2015年12月10日木曜日

俗物が俗物らしくしちゃダメ

最近出た本に,適菜収 著『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』というのあるんですけど,その第一章が「なぜ保守派はバカが多いのか」なんです.

思わず声を出して笑いました.
私も最近そんな記事を書いていたからです.
なぜ右翼・保守的な言動をする人にバカが多いのか

なんというシンクロ.
さすがに適菜氏は丁寧に考察されていて,なぜ右翼・保守的な言動をする人がバカなのか詳細に論じられています.

で,なぜ保守にバカが多いのかというところですが,それは逆なんです.
適菜氏も論じているところですが,保守にバカが多いのではなく,バカだから保守になるのです.
私はこれについて,「バカだから保守を“選ぶ”」という表現を使わせてもらいたいと思います.
“選ぶ”とはどういうことか,ってのを書いた記事が,
コピペ・レポートの行き着く先は
なので,そっちも暇だったら読み返してみてください.

もちろんちゃんとした「保守」の思想を抱いている人もいるのですが,街角でよく目につく保守,「この人は保守だ」と評価される人,そうして保守派から持ち上げられる人の大多数には「残念な人」が多いというのが現状です.
その大ボスが現在の日本国首相です.

さて,この「バカだから保守を選ぶ」という点について,非常に興味深い考察をされている本を見つけました.
福田恆存 著『国家とは何か』の冒頭に「俗物論」というのがあります.
「あ〜,これこれ.これが言いたかったんだよ」って感じでめっぽう面白く,何度も読み返している今日このごろです.

これを読んでいて思うのは,現在の日本の保守派っていうのは,つまりは「俗物」なんだな,ということです.それも酷く劣悪な俗物です(福田氏によれば,ほとんどの人は俗物であり,あとはどれだけ俗物であることに「素直」なのかが問われるのだという).
なので,「現在の日本の保守派にはバカが多い」というのは下品な言い方になりますので,もっとやさしく,「現在の日本の保守派には俗物が多い」と表現したほうがいいのかもしれません.

結論から言えば,福田氏が言う俗物とは「世間に対する自己の関係に不安を感じ,その不安を解消するために,劣弱な自己を拡大修飾して現実の自己以上の見せかけをつくろうとする」人のことだそうです.

俗物は常に人の目を気にします.自分がどれほど特別で特徴的な存在であるかを他人に意識させたがるのです.
東京などの中央に住んでいる俗物は,田舎者に対して自分が優越的立場にあることを静かに宣言したがります.決して露骨に見下しませんが,「なんだかんだ言って,実は東京が一番田舎だったりすんですよ.ハハハ(笑)」などと愛想よく標準語で話すのが中央型俗物だそうです.

それに対し地方型俗物は,自分が旧名家とつながりがあることや家柄の良さ,住んでいるところの歴史的意義を誇ります.つまり過去の優位性で自己の威信を保とうとするのだそうです.
地方型俗物はお国自慢をしながらも,自分がどれだけ中央に近いかを自慢します.つまり,東京で仕事をしたことがある,東京の有名人,政治家,役人と会ったことがある,関係が有ることをその他の地方民に自慢したがります.

この地方型俗物を国際的にみれば,国際型俗物になります.
国際型俗物は,愛国心を大事にしてお国自慢に精を出している一方で,自分がどれほど国際的なのかを自慢します.海外で仕事をしたことがある,海外の有名人,政治家,役人と会ったことがある,関係が有ることを国内の者に自慢したがります.

趣味にも同じことが言えます.
誰もが認めるポピュラーな趣味に取り組むことで,誰もが認めるポピュラーな人間であることを他人に意識させたがるのが趣味俗物です.分かりもせず分かったようなふりをする俗物がはまるのが酢豆腐俗物.そうした酢豆腐俗物に嫌気が差して,「分からないものは分からなくていい」と居直って,それだけにしてればいいものを,「俺が分かるものが良いものだ」とポピュラーな趣味を嘲笑し,少数派である自分の趣味に優越感をもつのが没趣味俗物.

これが職業になれば,勤務先や職位・地位にこだわりをみせる俗物がいる一方で,そうしたものに一切興味がないことをわざわざ宣言する俗物など,いろいろな亜種が現れます.

こうしてみますと,現在の日本社会がおかれている状況というのは,それぞれの俗物が俗物であることを隠さず跋扈している状況であることがわかります.
ようするに,自分が俗物であることへの諦めを通り越して,別に俗物でいいじゃないか,むしろ俗物であることが良いことだ,というふんぞり返った態度をとっている奴が多いということです.

で,そんな態度で政治や評論した結果,保守派は俗物ばかりになってしまった,そう思うのです.
かつて,左翼的言論が一世を風靡していた頃があったそうです.これに対し,少なくない大衆や評論家が「アンチ左翼」という点で自己の優位性や特別性を見出すという俗物根性を発揮した結果,俗物保守が誕生しました.

それゆえ,俗物保守派は俗物らしい思考パターンにその特徴があります.
俗物は国旗国歌が好きです.なぜなら彼らが俗物だからです.
俗物はTPPや集団的自衛権が好きです.それは俗物だからです.
俗物は競争と淘汰が好きです.俗物だから仕方ありません.

地方を活性化させるとか言いながら,中央の都合で政策を進めたり.
愛国心を声高に唱えながら「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去った」と言ってみたり.
デフレ脱却,一億総活躍を掲げながら労働力確保のため移民を入れようとしたり.
地方都市なのに都構想と言ってみたり.

いずれも,酷い俗物をこじらせた者ならではの着想です.
まあ,とにかく破茶目茶なことがまかり通るのも,俗物が俗物であることを恥じなくなったからではないか.
福田恆存の俗物論を読んでいると,そう思わされています.


今回の話題について,詳しくは以下の書籍をどうぞ.