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今治・加計学園問題について

そのうち無理やり闇に葬られるもんだと思いきや,全く終息する感じがないので,私なりにこの問題を取り上げてみます.

以前の記事でも書きましたが,この手の不祥事やスキャンダルは政治にはよくあることです.
私も教育関係者なので,学校や大学の設置に政治家や官僚の関与や忖度があることは知っています.
一般の方々には胸を張って公開できないことって,たくさんあるものなんです.
森友学園問題をまとめてみた
森友学園とか加計学園問題なんて議論している場合だ
こんな大学は万事休すだ

リンク先の記事のひとつにも書きましたが,この問題の本質とは,
「しょうもないスキャンダルを,いつまでたっても終息させられない政権」
です.
上手く言い逃れればいいものを,ダメダメな言い訳に終始しています.
こんな政権が北朝鮮ミサイルへの対処とか,まともな憲法改正議論ができるわけがありません.
とっとと退陣してもらいたいものです.

総理の身内が運営に関与している!
総理の友人が経営しているところが優遇されている!
総理の意向を忖度した審査だったのではないのか!
なんていう話は,いつもあるものです.
これは「総理」や自民党に限らず,「政治家」であれば誰でも該当します.

もちろん,上述したことはスキャンダルですし,どれも「善い」ことではありません.
ですが,政治をやっている以上,どうしても偏った審査や優遇というものは起きるものです.
っていうか,これは政治に限った話ではありませんね.民間組織の中でもこんなことよくあるんでしょ?

言っておきますが,これは政治家や官僚,大学・学校経営者が望んでやっていることではありません.
過去記事でも繰り返し述べているように,こういう状態に誘導したのは誰あろう,あなた方「国民」です.

教育も民間と同じように「競争」させれば,生き残りをかけて安穏としていた教授陣は奮起し,熾烈な環境に適応できなかった弱者は淘汰されるだろう.そんな妄想を抱いていました.
ところが,弱者にしたってただでは死にません.なるべく生き残るように全力を尽くすものです.

生物の進化論的着想で取り組んだ政策ですから,当然,進化論的帰結を受け入れるべきです.
その結果,環境に適応すべく「弱者」は,政治家や官僚に取り入って,優遇してもらうようになりました.これも生き残りをかけた我々なりの努力です.
違法ではないのだから許されるんですよね.これについて,安倍信者なら許してくれそうです.

元来,教育活動というのは金儲けすることができません.儲けようとすると国民が怒るからです.「教育者が露骨な金儲けをするな!」って.
金儲けをする努力が表立ってできないのですから,どうしても「ブランドがある」とか,「既得権益業種の就職口になっている」ところに学生が集まります.
だから,金儲けに見えないようにお金を調達する必要が出てきます.それが政治家の口利きや,官僚との癒着,有力者の身内の取り込みです.
それによって,瞬間火力としての「ブランド」とか「既得権益(いわゆる補助金)」を得ようとするわけです.

大学や学校を新設する際,元・官僚や政治家の身内を「理事」とか「幹部」として招くのは,経営者側としても,そういうコネクションが欲しいからです.
過去記事でも書きましたが,「危ない大学」や「経営難の大学」ほど,官僚の天下りを歓迎し,元・役所の長を「教育者としては無能」なのにも関わらず招聘します.
これは,補助金獲得のために役立つからなんですよ.

ですから,■こんな大学は万事休すだでも書いたように,「自民党の息がかかっている」ような大学や教育機関は「危ない」のです.そして,そんなところは得てして「ブラック企業に大きな就職口を持っている」わけです.

この加計学園問題ですが,私はぜんぜんフォローしておらず,未だに騒がれているのは目にしていましたが,詳しい経過を知らなかったんです.
事ここに至って確認してみたのですが,そのなかに興味深いものを見つけました.
ネットで話題になっているの国会での参考人質疑の動画です.

なんでも,自民党の青山繁晴氏が,参考人である前川喜平前次官と加戸守行前愛媛県知事を中心に質疑をするというもので,それが「マスコミが報道しない重要な内容!」という評価を得ているんです.

見てみました.
で,私が思うに,この質疑応答をマスコミが報道しないのは,そんな価値が微塵もないからだと思います.
だって,青山繁晴氏の質疑はトンチンカンで的を外しまくっているからです.こんなもの報道する意味がありません.

冒頭,こんなやり取りがあります.
青山「(前川氏は)愛媛県には獣医師は不足していないから,加計学園が今治市に獣医師学部を新たに作ることは行政を歪めることである,という趣旨で発言をされているようだが,このような実態(獣医師が不足している)があることを知っていましたか?」

前川「違います.規制緩和をすべきかどうかという問題と,加計学園に新設を認めるかどうかという問題は次元の違うことです.私が『歪められた』と言ったのは,加計学園だけに獣医学部の新設が認められたプロセスです」

青山「今,前川参考人がおっしゃったことは,ボクの予想した通りです.これについては,もう少し後で詳しくお聞きします」
そう青山氏は言い残し,その後この件について聞くことはありませんでした.

この質疑は40分くらいあるのですが,もうね,見てるこっちが恥ずかしくなるんです.
実際,後ろの方で座っている何人かの議員は,青山氏の質疑に失笑しています.

質疑は続きます.
青山「では,加戸参考人にお聞きします.先程の前川参考人のお答えについて,どのようにお聞きになられましたか?」

加戸「先程の『歪められた』行政という発言ですが,私に言わせますと,獣医学部の問題で厚い岩盤規制が,国家戦略特区というドリルによって穴を開けていただいた.歪められた行政が正されたというのが正しいのではないかと思います」

青山「このように,前川参考人と加戸参考人の発言は,見事に食い違っているわけです」

当たり前です.しゃべっている内容の次元が全然違いますから.
私は別に加戸氏の発言が悪いと言っているわけではありません.むしろ,愛媛県に獣医学部を誘致するために尽力なさったんだなぁと尊敬します.
でも,今回の加計学園問題とは全くと言っていいほど無関係の参考人発言でした.

青山氏は大きな勘違いを持って質疑をしています.もしくは意図的なのか.
青山氏は,この疑惑の本質を「愛媛県に獣医学部を作ることの正当性」だと思っているフシがあります.
しかし,この疑惑の真の本質は,前川氏が言うように「加計学園だけが新設認可が降りたプロセス」です.皆が知りたいのも,その点です.

だからでしょう,青山氏は質疑の冒頭に前川氏から勘違いを指摘された時,「今,前川参考人がおっしゃったことは,ボクの予想した通りです.これについては,もう少し後で詳しくお聞きします」と言い返したくせに,その後,「加計学園ありきで手続きが進んだプロセス」について問うことはありませんでした.

青山氏は,あくまで「愛媛県に獣医学部を新設する必要性があること」と,「手続きそのものに違法性がなかった」ことを強調しています.
けど,そんなことは一部のモノ好きが盛り上がっているだけで,疑惑の中心ではありません.議論した上で愛媛県に獣医学部を作ることになったのであればそれでいいのだし,手続きは表向き問題がないことくらい,玄人であれば知っています.
ですが,今回指摘されている問題点というのは,その手続きの組み立て方に『忖度』があったのではないか?ということです.

どうやらこの自民党の青山繁晴氏にも「信者」がいるようでして,ニコニコ動画などでは,終始,画面に青山氏擁護のコメントが流れています.
でも,この加計学園問題における疑惑の本質を間違えてトンチンカンなことをしゃべっているのは青山氏です.見てて辛くなるくらいトンチンカン.
満員のコンサートホールで,音を外しまくって熱唱し,「サンキュー!!」とか言いながら20曲くらい歌っているオッサンを見ているようで,いたたまれない気持ちになります.

興味ない人は既に本件の何がどう問題だったのか忘れている人もいるかと思いますので,疑惑の元となっている部分を示しましょう.
流れは以下のとおりです.ウィキペディアを参照しました.

2007年〜:今治市は計15回にわたり獣医学部の新設を求めたが,文科省は獣医学部の新設を認めなかった(ここで尽力したのが,上述した加戸前愛媛県知事です)
2013年:国家戦略特区が安倍政権の下で制度化される
2015年6月:内閣府が「全国的見地」で獣医学部新設を募集2016年1月:今治市が国家戦略特区の指定を受け,獣医学部新設が可能となる
2017年1月4日:内閣府が,2018年4月に今治市で獣医学部を開設可能な1校を募集.これに対し,応募してきた事業者は加計学園だけだった
2017年1月20日:内閣府は,獣医学部を開設する事業者を加計学園に決定

ここで疑惑となっているのは2点.
1)2016年に愛媛県今治市のみ国家戦略特区としたのは,加計学園に獣医学部を作らせるためではないのか? 
2)2017年における1月4日募集開始,同月20日決定という異様にタイトなスケジュールは,加計学園ありきで進めていた,and/or,加計学園だけが申請できるように仕立てたからではないのか?

私としては,1月4日募集開始,同月20日決定というスケジュールからして,これは「加計学園ありき」なんだろうな,と察します.
全然不思議じゃありません.こういうの,よくあることですよ.上述しましたが,こういうのって民間組織の中でも似たようなことはあるんじゃないですか? 少なくとも,大学とか学会では頻発する「◯◯ありき」で進められる場合に見られる募集&選考スケジュールです.一応,公募して選考しましたよってことにするためのもの.
しかも学園の理事長が総理の御友人なんでしょ? 間違いないじゃん.
官僚の立場としても,自分の家族や出世を犠牲にしてまで止めるようなバカはしないし,普通に忖度しておくのが得策ってものでしょう.

そうなってくると,もしかしたら「今治市のみ設置を認める」という国家戦略特区の指定も,安倍総理の御友人である「加計学園ありき」だったのかのではないか,と疑われても不思議じゃありません.
つまり,安倍晋三は御友人に「国家戦略特区を今治市だけにするから,今治市で開学できるよう準備しといて」って言えば,その他の地域で開学したい事業者(例えば京都府と京都産業大学など)を排除し,加計学園だけに認可することができます.

「今治市が特区の指定を受けたのは2016年1月で,募集開始は2017年1月だから,1年も準備期間があるじゃないか.加計学園以外にもチャンスはあったのでは?」という意見を目にすることがありますが,それは大学・学部設置準備の大変さを知らない人の妄言です.

通常,大学が新しく学部を設置するには,最短でも2年かかります.
大学教員の募集サイトなんかを見ている人はご存知かと思いますが,新設学部で雇う教職員は,2年後に着任させる募集をかけているんです.
ましてや,今治・加計学園獣医学部に至っては2018年4月開学が決定しており,新しくキャンパスや施設を建設するのですから,2016年に特区を開示し,2018年4月に開学しろという香ばしい要求は,「既に見通しがついていて準備完了の事業者」しか応募できないスケジュールだったことになります.
もし本気で「公平な審査と設置準備」をしようというのであれば,特区決定後,広く周知してから4年くらいの募集期間が必要です.

そして,もし今回の「加計学園問題」という疑惑を本気で晴らしたいというのであれば,
1)加計学園における学部設置計画に関する資料を分析する
2)愛媛県今治市と加計学園の間で取り交わされた資料を分析する
ということが必要となってきます.
もしこれらの資料で,国家戦略特区が決定してないのに,それが “ありき” で動いている計画があればクロになります.

と思って,そんな資料がないかネットを調べてみたら,すぐにこんな記事が出てきました.
今治市、一転非開示 官邸訪問記録や開学スケジュール(東京新聞2017.7.15)
なんだ,やっぱり限りなくクロに近いクロじゃないか.

私は今治市に獣医学部を作ることに反対しているわけでも,安倍晋三が違法なことをしていると言っているわけでもありません.
今回のことは,99.9%,安倍晋三の意向を忖度した加計学園ありきで進められた事でしょう.だからこそ,そう思われないように配慮する必要がありましたね.
逆に,実現するはずのない獣医学部の設置準備をたまたま趣味でやっていたら,奇跡的にもそこが国家戦略特区の指定を受けたんだとしましょう.だとすればあまりにアフターフォローが杜撰です.ちゃんと資料を開示した方がいいです.

誤解してもらっては困るので繰り返しますが,私はこの『加計学園問題』というのはどうでもいいスキャンダルだと思っています.
冒頭に述べたように,私が考えるこの問題の本質とは,
「しょうもないスキャンダルを,いつまでたっても終息させられない政権」
なのです.