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雑談|1年半がかりのドッキリ大作戦

大学院生には愛すべきバカたちが多い


新型コロナ騒動により,大学生の生活も大きく様変わりしたようです.
っていうか,まともに学生生活を送れている人は少ないでしょう.

大学院生にしてもそうで,かつての和気藹々とした研究室生活が懐かしくなっています.


というわけで,ここで昔話をしたいと思います.
前回まで「アセクシュアル」の記事を書いてて,ふと思い出したことがあったからです.

私が大学院生を修了した直後,研究助手としてその大学に勤めていた時期がありました.
その時,入れ替わりで大学院に入学(入院)してきた愛すべきバカたちがいます.

私が所属していた研究グループは,学科・コースの緩やかな紐帯でまとまっている感じで,助手・院生・学部生が入り混じって学生生活をしていました.
今思えば,あの大学,および各研究グループとしては最盛期だったでしょう.まあ,今後どうなるか分かりませんけど.

そう言えば,教員が関与するわけではない,学科・専攻・分野を問わない自主的な勉強会を,毎週企画してやってました.
私としても,これが結構楽しかったんです.
自分たちは生理医学系のグループだったのですけど,他の領域(心理学とか社会学とかコーチング学とか)の発表も面白くて,視野を広げる上でとても参考になりました.

もう,そういうことする大学や学生って,かなり少なくなっているみたいです.

母校である大学でも,今ではそういう縦横の垣根の低い,緩やかな紐帯が形成されることはないようで.
その当時を知っていて,今でも在籍している人から話を聞くと,
「かつて皆さんがいた頃に戻りたい」
とのこと.
もちろん,思い出補正がかかっている部分もあるでしょうけど,実際,活気も減ったみたいですしね.

そんな中,特に結束力が高かった学生,なかでも大学院生たちは,やることも派手でした.
当然,いくらなんでもやり過ぎだ,と思うこともやる.
そういう奴らを,「愛すべきバカ」といいます.


結束力の高い愛すべきバカによる,ドッキリ大作戦


もし,このブログ記事を読んでいる「あなた」が大学生でしたら,コロナ禍が終息した時に,ぜひ以下を参考に「学生生活」を楽しんでもらいたいですね.
こんなバカなことができるのも,学生・院生のうちだけだから.


昔々あるところに,R大学からO大学大学院への入学希望をした学生がいました.
彼はH君といいます.

季節は秋.
H君は希望通りO大学院に合格し,入学が決まりました.
そこでH君は,来年度から所属することになる研究グループのところへ,あらためて挨拶に向かおうと思いました.

O大学院を訪れて指導教員への挨拶を済ませると.自分の先輩にあたる人や研究グループ仲間にも会っておこうと思ったのです.

あとにしてみれば,この判断が過ちでした.
そこにたむろする「先輩たち」は,碌でもない愛すべきバカたちだったからです.

このバカたちは,自分たちに後輩が出来ることを喜びつつも,やっぱりバカなので,
「コイツに一つドッキリ大作戦をしかけてやろう」
と計画したのでした.

否,これはドッキリ大作戦ではありませんでした.
その規模からして,ドッキリ大戦略です.

この先輩たち(N君,U君,D君)は,互いに相談して以下のような設定を仕立てます.
すなわち,
「D君は実は同性愛者(ゲイ)だ」
というものです.

先輩であるN君とU君は,挨拶に訪れただけの可哀想なH君に伝えます.
「Dさんはそういう人だから,一応君も知っといて」と.

さらにこの設定については,学部生を含むその研究グループ全体で意思統一し,研究グループをあげてのドッキリにしたのです.


そして半年が経過して,4月から大学院生活が始まります.
H君は順調に大学院生活を送るのですが,ことあるごとに研究グループ皆から,
「Dさんはゲイ」
ということを耳にします.

その大学では,卒業生の中から短期契約で教務関係のサポート業務を担わせる制度があります(少なくない大学に,そういう内部制度があると思う).
その業務に,H君にとっては同い年になるS君という人がいたのですけど,彼もドッキリのために口裏合わせをしていました.
H君としては,右も左も分からず入学したO大学院で,気を置かずに話ができる友人S君からも,「Dさんはゲイ」であることを,適当なサシ飲みの場であっても「普通に」話題にしていたのです.

S君だけではありません.
他の同期の院生たちも皆グルです.

なにかの拍子に,
「あぁ,やっぱりDさんてゲイだからなぁ」
などと,この状況設定を徹底していました.


さて,そのうち愛すべきバカであるN君,U君,D君は,次の段階に進みます.
「D君が,入学してきたH君に興味を持ち始めた」
という設定です.

これを研究グループ内で,周知徹底するようになりました.

D君としても,ことあるごとにH君に興味有りげな態度をとってみたり,不必要にボディタッチ(例えば肩モミとか)してみたりと,思わせぶりな行動を,怪しまれず,かつ,本物らしく見せるギリギリの演技を,なんとコイツら,1年近くも続けたのです.

まったく,バカですね.

そして年末に行われた研究グループ総出の飲み会.
愛すべきバカたちは,そこで,
「D君が一念発起して,この飲み会の場を使って『カミングアウト&愛の告白』をするらしい!」
という噂を広めたのです.

その飲み会の場では.この研究グループに所属している全ての構成員が,
「知ってる? Dさんが今日ここで愛の告白をするらしいよ」
とヒソヒソ話を展開します.
「一体誰に告白するんだろうね」
という話で持ちきりです.

当然,全部演技ですけど.

H君としては,そんな研究グループのみんなの「楽しそうな」会話を,気が気でない状態で聞いていたのです.

「一体誰に告白するんだろう・・・」って言ってるけど,それって自分のことじゃないのか! ってことです.
思い当たるフシは,この1年間にたっぷりとあるわけですから.

そしてついにその時が訪れます.
D君の告白タイムです.

そこで「チャッチャラ〜!」って言いながら,「ドッキリ大成功」という落ち.
その場の皆,この1年間の無駄な努力が報われたこともあって,大盛りあがりでした.
まあ尤も,この報われた努力というのは,あくまでも「無駄」なんですけど.

当のH君,季節外れの大汗をかいていました.
それに,目が逝っちゃってたよね.
なんせ1年がかりの取り組みですから,完全に信じ込んでいたそうですよ.

で,Dさんは先輩だし,しかも大規模な飲み会の場を使って告白するとか勘弁してくれよと.
どうやって返事したらいいか,真剣に悩んでいたとのこと.


・・・そんなこともあったねと,このドッキリ大作戦の思い出を,H君が社会人になってから話したことがあります.
そしたら,H君曰く,
「この一件があってから,男性からボディタッチされることに恐怖を感じるようになった」
とのことです.
トラウマ(笑)になったと言ってました.

と同時に,そんなしょうもないことを1年半かけて成就させる,この研究グループのチームワークに驚嘆したそうです.
まさに,「今となってはいい思い出」です.


というわけで,そんなバカなことに全力で取り組むことも,人生の楽しみの一つだと思います.
犯罪にならない程度に,無駄な努力をしてみるのも一興です.


※この話には追記があります.

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