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映画「フクシマフィフティ(Fukushima 50)」を見て,あらためて「空母いぶき」も見て気分を害してみた

もうちょっとなんか工夫しようよ


だからって,「じゃあ,お前が撮ってみろよ」と言われても撮れないわけですけど,後払いではなく,予めお金を取っといてから鑑賞させる方式の商売をしてるんだから,こちらにも言わせてもらいたいことはある.

テレビとかでフリーに見れるものとして公開してるんなら,こんな記事は出しません.

それに,映画というのは,それを見た人達が作品について考察し合うことも楽しみ方の一つでしょうし.


若松節朗 監督『フクシマフィフティ(Fukusihima 50)』を見ました.
最悪でした.



話題作だということで,アマゾンで500円にてレンタル.
その冒頭で「監督 若松節朗」とのクレジットが登場したので,嫌な予感はしてたんです.

若松監督と言えば,その前作として「空母いぶき」を作った人です.



映画「空母いぶき」の評価については,かなり辛口なものをブログにも載せました.
ここで言う「見どころ」というのは,皮肉です.


なんかさ,
「テーマに話題性が高いから,そこで集客できたら製作費の元は確実に取れるだろ」
的な算段があるとしか思えないんです.

これらのテーマには「絶対的な信奉者・共感者」が存在していて,必ず高評価してくれる人種・層がいることに依存した映画づくりと言いましょうか.
そんな気持ち悪い出来になってるのが,妙に腹が立つ.

それ故,映画としての出来は最悪としか評せない.
私みたいな層からすれば,「二度と見るもんか」と思わせる作品になっています.


さて,「フクシマフィフティ」ですが,2021年2月現在のAmazonプライムビデオのレビュースコアは星「4.4」と,極めて高くなってます.
やっぱり,
「福島第一原発事故における職員の活躍を肯定的に描いた」
と聞いただけで,どんな映像作品になっていようと高評価をつけてくれる人がいるんです.

しかしその一方で,トップレビューはというと,「星2つ」の低評価をつけているレビュアーです.
そのレビュータイトルが,
「脱力。これが現在日本映画界の限界なのだろうか。」
というもので,非常にたくさんの「役に立った」のクリックを受けているレビュー.

概ね,私もこのレビュアーと同意見です.

このレビュアーは,そのレビューをこう書き出しています.
断片的な前評判を聞いていたので期待はしていなかったが、やっぱり駄目だ。
制作陣がだめなのか、監督が駄目なのか、脚本家が駄目なのか。多分、みんな駄目なんだろう。

なんせ,
「福島第一原発事故における職員の活躍を肯定的に描いた」
それだけの作品です.

結婚式の披露宴で「新郎の上司のスピーチ」を聞かされているようなもの.
関係者は笑顔で聞いてられるけど,知らない人からすれば,これ以上クダらない話はない.


なお,この映画は実際にあった事を基にしているから,ネタバレは事実上無いので遠慮なく書いちゃいますね.

何が酷いって,映画のラストです.
まるで,福島第一原発にいた50人(フクシマフィフティ)の活躍のおかげで,この原発事故が終息したかのような演出になっています.

冗談じゃない.
福島第一原発事故は現在進行系のトラブルです.

安倍晋三はオリンピック誘致をする際に「アンダーコントロール」と言ってましたが,結構怪しい状態が続いています.

先日(2月13日)も,福島県で大きな地震がありましたね.
その時,これが海外でどんな報じられ方をしているのか気になったので,アメリカ版のYahoo!ニュースを覗いてみたんです.
そしたら,やっぱり「原発事故のあった福島で,また地震があった」というニュースがたくさんありました.
例えば直後にはこんなYahoo!ニュースがあります.
Water Floods Fukushima Train Station After Powerful Earthquake(英語)(Yahoo!news 2021.2.14)

で,案の定,この地震による福島第一原発の怪しい状態も報じられています.
Damaged Fukushima reactors leaking coolant after last earthquake(英語)(Digital Journal 2021.2.21)
Two reactors at the wrecked Fukushima nuclear plant in Japan have begun leaking cooling water following last weekend’s 7.3 magnitude earthquake, indicating that the existing damage to TEPCO’s Unit 1 and 3 reactors has worsened.

こんなんで,オリンピックとか大丈夫?
というのが「世界の目」でしょう.

日本でもこういう報道がありました.
福島第一原発の地震計 去年7月に故障も修理せず 東京電力(NHK 2021.2.22)

なんにせよ,今も毎日約4000人くらいが事故後の作業にあたっている,一大事業なのです.


あと,演出としては「優秀な現場職員と,無能な東電本社と政府」が目立つのですが,事実を基にした映画で,しかも現在進行系でトラブっているテーマについて,ここまで断定的に「英雄」と「バカ」を描いていいのだろうか,という疑問があります.

よく知られていることとして,そもそも,福島第一原発事故における致命的な「電源喪失」を招いたのは,他でもない,2008年当時に原子力設備管理部長だった,後の吉田昌郎所長です.
東電・吉田昌郎が背負った「重すぎる矛盾」(東洋経済オンライン 2015.8.12)
吉田氏が原子力設備管理部長だった2008年3月、社内の土木調査グループから、国の研究機関である地震調査研究推進本部の長期評価を用いて試算したところ、福島第一原発が15.7mの津波に襲われる可能性があるという報告がなされた。
しかし、吉田氏を含む東京電力の経営陣は、そうした津波の発生確率は1万年から10万年に1回程度で、防潮堤建設にも数百億円の費用がかかることを主な理由に、対策を打たなかった。
これについて、去る7月17日に出された東京第5検察審査会の2度目の議決は、「福島第一原発の敷地南側のO.P.(注・小名浜港工事基準面)+15.7mという津波の試算結果は、原子力発電に関わる者としては絶対に無視することができないものというべきである」と断じ、勝俣恒久(当時社長)、武黒一郎(同副社長)、武藤栄(同常務)の3氏を業務上過失致死容疑で強制起訴されるべきとした。吉田氏も生きていたら、起訴されていた可能性がある。

別に吉田昌郎氏を非難したいわけではありません.
事実は複雑だと言いたいのです.

当時の政権をとっていた民主党の菅首相や枝野官房長官,東電本社の対応にしても同じことが言えて,全てが「現場をわかっていない無能たち」と簡単に断じることはできないでしょう.

そのあたりをバッサリと切り捨てて,実際に発生した現在進行系のあの事故を,あろうことか勧善懲悪スタイルのエンターテイメントとして描いているのが本作です.
こんな杜撰な作品を称賛しろという方が,ちょっと厳しいと思います.


「二度と見るもんか」と思っていたけど,この際,もう一回見てみた


ところで,「フクシマフィフティ」を見たついでに,二度と見ないと思っていた「空母いぶき」を,アマゾンプライムビデオでもう一度見返してみました.
今なら会員は無料で見れるので.
全部通してみたわけじゃなくて,要所要所を飛ばしながら見たんです.

で,映画館で鑑賞した時と同様,やっぱりダメでした.

空母への対艦ミサイル攻撃のCGもセガサターン・クオリティでしたし,国連の潜水艦が浮上するのも酷いCGです.
過去記事の,
では,「DVDにする際に,これらは改善されてしまうかもしれないので,映画上映中にぜひ見ておきましょう」と皮肉っていましたが,実際にDVD(動画配信)になっても酷いままでした.

戦闘シーンとか,まるで漫画かアニメです.
っていうか,原作は漫画ですけど.

別に漫画をバカにしているわけじゃありません.
実写にするなら,実写の撮り方があるだろってことです.

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