2009年3月5日木曜日

文学書籍はというと


これまで,科学・社会・教育・啓蒙についての書籍を取り上げてきました.
では文学書籍はというと,あまり興味を持って読みません.

私としては,文学・物語系のメディアとしては,小説やマンガといったものより映画やアニメで楽しむことにしています.
向こうが勝手にしゃべって音出してくれて,映像を見せてくれる方が性に合っているのだと思います.

今回は,私が読んだことのある数少ないレアな文学関連のレビューをしてみます.


まずは個人的に気に入っている作家 綿矢りさ
気に入っていると言っても,よくある 「美人作家だから」 というのではなく,読み手に(少なくとも私のように想像力・妄想力がない人でも)文章によって脳内ドラマを製作させる力があるのが秀逸.
彼女が出している作品,『蹴りたい背中』『インストール』『夢を与える』はいずれもアタリでした.
文章から “生々しさ” が伝わってきます.

彼女の作品は賛否両論です.文学素人の私が思うに,小説を読みなれていない素人でも 「これは面白い」 と思わせるところが彼女の作品の特徴なのではないかと.つまり,小説の玄人には “普通” に感じたとしても,素人ウケするところが作品の強みなのではないかと思うのです.そこが評価の分かれる部分である気がします.
自他ともに認める小説好きである大学の先生(数学が専門)曰く,彼女の作品について 「テーマ・文章が少女・女性の感覚だから僕には分かりにくい!」という感想でした. ・・・たしかにあなたには分からないでしょうよ・・・ と思いましたが.
いずれにしても私一押しの作家と作品です.

お次はヘミングウェイ 『老人と海』.“名作じゃん!” と思われるかもしれませんが,たしかに名作だけのことはあると感じました.なにせ小説はめったに読まないので...
とにかく心理・状況描写がスゴい.“これぞ小説” というのを見せつけられた気がします.

名作を続けます.J・ホーガン『星を継ぐもの』.玄人には当たり前ですが,SF超大作です.素人が読んでも傑作であることがわかります.クライマックスでは読みながら鳥肌が立ちました.
この作品をオマージュとして,アニメ『不思議の海のナディア』が作られています.

リラ・ダン『未来のイヴ』は,アニメ『Ghost in the shell 2 イノセンス』に影響を与えた作品.というか,私としてはイノセンスでこの小説を知って読んだ作品でもあります.主人公がガイノイド(人造人間)に恋をする作品なのですが,イノセンスの冒頭でも紹介される作中の台詞が印象的.
「我々の神々も我々の希望も,もはや科学的にしか考えられなくなってしまった以上,どうして我々の恋愛もまた同じく科学的に考えてはならぬのでしょうか」
結末はちょっと悲しい...

同じく『Ghost in the shell』の劇中に引用された作品として読んだ小説にJ・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』があります.この作品を一言で言えば “ティーンエイジャーの本音・内省を丁寧に描写した作品” です.
終始,主人公ホールデンの内省をつづっているのですが,その内容は大胆で突飛な中にも共感できる部分があり,とても不思議な感覚を持てる作品です.
『Ghost in the shell』でも “クレイジーな発想とそれを実行に移そうとする若者” を一つのテーマとして位置づけています.

Ghost in the shell』の世界観は,映画『マトリックス』に影響を与えていることが知られていますが,そもそもこの『Ghost in the shell』に影響を与えた小説がW・ギブスン『ニューロマンサー』です.インターネットも電脳社会という概念もなかった1984年に書かれた作品であるにも関わらず,驚きの未来予見.でも構成が複雑で,私には内容を飲み込めずに終わった観があります.もう一度読み返してみます.

アニメ『エヴァンゲリオン』を見たのをきっかけに読んだのがH・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』.『エヴァンゲリオン』は傑作アニメだと思っているので,機会があれば取り上げます.
内容は『エヴァンゲリオン』とは全く無関係な小説です.この小説は “超難解” であることで有名なのだそうで...短編小説集なのですが,特に面白かったのが 『少年と犬』.“愛って何か知ってる” というセリフがキーなのですが,ラストはちょっと感動もの.

最後はW・ゴールディング『蠅の王』.これはアニメで知った訳じゃなくて,社会学系の新書かなんかで紹介されていたものです.
『蠅の王』は,子どもだけで社会を構成するとカオス状態になることを表現しています.“無人島に子どもだけで漂流し,そこからいかにサバイバルするか” ,という状況で話が進んでいきますが,徐々に危険な匂いが漂います.
未熟な知恵しかない子どもに,社会を構成する力があるのか? ストーリーは,よくある 「弱者の代表である子ども達が力を合わせて困難に立ち向かう」というファンタジックなものではなく,リアルに,且つ,ご都合主義的な色を排して突き進みます.


というわけで,私が純粋に “小説” としての興味で買ったのは “綿矢りさ” , “ヘミングウェイ” といった作品くらいのものであることがわかります.それ以外は興味を持つにあたって映画やアニメ,その他のきっかけがあるものばかりです.

「たまには小説を読まないかん」と,いくつか名作文学作品を購入しているのですが(三島由紀夫やスティーブン・キングなど),なにぶん興が乗らないもので,放ったらかしにしたままで2年,3年と経ったものもあります.

これを機会に思い切って読んでみましょう.
感想をまたアップしますので,その時はまたおつき合いください.