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忘れられない不思議な人々(8)通販とかに出てる「個人の感想です」の人たち

実際に商品を使ってみた感想を言うモニター(?)みたいな人たち


昨日の記事を書いてて思い出しました.
私が,指導教員と一緒にやった仕事のなかでも,比較的珍しい仕事をもう一つお話します.

いわゆる,通信販売の商品紹介で「実際に使ってみた効果」を検証して,モニターの人たちから感想を聞き出す例のアレです.
よく,「◯◯大学の◯◯先生の監修のもと調査し,実際にこの商品の効果を検証してもらいました!」的なものがあるじゃないですか.
あれですよ.


『ごきげん!ブランニュ』に出演したことがきっかけだか分かりませんけど,この時期,うちの指導教員には,この手の仕事依頼がたくさん入ってきました.
私もそれに付き合わされる日々.

たぶん,こういう業界では.
「この先生は頼めばメディアに出てくれるらしいぞ」
とか,
「この先生はメディアに出たがる性格の人だな」
などという捉えられ方をするんだと思います.

実際,こういう「商品を実際に使ってみて検証する」系の依頼をしてきた業者の一人に,それとなく聞いてみたんです.
「どうしてうちの先生に?」って.

そしたら,やっぱりネットとかで調べてみて,メディアに登場する人には優先的に声をかけているらしいですね.
あとは,メールアドレスや電話番号がわかれば直接かけるし,大学に問い合わせることもあるそうです.
意外に飛び込み営業なんです.


まあ,そんなこんなで何件か対応したんですが.
うちの先生としては,
「わけわからん仕事ばっかりで,なんだか面倒だなぁ」
って仰っていましたが,メディアに出れること自体はまんざらでもないようで.


一番大掛かりだったのが,とある健康・トレーニング器具の実証実験で,大学生に2週間くらい商品を試させて,その効果を分析するというもの.

商品名とか詳細は伏せますが,その商品は「お腹とか腕に電極パッドをつけて通電させることでトレーニング効果が期待できる」っていう商品です.
自分で運動しなくても,マシンが筋肉を動かしてくれるっていう趣旨のやつ.
なんだかんだで,それなりに有名になりましたし,さまざまなメーカーから類似商品もたくさん出ています.

業者さんとしては,大学教授のお墨付きをもらいたいということで,かなり期待していました.

先生が私に聞くんです.
「この商品,どう思う?」
って.

「まあ,効果は無いでしょうね」
と素直に答えました.

当たり前です.
こんなもんでトレーニング効果が現れたら,世のスポーツ選手はどんなにトレーニングが楽になるか.

いや,まるっきり効果がゼロってわけじゃないんですよ.
そりゃ何かしらの影響はあります.

実際,医療現場や理学療法の現場では,自力で体を動かせない人のために,筋肉への電気刺激は用いられることがあるものです.

けど,最低でも2階まで自力で階段を登れるくらいの体力がある人が,こんなもんで筋肉に刺激を加えたからって,何か運動能力が改善できるとは思えません.
ましてや,今回の検証実験ではスポーツをやってる大学生でしょ.
まず無いな.

そのへんに詳しくない業者さんは,
「スポーツ選手が使ったら,さらに効果が現れやすいかもしれませんので」
などと言ってましたが,それはあり得ません.

むしろ逆で,体力レベルが高い人が使うと効果は殆ど見られないでしょうね.
上述したように,この手の運動手法は,医療介護現場などで寝たきりの人とかに使うものだから.


それでもやりたいと言って引き下がらない業者さん.
結局,大学生を使って実験してみることになりました.
一応,スポーツ活動をしている学生だけでなく,帰宅部の学生も使っています.


で,その結果ですが...

https://alu.jp/series/進撃の巨人/crop/sEFJB0yAJj1AUVkHO461


さて,ここからがうちの指導教員の甘いところなんですけど,業者さんにとって都合が悪くならないような,玉虫色の解釈を伝えちゃうわけ.
いい人なんですけどね.

私なら,
「一般的な体力レベルの人に対しては,この商品ではトレーニング効果は全く期待できません」
とストレートに告げると思います.


その後,商品が販売された際には,
「◯大の◯◯先生の監修のもと,商品の効果を検証する実験を行い,通常の運動よりも高いトレーニング効果が期待できることが明らかになりました!」
ということになっていました.

おいおいおいおい....
って思うんですけど,まあ,その掲載許可を出したのは先生ですから.

私は「こんなものにお墨付きを出したらダメです」って言ったんですけどね.
先生の信頼だけじゃなく,大学の名前にも傷がつくし.


この手の商品は,その後かなりブームというか,ドル箱商品になったようで.
似たようなものや,デザインがカッコよくなったりしながら,いまだに人気のある健康・トレーニング器具として一角を担っているようです.



個人の感想を言う人たち


すみません,ここまでは「忘れられない不思議な人々」の話じゃなかったですね.
今回は,通販番組やCMとかで「個人の感想」を言ってる人たちの話です.

そんな,「商品の効果を伝える」的な企画に呼び出されたこともありました.

あるとき,先生に呼ばれて演習室に行くと,そこにカメラマンや業界っぽい人と,得体のしれない民間人っぽい人たちが7〜8人いました.

なんなのこれ?
って不思議に思っていたら,先生が,
「ここで健康・トレーニング器具を実際に使ってみた感想を聞くんだ」
と言ってました.

またこの手の仕事かよ!って思ったんですが,どうやら実験じゃないらしい.
私が実験器具を動かしたり,データ分析する必要もなく,ただ作業の補助をすればいいようです.

もう商品について詳しくは覚えてませんけど,なんか「リラクゼーション・ストレッチ」みたいなことができる,ストレッチポールの親戚みたいな商品でした.

ちなみに,ストレッチポールっていうのは,こういうやつ.
 
これも,アスリートのコンディショニングや,理学療法とかで使われることの多いものです.

このストレッチポールの豪華版みたいなやつを作ったらしく,
「これに寝てるだけで,体がリラクゼーションできて,しかもダイエット効果が期待できる」
と意味不明なことを言ってました.


私はその場で,
「こんなもんの上に寝たからって,ダイエット効果なんてありませんよ」
と先生に伝えましたが,先生もそれは分かっているようで.
でも,事務の◯◯さんからお願いされたから,仕方なく引き受けたということでした.

業者さんとしては,大学教授の立ち会いのもと,商品の効果を検証して,モニターになってくれている人の感想を聞き出せれば,それでOKみたいな感じです.

その時は「なんていい加減な話だろう」と呆れてしまいましたが,業者さんとしては,なんとしてでも商品を売るために必死なのです.

不思議だったのが,業者さんとカメラマン以外に「モニター(被験者)」として集まっている人たちです.
女性3人,男性1名の,計4人くらいいたと思う.

誰?この人達,って率直に思いました.

ビデオカメラや写真を撮りながら,商品を使ってみるわけですが.
頼んでもいないのに,やたらと大げさ,かつ,わざとらしく感想をしゃべってる.
「うわぁー,すっごく気持ちいい〜!」
「なんか,体がポカポカしてきたぁ!」
「うん,肩こりが治ったような気がしますよ!」
などと,ハキハキとした声を出しながら,商品を使っています.

明らかに異様.

だってさぁ,普通の人達がこんな喋り方しないもん.
私としては,この空間が不気味で,気持ち悪くて仕方がない.


そんでも,作業の合間に,このモニターの人たちに聞いてみたんです.
皆さんは,一体どういう方なんですか?って.

そのうちの一人は,こういう通販のモニターの募集があったら,それに出るのが楽しくてやってるそうです.
募集って言っても,公募しているわけじゃなくて,知り合いからのツテだそうです.
人助けの一つとして出てあげてるみたいですね.


別の一人の方は,こういう「メディアに出る」ことを趣味で楽しんでるそうで,通販の「感想を言う人」だけじゃなくて,ドラマとかのエキストラとかにも応募することが多いと言ってました.
普段は,普通に主婦をやっているとのこと.


ちなみに,こういうモニターの仕事は,当然ながら台本(とまでは言わないが)があって,それに準じてセリフをしゃべることになっているそうです.
商品の特徴とか,セールスポイントをしっかり伝えられるように演技するそうです...って,やっぱり演技かよ!

そうなるともはや,「個人の感想」ですらないよねって思うんですけど.
まあ,この業界の人達もそれで頑張ってるんですから,私もこれ以上は言いません.

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