2014年3月18日火曜日

慎重な待機児童対策を

待機児童問題を始めとして,子育て改革,幼保一元化(幼保一体化)といったことにスポットが当たっていましたが,その改革に一石を投じる事件が発生しました.
ベビーシッター:20代男を逮捕へ 男児遺体で神奈川県警
横浜市磯子区の20代女性が2歳の長男と8カ月の次男を預けたベビーシッターと連絡が取れなくなる事件があり、神奈川県警は17日、埼玉県富士見市東みずほ台のベビーシッターの関係先のマンション一室で、長男の遺体を見つけた。次男も一緒で病院に運ばれ入院したが、命に別条はない。県警はベビーシッターの20代の男に任意同行を求めて事情を聴いており、容疑が固まり次第、死体遺棄容疑で逮捕する方針。
関係者によると、男はこの一室を保育室として使用していたとみられる。県警の任意聴取に対し、「14日に2人を部屋に連れてきた。帰す予定の16日昼に薬を飲んで寝てしまった。翌朝、目覚めると亡くなっていた」などと説明しているという。
毎日新聞 2014年03月17日 20時58分
ついでに,同じ毎日新聞の記事で,
ベビーシッター:届け出義務なく玉石混交ベビーシッターは一般的に利用者の自宅などに業者が訪ねて子どもの世話をするサービスだが、国家資格ではなく、国や自治体に対する届け出の義務もない。独自の資格認定事業を行う公益社団法人「全国保育サービス協会」の鈴村忠則副会長は、「加盟業者は全国に約100社あるが、未加盟だけで400社弱はあるのでは」とみる。
厚生労働省は2015年4月から市町村が認可したベビーシッター業者に国と自治体が給付金を出し、利用者の負担を減らすよう仕組みを改める方針だ。しかし裏を返せば、現状は玉石混交だ。
厚労省などによると事件のようにマンションの一室で子どもを預かる形態は「認可外保育施設」に近い。同施設は児童福祉法に基づく行政の指導下に入るが、預かる人数が5人以下であれば、県や政令市などへの届け出は不要で、規制の事実上の「盲点」になっているという。
毎日新聞 2014年03月17日 23時47分

こういう記事もあるので参考に.
母投稿、男が連絡か 安さ売り、利用拡大

以前からこのブログでは「幼保」に関することについて,近い将来に上記のような条件と環境が整ってしまうこと(むしろ,既に整っていること),そして,そうした条件と環境によって正にこの種の事件が発生することは確実視しておりましたので,
幼保一体化とか,子ども・子育て新システムとか
当たってほしくない予言が的中してしまったところでありまして.

特に今回の事件は,規制緩和の合言葉のもとに,3歳未満の子供を保育ビジネスとして扱えるようになることの恐ろしさを具現化したようなものです.

今回の事件の詳細は警察の捜査を待たなければならないのでしょうが,何か手を打たなければ,この種の事件は今後も発生し続けることと思います.

どうしてそんなことが言えるのか,については上でも紹介している■幼保一体化とか,子ども・子育て新システムとか という記事を御覧ください.

その記事でも書いておりますが,ここでももう一度.
保育をはじめとして,幼稚園や学校といった福祉教育を市場原理でビジネスしたら,そりゃもう恐ろしい結果しか待っていないわけでして.
保育を市場原理でビジネスすると,その「保育者」は以下の様な方略を採ることは自明です.

親の満足度を高めるためのサービス
小さい敷地で大量に子供を預かる
それでいて少ない人数でカバーしようとする
しかも非正規雇用の保育士,未熟な保育士を雇ってコスト削減
利便性とコスト削減の関係から,子供が悪環境下に曝される
親のクレームや要求には教育的対処をせず,お客様として対応する

こうしたことは,預ける親の側にとっては,安価で便利で気持ちのいい保育です.
そんな保育所にとって,預けてくる「親」は「お客様」になります.そうした「お客様」を獲得するためのサービスを売りにしますし,そして当然,ビジネスですから利益も同時に追求します.

これについて,「福祉・教育の分野なのだから,まさか子供の命にかかわるような・・・」と思われるかもしれませんが,それは「今(むしろ過去)」の「保育」を知っている我々の価値観からくるものです.
そうではない,ビジネスライクな福祉・教育には,これまでの価値観は当てはまりません.

たしかに,福祉や教育業界にも市場の考え方を取り入れるべき部分はあるのでしょう.
しかし,それはバランスの問題であって,もっと言うなら,放っといても何事をもビジネスしたくなる人間の性に,どれだけ抗うことができるか,という点が議論されるべきなのではないでしょうか.
※この点については■人間はスポーツする存在である という記事が参考になるかと思います.

利益を追求する者に向かって,社会福祉や修身・教育の重要性を説いても,そこにはやはり限界があります.
早とちりしてもらっては困るのですが,説くべきではない,無意味だと言っているのではありません.
その必要性はどのような状況であれ「ある」のですが,「保育」という福祉教育を専門職として生業にし,その在り方を追求しているプロフェッショナルには到底かなわないものです.

たかが保育,少し慣れれば誰でもできる,なんていう職や領域ではありません.

今回の事件は,あらためて保育や子育て問題について考えるニュースとして受け止めてもらいたいものです.

※次の日,悪い意味で案の定の展開となったので,
ベビーシッター事件から考える保育
を書きました.

参考記事:教育のビジネス化
幼保一体化とか,子ども・子育て新システムとか
英語教育について
反・大学改革論(学生はお客様じゃない)
こんな挙動の教員がいる大学は危ない
こんなパンフレットの大学は危ない

保育関係の方や興味のある方は,ご一読をオススメします.