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結局,あの大学って高度なブラック大学として名を馳せているらしい

「成功は約束されている!」と言われた新設大学の今


今から8年前,私が当時赴任していた大学を辞めて,どこかに移ることを考えていた時です.
手当り次第に教員公募に応募しまくっていたら,2つの大学で面接・模擬授業にこぎつけました.

そのうちの一つが,これから新設するという大学の教員募集だったんです.

新設大学ということで,ちょっとヤバそうだなとは思ったものの,当時としては,
「もう大学教員という仕事に見切りをつけようかな・・・」
って考え始めていた時期だったので,とりあえず今いるクソみたいな大学とは別のところで仕事してみて,それからでも遅くないかなっていう感じでした.
私もまだ全然若かったし.


まだ大学校舎はありませんから,面接はその学園が運営する短期大学で行いました.
会議室に通されたら,大学設置担当の職員と,新設大学の学部長予定という人と面接になりました.


ところで,先般,大学の現状に関する小説を書きました.

実は,この小説には7年前に書いていた原作版がありまして,そちらには今回のウェブ版ではカットされた,主人公の「転職活動」の場面があります.
PDFで配布した原作版を持っている人だけしか知らないことですが,今回,そのシーンを以下にご紹介します.
(実際のところ,記事投稿として新しく文章を打つより,コピペのほうが楽だと思ったからです)

私が経験した教員採用面接を,当時覚えている限りでほぼ完全再現したものですので,いろいろと参考になると思います.
やや長いですが,暇つぶしにどうぞ.

なお,ウェブ版に合わせて,原作版から各種名称や設定などを修正しています.
また,登場人物や組織名などはフィクションです.

ちなみに,これをカットした理由は,小説の主題とちょっと外れてるかなって思ったし,関連するシーンを含めると冗長になるからです.


『どこへ出しても恥ずかしい』ウェブ版でカットされたシーン


********
2012年6月16日 13時20分

 梅雨の季節であるが、今日はカラリと晴れ渡っている。

 橿原一如は飛鳥女子短期大学の最寄り駅に立っている。

「こういうのって、転職活動っていうのかな」
 スマートフォンのグーグル・マップを使って、面接会場として指定された飛鳥女子短期大学を目指した。
 バスが出ているそうだが、歩いて15分ほどだとパンフレットにはあったから、橿原は歩いて行くことにした。

 食べないよりは食べたほうがいいだろうと、途中、駅前のサークルKで鮭と昆布のおにぎりを買って遅い昼食とする。
 何か特別なことがある時ほど、ベーシックな物や事を選択するのが橿原である。
「わさびベーコンっていうのも捨てがたかったなぁ。ま、帰ってから買うか」

 徒歩15分というパンフレットはサバを読んでいる。20分近くかかった。慣れれば早くなるのだろうか。

 飛鳥女子短期大学に着いた。
 正門とおぼしきところから眺めてめる。

「・・・、ラブホじゃね、これ」

 こういうのが女の子ウケする建物なのだろうか?
 格調の高さと清潔感は両立しないのだと考えさせられる、ちょっと気になる門構えだ。

 その門の左端には警備員がいる。そこで署名をして進んだ。

 今日はオープンキャンパスなのだという。

 ぜんぜん、オープンじゃない。事務員だか教員だか、そんな連中が見回りをしている。

「うちも同じか」

 来場者数は青葉大学の方が上だろう。
 だけど、説明会やらオープンキャンパスやら、そういったところに来る人の人数を競うことは無意味だ。
 橿原はそれを1年後に実感することになるが、それはまた別のお話し。

 事務室の受付に行けばいいのだろうか?事務室はどこだ?そこかしこに事務員っぽい人が立っているのだから、それを利用しない手はない。丁寧に案内してもらった。

 事務室に行くと「少し時間がかかっているので、もしかすると2時30分より遅れるかもしれないですが、大丈夫ですか?」と聞かれた。

 予定の時間にはまだ1時間近くあるし、急ぐ用事は当然ないのでゆっくりさせてもらうことにした。


 午後2時30分、その予定の時間になると、遅れることはなく面接に呼ばれる。

 自分でも感心するほど緊張はない。案内係につれられ、面接会場に向かう。

「どうぞ」と案内係に入るよう促されれた扉には会議室と書かれている。

 入ると、そこに中年に見える男性が2人いた。

 そのうちの若い方、50歳くらいだろうか。
「どうも、この度はご足労おかけしました。ありがとうございます。まずは・・、」
と言って名刺交換を誘ってきた。

 名刺交換をする予定で来なかった橿原は、少し慌てて名刺入れを探す。持ってきていただろうか? 大丈夫なはずだ、いつもバッグには予備も含めて入れている。

 もう一人の60歳前後であろう男性も名刺を用意し始めた。こういう面接でも名刺交換をするんだ、と興味深かった。

 50歳くらいの方から、
「遠藤慎二です。大学新設プロジェクトを運営しております。メールではありがとうございました」
と言ってきた。
 この人が遠藤慎二か。グロスの効いた整髪剤でオールバック気味にしている。やりてのビジネスマンという雰囲気だが、橿原としてはこういうキャラクタは苦手なタイプに入ってくる。

 60歳前後とおぼしき男性は、
「佐々木です。佐々木通治と言います。この飛鳥女子短期大学の学長をやっております」
と言う。
「学長」という肩書を確認したからというわけではないのだが、近くに来て見ると遠目より老けて見えた。
 60代後半といったところか。朗らかな面持ちで、好感をもてそうな人である。年齢にしてはハキハキとした物言いをする。

 名刺交換のため、少し後ろに引いていた遠藤が声をはさむ。

「佐々木先生は、飛鳥大学を新設するにあたって中心的な役割を担ってもらう予定です」

 橿原は「なるほど」とだけ言って、あとは静かに頷いていた。

「どうぞこちらへ」
 遠藤が面接用に並べられたテーブルに案内する。
 遠藤と佐々木が並んで座るところの対面に、橿原が座ることになった。

 佐々木が資料をテーブルに並べるところを横目に、遠藤が話し始める。

「あらためまして、この度は飛鳥学園、新設大学の教員公募に応募いただき、誠にありがとうございます。さて、さっそくなのですが」
 と、まずは3分間ほどの飛鳥学園に関する概要が始まった。
 高校が有名、短大にしては優秀、海外にも手を広げている、などと、いろいろと自慢じみた話が続くので、聞いていて心地よいものではない。 

「では、続きまして、今回ですね、橿原先生に着任していただくかもしれない、新設大学、つまり飛鳥大学、えー、おそらく飛鳥大学という名称になるかと予定されていますが、そちらの現段階での計画をご説明したいと思います。ご存知の通り、この大学は新設予定でございまして、まだ文部科学省より新設の認可は下りておりません。公募させていただきました書類等におきましても、2014年度開学予定となっておることを確認していただけていることかと思いますが、大学としての認可をもらう作業は2013年度に行うことになっております。予定では、今から約半年先の2013年の3月あたりに必要書類を揃えて文部科学省に提出しようと考えているところでございます」

 その後も、2分ほどだろうか、現時点における設置計画の進捗状況の話が続いた。

「ですからつまり、橿原先生に注意していただきたいのは、2014年の開学が、もし、不可能ということになったとしても、それを了承した上でこれから先のステップに進んでいただきたいということです。こちらとしましても、2013年の3月までに大学として認可をもらうための準備と調整が必要です。2013年3月には、その1年後の4月にこの体制でいくぞ、という状態を確保していたいわけです。これは非常に困難な作業となることが予想されており、我々プロジェクトチーム一同、慎重に慎重を重ねて進めていくよう一致団結しているところであります。ですから、なるべく途中で変更がないことを約束していただきたいのです。えぇと、こちら、これですね、これと同じ書面がお手元にございますでしょうか。はい、はい、それです。その書面に、橿原先生のご署名をいただきたいのです」

 ようするにこういうことだ、2014年4月に開学出来ない可能性があるけど、それでも来てくれるのか。
 あと、途中でやっぱり辞めたというのは迷惑なので無しにしてね。という約束を書面でとらせてくれ。

 橿原は書面にサインをして、「印鑑もいります?」と聞いてみた。いらないそうだ。

 これは「約束」だ、「契約」ではない。書面に「約束」と書かれているのを確認した。ということは、彼らには悪いが、「約束」は法的な拘束や責任を受けないから、そういうものと見做させてもらう。
 橿原はこういうことは結構ドライにとらえる。そもそも、人事の話というのは概ねだいたい曖昧なところで進んでいく。良きにつけ悪しきにつけ。

「これからが大変ですね」
 書面をテーブル越しに渡しながら、橿原は言った。30歳の若造から言われたくないというところだろうが、これと同じ苦労を経験したことのある橿原には、彼らの辛さは分かっているつもりだ。
 遠藤と佐々木は苦笑いしたように見えた。

「では、そういうことで・・・、はい、ありがとうございます」
 遠藤はサイン入りの書面を受け取ると、新設大学の規模やカリキュラムについて説明を始めた。大学関係者であっても意味不明な内容かもしれないが、だいたい言わんとしていることは分かる。

「・・・そのようなわけで、橿原先生には教員養成課程における体育の授業を担当していただきたのです。先生がご指導できるような種目などありますでしょうか?」

「球技一般と、あとレクリエーショナル・スポーツと言いますか、まぁ、体育であればそれなりに」
 少し見栄をはってみるが、教員養成課程の体育の授業を任せたいというのであれば、そう答えるのが面接者というものだろう。

「分かりました。では最後に、橿原先生にお願いといいましょうか。その、来年度ですね。2013年度なのですが、現在の青葉大学のお仕事と平行して、飛鳥大学の新設のお手伝いをしていただく中心メンバーになっていただきたいのです。カリキュラムの編成や学部の基礎的な仕組みづくりといいましょうか、ちょっとイメージがしづらいかもしれませんが、そういったちょっと地味な作業をお願いすることになるかもしれませんが」

 橿原はイメージできてしまう。
「はい、いいですよ」と返事をしていおいた。

「では、ええー、事務的なお話としましては以上ですが、はい、ええー、では佐々木先生から何かございますでしょうか?」
 遠藤は佐々木に話をふった。佐々木は10センチほど体を前に傾け、少し咳き込んでから話し始めた。

「ええぇ、そうですね。私の方からは、教育に関する意気込みと申しましょうか、そういったことを少しお聞きしたいと思います。ですが、まずその前に、我々が今回新設をがんばっております飛鳥大学の、いわゆる建学の理念といいましょうか、そういったものをお話したいと思います」
 一呼吸おき、先程よりもゆっくりと話しだす。

「橿原先生、今、日本全国に大学はいくつあると思いますか?」

「約800です」即答した。ちょっと気持ちよかった。
 就職や受験用の面接であればもっと気持ちよかっただろう。でも、今にしてみれば無意味な優越感だと思っている。

「はい、そうです。それだけの数の大学が日本にはありまして、全入時代、定員割れ問題といったことを孕みながら、それでも大学の数はどんどん増えております。その数は、まださらに増えると言われてもいます。そうして、こうしたことから大学間には熾烈な競争があります。そうした中、我々は新たに大学を新設しようとするわけです。これが意味することが分かりますか?」
 これは答えを求めているわけではないようだ。続けて話しだす。
「こうした競争が激化する中、我々のような新設大学が船出をする。無謀だ、潰れるに違いない。そうした批判が内外からあるわけです。ですが、我々は夢を持っています。その大学名が示しますように、飛鳥、これは本学園の名称ですし、日本の歴史的にも古来より重要な意味を持つ、特別な名称です。それを冠した大学をつくる。我々の意気込みは非常に強いということを、ここからも汲み取っていただけるかと思います。その夢とは、より優秀な日本人を育て、世界に向けて送り出す。今は教育学部と看護学部の2学部体制でスタートする予定ですが、ゆくゆくは多種多様な学部をつくり、大規模な総合大学として成長するつもりです」
 遠藤は頷きながら聞いている。やや笑みを浮かべている。
 佐々木はさらに続けた。
「ですから、そうした大きな夢、志を我々と共有する先生方を集めていきたいわけです。たしかに最初は苦しい戦いをしいられるでしょう。しかし、『日本に飛鳥大学あり』と言わしめるための道を、一緒に歩んでいただける方であれば歓迎する次第なのです。どうでしょうか、橿原先生の教育に関する抱負、えぇ、こちらに、あ、これですね。応募書類に書いて頂いてはおりますが、こうした我々の目標などを踏まえまして、お聞かせいただきたいと思います」

 橿原は2秒ほど時間をつかう。
 ちょっとした準備時間だ。

「えー、まずですね、非常に志の高い大学であることをお聞きしまして、非常に心強い想いを持っているところでございます」と言うと、佐々木と遠藤は頷いた。
「と言いますのも、私が現職、つまり青葉大学ですね。その大学から移ろうしている、その中で飛鳥学園様の公募にあたったわけですけども、そのように転職を考えました理由としては、青葉大学では、志が非常に小さい、極めて現実的なところでしか話がされていかないという部分があったからです。といっても非現実的なことをしろと言うわけではなく、その現実的な部分と言うのは何かというと、例えば世間の風潮ですとか社会のブーム、学生の満足度とか保護者の要求といったものに迎合する、刺激-反応モデルなどと言いましょうか、そんな形で教育が進むことを是とするやり方です。よくご承知かと思いますが、例えば今の大学は授業改善なんてことを『学生』や『企業』からアンケートをとってやってますよね。いえ、それ自体が悪いというのではなくてですね、それを真に受けて、本気でそのアンケート結果をポジティブな結果、つまり例えば3点だったのを5点にしようというレベルですね、そうするための対策をしようとしているわけです。ですが、これは本当の意味での教育には、まして大学教育、高等教育にはなり得ないんですね。学生や企業が何を言おうと、相手が嫌がろうと無視しようと、やらなければならないことはやらなければならないわけで。例えば体育の授業でしたら、体育の授業ですからスポーツをするわけですが、楽しく面白く、そして効率的で安全な進行のためにも、お互いが守らなければならないルールや決め事、マナーやエチケットというものがありますし、それを大学レベルの教育として落としこんでいかなければならないわけです。体に障害のある人がいたり、その種目のルールを詳しく知らない人がいたりすれば、その中においても皆が運動・スポーツを楽しむためにはどうすればいいか工夫することが、そうした話になるかと思います。学校の先生を目指す学生を集める飛鳥大学でしたら、こういう点をさらに深めて、人間がスポーツを楽しむのはなぜか? 遊戯や体育が、世界中の教育の場において重要視されているのはなぜか? といった点を議論させなければなりません。正解があるわけではないですが、このような問題意識を学生に持たせることが大学教育に求められることです」
 橿原は、話が長くなっていることを自覚したので、まとめることにした。
「これがですね、学生が満足する授業を目指すようになっていきますと、とにかく今、たった今の自分が考えるところで分かるモノを提供するようになります。比較的体育実技の授業というのは、そうした部分は少ないですが、こうしたことが横行するような大学教育は避けたいと思っています。ですから、そうですね。こういう教育をやります、というようなものは、私にはないのかもしれません。逆に、こういうことはしてはいけない、そういうところが強調されるでしょうか」

 橿原の話を聞きながら、佐々木はニッコリと笑って話を返し始めた。

「いやぁ、まったくです。学生が何を言おうと、やらせることはやらせる。ハハハっ、先生は体育の先生ですが、らしい、といいますか」
 隣の遠藤も笑っている。
「いやっ、頼もしいですよ。実はですね、私、専門が体育なんです。ハハハっ、先生、出身が南海大学でしょ? 梨田先生って知ってますか。あのサッカーの。実はお世話になったことがあるんですよ。えぇ、私も今の大学の授業改革には忸怩たる思いがあるんです。その場の学生の満足度を高めるだけではダメなんです。生ぬるいんですよ。満足度を高めるという名のものに、教えなければならないことが、ぜんぜん教えられていない。そんなこと教えて社会に出て一体なんの役に立つんだとね。高校の授業であれば、大学入試につながるでしょ? では、大学の授業では何を教えなければならないか。それが問題です」
 意気揚々と佐々木は話す。
 橿原はぶっきらぼうに彼を直視したままだ。
 というのも、彼の話からは何か嫌な匂いを感じ取れるからだ。
 聞こうじゃないか、大学の授業で何を教えなければならないか。

「それは、就職に役立つことです」

 橿原は作り笑顔モードに切り替えた。
 マネキンモードとも言う。
 橿原としてはこの学園の底が知れたので、満足度は高い。

「いいですか、今、大学は学生を就職させることが至上命題になっています。就職させることができる大学が、生き残る大学なのです。橿原先生のおっしゃるように、学生のその場の満足度を高めたってダメなんですよ。ようは出口。そこに一点集中するべきなんです。大学で学生が学ばなければならないことは・・、」と言いながら、遠藤の方を見ながら彼に同意を誘っている。
 遠藤は頷く。
 佐々木はこちらに向き直り、「学生たちが、その出口において役立つ、使えることを大学は提供しなければならない。ところが、昨今の大学はカビの生えたような授業を繰り返すだけです。社会に出て役立つ授業という視点が欠けている」

 たしかにネガティブな意味においてそういう授業もあるが、これは程度の問題だ。
 まぁ、佐々木の話をもう少し聞こう。

「私達が言う満足度というのは、橿原先生がおっしゃるように、その学生生活や授業としての満足度ではありません。自分たちが進みたかった進路、就職先、そういったものにちゃんと就けたかどうか。それが本当の満足度というものです。そうでなければ大学に来た意味が無い。学生の親御さんから学費をいただいているわけですから、その方々も納得するようなものを提供しなければいけないのです」

 以前、青葉大学のFD企画で岡本浩市というタレント教員が来て講演をしたことがある。
 橿原は岡本の著書も読んでみた。
 少なくともこの飛鳥学園の大学新設プロジェクトの人たちは、その岡本のような学者やコメンテーターが提唱する大学観、大学の在り方に共感しているのだろう。
 言っていることがそれと酷似している。

 橿原は、佐々木の言葉が終わりそうなところで話し始めた。

「たしかに就職が大事なのは分かります。就職率が大学の評価に直結している側面もありますから。そうしないと生き残れないという意識も必要だとは思っています。ですが、そうした風潮が強すぎることもまた、問題だと私は思います。世論や流行の煽りを受けて、それに合わせて大学が動くということは、大学教育が果たすべき使命ではないならです」
 少し言い過ぎたかもしれないと橿原は思った。

 佐々木は笑顔のままで返した。
「そうですね、ですから、狭い日本の中だけでコソコソやるようなことはしたくないんですよ。これから文科省が出す予定なのですが、えーと、来年でしたかねぇ・・」
 佐々木は遠藤と顔を合わせながら頷き合って、こちらに向き直る。
「大学のグローバル化。グローバルな視野をもった学生の輩出、グローバルに展開する大学というものが求められます。日本の流行に流されず、グローバリズムに基づく大学教育を進めていかなければなりません」

 それが後に言う「スーパーグローバル大学計画」である。
 グローバリズムとか大学のグローバル化こそ世論の影響だし、昨今の流行だということがわからないのだろうか?


「では、まずは今日のところは面接は以上ということで。ええと、その他、何かご質問はありますか?」
 と遠藤が聞いてきた。

「いえ、先ほどお聞きしたところで十分わかりましたので、大丈夫です」
 笑顔を作って、橿原は目の前の2人にそれぞれ会釈した。

「大丈夫」が意味するところは様々だ。



「どうしよっかなぁ」
 帰りの電車で、実際に声に出してつぶやいた。

 2週間ほどすると、遠藤からメールが届いた。

「ともに夢を追いかけましょう」採用通知ということだ。
 あれだけ認識不一致だった面接でも採用通知を出してくるということは、彼らにとって教育思想はどうでもいいということか?
 それもと橿原が言わんとしていることが伝わらなかったのか?


 少しエッジの効いた意見を言う若手教員に期待した。そんなところだろうか。

「どうしよっかなぁ」
 さらに橿原は悩む。

 そんなこんなを永山義春と研究室の内線で話す。

「まあ、いいんじゃない。プロジェクトチームが考えている通りの大学になるってこともないんやろうし」

「たしかにそうですよね。新設大学だし、その大学作りの過程で僕が暴れまわったら、ちょっとはまともな大学になるかもしれないですよね。青葉よりは・・」

 そうだ。そのために大学を移ろうとしているのだから。

「他にも大学の公募に出してるの?」

「はい、あとは3つ4つ出してます。とりあえず私が該当しそうなところは」

「じゃあ、そのどこかに当たるかもしれんわけだ」

「飛鳥大学より教育観がしっかりしていれば、そっちに行きますよ。でも。どこにもかからなかったら,2年後に飛鳥大学に行きます。そこで立ち回ってみます。経験づくりです」

「なんにせよ、ということは2年以内に君はここからおらんなるわけやね」

「えぇ」

 そういうことになる。
************



危ない大学の特徴の一つ「自民党の息がかかっている」


結局,私(橿原)は別の大学に採用されたので,この新設大学の採用を断りました.
メールで採用通知を送ってきたのですから,こっちもメールでお断りの通知を送ってやりました.


その一方で,この大学,小説でいうところの飛鳥大学に採用されて仕事していた人もいるわけで.
そんな一人の先生が,このブログを見つけて私にコンタクトをとってきたこともあります.

それで,東京都内の居酒屋でお酒飲みながら,飛鳥大学の内部事情を語り合ったことが2度ほど.

その先生も,飛鳥大学を辞めたようですね.

この先生だけじゃありません,この大学の教員はバンバン入れ替わります.
すぐに辞めるからです.

それはそれはもう,酷い大学だったようです.
教育系のニュース報道にも,行政指導が入ったというようなものもありましたし.


安倍政権下で発生した事件,「森友加計学園問題」が典型ですが,ヤバい教育機関には,たいてい自民党が関係しています.
森友加計学園問題が報道されるより以前から,このブログではその関係性をチョロっと出していました.
例えばこんな記事とか.

実際,この飛鳥大学にも自民党の息がかかっていました.
ほれ見ろ,やっぱりじゃないか.
よくもまあ,あんな大学が文部科学省からOKが出るよなぁ,って怪しんでたら,案の定ですよ.

このブログで紹介している一見フザケた内容って,実は相当な部分が危ない話です.
注意しながら読んでもらうと面白いですよ.



「成功は約束されている!」って言われてたのに


この飛鳥大学って,設立当初は,立地の良さや経営方針がイケててナウいことから,大学評論家などからは,
「飛鳥大学の成功は約束されている!」
などと絶賛されていました.

もう,そんなウェブ記事を見ることもなくなりましたね.
削除したんでしょうか.

ただこの飛鳥大学,いまだに拡大方針を続けているようです.
なんでそんなことができるの?って思うんですけど.

それでも,この大学に入学した学生が悪いわけじゃないし,そこにお勤めの先生にも優秀で志高い人もいることでしょう.
少しでも全うな大学として営まれることを,切に祈っております.


たまに思うんです.
もし私が別の大学じゃなくて,この飛鳥大学に赴任していたらどうなっていたんだろう? って.

きっと,教育方針をめぐって暴れ回って,上層部と喧嘩して,シッチャカメッチャカになって辞めてたんでしょうね.

あぁ・・・,この大学に行かなくて良かったぁ (^_^;)

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