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43:2013年2月25日

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2013年2月25日(月)18時10分

 萩原香代は事実を告げられた。
 仕方ないと思う。
 単位をとれていない自分が悪い。
 それは揺るぎない事実だ。

 単位をとっていない自分がいるのは事実。
 それによって帰結された事実だ。

 これが事実なんだ。

「卒業できなくなった。あーあ。ヤバぁーい」
 短いLINEメッセージを友人の森元咲子に送っておいた。
 どうせどこかで分かること。
 先に宣言しておけ。
 送信ボタンを押す時は虚しく笑っていた。

 なんだろうな。意味不明な意地だ。
 照れ隠し? それは変。
 恥ずかしいから? それはなんか重い。

 すぐに森元からメッセージが返ってくる。
「知ってたよ」

 え?
 なぜ?

 森元は詳しく教えてくれた。

「ハぁ?」という自分の言葉が、発していないのに頭に聞こえて反響する。

 いやでもチョット待て。
 そういうのって、あり、なんだろうか。
 2月25日・・、今日の会議で決まる。
 穂積先生はそう言っていたのに。

 なんでその前から森元たちは知っているのか?
 いや、なぜ今日の会議よりも前に結果を知っているんだ。
 なぜそんなことが森元たちの方に詳しく流れているんだ。
 私よりも。

「藤堂がしゃべり回ってたよ」
 森元はそう言っていた。

「ねぇ・・、お父さん。卒業できなくなった。またもう1年」
 最後は少し笑っていた。

 父は、なんとなくそうなることを予想していたようではある。
 でも私の友人が「予想」ではなく、「予言」できる状態にあったことは知らないだろう。

 父にそのことを話してみた。

「なんでそんなことになるだ! おかしいじゃないか。大学に聞いみるぞ」

 これってやっぱり普通じゃないよね。
 少し森元のことが気になった。
 でも。
 ・・・でも。




44:2013年2月26日