2013年6月7日金曜日

英語教育について

教育再生実行会議が,英語教育の重点化を提言してきました.
グローバルな人材を育成するためには,まずは英語教育が大事だということです.
小学校から英語を正式教科にし,大学の入試や卒業要件にTOEFLを課す,といった提言がされています.

以前にも記事にしましたが,大学にもグローバル化への要求がきております.
「授業を英語でやる」という流れもあり,それに向けて準備している大学もあります.
今回の教育再生実行会議の提言には,英語を母国語とする大学教員を2年以内に1500人増やす,というのもあったりで,かなり本腰を入れていることがうかがえます.

国際競争力を高めるためには,まずは英語教育だということなのだそうです.

はっきり言って,完全にイカれています.
亡国への歩みは,まだ止めていないようですね.

おや?この「教育再生実行会議」っていうのの中心メンバー.W大の総長です.だからこんなフザけたことを言ってきたのですね.そりゃダメだわ.

この教育再生実行会議というのは,他にも小・中・高の年数を6−3−3制から4−4−4制とか5−4−3制にするといった,サッカーのフォーメーション・チェンジのようなことを言っております.
何がしたいのでしょう.
私が会議のメンバーなら,「景気よくイケイケドンドンの GO-GO-GO にしましょう」と提言するのですが.

てっきり「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍内閣ですから,「英語教育を減らしてでも,国語教育の重点化」と言い出すのかと思いきや.
そっちー!?
という感じです.

義務的な英語教育の撤廃も辞さない,というのが持論の私としては,この提言は全く評価しません.

英語教育を強化したところで,国際競争力なんぞつくわけがないでしょ.
だいたい,国際競争力ってなんですか?
これを読んでくれている人にも聞きましょう.
もう一度,
「国際競争力ってなんですか?」

国際競争力というものを示してください.その力を手にしたら,国民は幸せになるのですか?
話はそこからです.

安倍総理がどのような気持ちで打ち出したのかは知りません.
でも,この提言の背景には2つのものが考えられます.
1つ目,「アメリカからの圧力」
普天間基地移設問題と安全保障問題を楯に,TPPと英語教育の強化を要求された,というもの.
TPPで社会をアメリカ化させ,英語教育によって思考をアメリカ化させることが相手の狙いでしょう.そうすれば,将来長きにわたって日本はアメリカにひれ伏してくれます.
でもこれは危ない取引ですよ安倍さん.社会システムと教育は取り返しがつかないものです.

2つ目,「本気でそう考えている(つまりキ◯ガイ)」
解説は不要でしょうが,単純に「国際競争力」を高めるために「グローバルな人材を育成」しなければならないから,「英語教育」を強化しよう.
などという,ちょっと考えれば分かる愚策に邁進してしまうほどご乱心なされているのではないか?というものです.

1つ目であってほしい.
というか,戦後レジームの脱却とは真逆の政策提言ですからね,これ.
「戦後レジームの完成」を目指してるでしょ,これ.

TPPを意気揚々と推進するあたり,かなり雲行きが怪しいのですけど.

一万歩譲って,英語教育を強化するとしましょう.
でもなぜにTOEFL?
なぜここまでアメリカに媚びりまくるのかが意味不明.ここまで堂々とやられると,「アメリカに媚びてますが,何か?」と訴えているかのようです.徹底しすぎて気味が悪い.
戦後レジームの脱却を掲げて政治をしているのが安倍総理ですから,これはにわかには信じ難いことでして.
う〜ん・・・,だからやっぱり「アメリカの圧力」とか何かの取引なのだろうと信じたいのですが.

ちなみに,英語教育がダメな理由ですが.
まず,英語を使うようになるということは,英語文化で思考するようになるということ.つまり,日本固有の文化としての思考が薄れるということです.
何か物事を考える,思考するというのは言語があって成り立つものです.母国語ではない英語では,十分な思考を紡ぎ出せません.
母国語の日本語ですら何かの思考を紡ぎ出すことが難しいのに,英語教育なんぞ強化したら「二兎追うものは一兎をも得ず」になってしまいます.
いわゆる「勉強はできるけど,頭の悪い子」が大量生産されるという,おぞましい状況になるのです.
つまり,グローバルでイノベーティブな人材が確実に減ります.グローバルでイノベーティブなところで “使われる人材” は増えるでしょうけどね.でもそれを目指しているわけじゃないですよね.
ようするに,この教育再生実行会議とやらが目標としてることの逆の結果になるでしょう,ということです.

次に,「国際競争力」とやらとは関係がない,という点もあります.
何度も言いますが,「国際競争力」というのが何か定義されていないのに,何を目指して頑張っているのか意味不明です.少なくとも,「言い訳」としては評価に値しません.
百歩譲って,「国際競争力が低下してきているから,それを取り戻すのだ」という意見を聞き入れたとしましょう.
でも,日本の国際競争力が高かった時代,日本の英語教育も優れていたのでしょうか?
お答えいただきたいものです.

最後に,大学教員でもある私から,大学の英語教育について.
はっきり言って,大学では日本語以外の言語の学習は各大学に任せれば良いと思われます.
現役生や大学卒業生なら分かってくれますが,大学における外国語教育なんて,全くといっていいほど機能していません.
外国語への興味も,外国への興味も高まるものではありませんし.
そんなことよりも,日本語でいいから(むしろ日本語でこそ)ガッツリと学術的な思考力を鍛えあげるのが大学の使命です.

これも以前に記事にしたことですが,母国語以外の言語は必要に迫られないと学べないし,学ぶ必要もないのです
大学教育では,たまたま必要に迫られて外国語を学ぶことが多い.それだけです.
十歩譲って,「大学生の語学力が低下してるから,なんとかしなければいけない」という意見を聞き入れたとしましょう.でもそれは,その大学・授業で語学力がそこまで必要とされていないからだと言えます.
学生におもねらず,語学力が必要とされる授業を展開すればよいのです.
英語さっぱりの私ですが,専門ゼミの先生にこってり絞られることで英語を使うようになりました.英語論文が読めないと話にならなかったからです.そんなものです.

だからと言って,「大学の授業を全て英語にする」というのは愚の骨頂です.バカも休み休み言え,というのはこの事です.
大学の使命は,あくまでも学術的な思考力を高めることにあります
それなのに,英語で授業や演習をやっちゃったら質の低い思考しか育まれない授業になるのは必然です.日本の大学ですよ.日本人の思考力を高めるために存在するのが義でしょう.
一部の大学(国際教養大学とか)の例を上げて騒いでいますが,それは一部だから被害が少なくて済んでいるのです.全国的にやられたら一億総白痴化も夢ではありません.
完全に英語文化への従属です.

ずっとこのブログでも訴え続けていますが,結局こうした大学への要求や提言というのは,大学を「金儲け研究所」にしようという下敷きがあるからこそ突きつけられるわけでして.それがあまりにも残念です.
「就職に強い」とか「世界を相手に稼ぐ」とか「イノベーション」とか.そんな謳い文句ばっかりです.嫌になります.

まとめると,こういうことです.
財界・企業・世論といったものの後押しを受けながら,一見「使える人材・優れた人材」が養成できそうな(“できる” ではない)安直で稚拙な大学改革を次々に打ち出し,よくよく考えたら真逆の効果が出ることばっかりやってきたのに,また懲りずに同じ愚行をやろうとしている.

こうした一連のことは,ちょうど,マラソン選手の指導者があまりにも素人すぎて,
「おまえ,なんでチンタラ走ってんだよ.いいか,スタートしたら全力ダッシュしろ.そしたら勝てるゾ」
と指示を出しているようにしか見えないのです.

果ては「大学ランキング100位内に10大学ランクインを目指す」とか,...大丈夫ですか?
このバカバカしさについては,また紙面を新たにして書きます.

安倍総理は今回の英語教育強化の提言に対し
「大学力は日本の力の源であり、日本の未来だ。われわれの進めている成長戦略の柱が大学力だ」
と語っています.
ホントでしょうね.

この記事の続きを
続・英語教育について
で書きました.