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45:2013年2月27日

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2013年2月27日(水)10時30分

 事務局長室にこの事態を調査する委員が集まっている。
 つまり内部調査委員会。『内調』だ。

 彼らを前に、穂積里香が事情聴取を受けている。

 穂積の正面に座っている、見知らぬ50代くらいの男が質問をしてくる。
 その他、3名の知った顔の事務員が座っているが、彼らは何もしゃべらない。
 メモをとっているだけのようだ。

「では、穂積先生としては、他の学生に4年の萩原さんが『卒業できない』ということを漏洩しているわけではないんですね?」

「はい」
 穂積は噛みしめるように返事した。

「では、えぇと、藤堂先生のところの学生、ゼミ生から聞いたと、萩原さんは言っているようなのですが、これについて知っていることはありますか?」

「いや、私はあんまり知らないんですけど。でも、藤堂先生が学生と話しているのをボイスレコーダーで録音していますので、もしかするとそれが参考になるかと」

「え! そんなのがあるんですか?」

「はい、藤堂先生、かなり大声でしゃべっていたので。萩原さんのことでしたし。私の学生のことなので、録っておいたほうがいいかなぁって」

「そうですか。では、ぜひその録音を聞かせてほしいです。提出してほしいのですが、いいですか?」

「はい」



 事務局長室に藤堂道雄が呼ばれた。
 知った顔の事務員が3人。
 正面に座っている50代くらいの男は見たことがない。
 その男が質問を浴びせてくる。

「藤堂先生、先生が内部情報を漏洩しているのではないか、という件ですが」

「いやぁー、たぶん学生がデマを流してるんですよ」
 藤堂は即答する。

「デマですか?」

「はい、萩原っていうのは、授業に出てなかったんで、たぶん卒業できへんやろ、って言うてたんですよ。それを『藤堂先生が卒業できないと言っていた』というふうに話してるんです」

「そうなんですか」

「はい、学生にも聞いてみました。やっぱりそうでした」

「そうなんですか」




46:2013年2月28日