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ショートケーキ
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昨日の記事である,
■私をほめなさい。300字程度で。
でご紹介した「生物兵器教員」ですが,最後の方で「過呼吸患者にショートケーキを食べさせた」という話をしました.
何のことか分からなかったかと思います.
せっかくなので,このエピソードも詳細にお話しておきましょう.
『ショートケーキ事件』
ある夏の日の夕方,たぶん午後5時ごろだったと思います.
私が大学の研究室で仕事していたら,携帯電話が鳴りました.
例の生物兵器からでした.
電話に出てみると,生物兵器はこう言います.
「おぉ,◯◯先生か? お疲れさん.今な,俺はクラブの合宿でホテルにおんねん.でな,今ここで体が痙攣してる奴がおんねん.どうしたらえぇと思う?」
「あんたスポーツ指導者でしょ.自分でなんとかしろよ」
って思いましたが,学生選手が筋痙攣を起こしているようなので,助言だけでもと気持ちを切り替えます.
「どこが “つって” るんですか? ハムですか? ふくらはぎですか? つっている筋肉をストレッチしてあげるといいですよ」って言うと,
「ちゃうねん,全身やねん.ここで体を丸めてビクビク震えてるんやわ.仰向けになってぶっ倒れてるわ」って.
こりゃただ事ではないと思いましたので,「それ,救急車呼んだほうがいいんじゃないですか?」って聞くと,
「ん? そうか? ちょっと聞いてみるわ,(おい,お前,大丈夫か? 救急車はいるか? ん? そうか)もしもし,あのなぁ,いらん言うてるわ.救急車はいらんねんて.どう思う?」
絶望的な状況がそこにはあったのですが,気を取り直して助言をします.
「先生,本当に救急車はいらないんですか? そこどこですか? グラウンドですか?」
「ちゃうねん,ホテルのロビーやねん,1階やわ.ソファーがあるわ」
「そうですか.あのぉ,周りに誰かいませんか? ホテルの人とか」
「ん? そうか? ・・いや,おらんわ.受付にも人はおらんなぁ.こういう時はどうしたらえぇと思う?」
「あの,その学生,大丈夫なんですか? 大丈夫に見えますか?」
「ん? そうか?,ちょっと聞いてみるわ,(おい,お前,大丈夫か? ん? そうか),あ,もしもし,大丈夫言うてるわ.大丈夫やわ」
「あのぉ,・・・・じゃあ,安静にして大至急,誰か呼んでください.ホテルの人とか,誰かを」
「ん? そうか? これ,ストレッチした方がええんかな? 安静にしてて大丈夫か?」
「誰かを呼んだほうがいいと思います.誰か呼んでください」
「りょーかーい.アーリガートサーン.ほなな」
電話はそこで切られました.
その後,生物兵器から本件に関わる連絡はなかったのですが,後年,私は思わぬ形で本件の詳細を知ることになるのです.
卒業生からの証言
卒業式を間近に控えたある日,生物兵器が顧問・監督をするクラブに所属していた4年生の一人が「最後の挨拶」として私の研究室を訪問してくれました.
大学での思い出,クラブ活動での思い出を語っているなかに,あの夏の日の事件があったのです.
「めっちゃ大変だったんですよ,あの日.思い出すと鳥肌が立ちます」
そう言って学生は話してくれました.
練習が終わって,ホテルの部屋に戻っていたんです.
畳の上に横になってウトウトしていたら,携帯電話が鳴りました.
◯◯(生物兵器)監督からでした.
出たら,『早くロビーに降りてこい』って怒鳴るんです.
私,主務もやってるんで,ホテルのこととか明日のスケジュールとか打ち合わせるのかなって思いながらロビーに降りていったら,談話コーナーって言うんですか,ソファーがいっぱい並んでるところに◯◯監督が座ってるんです.こんな感じに.
って言いながら,腕組みをして胸を張り,威張ったような態度をとってみせます.
さすが4年間を共にした部員だけのことはある,よく似ています.
何か怒られるんかなぁって思いながら近づいたら,◯◯監督が座ってる前の床に,学生コーチの□□さんが倒れていて,ブルブル震えてるんです.
凄いんですよ,ブルブル震えてるんです.
口から泡も吹いてました.
息が荒くて,うめき声をあげながら,ゴロゴロ転がってるんです.
でも,◯◯監督はソファーに座ってるんです.腕を組んで.こういう感じに.
・・凄くないですか?
凄いです.凄すぎワロタ.
だから言いましたよ.『◯◯監督!,□□コーチが倒れています!』って.
でも,『安静にしとけ』って言うんです.□□コーチは死にそうなのに.
ああ,なるほど.って私は思いました.
安静にして,人を呼んだのですね.
で,そしたら◯◯監督は『今日の晩飯はなんや!』って聞くんです.
今日の晩飯はなんやって言われても,意味不明じゃないですか.
だから『え?』って聞いたんです.
そしたらめっちゃ怒ってくるんで,だから仕方なく,
『たしか,ハンバーグとコーンスープ,それにサラダがついています.ご飯とサラダはおかわり自由です』って.
そしたら監督,なんか考えだして,その日のお昼に監督の知り合いの先生からもらった,差し入れのケーキを3つか4つくらい持って来いって言うんです.
でもなんでケーキだったんですかね?
知らん.
とにかく早くケーキを持ってこないといけないと思ったので,急いで部屋に戻って冷蔵庫からケーキを箱ごと全部持ってきたんです.
戻ってきたら,『急いで□□コーチにケーキを食べさせろ』って言うんです.
意味不明じゃないですか.
でも,断ったら怒られるんで食べさせることにしました.
でも,どのケーキを食べさせたらいいのか分からなかったので,『どのケーキがいいですか?』って聞いたんです.
そしたら監督は,『□□コーチに聞いてみ?』って言うんで,□□コーチに『どれがいいですか?』って聞きました.
そしたらコーチは『いらんわボケ』って苦しそうに言うんです.
だから監督に『監督,コーチはケーキを食べたくないそうです』って言いました.
けど,監督が『食べさせろ!』って怒るんで,とりあえずチーズケーキから食べさせることにしました.
こうやって抱き起こして,口に突っ込んだんです.
でも,コーチは『いらない』って言うんです.『なんでケーキやねん』って.
たしかにそうだなぁって思ったんですけど,監督に怒られるんで食べさせました.
そしたら監督,『今度はショートケーキにしよう.ショートケーキが効くんや』っていうんです.
でもショートケーキって発作に効くんですか?
効かないよ.
頑張ってコーチに食べさせようとしたんですけど,コーチは口が動かないんです.
だから食べてくれませんでした.
そしたら監督が怒って『□□コーチ,食べなアカン.食べぇ!』って.
私もがんばってコーチの口にケーキを押し込んだんですけど,息が荒いし,すぐに溢れてくるんです.
なんだかファンシーな地獄絵図ですね.
そのうち,□□コーチが『もうえぇ』って怒り出して.
それに,発作も治まってきたみたいで.
そしたら監督は『よし,効いてきたな』って言い残して,部屋に戻っていきました.
なんで監督はケーキを食べさせたんですかね?
あのあと,どのケーキが一番効くか解説してくれたんですけど,もう覚えていないんです.
覚えてなくていいです.
ちなみに,この学生コーチが発作を起こしたのは,クラブの指導方針について話し合っている中で,この生物兵器と意見が対立したことが要因の一つらしい.
強いストレスに曝されると,たまにこういう症状が現れるとのこと.
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何のことか分からなかったかと思います.
せっかくなので,このエピソードも詳細にお話しておきましょう.
『ショートケーキ事件』
ある夏の日の夕方,たぶん午後5時ごろだったと思います.
私が大学の研究室で仕事していたら,携帯電話が鳴りました.
例の生物兵器からでした.
電話に出てみると,生物兵器はこう言います.
「おぉ,◯◯先生か? お疲れさん.今な,俺はクラブの合宿でホテルにおんねん.でな,今ここで体が痙攣してる奴がおんねん.どうしたらえぇと思う?」
「あんたスポーツ指導者でしょ.自分でなんとかしろよ」
って思いましたが,学生選手が筋痙攣を起こしているようなので,助言だけでもと気持ちを切り替えます.
「どこが “つって” るんですか? ハムですか? ふくらはぎですか? つっている筋肉をストレッチしてあげるといいですよ」って言うと,
「ちゃうねん,全身やねん.ここで体を丸めてビクビク震えてるんやわ.仰向けになってぶっ倒れてるわ」って.
こりゃただ事ではないと思いましたので,「それ,救急車呼んだほうがいいんじゃないですか?」って聞くと,
「ん? そうか? ちょっと聞いてみるわ,(おい,お前,大丈夫か? 救急車はいるか? ん? そうか)もしもし,あのなぁ,いらん言うてるわ.救急車はいらんねんて.どう思う?」
絶望的な状況がそこにはあったのですが,気を取り直して助言をします.
「先生,本当に救急車はいらないんですか? そこどこですか? グラウンドですか?」
「ちゃうねん,ホテルのロビーやねん,1階やわ.ソファーがあるわ」
「そうですか.あのぉ,周りに誰かいませんか? ホテルの人とか」
「ん? そうか? ・・いや,おらんわ.受付にも人はおらんなぁ.こういう時はどうしたらえぇと思う?」
「あの,その学生,大丈夫なんですか? 大丈夫に見えますか?」
「ん? そうか?,ちょっと聞いてみるわ,(おい,お前,大丈夫か? ん? そうか),あ,もしもし,大丈夫言うてるわ.大丈夫やわ」
「あのぉ,・・・・じゃあ,安静にして大至急,誰か呼んでください.ホテルの人とか,誰かを」
「ん? そうか? これ,ストレッチした方がええんかな? 安静にしてて大丈夫か?」
「誰かを呼んだほうがいいと思います.誰か呼んでください」
「りょーかーい.アーリガートサーン.ほなな」
電話はそこで切られました.
その後,生物兵器から本件に関わる連絡はなかったのですが,後年,私は思わぬ形で本件の詳細を知ることになるのです.
卒業生からの証言
卒業式を間近に控えたある日,生物兵器が顧問・監督をするクラブに所属していた4年生の一人が「最後の挨拶」として私の研究室を訪問してくれました.
大学での思い出,クラブ活動での思い出を語っているなかに,あの夏の日の事件があったのです.
「めっちゃ大変だったんですよ,あの日.思い出すと鳥肌が立ちます」
そう言って学生は話してくれました.
練習が終わって,ホテルの部屋に戻っていたんです.
畳の上に横になってウトウトしていたら,携帯電話が鳴りました.
◯◯(生物兵器)監督からでした.
出たら,『早くロビーに降りてこい』って怒鳴るんです.
私,主務もやってるんで,ホテルのこととか明日のスケジュールとか打ち合わせるのかなって思いながらロビーに降りていったら,談話コーナーって言うんですか,ソファーがいっぱい並んでるところに◯◯監督が座ってるんです.こんな感じに.
って言いながら,腕組みをして胸を張り,威張ったような態度をとってみせます.
さすが4年間を共にした部員だけのことはある,よく似ています.
何か怒られるんかなぁって思いながら近づいたら,◯◯監督が座ってる前の床に,学生コーチの□□さんが倒れていて,ブルブル震えてるんです.
凄いんですよ,ブルブル震えてるんです.
口から泡も吹いてました.
息が荒くて,うめき声をあげながら,ゴロゴロ転がってるんです.
でも,◯◯監督はソファーに座ってるんです.腕を組んで.こういう感じに.
・・凄くないですか?
凄いです.凄すぎワロタ.
だから言いましたよ.『◯◯監督!,□□コーチが倒れています!』って.
でも,『安静にしとけ』って言うんです.□□コーチは死にそうなのに.
ああ,なるほど.って私は思いました.
安静にして,人を呼んだのですね.
で,そしたら◯◯監督は『今日の晩飯はなんや!』って聞くんです.
今日の晩飯はなんやって言われても,意味不明じゃないですか.
だから『え?』って聞いたんです.
そしたらめっちゃ怒ってくるんで,だから仕方なく,
『たしか,ハンバーグとコーンスープ,それにサラダがついています.ご飯とサラダはおかわり自由です』って.
そしたら監督,なんか考えだして,その日のお昼に監督の知り合いの先生からもらった,差し入れのケーキを3つか4つくらい持って来いって言うんです.
でもなんでケーキだったんですかね?
知らん.
とにかく早くケーキを持ってこないといけないと思ったので,急いで部屋に戻って冷蔵庫からケーキを箱ごと全部持ってきたんです.
戻ってきたら,『急いで□□コーチにケーキを食べさせろ』って言うんです.
意味不明じゃないですか.
でも,断ったら怒られるんで食べさせることにしました.
でも,どのケーキを食べさせたらいいのか分からなかったので,『どのケーキがいいですか?』って聞いたんです.
そしたら監督は,『□□コーチに聞いてみ?』って言うんで,□□コーチに『どれがいいですか?』って聞きました.
そしたらコーチは『いらんわボケ』って苦しそうに言うんです.
だから監督に『監督,コーチはケーキを食べたくないそうです』って言いました.
けど,監督が『食べさせろ!』って怒るんで,とりあえずチーズケーキから食べさせることにしました.
こうやって抱き起こして,口に突っ込んだんです.
でも,コーチは『いらない』って言うんです.『なんでケーキやねん』って.
たしかにそうだなぁって思ったんですけど,監督に怒られるんで食べさせました.
そしたら監督,『今度はショートケーキにしよう.ショートケーキが効くんや』っていうんです.
でもショートケーキって発作に効くんですか?
効かないよ.
頑張ってコーチに食べさせようとしたんですけど,コーチは口が動かないんです.
だから食べてくれませんでした.
そしたら監督が怒って『□□コーチ,食べなアカン.食べぇ!』って.
私もがんばってコーチの口にケーキを押し込んだんですけど,息が荒いし,すぐに溢れてくるんです.
なんだかファンシーな地獄絵図ですね.
そのうち,□□コーチが『もうえぇ』って怒り出して.
それに,発作も治まってきたみたいで.
そしたら監督は『よし,効いてきたな』って言い残して,部屋に戻っていきました.
なんで監督はケーキを食べさせたんですかね?
あのあと,どのケーキが一番効くか解説してくれたんですけど,もう覚えていないんです.
覚えてなくていいです.
ちなみに,この学生コーチが発作を起こしたのは,クラブの指導方針について話し合っている中で,この生物兵器と意見が対立したことが要因の一つらしい.
強いストレスに曝されると,たまにこういう症状が現れるとのこと.
関連記事
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