2013年8月8日木曜日

スポーツによって災害に強靭な町をつくれる


前回の記事 
スポーツで土建国家を復活できる
の続きです.
「土建国家復活」などと,なんてこと言うんだ,気は確かか?と思われるかもしれませんが,どうか冷静に読んでください.

学生には繰り返しになりますが,私のブログはコピペ・レポート用として利用してもらっても構いません.上段のブログ説明文にもそのようなことを書いておきました.
ただし,私は一向に構いませんが,レポートを課した先生は許さないと思いますのでバレないように.

さて,
前回の記事では.スポーツが円滑なインフラ整備に一役買っていることを説明しました.
そして今回の記事では,スポーツ活動が発展してくることで,実は勝手に町並み整備ができていくのではないか,という可能性をお話しします.

その話をするにあたって,まずはスポーツの起源に触れておきましょう.
スポーツは「祭祀」や「祭典」がその起源の一つであるとされています.
一般に知られるスポーツ種目でも,その起源に「祭り」との関係が認められるものは非常に多く,近代スポーツ誕生の代名詞でもあるサッカー(フットボール)も,イギリスの各農村で行われていた祭りが起源であり,ラクロスもネイティブアメリカンの祭りに源流をみることができます [文献1].
そう言えば日本の国技である相撲も,神事としての歴史を持つものです.オリンピックも「平和の祭典」と称されるように,スポーツイベントは一種の祭りと捉えることもできましょう.

ゆえに祭りとスポーツは,その機能においても強い関係性が認められることが推察されます [文献2].
その一つして考えられているのが,防災としての機能です
前回の記事では,スポーツ施設が防災施設としての機能を有する,という点をご紹介しましたが,今回はさらに解釈を拡大し,スポーツに防災機能が有機的に備わっている点を説明します.
祭りと防災については,前回もご紹介した,土建国家復活を願う京都大学の藤井聡先生のご著書でも紹介されていました[文献3].

典型例をあげましょう.
2011年に発生した東日本大震災は津波被害の強大さを知らしめましたが,古くから東北地方は津波に悩まされていたことも知られています.
そんな東北地方のお祭りは,地震と津波対策との関係があるのではないかと考えられています.
そうした中でも,日本国から重要無形文化財の指定を受けている岩手県室根神社の荒祭りは,津波対策を祭りという形で後世に伝えているのではないかと推測されています.

神輿をかついで高台に駆け上がる様や,その際,決して海の方角を向いてはいけないといった掟が,津波に対する畏怖と,住民のコミュニティを高める文化として表れているのではないかというのです [文献3].つまり,祭りを通して津波対策を地域の共同体意識に刷り込むものという考えです.

この祭りによって伝えられるものは津波対策としての振る舞いだけではありません.
こうした祭りを伝え残すという伝統は,祭りを行うために整備された「道」も伝え残すことになります.
いざという時に必要な道を確保しておくこと,どのルートが山の上(避難地)に向かうために最適なのかを,祭りを通してその身に刻む伝統であるとも考えられるのです.

現代においては,ジョギングやウォーキングといったスポーツ活動がこの役割を担えるの可能性があります.
前々回の記事,
スポーツは健康になるためのツールではない
では,批判的に捉えていた健康づくりのためのジョギングやウォーキングですが,ここでは敢えて逆手にとってみましょう.

目下,ジョギングやウォーキングといったスポーツ活動が盛んであることは確かなことですから.これが祭りに代わる機能として期待できるのではないでしょうか.
町を走り(歩き)回ることで,自分が住んでいる町の道や地形について身をもって感じ取ることができます.

例えば,最も適切な避難地点まで自身の体力であればどれくらいで到達可能か?このルートがダメなら別ルートはあるか?といった判断は,普段から運動していなければ把握できません.
一人だけでなく複数の住民同士でこれらのスポーツ活動を行えば,助け合いの精神も育まれるでしょう.
さながら,普段から避難訓練をしている状態を作り出すことができると言えるのです.

私も実際,引っ越してきたこの町がどのようになっているのか,グーグル・マップや地図だけでは把握しきれませんでした.
しかし,ジョギングや気分転換に自転車をこいだりすることで,どのような地形になっているのか,まさに身を持って知ったのです.今の自分の体力であれば,どういうペースでどれだけ動けるのかを知ることは,サバイバルにとって重要な情報です.

私の恩師は,出張先でも朝起きてジョギングやウォーキングをすることを習慣にされています.
見知らぬ土地だからこそ,こういった習慣がいざという時の防災対策になるのではないかと,今は私も見習っております.

そして,こうしたジョギングやウォーキングがさらに盛んになれば,車道優先に作られた道路も,走りやすい(歩きやすい)道路として改修される計画もでてきます.

そういった意味で,東京マラソンや大阪マラソン,そして私も選手ではないのに走り回るはめになった神戸マラソン(笑)に代表されるジョギング・ブームは,「ゆとりをもった道路づくり」を要求する根拠となるわけです.
「スポーツしやすい町づくり」を通して,結果的に「災害に強い町と共同体づくり」を推進することが期待できるのです.

報告書の図を元に改変
この「ゆとりをもった道路」を一つとっても,強力な防災の効果が期待できます.
左図は,1995年の阪神淡路大震災において,火災被害が深刻であった兵庫県神戸市長田区の「道路の幅員と延焼率」に関するデータです [←リンクしてます].

延焼を防ぐためには12m以上の道路,もしくは何もない空間が必要であり,逆に言えば,そうした空間があれば延焼をほぼ100 %防ぐことができることを示しています.

また,幅広い道路であれば地震等の自然災害で建物が倒壊しても道路が寸断されることは少ないため,避難経路を確保することができます.幅の狭い道路であれば,救助や災害復興のために車両や重機を入れることも困難となるからです.

こうした建物の延焼や,建物崩壊による道路の寸断といった危機を防ぐためにも,日本の「祭り」が伝統として機能しているのではないかと報告する論文もあります [文献4].

日本では水や消火剤を用いた本格的な消火作業をするようになったのは近代のことで,それまでは延焼を防ぐために近隣の家屋を建て壊して鎮火を待つことが火災対策でした [文献5]. 
つまり,火災対策とは延焼しない空間を作り,維持することに他なりません.そして祭りにこそ,火災・災害対策としての文化的機能が垣間見えます.

その関係を示す代表例として,私の第二の故郷である大阪府泉州地域にみられる「だんじり祭り」が挙げられます.
「だんじり祭り」とは,山車の一種である「だんじり(地車)」を大勢の人々が引きながら高速で走り回る勇壮な祭りです.そして,コンスタントに死者が出る祭りとして有名です.
そうした祭りを(華々しく,そして一応安全に)行うためには,幅広い道路を伝統的に確保せねばなりません.

だんじり祭りに限らず,これに類似した山車や大型の神輿を用いる祭りは全国各地にみられますが,このような祭りがある地域は,伝統的に幅広い道路と整備された町が維持されるようになるわけです.
また,だんじりを引く様相に競争的なムードが入っていることから,より良い祭りにするために各地域でトレーニングが行われ,強い共同体意識が育まれています.
「今年はあいつらには負けへんで」という心意気が溢れ,この地域では夏の終わり頃から,毎晩「ドーっりゃ!ドーっりゃ!」と叫びながら若い衆がランニング・トレーニングをしています.

これについて私は学生時代は「うるせぇ!」と思っていましたが,今では良い伝統だと受け止めています.
※ちなみに,どれだけ泉州人が「だんじり祭り」に “かけているのか” を示すものがあります.
暦(カレンダー)です.この地域のカレンダーは1月始まりではなく,祭りのある10月始まりになっているのです.泉州地域では,「だんじり祭り」によって年が始まります.
「だんじりがあるんで..,すみません」と,その週のリーグや試合を放棄する地元学生もいます.

話を戻すと,だんじり祭りに限らず,かなりの数の「祭り」が,防災機能を持った町や道路の維持と,強い共同体意識を育むことに寄与してきたのではないでしょうか.
このような祭りの機能も,現代ではスポーツが,特にスポーツイベントが担っていると言えるでしょう.

先に例として述べたように,マラソン大会などのイベントが実施され,住民がトレーニングのために町中をジョギングするようになることで,ゆとりある道路整備が行われます.
また夜間にジョギングをしたい女性なども増加しますから,人通りが多く見通しが良い町並みや道路の整備が要求され,治安を高める意識も強くなります.

時々ニュースになる「地方の田舎で企画されたビッグスポーツイベント」において,準備不足だけではなく,不十分なアクセス経路が渋滞や混乱を招くことが知られています(プロスポーツの地方巡業とか,F1とか).
塵も積もればで,こうしたニュースがきっかけで「やっぱ地方にも大きめの道路が必要だよね.これが災害時だとしたらヤバイじゃん」という空気ができれば幸いです.

さらに,2011年の東日本大震災の教訓として,自身の体力を高めておくことの重要性が意識付けされ,フィットネスクラブ入会への関心が増しているそうです(これは「健康・体力づくり事業財団」のカンファレンスでお聞きしました).

こうしたことを踏まえ,燃料を使わない自転車の利便性も再評価されており,スポーツサイクルを体力づくりも兼ねたレジャーとして楽しむ人々も増えています.
通勤等にスポーツサイクルを利用する人も増加しており,このような背景から,実際に2011年はスポーツ自転車産業の売上も増加しています [文献6].

その一方で,近年は自転車と歩行者による事故が懸念されています. 
これについては自転車側のマナーの向上はもちろんのこと,現在の日本の道路は自転車が車道を安全に走れない状態であり,本来なら自転車の通行が禁止されている歩道を走ることが常態化していることが問題点の一つとして浮き彫りになりました.
以前の記事■ETCをつけて思うこともご参考までに
そしてこのようなことがきっかけで,自転車が安全に走りやすい,ゆとりを持った車道整備が実際に求められています [文献7].
 
こうした動きはまさに,地方行政に対し道路の改修を申し立てる流れに結びついているものであり,防災意識とスポーツが相乗効果を生みながら,住みよい安全な町づくりに貢献している例でしょう. 

スポーツによって国土強靭化をスムーズに,しかも健康的に(つまり,シレーっと)推進できるということがお分かりいただけたでしょうか.


文献一覧
[1]稲垣正浩 , 谷釜了正編. スポーツ史講義. 東京 : 大修館書店, 1995.
[2]森川貞夫 , 編佐伯聰夫. スポーツ社会学講義. 東京 : 大修館書店, 1998.
[3]藤井聡 , 中野剛志. 日本破滅論. 東京 : 文藝春秋, 2012.
[4] BhandariB.R , OkadaNorio. Analysis of Social Roles and Impacts of urban ritual events with reference to building capacity to cope with disasters: Case studies of Nepal and Japan. kyoto : Kyoto University, 2010. academic dissertation.
[5]目黒公郎 , 村尾修. 都市と防災. 東京 : 放送大学教育振興会, 2008.
[6]日本生産性本部. レジャー白書2012. 東京 : 公益財団法人日本生産性本部, 2012
[7]日本自動車工業会. 自転車との安全な共存のために.  社団法人日本自動車工業会, 2009.