2013年8月9日金曜日

大阪市立大学の学長選挙について,下品だけど脊髄反射しておこう

今日のこのニュースについてです.
世間にとってそんなに影響力があるニュースではないように思えますが,私にとっては身近なニュースなので取り上げます.
橋下大阪市長、市立大学長選認めず 「選ぶのは市長」 大阪市長から任命される同市立大学長が従来、大学の教職員による選挙結果に基づき選ばれていることについて、橋下徹大阪市長は9日、「ふざけたこと。そんなのは許さん。学長を選ぶのは市長であり、選考会議だ」と述べ、今秋にも想定される選挙を認めない考えを示した。市役所で記者団に語った。
 同大の定款では、学長は大学の選考会議からの申し出に基づき、市長が任命する。ただ、学長候補者は従来、大学の教職員による2回の投票を経て選び、その結果をもとに選考会議が候補者を市長に伝えていた。現在1期目の西沢良記学長は来年3月末で4年間の任期を終える。
 橋下氏は「(学長は)選考会議で選ぶが、選考会議に僕の意見を反映させる。それが民主主義だ。何の責任もない教職員にトップを選ぶ権限を与えたらどうなるのか。研究内容に政治がああだこうだと言うのは大学の自治の問題になるが、人事をやるのは当たり前の話だ」とも述べた。 [朝日新聞2013年8月9日13時30分]
どこかの副総理のナチス発言と同じように,言葉尻をとった誤報ではないかと思い,ニコニコ動画でも確認してみました.
しかし,どうやらこの記事の通りで間違いないようです.

・・・・,
大学の自治” について考慮した上でも発言しているのですが,
・・・う〜ん....,

いささか乱暴な「人事権」とやらの行使ではないでしょうか.
私としては,この橋下市長の言動には賛同できるところもあるのですが,どうも今回の件もあさっての方向に向かって吠えているように見えます.

>選考会議に僕の意見を反映させる。それが民主主義だ。
とのことですが,これ間違っていないんだけど,知的レベルが知れる発言なのでやめたほうがいいと思います.

>何の責任もない教職員にトップを選ぶ権限を与えたらどうなるのか。
とのことですが,これまで別に問題なかったわけですから,慣例に従っておけばいいのでは?
それとも,
>研究内容に政治がああだこうだと言うのは大学の自治の問題になるが、人事をやるのは当たり前の話だ
とおっしゃるほど,市長が学長選考に口出ししなければいけないほど「大学の自治」が市立大では崩壊しているのでしょうか?

知り合いが市立大ですが,大学の体を成していないほど崩壊しているなんて,そんなことは聞いたことありません.

どうも任命権とか決定権とかを誤解してしまって,それを行使する人が世間受けする政治家には多いように思います.

なんか私にはこのニュース,とってもシュールに映ります.
このシュールさ.なんとか伝えたいなぁ.そうだなぁ.
さしずめ,深夜の外国製の通販番組あたりで繰り広げられる,
「やぁキャサリン.今回は君のキッチンの主役になるだろう,この『包丁』を紹介するよ」
「え?でもフランク,この包丁,普通に見えるんだけどぉ」
「君ならそう言うと思ったよ.でも,これはただの包丁じゃないんだ.例えば,このトマト.こうしてぇ..」
「うわぁすご~い.軽く触れただけなのにぃ」
「それだけじゃないんだ.ほらこの配線ケーブルも」
「すっご~い.ねぇ見て見てぇ.3本まとめてブツ切りよぉ」
「次はこのレンガさ.こんなふうにぃっ,それっ」
「えぇっ,そんなことして大丈夫なのぉ?うわぁ,刃こぼれしてなーい」
という感じのシュールさです.

まぁようするに,
単なるスタンドプレーだよね.しかも見せ方間違えてるよね.面白いけど.でもなんか違うくね?ただまぁ面白いけどね,
ということ.

そう言えば,こういうのに似た事例が以前ありましたね.
去年の民主党田中文科大臣による大学設置不認可の件です.
これについて,その時に記事にしていますので,
大学設置不認可について,大学教員として言いたいこと
も暇だったら読んどいてください.

今回の私立大にしても,大学側で「この人が学長でいいのではないかと」という候補者を出し,それについて問題がなければ「OK」と市長が決定していたものです.
それを,わざわざ「学長は私が決める」なんて意気込んだところで,
つまりその....,
....,
失笑.

あとですね,冒頭,「世間にとってそんなに影響力があるニュースではない」と言いましたが,実はジワジワと世間にも影響することなんですよ.

学長っていうのは,大学によっては “お飾り” のような立場の場合もありますが,学内でけっこうな影響力を及ぼします.
学長が「学問」とか「学術研究」について,どのような考え方を持っているのか,によって,その大学の方針が決まることも多いのです.

>選考会議に僕の意見を反映させる。それが民主主義だ。
と橋下市長はおっしゃっていますが,これは上述したような「知的レベルが知れる」とか「失笑」なんて問題ではなく,大問題につながることです.

つまり橋下市長の発言というのは,時の政治家や市長,民衆の意見が,大学の方針に影響するということを容認するものであり,これは何度も私が繰り返している「大学とは「王様は裸だ」と叫ぶ場所」ではなくなることを意味しています.

だったらなぜ学長の任命権が市長にあるのか?という点ですが,それは “市立” の大学だからでしょう.
それこそ,市立の大学なのですから,大学が市や人類のためにならないような事をやり始めた時に,「任命権は私にあるのだ」と睨みをきかせるためのものです.
ようするに,市立大が大学の体を成さなくなり始めた時,その市の長である市長が責任をとるようになっているわけです.

大学というのは,世間の要望とか市長の意向を受け入れるところではありません(学術活動において,という意味でですよ.その他のどーでもいい要望は受け入れるでしょう).
「おい,学費もらっといて何を言うんだ!」と言われるかもしれませんが,細かいことは
大学について
反・大学改革論3(学生はお客様じゃない)
英語教育について
とかに書いときましたので,そちらを御覧ください.

「大学の自治」というのはそういうことです.
直接的に言えば,大学にいちゃもんつけるような無教養な人が,市立大学がある市の市長をするのは出来るだけ避けてほしいのです.

レフェリーや審判に逐一注文つけるようなスポーツチームの監督,いてもいいし実際にいるけど,それは褒められたものじゃないでしょ.注文つけるにしても,やり方ってものがあります.それと同じです.
(それに,こういう監督ってファンに変に人気があったりして「いいぞ!もっと抗議してやれ!」みたいになって,実際に審判を怒鳴りつけたりしたら「そこにシビれる!あこがれるゥ!」って騒ぎ立てて拍手喝采になるところも,なんかデジャヴ)

市長や世間の顔色をうかがいながらの教育や研究をする大学.それはもはや高等教育機関としての務めを果たしえなくなった存在ですから.
ちょうど,野球の審判が観客や選手の要望を聞きながら「・・・,ストラーッイク」なんてジャッジしてたら変でしょ.それと同じです.

ただ,まぁ,この橋下市長の教育に対する発言を聞いておりますと,なんか望み薄だなぁ.
けど,猫も杓子も似たようなこと言ってるし,これが時代か...

この市長,よく「私は権力者だから,どんどん批判してくださいよ」なんて言いますよね.でも,
「(・・・けど..,俺を裸だと言う奴は消してやるぞ!)」
などと,いきりたった状態なので,こちらとしては「ハハハハハ...」と笑うしかないようにも.

市立大の皆様,そして友よ.
ご愁傷様です.