対極的な2人の主人公(勇者)と言えます.
ストーリー上の設定としても,そういう形でクライマックスを迎えたわけです.





(3)サンサとアリアの姉妹は『タクティクスオウガ』の主人公姉弟


オウガバトルサーガの一つに,『タクティクスオウガ』というゲームがあります.
そのゲームを知っている人なら,スターク家のサンサとアリアの姉妹が,「タクティクスオウガ」のカチュアとデニムの姉弟と似たようなエンディングを迎えていることが分かると思います.


姉のサンサは,北部地方を独立させて,その女王となります.

一方,武闘派でもある妹のアリアは,放浪の旅に出ます.


これはちょうど,『タクティクスオウガ』のカチュアがヴァレリアの女王となり,デニムがヴァレリアを離れて旅に出て終わることと同じです.

「似ている」とまでは言えませんが,「GOT」のサンサも「オウガ」のカチュアも,
敵対勢力に身を寄せて苦労して成長し,最後に自分のすべきことを見つけて「女王」になる
というストーリーを持っています.




また,「GOT」アリアと「オウガ」デニムにしても,両者とも,
自分の姉を鬱陶しがりつつ,武闘派・暗殺者キャラとして成長する
のです.

アリアは,暗殺者組織「顔のない男たち」に身を寄せて,さまざまな「顔」を持つ暗殺者へと成長しました.

一方のタクティクスオウガのデニムは,さまざまなジョブになれるシステムが与えられていますが,結局のところプレイヤーはデニムを「忍者(暗殺者)」として成長させることと似ています(ちょっと無理やりか?).




(4)グレガーってテラーナイトのデボルドですよね


クライマックスにおいて崩れ行く城内で決闘したサンダー・クレゲインの兄・グレガー・クレゲインの姿は,まさにタクティクスオウガの「テラーナイト」です.

しかも,死んだあとに復活させられ,魂が抜けたゾンビ状態のテラーナイトという境遇が,タクティクスオウガの騎士デボルドとよく似ています.

っていうか,グレガーはテラーナイトにしか見えない.

グレガー・クレゲイン

タクティクスオウガ:テラーナイト
テラーナイトのデボルド





(5)ヴァリリアとヴァレリア,ヴァリリア鋼とバルダー鋼


私としては,GOTのヴァリリアと,タクティクスオウガのヴァレリアがごっちゃになります.

GOTのヴァリリアは,「エッソス南岸の半島に位置し、ターガリエン家の古の故郷である。(wikipedia)」とのことです.

一方,タクティクスオウガのヴァレリアは,ゲームの舞台となる島を指します.


ちなみに,GOTのヴァリリアでは「ヴァリリア鋼」という特殊な金属で作られた武器が有名.
この金属はホワイトウォーカーというゾンビ軍団を倒すのに有効です.
最終章では,ホワイトウォーカーとの決戦のためにウィンターフェルに集められました.

ホワイトウォーカーを倒すためには,このヴァリリア鋼製の武器以外にも「ドラゴングラス」という黒曜石も有効で,最終決戦ではこの武器も用意されていましたね.


なお,オウガバトルサーガにも特殊な金属が登場します.
「バルダー鋼(金属)」という特殊金属です.
バルダー金属は,持つ者の魔力を高めるという効果を持っています.


で,その原材料はなんと「黒輝石」.
つまりドラゴングラスと同じく,黒曜石です.
ヴァリリア鋼とバルダー鋼には,かなりの類似性がありますね.

「バルダー(baldur)」の由来は,バルドルという北欧神話の「光の神」です.
最も賢明で、美しく光り輝く美貌と白いまつ毛を持ち、雄弁で優しいとされ、やや優柔不断な面もあったが彼の裁きは不変であるといわれる。
両親はオージン(オーディン)とフリッグ、妻はネプの娘ナンナで、彼女との間に息子フォルセティがいる。■バルドル(wikipedia)
このヴァリリア鋼とバルダー鋼には,GOTにおいてちょっとした関連があります.




(6)オーディンつながり|オーディンを殺したオオカミ


バルダー鋼は,北欧神話の最高神オーディンの子であるバルドルが由来.
その原材料は黒曜石.

一方,GOTにおけるゾンビ軍団の長である「夜の王」は,馬に乗って特殊な槍をかついでいます.
たぶん,オーディンがそのモデルです.


オーディンはスレイプニールという八本足の馬に乗り,グングニルという槍を持っています.
北欧神話由来のゲームやファンタジーが好きな人にはお馴染みだと思います.


なので,このオーディンである「夜の王」は,「オオカミ」によって倒されなければいけません.

なぜなら,北欧神話においてオーディンを殺したのは,巨大なオオカミ「フェンリル」だったからです.


実際,夜の王を倒したのはオオカミの紋章のスターク家,巨大なオオカミと仲のいいアリアでした.

アリア(オオカミ)がドラゴングラスを夜の王(オーディン)に突き刺して終了,という流れは確定なのです.





(7)このエンディングでいいのでは?


このGOTの終わり方に不満がある人もいるようですが,これまでの各キャラクターの生き様からすれば,これらがベターなものだと思います.
様式美というものもあるわけですし,逆に奇抜な終わり方をしても滑稽になるかもしれません.