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忘れられない不思議な人々(13)外国における関西のオバちゃん

よそでもよく聞く話だと思うけど,私も遭遇したからお話ししますね


関西のオバちゃんあるあるネタとして有名ですが,私も実際にその現場に居合わせたことがあります.

いわゆる,
「関西のオバちゃんは,外国に行ってもマイペース」
というやつ.


海外旅行や国外渡航が制限されている今ですから,逆にそんな話題をしてみることにしました.


オランダに出張した帰りのことです.

スキポール空港で搭乗口に向かっていると,途中のお土産売り場で異様な空気が流れていました.
明らかに海外のそれとは違う,濃厚おたふくソースと,タンスにゴンの匂い.
実際にその匂いがしたわけじゃないけど,雰囲気がね.

あれ? 私は今,心斎橋筋商店街に来たのかと.
いや待てよ,たしかオランダ・スキポール空港だったはずだけど,って思う,そんな感じの.

この小さめのお土産店は,コテコテの関西弁を操る年配女性の大群に取り囲まれており,さながらバーゲンセールを楽しむかのよう.

これが関西のオバちゃんの群です.
どうやらツアーかなにかで来ているらしい.

こんなところで関西のオバちゃんの群に出会えるとは思ってもみなかったので,サバンナでヌーやトムソンガゼルの群に出会ったようなものだと考え,私もお店に入ってその生態を観察してみることにしました.


とにかく,うるさい.
メッチャうるさい.
おそらく,このオバちゃん達一人一人はそうでもないのでしょうが,群れたとたんに声がデカくなる.
態度もデカくなる.
気もデカくなる.

このお土産は誰それに買っていくだの,これは高過ぎるからやめた方がいいだの,大声でギャーギャー喚き散らしています.

そのうち,一人のオバちゃんが,
「これ,なんぼやろ?」
と言い出した.
気になる商品のようですが,価格が分からないらしい.

私もそれとなく棚をチラ見したのですが,たしかに価格が表記されていない.
商品のどこかに貼り付けてあるのかもしれないのですが,見つけられないようです.

オバちゃんが4人くらいであーだこーだと悩んでいるうちに,その中のオバちゃんの一人が,
「ほな,私が聞いて来たるわ.あの店員さんに聞いてきたろ」
ということになりました.

そのオバちゃん,レジにいた学生バイトみたいな男性店員のところにツカツカと寄っていき,
「兄ちゃん兄ちゃん,これ,なんぼ?」
って聞いたんです.


出た.
関西のオバちゃん名物「外国に行っても関西弁で押し通す」.


驚いた様子の店員さん.
このオバちゃんが何を言ってるのか分からないし,どうすればいいのか悩んでいる.

もちろんオバちゃんも悪い人ではないので,
「ハウマッチ」
と英語を使います.

どうやら意味が通じた店員さんは,
「15€」
と答えていました.

ところがオバちゃん,それが聞き取れないのか,
「ハウマッチ,ハウマッチ,これ,なんぼなん?」
と繰り返します.

店員さんとしては,「15€」と答えるしかないのですが,そのうちオバちゃんは諦めて戻っていきました.

で,他のオバちゃん3人のところに戻って,
「それ,いくらやったん?」
って聞かれると,こう答える.

「分からへんって言われたわ」

素晴らしい.
捏造もここまでくると芸術です.


店員さんが不憫でならないので,私がそれとなく伝えました.
「あ,それって15€みたいですよ」
って.

するとオバちゃんたち,
「やっぱり日本人は優しいなぁ.ありがとう」
などと言い出す.

異文化コミュニケーションは難しいですね.



その後,レストランで食事を済ませると保安検査場に向かいました.
するとそこでも,関西のオバちゃんの群と一緒になります.

考えてみれば当然です.
だって私も関西空港に向かうのだから.

並んでいると,お土産売り場にいたオバちゃんもいました.
「さっきはありがとう」
と言ってくれたりするので,それなりにいい人たちです.

ただ,そこでもとにかく,うるさい.
並んでいても,うるさい.
順番がきても,うるさい.

保安検査員たちも,関西のオバちゃんを知っているのではないか.
「関西空港行は愉快なババアが多い」っていう感じ.
みんな,楽しそうに対応している.

オバちゃんが金属探知ゲートをくぐると,案の定,ブザーが鳴る.
すると周囲のオバちゃん達がゲラゲラと笑う.

そして男性の検査員が身体チェックを始めるのですが,そこでも,
「いや〜ん,エッチぃ〜」
「わたし,あっちのイケメンの方に調べられたいわぁ」
などと言いながら盛り上がっています.

検査員たちも笑っている.
っていうか,笑いを我慢しているようです.

たぶん彼らは,職務上,厳かな雰囲気で取り組まなければならないのでしょう.
まるで「笑ってはいけないシリーズ」です.


よく話のネタになる「外国における関西のオバちゃん」ですが,あれは本当なのです.
関西のオバちゃんは,噂通りのパフォーマンスを発揮しています.


そう言えば,いつも国外から関西空港に戻ってきて思うのが,至るところで関西弁が使わていることですね.
売店やレストラン,そしてグランドスタッフも皆,関西弁です.
羽田や成田は標準語でしょ.
でも,標準語の日本語って旅程の途中でも聞き慣れてるわけですけど,それが関西弁になると「日本に戻ってきたなぁ」っていう気分が一層強くなります.

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