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私をほめなさい。300字程度で。
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以前私が勤めていた大学の上司であり教授の一人に,想像を絶するほど仕事が出来なさ過ぎた人がいます.
オブラートに包まず評価すれば「無能」の極地なのですが,いかんせんこういう奴ほど自分を有能に見せたがるし,もっと言えば,たちの悪いことに “そう思い込んでいる”,つまり自己暗示をかけて催眠状態に入っているという状況がそこにあります.大学教員には変わり者が多いと言われますが,それが過ぎると生物兵器です.
そう言えば昔,この人についてはこんな記事を書いたこともありましたね.
■反・大学改革論3(学生はお客様じゃない)
そこで述べた,私に向けて「お前,金が欲しくないのか!?」って,どこぞの悪代官みたいに脅してきた人がそれです.
「下衆」「醜悪」「俗物」,いろいろな表現を考えてみるものの,最適なものが思いつきません.強いて言えば「キチ◯イ」が最も適切でした.
結局,その大学ではあの手この手を駆使されクビになったのですけど,クビになるまでの経緯が「昼ドラ」もびっくりの展開だったようです.
まあ,こういう生物兵器級の大学教員の存在というのは,大学の職場ではよくあることの一つでして.
たいてい,それによって精神疾患を発症する人が出たり,少なくない自殺者が発生します.笑い事のようですけど,結構な件数を耳にします.
刺すか刺されるか..,否,“刺され潰される” 殺伐とした職場に,性格がひん曲がる若手教員もいますし,頭がおかしくなってしまう職員さんもいます.
私の知り合いの女性研究者も,某有名大学の研究所に勤めてしまったことがきっかけで,常時クスリをやってんじゃないかと思うような性格になってしまいました(実際,ちゃんとした『薬の服用』はやっている).
大学教員に変わり者が多いのは,そういうエキセントリックな環境に長時間曝露されたからなのかもしれませんね.
私もそんな上司がいる職場に一時期いたことがありますが,こんなブログを書いているくらい “変わった性格” の持ち主ではありますので,致命的ダメージを受けずに今に至っています.
無能のくせに「有能」を装う上司は,摩訶不思議な命令を発することがあります.
例えば,私にメールでこんな指示を送ってきた奴がいました.
「私をほめなさい。300字程度で」
事情を知らない人にとっては解読不能なものでしょうが,一定期間付き合いをもった私には分かります.
つまりこういうこと.
大学事務局(たぶん人事課)から「今年度における自己評価調査票」みたいな物の提出を求められたのです.
で,所属していた委員会とか,クラブ活動とか,高校訪問への参加とか,授業評価アンケートの結果などの「学内業績」を書く欄には機械的に羅列・記入できたんだけど,最後のところでつまづいたのでしょう.
その欄にはきっと「今年度における自己評価の概要(300字程度)」と書かれてあった.
彼は文章が書けませんでした,まったく.
学内紀要などに掲載する研究論文も,「若いもんは経験を積まなアカンのや」などと難癖・言い訳をつけて,私に「彼の名義の論文」を書かせていたし,授業用のパワポスライドも私が作ったこともある.
マジで「中学生以下」を地で行く大学教員だったのです.
だけど当の本人は自分が「無能」であることを周りから隠せていると信じていて,それを信じるあまり,むしろ「有能」ではないかと幻を見ていたりする.
周囲の人間をうまく利用して困難を克服しているんだ,という自負のようなものになっていたわけですね.
そんな彼が「今年度における自己評価の概要(300字程度)」というタスクを前にして,これをなんとか乗り切ろうとした際の作戦が,
「私をほめなさい。300字程度で」
という文章を私に命じるものだったのです.
私に彼を「ほめる」文章を書かせて,その文章をパクれば「自己評価の概要(300字程度)」というタスクを乗り切れると考えたのです.
なかなかのグッドアイデア.
彼にしてみれば,
「大学に提出するため用の,シュッとした『自己評価の概要』を300字で書くことができないから,代わりにお前が書いてくれ」
などと直接命令してしまうと,自分が文章が書けない無能者だと思われてしまうから,そうとは悟られないように文章を獲得する方法はないものか? と思案した結果なのでしょう.
メールを受け取った時,私は「へぇ〜,そう来たかぁ.こいつも成長したなぁ」と感心したものです.
でも,文章がなかなか思いつかなかった私は,同僚の先生にこのメールを転送し,「私にはとても書けませんので,代わりに書いてくださいよ」って依頼しました.すると,即,こんな「自己評価の概要」を返してくれたんです.
◯◯(当該教員)は大変優れた人材である.
まず,早起きである.早起きであるという時点で健康的に違いない.朝に余裕を持って行動するため,的確に時間をマネジメントすることができる.当然朝ご飯も余裕を持って食べることができるため,慌てて喉に詰まらせるなんてことは皆無である.余裕がありすぎて2度目の朝ご飯を食べちゃうくらいである.
次に,学生サービスが得意である.◯◯は,焼き芋やたこ焼き等隙あらば学生にこれらの催しを行う傾向がある.ときにたかられた少年のごとき態度でこれらを行っているように感じることすらある.それは,そのくらい学生サービスに徹していることの裏返しである.決して,授業をやりたくないからこれらを行っているわけではない.◯◯なりの愛情なのだ.
また,研究,教育,実習,学科業務等何一つまともにできないにもかかわらず,それをミスターサタンばりに取り繕うスキルを有する.このような力を発揮できる人材は◯◯以外には見たことがない.
最後に,マネジメント生理学という新分野を構築し,過呼吸患者にショートケーキを食べさせるという処方を実践した.このエピソードからもわかるようにオリジナリティあふれる着想で,どこに向かうか誰にも理解できない方向へ学問の幅を拡張しつつある.これらの類い稀な行動力も評価に値する.
「お忙しい中,適切な文章を作成いただき,ありがとうございます.大変申し訳ございませんが,300字を大きく逸脱しておりますので,こちらで一部削らせていただくことをご了承ください」
ということで,本件は対処しております.
そんな彼も最終的には大学の職を追われたわけですが,私が問題視したいのは,こういう教員を「現場肌」「実践的」「学生目線」という理由で採用したがる教育環境が現在の大学にあるという状態です.
■できればこんな教員・志望者を採用したい(ただし一部の大学に限る)
彼は再起のため準備を着々と進めております.
またどこかの大学で暴れる日が来るのでしょう.
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