2013年9月16日月曜日

ほんのちょっと本気で農業のこと(農協:JAは悪の組織なのか?)

現在,農業協同組合(通称:農協,JA)が弱体化しています.
かつての力強さはありません.

このJAですが,「農業問題の一つとして農協,つまりJAがありますよね」などとよく聞くのに,
実は私,JAのことをあまり知らないけど,皆が『JAは悪の組織だ』というので,そういうもんだろうと思っていた
という人は多いのではないでしょうか.
もともと農業問題は国民の関心が低く,高くなる時というのは食料物価が高騰した時くらいです.
一番身近な問題のはずなのですが,「どうせ誰かがなんとかするから大丈夫」という気持ちが大きいのでしょうか?
JAについて,農家以外の方々は知る機会が少ないでしょうから,この機会にどうぞ.

JAがどうして叩かれるのか?JAは何をする組織なのか?
それを整理すると,実は農業問題の一翼が見えてくるのです.
これまでの記事を整理するためにも,ぜひお読みください.

JAがどういう組織なのか?は,Wikipediaや農協のサイトを見てもらえれば一目瞭然ですので,そっちに譲ります.
簡単に言うと,農家による共同組合です.まんまですが.
ゆえに,農林水産省との直接的な関係はありません.でも実際は農林水産省の意向を農家に伝える係として機能しています.

小難しい話ばかりでもなんなんで,JAをヒーローものとして書いてみましょう.話を分かりやすくする手段としては効果的ですから.

第一話 JAマン誕生
JAマンは,農家の生活を守るために生まれた正義の味方である.
自然を相手にする農家は,努力だけではどうにもならない部分が多々あり,生活が安定しないため,それを助ける(相互扶助)ために誕生したのだ.
その昔,富国強兵に向けて経済力が高められるなか,儲けるすべがない農家は取り残されていった.それを助ける(所得再分配)ためにもJAマンは立ち上がったのだ.

第二話 サイガイマンとの戦い
農民「うわー.オラの畑をサイガイマンが荒らしてるー!」
サイガイ「ざまぁみろ.これでお前の畑は使い物にならなくなったぞ!」
???「まてーい!」
サイガイ「誰だ!?」
JAマン「サイガイマン.貴様の農家への攻撃も,これで終わりだ!」
農家「あ!JAマン!」
JAマン「いくぞ!『JAマネー!』

⇒JAマネーとは,相互扶助を目的とした災害時の農家への補助金のことである.

JAマン「 さぁ,このお金でとりあえずこの1年は食いつなぐんだ」
サイガイ「そんなことをしても,どうせまた来年も来てやるぞ!弱い農家は淘汰されるべきなんだぁ!」
JAマン「そうはいくか!『JAコンクリート!』

⇒JAコンクリートとは,農地を守るための公共事業を推奨する活動のことである.

サイガイ「くそー,なんて強力な農地なんだ!覚えてろよ!」
ありがとうJAマン,戦えJAマン,農家の生活を守るため.

第三話 クニウロとの戦い
農民「きゃー!私の畑の隣に大型店舗が作られようとしてる〜!」
クニウロ「ゲッヘッヘ.これからの時代は効率的に金を稼ぐことが大事なのだ.農業なんて非効率的な仕事よりも,グローバルに活躍する時代なのだぁ」
農民「そんなところに建物を立てられたら,日当たりも風通しも悪くなっちゃうし,夜に街灯を照らされたら作物が弱っちゃうよぉ」
???「まてーい!」
クニウロ「誰だ!?」
農民「あ!JAマン」
JAマン「これでもくらえ!『JAロビー!』」

⇒JAロビーとは,農協関係者による政治的圧力を誘発するためのロビー活動のことである.

JAマン「クニウロ!貴様が大事にしている◯国の利権,どうなってもいいのか?」
クニウロ「な,な!何!くそー...,へへへ,そうは言っても,この土地はお前ら農民自身が売ってくれると約束したのだぁ」
JAマン「いでよ,『JAボード!』」

⇒JAボードとは,農地を売りたい農家を集約し,農地を買いたい農家に斡旋することである.

JAマン「店にするくらいなら,別の農家に使ってもらうのだ!」
クニウロ「くそー,土地売買がうまくいくところだったのにー!覚えてろよ!」
ありがとうJAマン,戦えJAマン,農家の生活を守るため.

第四話 カッテマンとの戦い
農民「おいおい,そんなに好き勝手に農作物を作られたら,食料価格が安定しないよ.オラたちのためだけじゃなく,国民みんなが迷惑するんだよ」
???「そんなこと知るか!オレは儲かるものを作る.この作物は今のトレンドだ.外国にも売りに行くのだ!」
農民「しかも,そんなところに大きな工場を勝手に建てたり,そっちの畑は廃棄物置き場になってるし,これじゃ他の人も・・,ま,まさか,お前はカッテマン!?」
カッテ「農業のイメージを変えるため,オレは誕生したのだ!お前ら組織の歯車となって動く者にはわかるまい!」
???「まてーい!」
カッテ「やはり現れたな,JAマン!」
JAマン「そんな勝手は許さないぞ」
カッテ「貴様は農家のために存在し,戦っているのだろう?なぜオレたちを守らないんだ!矛盾している!」
JAマン「農業は食料の安定供給,農家全体の所得安定があってこそなのだ.市場競争やビジネスモデルで語るものではない!『JAゲイズ!』」

⇒JAゲイズとは,農作物の市場価格を安定させるため,栽培する農作物を指示したり,その地域に合った農法を維持するように調整する(圧力をかける)ことである.
また,農地を適切に使用しているか監視することでもある.

カッテ「ぐぁーっ!ちくしょう!オレは革新的なんだ!未来はオレが作るんだ!覚えてろよ!」
ありがとうJAマン,戦えJAマン,農家の生活を守るため.

第五話 ゾックギーンを救え
大衆「地方にお金を使い過ぎだ.プライマリーバランスをとるべきだ.費用対効果でみるべきだ.1.5%のために残りの98.5%が犠牲になってはいけない.もうこれ以上道路もダムも必要ない.地震で農地が壊滅したのなら,その上にメガソーラー発電所を作ればいい」
農民「そんなこと言われても・・・,農業は儲けるためにあるものではないし,道路ができないと農地も開拓できないし,ダムが必要だと言ってたのはもともと川下の都会の人たちでしょう.おまけにメガソーラーとか,都合良すぎるよ」
???「よし,私がそれを中央で訴えてきましょう!」
農民「は!貴方はもしや,ゾックギーン!?」
ゾック「だがしかし,農業のことを政治的に語っても,誰も聞く耳を持たない.大衆にとっては別世界のことだと思われてるからね.中央に行くためのエネルギーが不足してるんだ」
農民「あぁ,なんとかできないものか・・・」
JAマン「ならば,私がなんとかしよう!」
一同「あ!JAマン!」
JAマン「みんな!私の声を聞いてくれ!私に力を集めてくれ!『JAパワー!』」

⇒JAパワーとは,農家の組織票です.

ゾック「おぉ!エネルギーがみなぎってくる!よし,これで中央に飛び立てる!農家のみんな,農業がいかに大事な分野なのか,都会の人にも訴えてくるよ」
ありがとうJAマン,戦えJAマン,農家の生活を守るため.

エピローグ
JAマン「よし!『JAマネー』の威力を高めるぞ.とぉ!」
ズドーン!
JAマン「ぐあ!なんだ,JAマネーが暴発だと.自分の体が燃えていく!」
一同「おい!JAマンは大丈夫なのか?危険じゃないのか?そのうち俺たちにも被害が・・・」
報道「強大な力を持つJAマン!しかし,その力は果たして国民のためになるのでしょうか?」

クニウロ「JAマンがヘマしやがった.これはチャンスだ.農業も自由な競争で自由にビジネスをすればいい,ってことにすれば,俺様にとって都合のいい世界になる.今は自由がブームだからな.「自由」,なんと便利な言葉だろうか」
JAマン「そうはいくか!『JAパワー』でゾックギーンを・・・」
クニウロ「おーい,JAマンとゾックギーンはつるんでるぞぉ!農家を太らせるために存在してるぞぉ!自由なマーケットを阻害しているぞぉ!自由の敵だぞぉ!」
JAマン「いやいや,「農家を太らせる」って,そりゃそうだろ.私の存在意義だし,しかも「自由」にしない部分を話し合うのが政治だし,議会制民主主義というのはそういう・・・」
ズドドドドッ!
報道「おー!!なんとぉ!JAマンは “国民” のためにならない,なんか悪いことを言ってるようです.大変なことになってきました.難しい事を言っててよく分かりませんが,なんか悪いことのようです!」

カッテマン「これだからJAマンはダメなんだ.やはりオレはオレの道を行く」
JAマン「まてーい!『JAゲイズ!』」
カッテマン「ゾックギーンが弱体化し,クニウロが力をつけた今,『JAゲイズ』は私には通用しない!こちらには「TPPバズーカ」があるんだ.これでJAマンも終わりだな」

サイガイマン「『JAコンクリート』に縛られるのも,あともう少しだ.そのうち地方も農地も壊滅だ.ついでに都市部も一緒に壊滅できるぞ.堅固な農地があるから都市部は災害から守られているクセに,今は「コンクリートから人へ」が合言葉だからな」

農家「はぁ...,JAマンも杖をついて歩いてるよ.大丈夫かなぁ・・・」


私は別にJAのことを全面的に支持しているわけではありません.
今はJAが強力に音頭を取らなくても,多くの農家がやっていけるようになっています.
JAの役割というのも,少しずつ変わっていかねばならない部分もあるのでしょう.
でも,「いっそJAを解体してはどうか?」なんてのは,どうかしています.

JAが弱体化したのは,金融業でJAが自爆して信頼を失ったという側面と,族議員との癒着が必要以上にネガティブ・キャンペーンされたというところがあります.
加速がかかったのは小泉政権の時です.
いわゆる「JAに支持されて農家の票を得た族議員」というやつですね.

ですが,そもそもJAは農家の意向を中央に届けるための「ハブ」として機能するところに本来の価値があります.
農家の意向を中央政治に届ける活動として,選挙で特定の議員を支持するものなのです.JAは農業協同組合なのですから.
もちろん,最近は農業のあり方が多用になってきていますので,JAが何か一つの方略で統率することは難しくなっています.

もっと言うと,このご時世に,あまりにも凝り固まった見方で農家に指示を出すこともしばしばです.
実際,我が家にもタイミングの悪い注文(出荷量の制限)をつけてきたこともあります.せっかく作ったのに廃棄しなきゃいけないわけで.しかも追い打ちをかけるように,新しい品種を出そうとしていて,それを止められた時とも重なり,父はカンカンでした.
頭にきた父は,その時はJAを通さず,スーパーと直接取引してました.
というわけで,これがJAが弱体化していることを示す例です.JAを通さず市場に出すなんて,怖くて(村八分にされるというニュアンスです)昔はありえなかったんですよ.

とは言え,そうした調整をする組織が必要なのも事実です.
販売店だけに任せると,強い農家だけが残るようになってしまいます.
かと言って,自然を相手にしているのですから,その「強い農家」がいつ災害や事故に遭遇して「弱い農家」になるやもしれない.

じゃあどうしようか,というわけで,やっぱりJAは必要なのです.
事実,JAが弱体化した現在,違法な土地利用や勝手な農地利用,杜撰な流通が横行するようになり,皮肉なことに,より良い商品が国民の手に渡らなくなっています.

JAが問題を抱えていることは事実です.身内同士のくせに手広くやりすぎているという点は指摘されて然りでしょう.
だけど,何から何まで面白がって叩けばいいというものではありません.
みなさん,個別具体的な話になると,とたんに面倒臭がって黙るでしょ.

教育問題を語るところと似ている,というのはこのためです.
叩けば叩くほど,カタルシスを味わうためのバッシングを続けるほどに,実は自分たちの首を締めていることになる.そういう問題を扱っているのだという認識が必要です.

次回は,農業を軽く見ていると日本の文化がメチャクチャになりますよ.という点を取り上げていきます.

参考記事
参考になる書籍を,以下に示します.

ちなみに最近,生源寺眞一 著『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』を読みまして,これも農業問題を考える上でオススメの本です.
生源寺眞一 著『日本農業の真実』も良書なので,こちらも合わせてご覧ください.