2012年2月19日日曜日

スポーツ復活計画 さしあたってスキー

先日まで大学の「スキー実習」で雪山にこもっておりました.
一週間経って下界に下りてきましたが,特に世の中に何か変わった様子はないようです.

受講している学生は「まだ帰りたくない」と名残惜しんでいましたが,私としてははゲレンデを離れるのが寂しいという気持ちは一切沸かず,むしろ早くネットが使える街に戻りたい,普通の大学の仕事ができる環境に戻りたいとワクワクしながらの帰り路.

こちら側としては準備にエネルギーをかなり割いている企画ですので,さっさと終わらせたい重労働.

実際,昨年の1月〜2月はこの「スキー実習」があったがためにブログを休止しておりましたし.


んで,実習はというと,
私が講習を受け持った班の学生達はスキー未経験組.
初日はいたるところで “産まれたての子鹿” や “雪だるま状態” になっており苦労しましたが,次の日からは緩い斜面なら安定して滑れるようになっておりました.
転倒せずに滑れるようになったら楽しさも倍増するものです.

4日目からは中級者コースを滑れるようになり,
「プライベートでも気軽にスキーを楽しめるように」
という当初の目標は達成.
なにより,学生にケガや強い疲労感を起こさせずに終えることができたことに満足しています.
しんどい想いをして上手くなっても,スキーを続けようとは思ってくれないでしょうから.

写真は受け持った班の学生との記念写真.
バレないよう,しっかりとぼかしております.

さてこのスキーですが,以前の記事,
事実に基づく教育を
でもふれたように,年々衰退の一途をたどっております.

一目瞭然ですね.参加人数は10年前の半分です.

実際,私としてもこの「スキー実習」という “大学の御仕事” がなければスキーをやっているかどうか怪しいもので.

「用具費や交通費が高い」,「まとまった日や時間が必要」,「初心者にハードルが高い」といったネガティブな要素がたくさんあるスポーツなのです.

「私をスキーに連れてって」とかいうTVドラマの影響を受けてブームに火がついたそうですが,当時・小学生にもなっていない私にはさっぱりの経緯です.
私としては “連れてって” などという受動的な態度でスタートしたブームだから衰退したのだと邪推しております.

他には冬季オリンピックの影響を受けて活気づくこともありますが4年に1回ですし,基本的にはバブリーな時代に台頭したスポーツなので「金をかけて当然」な雰囲気が漂っています.

さて,このスキーをどのようにして参加人数を増やしていくのか?を考えてみましょう.

まずは現状確認.

スキー実習中の宿舎の支配人いわく,
「大学のスキー実習参加者数はどこも年々減ってきました.少子化ということもあるのでしょうが,スキー実習自体を取りやめる大学も増えてきましたね」とのこと.また,
「まだスキー実習をやっている大学は,○○(本学)さんのように,そこの大学の先生が自ら教えているところですね.やっぱり外部講師やインストラクターを雇ったりしている大学は,学生の満足度も低いんじゃないですか.そういう大学はスキー実習から手を引いています」
ということです.

スキーを専門にしている非常勤講師の方と話したのですけど,今のスキー場は「コアなスキーファン」か「子連れファミリー」でほぼ構成されており,以前はたくさん見られた初心者学生グループやカップルがいないのだとか.
あと,
「修学旅行で安易にスキーを組み込んでいた時期がありました.専門家ではない先生がスキーを教えてしまい,スキーの楽しさを知らない子供たちが増えてしまった.最近,一気にスキー熱が冷めているのを感じます」
というエピソードも.

これらの状況を聞いた上での私のスキー復活案は,
学校や大学でスキー実習を積極的に組み込む.そしてそこではプロのインストラクターをしっかりつけて(特に初心者ほど),スキーの楽しさを伝える
というもの.

インストラクターを雇うというのは,宿舎の支配人の意見と矛盾するのでは?と思われるかもしれませんが.
私の解釈では,
【 外部講師やインストラクターを雇う → 学生の満足度が下がる → スキー実習をやめるようになる 】
という単純構造ではなく,
【 不況によりスキー実習の予算がとれなくなる →  インストラクターが雇えず,内部教員だけでしかできなくなる → 学生の満足度が下がる → いっそスキー実習をやめようということになる 】
という流れではないかと考えています.

つまり,インストラクターを雇っていたからダメになったのではなく,インストラクターを雇えなくなったのです.
スキー実習を続けている大学というのは,“インストラクターを雇っていなかったから” ではなく,インストラクターを雇わなくても自前の教員でまかなえていた大学,ということではないでしょうか.

学校や大学でインストラクターを雇ったスキー実習をやるには予算がかかります.
とは言え少ない予算でスキーを教えようとすると,修学旅行のエピソードにもあるように,安易に専門家ではない人や教員が子供にスキーを教えることになり,結果的に残酷なことになります.

インストラクターを雇えばスキー・スクールにお金が落ちます.
スキー実習や修学旅行におけるスキー講習というのは,スクールにとっては重要な収入源なのだそうです.
これによりスキーのインストラクターの雇用が増えます.これはスキー場を活性化することにつながります.

今後,学校や大学が内部教員だけでスキー実習や修学旅行スキーを続けるようなことになったら,皮肉にもインストラクターの職を奪い,スクールやスキー場を衰退させることになるのです.

なにより,「いっそスキー実習をとりやめよう」という流れはスキー参加人数を減らすことに拍車をかけます.
そして,スキーの楽しさを知らない生徒・学生の輩出が続くと,これも結果的にスキー参加人数を減らし続けることになります.


では積極的にインストラクターを雇ったスキー実習をやるにはどうすればいいのか.
学校や大学におけるスキー実習などの野外活動費を文部科学省(将来的にはスポーツ省)が助成できるようにするのです.

予算がない学校や大学が,わざわざスキー実習をする気になるでしょうか?
いえ,ありません.
それに,上述したように,スキー実習を企画するのは結構な重労働なのです.他大学さんが「いっそのこと,やめちまえ!」ってなるのも分からんではないのです.

学生も宿泊費やレンタル費,交通費といったものを学費とは別に捻出しなければならないのですから,必修科目になっていない限りは履修に躊躇しますね.

つまり,こういう構造は今の日本のデフレと同じものです.
スポーツもやっぱりデフレに陥っているわけで,そのスポーツ・デフレ対策にも助成金の導入が必要です.

別にこれはスキーに限った事ではないのですが,日本はスポーツの指導者をやっていても潤うことが少ないのです.
スポーツ指導者として安定した生計がたてられるのは「体育教員」くらいのものではないでしょうか.

でも,スキー,海洋スポーツ,キャンプといった活動を子供や学生が満足できるレベルまで指導できる体育教員がどれほどいるか.
体育教員は “広く浅く” が要求されます.おまけに「やっぱり生徒指導は体育教員だよね」ってな状況にすらなっています.

体育教員には一応,専門性種目というものはあるのですが,それ以外はお世辞にも専門性が高いとは言えません.
よほど熱心な先生じゃないと,野外活動や舞踊,フィットネス関係といった分野には案外疎いのです.

「体育の先生になるためには,何でも指導できるようになりましょう」
という指導を私も学生にやっていますし,非常に大事なことでもあるのですが,これに頼ってしまうと学校(子供)・大学という非常に大きなスポーツ指導市場を体育教員だけで独占してしまいます.
あちこちに専門性が高い人が転がっているのに,なかなか活用できていないのが現状です.

体育教員以外で,専門性が高い人材を活用できる流れを作れば高度な指導を提供することでき,スポーツの楽しみ方を知る生徒や学生が増加します.
それが結果的に日本のスポーツ参加人数を増やし,スポーツ経済も活性化させることにもつながるのではないでしょうか?

スポーツの指導現場にお金を助成することは,日本のスポーツを発展させるための重要な呼水なのです.