2012年9月18日火曜日

反・大学改革論2(学生からの評価アンケート)

前回の続きです.
大学改革について,もう少し内部からの意見を出していこうと思います.

今回は「学生からの評価」という改革について取り上げます.

日本の大学も欧米を見習えということで,私が学生の頃から始まりだした,この「学生からの評価アンケート」.
もう,やってない大学は少ないんじゃないでしょうか,「授業評価アンケート」とかいうやつです.

ところがこのアンケート.
全く機能していないし意味もない.文字通り,本当に紙の無駄にしかなっていないものなんですよ.

私も学生の頃にこのアンケートに回答したことがありますが,友達同士で「こんなん意味ないよな」と笑い合いながらマークしていた(マーク方式が多い)覚えがあります.
同年代に学生だった人なら分かってくれるはず(最近の学生はどうなんでしょうか).

大学を知らない外部の人たちからすれば,
「お客さんである学生から評価をもらい,それを次に活かすのは当たり前.これをビジネスの世界では「PDCAサイクル」というのだ」
などとドヤ顔されるかもしれませんが,残念ながらそうはなりません.

なぜって,このアンケートでどんな結果が出ようと,教員の評価にはほとんど響かないからです.
教員の評価に響かないわけですから,教員もそのアンケート結果を気にするわけでもなく.
そんなこと学生だって知って(勘付いて)るのですから,適当につけるでしょ.
さながら人気度調査みたいなもんです.
私みたいに若い教員はポイントが高くなります.女子ばっかの授業なら相互作用もみられるでしょう.

そういうわけで,日本では『美人でセクシーで講義の質が低い上に成績が甘いんだけど頑張り屋さんに見える教員』というのがいたら,その人は最強ということになります.
実際,満足度調査でポイントが高い教員というのは,どうやらそういう教員なんだそうです.

でもそれって大学教員の評価として間違ってると思うんですけど.
まぁ,大学側もバカじゃないからそんなこと百も承知なので,各大学,気にしていないのですよ(気にする教員はいますけどね.人気度調査としては機能しているので).

まずもって,大学教員の評価の対象となりえないアンケートなんですから,そもそもやる価値がないのに,世間からのプレッシャーに押されてダラダラやってる,というのが実情.

もっと言うと,この授業評価アンケートの致命的な欠陥,皆それを分かってるはずなのに,誰も指摘しません.
面倒くさいからでしょうが,学外の人からは「大学のPDCAサイクル・システム」の一つだと勘違いされていることが多いと思われますので,丁寧に説明する機会があって然りです.

そもそもこのアンケートは “大学内部の学生” からサンプリングしています.
ということは,大学内部で授業やなんやらを学生が比較・評価しているわけです.
評価なので,比較対象が必要になります.評価するということは比較することですから.

でもちょっと待ってください.
例えば,「社会学」という授業を評価するとして,では学生はその授業をどのように評価するのでしょうか?
他大学の「社会学」という授業ではありません.学内の他の授業と比較することになります.
その “他の授業” っていうのは「教育学」だったり「経済学」だったり「スポーツ実技」だったりするわけです.

それっておかしくないですか.

例えば,ラーメン屋が自分とこのお店についてアンケート調査をしているとします.
お客さんに「うちのラーメンの味は?」と聞き,そのアンケートで「コクがない」「チャーシューが小さい」「麺は美味しい」という回答が得られたとすれば,それはフィードバックする価値があります.
なぜなら,そのアンケートに回答しているお客さんは,他店のラーメンと比較して,そのラーメンを評価しているからです.

でも,大学がやってる「授業評価アンケート」っていうのは,上記のラーメン屋で例えるなら, “生まれて初めてラーメンを食べた客” から取り,しかも「うちのメニューで美味しいのは?」と聞いているようなものです.
「ラーメンはまぁまぁ」「チャーハンは不味い」「マンゴープリンが美味しかった」なんていうアンケート結果だったらどうします?

「よし!やはり時代はマンゴーだ.マンゴープリンを大量購入だ!」と張り切る大将のラーメン屋に未来はありません.
でもそれを「やれ」って言われてるのが大学の授業評価アンケートなのです.

残念な事に,相当数の大学がマンゴープリンに力を入れ始めちゃってる,という危惧もあります.
さらには,外野である世間様も 「ラーメン屋も飲食店なんだから,マンゴープリンくらい出さなきゃね」 などと囃し立てるからタチが悪い.

そんなところに良心的な大学教員が「マンゴープリン食いたきゃ,ケーキ屋にでも行ってろ!」 と吐き捨てると,「時代の流れに逆らう白い巨塔」と揶揄される始末.
もうね...,

ふざけてばかりいないで真面目に論じると,アンケートに回答する学生側の事情を考慮する必要があるのです.
欧米の大学では,学生は質の高い授業を受けることに価値を見出しています.
だから,そのアンケート結果も信頼できるのです.

え?
日本にはないのか?
はい,ありません.

「ふざけるな!そんなんだから日本の大学の授業の質は低いんだ」と言われるかもしれませんが,それが真実です.

そもそも,授業の質っていうのは,教員の頑張りもですが,学生の頑張りも必要になります.
教員と学生による相互作用でつくられるものです.

ところが日本では,“大学の授業を真面目に受ける奴ほど出来の悪い学生” みたいな文化があります.いや別にそれで良いとも思ってます.
続けると話しが長くなるので,今回はこの件については割愛します.

そんなわけで,大学教育っていうのは,ラーメン屋で言えば「飽くなき大将のこだわり」なのです.

ラーメン屋なのですから,「客が喜ぶから」ってマンゴープリンに力を入れてはいけません.
たとえ客が固定客でも,です.

ラーメンとは何か?

それをひたすらこだわり続けることに,ラーメン屋としての価値があるのと同様,大学も社会や学生の流行に振り回されず,

大学教育(高等教育)とは何か?

と考え続けなければならないのです.

続きはこちら■反・大学改革論3(学生はお客様じゃない)