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スポーツで土建国家を復活できる

今回もコピペ用レポートの素材を提供します. 自由にコピペしてください.
テーマは「スポーツと国土強靭化」です.
※コピペを企んでいる学生におきましては,本文だけじゃなく,引用している文献やリンク先にも目を通しといてくださいね.

自民党が提案している「国土強靭化政策」.通称「土建国家復活政策」.
何度かこのブログでも取り上げましたが(古い記事だと「語り合う日々」とか.新しいところでは「昔の記事を読み直す「派遣に思うこと」」とか),今回はスポーツを専門とする者としても一言二言述べておこうという記事です.

もちろん土建国家復活を目指したものですので,“アンチ土建国家” の方は読まないほうが良いのかもしれません.

でも学生はぜひ読んでください.このブログでも何年も前から書いているように,日本は土建国家に復活しないと大変なことになります.
コンクリートからスポーツへ
でご紹介したこともある,京都大学の藤井聡先生を全面的に支持しております.どうやらこの方が国土強靭化政策の生みの親のようですので.

上記の記事や,
スポーツ復活計画 さしあたってスキー
においても「スポーツは経済を活性化させる起爆剤である」ということを紹介しましたが,「・・さしあたってスキー」ということでしたし,1年越しの今回の記事では別のこと,中でも “国土強靭化” と関連するところをご紹介します. 

しかしながら,「国土強靭化政策」が経済を活性化させるためだけのものではなく(まして無駄な財政出動などでもなく),日本全国をまんべんなく発展させ,災害や有事に負けない強靱性を獲得するためのものであるのと同様,スポーツにもそうした機能があることをご紹介するものです,ということを申し添えておきます.

まずはスポーツと土建にまつわる,基本的なところからおさえていきましょう.
スポーツと言えばオリンピックやワールドカップですよね.このオリンピックやワールドカップといったスポーツイベントが計画されると,それに乗じて大規模な公共事業が行われることが多いのはご承知の通りです.

こうしたスポーツによって媒介された都市の遺産(インフラ)は,古代から都市の発展や町づくりを担っていることが知られています.現代においても,スポーツが都市や地域を活性化させていることを報告する研究は数多いのです [文献1,2].

日本で代表的なものは,1964年のオリンピック東京大会と2002年FIFA日韓ワールドカップ大会です.
このような大規模スポーツイベントによって得られる都市計画事業の推進や,それに伴う公共事業推進を後押しする効果は非常に大きいのです.

例えば,1964年のオリンピック東京大会では,首都高速道路や新幹線の建設,羽田空港増設や国際都市として恥じない町並みの整備といった公共事業が次々と着手されました.
そして,これらオリンピック招致に向けて取り組まれたインフラが,日本の高度経済成長の動力源となったことはよく知られているところです.

2013年現在,(通常の経済思考では)デフレ不況下にある日本は財政出動政策が急務と考えられておりますから[文献3],再び公共事業が求められています.
2020年に招致を目指しているオリンピック東京大会は,「夢」だけではなく,日本政府の財政出動を促し,経年劣化したインフラを更新し,現在の都市機能の問題点を改善しようとする勢いを強める効果が期待されているのです.(という認識を広めたいものですね)

そういった意味において,国民体育大会(いわゆる国体)も,毎年異なる開催地で公共事業を誘発することができる制度と言えます.国体は大会自体の人気は地に落ちていますが,開催を希望する都道府県の数は減っておりません.

これにはよく知られた裏があります(ということは裏ではないのだが).
国体が継続して開催される背景には,日本人自体がスポーツを「公共の福祉を担っているモノ」,つまり公益性が高い教育的なイベントだという認識があるためでもありますが,それだけに,その準備のための公共事業について議会の賛同が得られやすいという事情があるわけです.
いざ開催が決まってしまえば,それに乗じて補助金や公共事業費を得て都市計画をスムーズにやっちゃえるという地方の思惑があるのですね.

こうした状況を「土木国体」などと批判することは簡単です.しかし,国体が戦後の日本に全国まんべんなく公共施設とアクセス道路を建設することを後押ししたこと,そして,体育やスポーツの振興に役立ったことは事実でしょう. 

スポーツが国土強靭化を後押しするという点は,こうしたところにあります.

ただし,そういう意味においては,「国体の人気と規模の復活」,もしくは「国体に代わる(加える)全国的なスポーツイベントの企画」が課題となるところでもありますが,これについては別の機会に.

さらに国土強靭化との関連性を強めてみましょう.防災についてです.
スポーツと防災の関係と言えば,スポーツ施設が防災施設として機能していることを忘れてはいけません.
大規模な有事,災害が発生した場合の司令基地としての場所の確保のためにも,スポーツ施設は非常に優れているのです.

例えば,阪神淡路大震災での教訓を基に建設された「兵庫県立三木総合防災公園(←リンクしてます)」がその典型です.
私も去年までそこでの仕事が多かったので,この施設については調べたことがあります.
三木防災公園は,平時では関西のみならず日本のスポーツ振興拠点としてさまざまなスポーツイベントを開催していますが,災害時には隣接している「兵庫県広域防災センター」と一体となり,強力な災害対策施設として機能するように整備されているのです.

その後建設されたスポーツ施設においても,例えば2002年FIFA日韓ワールドカップ大会に向けて整備された全国10箇所のスタジアムは,当初から災害時の避難所としての機能を有するよう設計されています.
私が現在住んでいるとこの近くの例で言うと,「埼玉スタジアム2002」(←リンクしてます)では,雨水の再利用によって3000人が一ヶ月暮らせる飲み水を確保することができ,スタンド下には備蓄倉庫が用意され,非常食や生活用品などが備えられています.

平時には赤字経営や土地の無駄遣いを指摘されることの多いスポーツ施設ですが,有事にあっては地域住民を守るための無くてはならないシェルターとしての機能を持っているのです.

「ハコモノ建設」と避難されようとも,有事の際の福祉施設を公共事業として行なっていると考えれば見方も変わってくるのではないでしょうか.世界的にも地震が頻発することで知られる日本においては,むしろ必須の投資であるとも言えます.
もっと言うと,シェルターとしての機能しか持たない施設を作るよりも,普段はスポーツができる施設を作っているわけですからお得だと考えてほしいくらいです.


次回は,
「スポーツによって防災機能の高い町が勝手にできちゃったでござるの巻」
をお話します.
今回は露骨な「スポーツと土建」でしたが,「あれ?スポーツを振興していると,いつの間にか防災都市ができてるじゃないか」という,これこそまさに「スポーツと国土強靭化」を体現する視点をご紹介します.

文献一覧
[1]原田宗彦. スポーツイベントの経済学. 東京 : 平凡社, 2002.
[2]堀繁, 木田悟 , 薄井充裕. スポーツで地域をつくる. 東京 : 東京大学出版会, 2007.
[3]クルーグマンP. さっさと不況を終わらせろ 山形浩生訳. 東京 : 早川書房, 2012.