2011年11月2日水曜日

私も「臨機応答・変問自在」

ちょっとブログの更新が遅くなりましたね.
科学研究費補助金の申請に手間取っており,ブログの方に意識が向きませんでした.
久しぶりです.

「スカイ・クロラ」の作者で有名な森博嗣氏が出している新書に 『臨機応答・変問自在』 というのがあります.

大学教員でもある氏は,学生に質問させることで出席をとり,その質問への回答を書いたプリントを返すという授業を展開しているとのこと.
この本は,そういった質問・回答のやり取りの一部を載せたものです.

実は,私も以前からこの形式の授業をやっております.
別に森氏がやっていると知ったから始めたわけではなく,このやり方の方が学生のためにもなるし,面白いだろうと考えているからです.

氏の教育哲学には全面的には賛成できないものの,いろいろと同意できる部分があるわけで.

重要なことは答えることではない,問うことである.

同感です.

というわけで,私の授業での質問・回答もここでご紹介しておきましょう.
授業はというと,保健体育の教員になるための実技です.科目名は伏せときます.

教員を目指す授業なので,そういった観点からの質問が多いですね.
回答文の最後にある数字は,その質問の点数です.1~4点で採点しています.

学生は「質問するのは大変」だと言っておりますが,回答する方は意外と楽しいものです.1クラス30人くらいなので,忙しい時にはちょっと大変ですけど.

授業の1~5週目くらいまでは意味不明な質問が散見されますが,少しずつわかってくるようで,後半になると鋭い質問も頻発するようになります.
この変化する学生を見るのが楽しみのひとつです.

では以下よりどうぞ.


Q.静かにしなくてはいけない状況で うるさい生徒に対してどう対応すればよいですか?

A.静かにしなくてはいけない状況なのですから,静かにさせてください.①



Q.バランスボールは,教員になった時,子どもに教えることってありますか?

A.文部科学省からの通達にはありませんが,指導してあげたら喜ばれると思います.②



Q.バランスボールが家にないときはどうしたらいいのですか?

A.家で購入してください.①



Q.私は背骨が1mずれているのですが,ストレッチポールを続けていれば,そのずれもなおりますか?やりすぎはダメですよね?

A.背骨が1mずれている,というのはどんな状況なのでしょうか?それに「背骨がズレている」という表現は様々な意味を含みます.スポーツ・体育専攻の学生ですから,もう少し専門的に状況説明してください. どんなものでもやり過ぎはダメですね.①



Q.レクリエーション時に気をつける事は何か?

A.たくさんあります.①



Q.他に,障害者向けのゲームってありますか?

A.あります.①



Q.教師になると大変ですか?

A.はい.①



Q.体育が嫌いな子にどうやって指導しますか?

A.体育が好きになるよう指導します.①



Q.老人の方が運動不足を解消するには,エアロビクスは有効ですか.

A.皆さんの文章に時々散見される「老人」ですが,この表現はあまり利用されません.「高齢者」と表記するほうが一般的です.
有効です.ただし,集団で行う場合は個人の体力差や動作の理解力を把握して行う必要があります.②



Q.ストレッチを2人以上で行なうとき,一応体が関係しているため,ある程度体格が同じような人と組んだほうがいいですか?

A.はい.②



Q.自分が授業を展開するときに,自分の指示と子供たちが自分で“考える”のは,どれくらいの割合が一番バランスがいいですか?

A.その授業で,あなたがどれくらい“考えさせたいか”によると思います.③



Q.教員採用試験は何をするんですか?

 A.教員を採用するための試験をします.地域によって違いがあります.あなただけでなく,教員を目指す割に教員採用試験で何をするのか調べていない学生が多いのが気がかりです.きちんと調べて大学の授業を受けてください.②



Q.ついていけず,しんどそうな生徒にどうやってやる気を出させますか?

A.ついていけず,しんどそうなわけですから,休ませるなどしてください.②



Q.授業でのり気でない子がいても,同じ内容の授業をしたら,やっぱりダメですよね?工夫してものり気でない子に対してどのように接したらいいでしょうか?

A.「同じ内容の授業をしたら」という意味が不明です.もう少し明確に質問してください.「工夫してものり気でない子」というのはどういう子でしょうか?①



Q.ごはんの後に運動するのと,運動のあとにごはんを食べるのはどっちがいいのですか?時間帯はいい時間とかありますか?

A.どちらでも構わないのですが,筋肉づくりのためには運動の直後に食べることが推奨されています.②



Q.将来,フィットネスの仕事をしたければ,フィットネスのバイトをした方が良いですか?

A.はい.間違いなく有利です.ただし,「有利」というだけで,「確実」ではありません.どんな仕事に就く上でも同じことが言えますが,「アルバイトをした」という事実だけでは意味がありません.そのアルバイトを通じてコミュニケーション能力やマネジメント能力,指導スキルをしっかり勉強することです.フィットネスのバイトでなくても,そのような能力が高まるところであればラーメン屋であろうがボランティアであろうが関係ないと思います.③



Q.教員になるためには,部活動は必要なのでしょうか.また,部を転部することはよくないのでしょうか?

A.部活が必要とか,転部が良くないという噂は私は聞いたことがありません.むしろ私の周りの教員志望者は,「いつ部活を辞めて試験対策に切り替えるか」で悩む学生が多かったような気がします.採用試験は4年次の6月~8月にかけて実施されます.教育実習の準備を含め,試験対策を練るとすれば3年次の10月くらいから始めているパターンが多いです.②



Q.授業をする上で,生徒(小学生・中学生)の安全面で考えて,どこを意識して気をつけていたらいいのでしょうか?

A.意識すべきことはたくさんあります.試しに,以下のことで安全に関わることを挙げてみてください.教場,対象の様子,服装,天候,用具,時間,あなた自身.状況によって様々ですよね.安全を確保するためのマニュアルは,有りそうで無いものです.完全にカバーすることはできませんが,それを求められることも事実です.指導者として不断の心構え(準備と即応力)が大事だと思いますよ.③



Q.子供たちの中に障害の子がいて静かにすることができなければどうしたらいいですか?

A.良い質問です.答えはありません.少なくとも私なりに“応える”とすれば,静かにできなくとも,できるだけ一緒に実施できるプログラムを考えて管理職の人に理解を求めます.学校の授業は1回だけのものではないし,規律正しく静かにさせることが体育教育の本質ではないと思っています.学校生活全体を通して,子どもたちが「善き国民」になってもらうことが大切だと考えています.手段は人の数だけありますので,自分なりの答えを見つけてください.④



Q.教員になるまでは,子どもがすきで指導をしたい.教員に絶対なりたい.って言う気持ちが必要だと思いますが,教員になった後,どんな気持ちが必要ですか.

A.教員になる前に持っていた気持ちを,いつまでも持ち続けることです.
あと,僭越ながら「子どもが好きで指導がしたい.教員に絶対なりたい」という気持ちだけでは教員になってほしくありません.もっと大事な気持ちがありませんか?今見つからなくてもいいので,もう少し自分の心のなかを探してみてください.④



Q.レクリエーションのような、なごやかなふんいきのときも きっちり注意しますか。

A.この質問がいつ来るのか首を長くして待っていました.この授業を受けてもらって考えてほしい重要なことの一つです.私であれば「きっちりと注意」します.しかし,この場合の注意の仕方(つまり,叱り方,怒り方というのでしょうか)は慎重に選ばなければなりません.と同時に,こうした注意の仕方を選べる教員になることが重要なことなのかもしれません.「言うは易く行うは難し」の典型的なテーマです.この紙面では伝えきれない部分ですし,大学で授業を受けたからと言って解ってもらえるものでもないのかもしれません.教員やスポーツ・運動指導者として永遠に考え続けなければならないテーマの一つです.④



Q.授業を受けるとき,先生は一番何を気にしながら指導していますか?

A.「授業をするとき,」でしょうか.
この授業に限らず,当初の(シラバスの)授業の目的を達成することを気にしています.以前は「楽しんでくれている」とか「ウケが良い」といった,その場の雰囲気を気にしていましたが,それは学生に迎合したことでしかありません.授業を受けた学生が成長してくれなければ意味が無いと思っています. 1回の授業でみなさんは何千円も払っているわけですから,その分の学びを提供しようと考えています.1回何千円も払って「授業を受けて楽しかった」では虚しいと思いませんか?何かと「高い」と文句が多いテキスト1冊よりも,たった1回の受講料の方が高いのですから.③



Q.質問がない時はどうすれば良いですか?

A.勉強してください.しっかりと授業を観察してください.普段から疑問をもって大学生活をしてください.私が皆さんから回答ではなく質問を書いてもらっているのは,問題を解く力ではなく,問題を見つける力を身につけてほしいからです.私は,良い回答ができる人よりも,良い質問ができる人の方が良い人材になると考えています.①


実際,鋭い質問をする学生は優れた学生であることが多いです.
でもこれ,秀才とか優等生とは違うんですよ.
頭いいのに,なんでこんな質問しか出せないの?という学生もいます.

このやり方は採点が主観に満ちますが,なんだかんだで有効な方法だと考えています.