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崖っぷちの大学が生きる茨の道

教授会でこんな話が出ました.
文科省が提示する「大学のグローバル化」に対応するため,「◯◯大学グローバル対策委員会」みたいな部署からの今後の計画について.

上の先生方の意見,
「面白くないね」「ずっと何年もこんなこと言ってるよね」「もう何度も聞いてるんだけどさぁ,大学のグローバル化って何を意味してるの?」
仕舞いには,
「「アジアに◯◯大学あり」を目指すんでしょ?こんな安っぽいことしてていいわけ?」
「文科の大臣だって靖国参拝するっつってグローバル化を阻んでるじゃない.言ってることとやってることが違うじゃないか」
「うちらしい大学教育のあり方はどうなるの?ここは私立大だよ.だいたい,なんで恥ずかしげもなく文科省の言う通りにしてるの?」
「こんなのW大とかT大とか,他がやるでしょ.うちはやらなくていい」
と野次りまくりで,議案担当者もあたふた.

やっぱり力のある大学は違います.
口出しできない末席(本当に末席,立場も年齢も)で小さくなっていた私は,猛烈に感動していました.

 
 

そう...,
大学がグローバル化に備えるべきは,ちゃんとした「学問」をするために,ふんどしを締め直すことです.
間違ってもブリーフやらトランクスに履き替えることではありません.
我らが大先輩,福沢諭吉の言葉を思い出しましょう.先日記事にした,
「学問のす丶め」を素直に読んでみる
を参照ください.

ところが,生き残りに必死な大学はというと,ブリーフどころか,Tバックを履いちゃおうとします.
内心,自覚している自分たち自身をごまかすために,
「むしろブリーフよりも,ふんどしに似てるよね.魅力的で良いのではないか」
などと言い出します.
まぁ,それは仕方がないことなのかもしれません.
大学とて,人によって構成されているものです.生き残りに必死になれば,なんでもするのが人というものです.

今回は,これから生き残りに必死な大学がやるであろう方略をご紹介しましょう.瀕死の大学における延命処置(救命ではない)をご紹介します.
むしろ,生き残りに必死な大学は,以下のことをやらねばなりません.
というか,既に一部はいくつかの大学で実施されているものもあります.そのうち,全国的に見られる光景になることでしょう.
ただし,誤解しないでください.「これからの大学」は,以下のことをしなければ「乗り遅れる」というわけではないのです.
むしろ逆で,以下のことをすればするほど「大学」が持っている機能や使命からは遠のいていき,緩やかな死を迎えるというわけです.
だから“延命”処置なのです.


●ホームページを派手にする
これは過去記事である■こんなホームページの大学は危ないで詳しく紹介しています.
大学ホームページの機能を「報告・案内」として捉えず,「広告」として役立てようとしてしまった帰結です.
某掲示板で上記の私の記事が取り上げられていたのですが,そこで議論され紹介されている多くの大学は,筆者である私からすればどこも危なくない大学です.
みなさん.危ない大学というのは本当に必死でHPを作っていますので,ちゃんと調べてみましょう.

●オープンキャンパスで入学金(学費)の割引クーポンを渡す
さすがに「クーポン券」として発行はしなくとも,オープンキャンパスに来た人を控えて(登録して)おいて,その後,入学してくれたら入学金などを割引くサービスです.
これは,(1)オープンキャンパスに来てくれる.(2)入学意思を高められる.と,いい事だらけの妙案です.
ちなみに,オープンキャンパスに来てくれた人に交通費を出す,なんてことは一部の大学で既にやられています.きっと次の段階はこれになるでしょう.

●ホームページ(またはパンフレット)にクーポンを載せる
上記の発展版です.
おいおい,「ぐる◯び」じゃないんだから.と思うでしょうが,これは結構効果的だと考えております.
そのクーポンをオープンキャンパスなどでやりとりし,学費割引だけじゃなく,入学後の学食が1ヶ月間無料とか,そんなんです.
これにより,口コミ効果とホームページ閲覧数を確保できます.

●2人目割引セール
洋服の◯山のごとき販売戦略を打ち出します.
「兄や姉が入学しているなら,弟や妹は学費は半額(むしろ免除)」などと言い出します.
デフレと少子化時代に則した,非常に効果的な戦略です.

●バリューセット
これは高校の先生を相手にした戦略です.
同じ高校から複数名の生徒を送り込んでくれたら,その高校の学生たちは学費が割り引かれる,というシステムです.
スポーツ系や音楽・芸術系の入試など,高校と大学の先生同士の間でムニャムニャっと取り交わされている事を,制度化してやろうという目論みです.
最初は受験料割引による受験者増加計画から始まって,徐々に学費割引(入学者増加)へと悪化することが予想されます.

●浪人狩り
今後の日本の経済状態を読んだ作戦です.
アベノミクスによりデフレが解消されて所得が増えることで,「とりあえず受かった大学に入学しよう」という高校生(家庭)が減り,第一希望の大学にチャレンジする浪人生が再び増加することが予想されます.
その一方で,少子化がさらに加速する2020年ごろ,どうしても学生を確保しなければならない瀕死の大学による「浪人狩り」が横行するでしょう.
「頑張る浪人生は努力家であると考えられ,それを評価する」などと理由をつけ,面接だけで良いことにしたり,「作文」だけでいい,などという入試が出ます.
※なお,デフレ不況だった現時点で,既に「3月下旬ギリギリ入試」というものが一部大学で横行しております.
全ての希望大学に滑った人が,「とりあえず今年度中に入れるなら大学はどこでもいい」と考えることを見越した浪人予備軍掃討作戦です.


●自分とこ受験してちょうだい講座
地域の高校生相手に「受験対策講座」っぽいものを開催し,表向きは難関大を目指した講座とみせつつも,その実,恩を着せることで自分とこの大学に入学させようという企画を計画します.
「大学の地域貢献」という看板で行政をごまかし,地域・近所の高校生に「大学で必要とされる知識(あと受験対策)」なんていう講座(もっと“ぼかす”だろうけど)を開くんです.
講座の後半には「有名大学であろうと,そうでなかろうと,つまりは学ぶ姿勢が大事ですよ」などと結構な正論を述べ,しれーっと自分とこの大学を受験するよう誘導します.
そんな罠にひっかかる奴はいない,と思われるかもしれませんが,オレオレ詐欺や振り込め詐欺に引っかかる人が後を絶たないのと同様,若干名は必ずいるはずです.
大学としては,若干名でも御の字なのです.
1人確保すれば,1年で100万円,4年で500万円くらいはゲットできるのですから.

●編入生優遇
どうにかして編入生でも取っていこう,ということで,他大学や専門学校から編入しやすい状況(学費割引とか)を作り出します.
これは多くの大学が数年後にはやることが予想されますが,私はオススメしません.
なぜかというと,一部の大学がそんなことを始めたら,瞬く間にたくさんの大学が同じ事を始めます.
すると,大学同士で編入生の喰い合いが始まるのです.
しばらくして,ちょっと強めの大学まで参入し始める流れになったら万事休す.死にかけの大学はたまったもんじゃありません.
だって,少しでもブランドのある大学に学生は流れちゃうでしょ.
生き残りたい大学の皆さんは,互いに示し合わせて,これだけはやってはいけませんよ(でも,結局は抜け駆けようとする大学が出るんだろうけど).

●留学生優遇
これは今でも普通に「学生数の水増し」としてやられていることでして,ご存知の方も多いかと思います.
留学生といっても,アメリカやらフランス,ドイツといった国からの留学生ではありません.発展途上国から学生を引っ張ってくるのです.向こうにしたって,「日本の大学で学べるなら」ということで喜ばれます.
「大学のグローバル化」と言えなくもないのですが,その意味するところは違います.
あと,途上国の素性のわからない大学と提携・協定を結ぶという戦略もとります.
これまた「大学のグローバル化」という言い訳をしながら.
自分とこの大学としては,提携先の大学に学生を行かせることで,「海外に留学する学生がいる」という広告にできるし,提携先の大学の学生を引っ張ってきて学生数の確保もできるという,一石二鳥の戦略です.

●資格試験・採用試験・就職活動専門の大学
教授会などでタイミングよく気合が入った大学は,これをやり始めるでしょう.
「学生のためです!皆さん!学生たちや親御さんが喜ぶ教育に,力を注いでいこうではありませんか!」
などと知ったようなスピーチを,学長とか理事長とか大学改革委員長あたりがします.有効な反論ができない教授陣でしたら,そのまま突き進んじゃうでしょう.
新設大学なんかは,これこそを売りにするはずです.
まぁ,学生のためにならないわけではないので,別に好きにすればいいのでしょうが.安直ですね.まさに「延命」にしかならないわけで.
なぜこれがダメか,詳細は私の過去記事を.
反・大学改革論シリーズと,
大学について と 続編の「大学について2」 あたりでしょうか.

上記のような方略を,少なくない大学がとりはじめるのも時間の問題です.
それまでに,大学という機関の価値を,本当の意味で再確認することが大事です.