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いわゆる「レーダー照射事件」についての率直な解釈

「お前は平和ボケしている」という批判を承知で,率直な感想を述べてみたい.
先日の「韓国海軍レーダー照射事件」です.

日本側からの具体的な反応とか説明が出てから書こうと思っていた記事ですが,それから1週間,たいした反応もなかったので書けず仕舞いでした.

ですが,ここにきて防衛省のホームページでレーダー照射時の映像が公開されました.
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(防衛省2018.12.28)

本件を伝えるニュースはこんな感じでした.
韓国艦レーダー照射は2回、数分間「意図的な事案」(産経新聞 2018.12.22)
韓国海軍駆逐艦が石川県・能登半島沖で海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、照射が2回にわたって行われていたことが22日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。防衛省は同日、レーダー照射に関し「極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求める」との声明を改めて発表した。
以前も中国軍とそんなことがありましたね.
中国海軍レーダー照射事件(wikipedia)

実のところ,こういう事件について私はそんなに重要視していません.

以前の中国軍との時も,記事にしようか迷いましたが,結局大した事ではないと思ってスルーした事件です.

これって,その場の反撃も,その後の政治的な報復もできない立場に置かれている現在の日本が,韓国におちょくられただけでしょう.

むしろ,どうして日本政府やマスコミはこんなに本件を騒ぎ立てるのか?

騒ぎ立てない方がおかしいって?

いえ,この事件は水面下で片付ける性質のものじゃないのですか? 軍隊同士の索敵調査の話だし.

しかし,いわゆるウヨク的な発言が日本のネット上で湧き上がりました.
ウヨクみたいなメディアでも大々的に報じました.
「米軍なら即座に撃沈」レーダー照射、日韓関係さらに冷え込み(産経新聞 2018.12.21)
火器管制用レーダーは「FCレーダー」とも呼ばれ、ミサイルや火砲を発射する際、目標の距離や針路、速力、高度などを正確に捕捉し自動追尾する「ロックオン」に用いる。発射ボタンを押せば攻撃可能な状態だ。防衛省幹部は「米軍なら敵対行為とみなし即座に撃沈させてもおかしくない」と語る。
あのさぁ,「米軍なら・・」とか言ってるけど,自衛隊は米軍ではありません.
そんなことは幼稚園児でも知っています.

日本の自衛隊ならレーダー照射しても反撃されないし,政治的にも劇的な変化を起こさないことが分かっててやっているんです.

どこのレベルでの嫌がらせなのかは分かりませんけど,これは韓国側からのメッセージが込められた行為と言えるでしょう.


それに,上記の記事でも
「米軍なら撃沈される」
って書いてるけど,もし本当にアメリカ軍が韓国軍からレーダー照射を受けた場合,本当に即座に反撃されて撃沈なんてことになるのか?

今回の海上自衛隊のように,レーダー照射している船が韓国籍のものだと確認できている時点で,米軍機は回避行動をとって事情確認をするんじゃないのですか?


現状,アメリカと韓国は交戦状態にあるわけではないし,その現場においては
「何かの間違い」
と判断して警戒態勢をとるのが,重大な意思決定をとるプロセスじゃないでしょうか.

ともあれ,今回の騒ぎっぷりが逆に興味深かったので,他の国同士のケースだとどうなのか調べたくなったんです.

そしたら,やっぱりこういう記事がヒットしました.
中国軍艦のレーダー照射への日本政府の対応は整合性を欠く――海上事故防止協定では禁止せず(週刊金曜日 2013.2.28)
幸いすでに六七年も戦争や軍事的対決を経験していない日本では、照準用レーダーの照射を受けただけで、まるで武力紛争が始まったように一面トップで報じられたが、冷戦時代の米ソ海軍は格段に激しい嫌がらせや威嚇行動を日常的に続けていた。
(中略)
米ソの海上でのチキンゲームは一歩誤ると核戦争にもなりかねないため、両国は七二年に海上事故防止協定(INCSEA)を結び、英、仏、独、伊、加などもこれに続いた。日本も九三年にロシアと同様な内容の協定に調印した。この協定は互いの監視行動を認め、衝突防止の方法や事故の場合の情報交換、危険な行為の禁止を定めている。艦船が他方の艦船、航空機に「砲、ミサイル発射装置、魚雷発射管、その他の武器を指向することによる模擬攻撃」や艦橋などへの探照燈の照射、乗員、装備を害するレーザーの使用、意図的通信妨害などが禁じられたが、火器管制レーダーの照射は禁じていない。対決に慣れた米ソはさほど危険と認識しなかったのだろう。
つまり,火器管制レーダーの照射というのは,軍隊同士が合同演習ではない時にみられるヤンキー達のメンチの切り合いみたいのものということですね.

もちろん,メンチ切るのは無礼だし,それが元で殴られても法的にはメンチ切ってきた奴の方が悪いんだろうけど,だからってこれが発端で戦闘行為になるようなことはほぼ無いと,そういうものです.

韓国軍としては,さしずめ

「最近いろいろ見栄はった言動をしてるけど,俺らを舐めてんじゃねぇぞ.そこんとこ夜露死苦」

というものではないでしょうか.

で,日本は見事にそれに対し
「うえ〜ん,あの人が睨んでくるよぉ.怖いよぉ」
って騒いでると.

どおりでこの件について日本はカッコ悪いわけだ.
挙げ句には「韓国は世界から信用されない」とか「アメリカが黙っていないぞ」などと報じだす.

まるでどっかの金持ちのボンボンではないですか.

で,やっぱりというか,この事件を率先しておおっぴらにしたのは金持ちのボンボンだったようです.

今回の現場における映像の公開も安倍晋三の指示があったからみたい.
渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も-映像公開(時事通信 2018.12.28)これは防衛省の方が常識感覚があります.当たり前ですよね.
こんな事件を表に出す必要などありません.

多分,極東における外交で蚊帳の外になっている安倍政権が,マウントとってきた韓国に対し,マウントし返すつもりで事態を公表したのかもしれない.

でもそれってのは,学校の廊下でヤンキーにツバ吐きかけられた金持ちのボンボンが,ヒステリックに怒りだしているようなものです.
別に殴りかかるわけでも,ツバを吐き返すわけでもない.
その代りに
「こんなこと先生が許さないぞ」
とか
「お父さんに頼んでお前の会社に圧力かけてやる」
とか言ってるようなもの.

これを外から見てたら,同情こそしくてれるかもしれませんが,カッコ悪いんですよ.

「やっぱりあいつは情けないボンボンだ.可哀想に」
と思われるだけ.


じゃあ,こういうヤンキーへの対処はどうすればいいかというと,もしもの時の暴力沙汰に屈しないよう普段から体を鍛えておくこと(国防軍の強化)と,「今度やったらわかってるな」という無言の圧力を見せることです.

表立って騒ぐのは逆効果.
それによってヤンキーが更生するわけないし,騒いだ奴がバカにされるだけ.

ところが問題なのは,今の日本は体を鍛えるつもりもないし反撃するつもりもないくせに,
「俺が憲法の呪縛から開放されて本気出したらヤバイんだぜ」
と中二病かましてるところです.


別に私は韓国軍がしたことを褒めているわけでも,自衛隊に落ち度があると言いたいわけでもありません.

水面下で圧力をかけてればいい話を,わざわざ表に出して政治的に報復するだけの能力が日本にあるのか? ということを問いたいのです.

それが無いのに大見得を切って騒ぐことは,恥の上塗りになるのでやめましょうということです.