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8月, 2016の投稿を表示しています

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波多国のお土産

前回に続き,オススメ商品のご紹介をします. 今回は私の実家である高知県・幡多地域のお土産について. 高知県のお土産として有名なモノはいろいろありますが,実はその多くがここ幡多地域のものだったりします. 日本屈指の,悠久の歴史を紡ぐこの土地は伊達ではありません. まず一つ目. 「 筏羊羹(いかだようかん) 」です. ■ 筏羊羹本舗 右城松風堂 (HP) 今もやっているかどうか知りませんけど,以前はCMもやっていました. ■ 筏羊羹のCM (youtube) 懐かしいですね. 私はこの筏羊羹が子供の頃から好きで,当時は食べる機会がほとんどなかったので,誰かのお土産として頂いた時には大切に味わっていました. めちゃくちゃ地味なので知らない人も多いのですが,私としては思い出補正もかかって傑作羊羹だと思っております. 水羊羹のような瑞々しさと,クセのないあっさりした味わいが特徴の羊羹です. ■ 「高知」の人気お土産ランキングTOP15 というサイトにも第7位でランクインしています. わざわざ四万十市(旧中村市)まで行かなくても,高知空港で手に入れられますよ. 羊羹ですから,ちょっと高いので学生の頃は簡単に買えなかったのですが,今らな気兼ねなく空港で購入するお土産です. 帰省の時は,毎度 “自分用” として大量購入する一品です. 続いて二つ目.次も羊羹. 「 よしだや羊羹 」です. ネットだとここで購入できるようです↓ ■ よしだや羊羹 (四万十市場) これも私が子供の頃から大好きだった羊羹.この「よしだや」は私の実家の近くにあるので比較的口にできることが多いものの,なんだかんだ “羊羹” ですから高価なので,子供ながら遠慮がちにパクついていたのが懐かしい思い出です. 「よしだや羊羹」と一口に言っても,私は上記サイトで紹介されている, 「おちょぼ」 という商品がオススメ. 一口サイズに切られたドライな羊羹です. 筏羊羹とは逆の方向性をもっています. これは空港では購入できません(たぶん). 目にすることができたら購入をオススメします. 三つ目. 「 水車亭の芋けんぴ 」 お店のサイトはこちら↓ ■ 水車亭 (みずぐるまや) 上述した, ■ 「高知」の人気お土産ランキングTOP15 で

満席航空機と孤独なワンルームとノイズキャンセリングヘッドホン(イヤホン)

以前, ■ 満員電車とノイズキャンセリングヘッドホン(イヤホン) という記事を書いたことがあります. そこで「ノイズキャンセリングイヤホン」であるBose社製のイヤホンをご紹介しました. これです↓ これの使い心地がすこぶる良く,これがないと私の首都圏生活はままらないことをお話したところです. 別にBose社に友人がいるとか,お金をもらって宣伝しているとかではありません.そんな効力がこのブログにあるとは思えませんので. ちょっとお値段が高いんですけどね.それに見合った効果は得られます. とにかく「うるさい音」が嫌いな人にとっては必須です. うるさい音に耐えられる人には不要かも. ここ最近,仕事や帰省などで飛行機に乗ることが多いのですが,このイヤホンは飛行機でも猛威をふるいます. むしろ,電車よりも飛行機でその真価が発揮されるといえるようです. 「ノイズキャンセリング」ということで,「ノイズを完全にシャットアウトしてくれるんじゃないか」と期待する人もいるようですが,さすがにそういうファンタジックな技術商品ではありません. ですが,不快な音を軽減してくれるので快適になります. イヤホンですから,音楽を聞くことができます. エンジン音がでかい飛行機内では音量もめちゃくちゃでかくしとかないと音楽や音声が聞こえませんよね.でも,このイヤホンなら音量を小さくしても十分に聞こえます. このイヤホンはイヤホン本体にあるスイッチを入れることでノイズキャンセリング機能が使えるようになるんですけど,静かなところでスイッチを入れても何も変化がありません. ですが,うるさい環境でスイッチを入れるとそれまで流れていた音楽の音量が上がったように感じます.それだけ周りの音によって音楽の音がかき消されていたのだと実感するのです. 私の場合,飛行機や電車では本を読んでいることが多いのですが,そういう時は音楽をかけていません.音楽をかけていると読書に集中できないものですから. 購入当初は音楽をかけて楽しんでいたのですが,今では耳栓代わりになっています. もしくは,極僅かな音量の音楽をかけて喫茶店のBGMのような感じにしています. ところで,音質の良さを謳い文句にしているイヤホンは多いものですが,あれってどれほどその音質を享受しているのか怪しいも

井戸端スポーツ会議 part 38「シンクロ井村雅代コーチのこと」

オリンピックが閉会しましたね.次はパラリンピックです. ところで,シンクロナイズドスイミングの日本代表がペア,チームともに銅メダルを獲得したということで,ふたたび井村雅代コーチの手腕が注目されているようです. ■ シンクロ日本涙の銅メダル!井村式スパルタで復活 この井村氏ですが,2004年アテネ大会後は日本代表監督を退き,次の2008年北京大会の中国代表コーチに就任します. 当時,なんとこれが国内からバッシングを受けるのです. 他国のコーチをしたら,日本にとって不利になるから,というのがその理由です. 当時私は学生でしたが,なぜ井村氏がバッシングを受けるのか全く意味不明でした.国内の優れた指導者が,その腕を見込まれて世界に出て活躍するということに,同じスポーツ業界の者として偉大な功績になると思っていたからです. 実際,当時は新興無名であった中国のシンクロを北京五輪で銅メダル,ロンドン五輪で銀メダルに導いています. 実は井村氏には,北京五輪のすぐあとに,私も運営委員として所属しているスポーツ団体の講演会に登壇していただいたことがあります. 非常にホットな時期にお呼びしたのにもかかわらず,小規模な我々のような団体の呼びかけに快諾してくれたのは,さすが大阪の “お姉さま” です. そこで中国代表のオファーを受けた理由をしゃべってくれました. 一般市民にもオープンにした講演会でしたし,講演記録にも残っているのでご紹介して良いかと思います. 一つ目は,中国の本気度が凄かったから. 「我々は絶対に無様な姿を見せられない.どんなことをしてもいいから選手を活躍させてほしい」 と,物凄い勢いで説得してきたとのこと. 「そんなことを言ってくる相手を断ることは私にはできない」ということで,関西のお嬢様らしい男気がその理由. もう一つは,中国人選手のポテンシャルの高さは以前から気になっていたそうです. こういう選手を指導してみたいな,という指導者としての欲望ですね. それに,いざ例の井村式スパルタ指導が始まっても,選手たちは死に物狂いでついてきたとのこと.指導し甲斐のある選手たちだったそうですよ. 最後に,これが非常に重要なこと. ロシア対策です. 曰く,2004年頃からロシアが世界

いじめ防止対策推進法のこと

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いじめ防止対策推進法について取り上げておきたいと思います. 最近,こんなニュースが頻発しています. ■ いじめ防止対策推進法に懸念 教育現場「対応機械的に」 (朝日新聞) ■ 被害女性との父親が明かす「いじめ防止法」の無力な実態 (東京スポーツ) 継続して読んでいただいている方はご存知かと思いますが,このブログでは再三にわたって学校教育における 「いじめ問題」の取り扱いの難しさと,それを簡単に扱おうとする世論・民意の愚かしさ に警鐘を鳴らしてきました. 『いじめ防止対策推進法』についても,当初から「こんなもの絶対に機能しない」と述べてきたところです. その代表的な過去記事がこちら↓ ■ いじめ問題は解決できるものでもない ■ 笑ってはいけない「いじめ防止対策推進法」 ■ いじめアンケート調査の問題についてのあれこれ ■ いじめ問題を解決する? ■ 子供の自殺原因「いじめ」は2%,という記事への反応への反応 ■ なぜ教育現場では「ネットの意見」が受け入れられないのか ■ 大津いじめ問題で大衆の愚かさに絶望しています そもそも,本ブログの『Deus ex machinaな日々』というタイトルが,こうした「いじめ問題」に代表される 「私が考えている凄い解決方法を,優れた能力のあるどこかの誰かが着手すれば,問題はたちどころに解決できるんでしょ」 という態度(デウスエクスマキナ的手法)に対する嫌悪に由来しています. ■ 『Deus ex machinaな日々』とは何か ■ デウス・エクス・マキナ (wikipedia) 話をいじめ防止対策推進法に戻します. この法律は3年をめどに改正を検討することが規定されています. ですので,そういう議論が出てきているようです. ■ いじめ防止法施行3年、馳浩文科相「改正必要ならば議論」 (産経新聞) どのように改正するのかが問題ですが,例えばこの記事にはこうあります. (本法律が立法する)きっかけとなった大津市でいじめを苦に自殺した中2男子生徒の遺族は今年2月、いじめの情報を学校が把握した場合、保護者への報告を義務化することなどを馳氏に要望している。 冗談じゃない.そんなことを学校に義務付けようものなら,教育現場は大混乱です. これは「そ

井戸端スポーツ会議 part 37「のうが悪い(土佐弁・幡多弁)」

高知・幡多の話題をもう少し. 今回は「スポーツ」とは関係なさそうで実はある,土佐弁と幡多弁についての雑談をひとつ. 日本各地の方言のなかには「標準語に直訳できない」というものがあります. 土佐弁や幡多弁も同様.その代表的なものがこれ. 「のうが悪い」 「のおがわるい」と読みます. 一般的には, 「不便だ」「具合が悪い」 という意味として紹介されています. 例えば以下のサイト. ■ のうがわるい (高知新聞) ■ のうが悪い (Web高知) ちなみに,「のうがええ(具合が良い)」という表現もあります. しかし,ネイティブ・スピーカーである私としては,この説明では些か不十分だと思うのです. 必ずしも「のうが悪い」イコール「具合が悪い(全般)」を指すわけではありません. 実は結構奥深い方言なので,ここはひとつお暇でしたら読んでいって下さい. 例えば,ハサミの使い勝手が悪いことを指して「のうが悪い」とは言いますが, スマホ等のアプリの使い勝手が悪いことを指して「のうが悪い」とは言いません. でも,タッチパネルの使い勝手が悪いことは「のうが悪い」と言います. 同様に,ハサミにしてみても「切れ味の悪さ」を指して「のうが悪い」とは言いません. ハサミのグリップや軸の緩みなどの悪さを指して「のうが悪い」と言うのです. 同じような「使い勝手」であっても,「性能」を指しているのではなく,「操作性」を指しているのです. つまり,「のうが悪い」という土佐弁・幡多弁は,一言で言うなら, 身体との合一性を評価する言葉. 評価対象が,自分の体の一部になり切っていないもどかしさ.それが「のうが悪い」なのです. ですから,そのモノの「性能」が低いことに起因する使い勝手の悪さに対して「のうが悪い」とは言いません.意のままに操れないことに起因するものを「のうが悪い」と言うのです. これは見方を変えれば,高知の人は「身体感覚」や「随意的な操作性」から物事を評価する言葉を持っているとも言えます. これについての標準語としては,「しっくりこない/くる」というのが最も近い訳だと思いますが,「しっくり・・」というよりも,もっと明確な「身体操作性・動作追従性」を評価しているのが「のう」です. ちなみに,この「のう」が何を指しているのかは謎で

高知の酒事情

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Uターンのための高知空港. そのレストランにこんなものが置いてありました. 高知県下でのキリンラガービールの広告です. 「たっすいがは,いかん」というのは「弱いものではダメだ」という意味です. 以前,高知県では全国売り上げナンバーワンとして有名なビール「 アサヒスーパードライ 」は飲まれていないということをご紹介しましたよね. ■ 都知事選と抹茶ビールの間にあるもの ■ ビールの消費量の都道府県ランキング (アサヒスーパードライ) 一人あたり年間消費量:全国平均23.3缶に対し,高知は13.3缶でダントツ最下位です. じゃあ代わりに何が好まれているのかというと,実は キリンラガー なんです. 高知県とキリンラガーの関係は知る人ぞ知るところでもありまして,そのエピソードが最近になって新書として出ています. それがこちら↓ 冒頭のキャッチコピーに戻りますと,ようするに高知県民はスーパードライのような「のどごし重視のあっさりした味」よりも,ラガーのような「苦味の効いた気合の入った味」を好む傾向があるようなのです. 実は私も「ビール」と言えばキリンラガーが好きで,学生の頃の飲み会でも「どうしてラガーなの?」と不思議がられていました. こっちからすれば「どうせ飲むならラガーでしょ」という感覚なのですが,県外の人にはラガービールを嫌う人が多いんですよね.スーパードライが売れる理由もそこにあるのでしょうし. 全国的にはスーパードライが好まれてしまう.そんなわけで,1995年にキリンラガーはスーパードライのような「あっさりテイスト」に味を変えていた時期があるのだそうです. 当然のことながら,そんな「たすい(弱い)味」のキリンビールに高知県民は激怒. キリンの高知営業担当を通して「味を戻せ」と訴え,1998年,キリンラガーは元の味に戻ったのです. で,その後のキリンのキャッチフレーズがこちら. 「この国には、キリンラガービールがあります。」 「時代は変わる、ラガーは変わるな」 これが保守思想の原点のように思います.高知県民には本格保守が多い. なお,前回記事でもご紹介していますが,実は高知は飲酒量がさほど多くありません↓ アルコール消費量 [ 2013年第一位 鹿児島県 ] http://todo-ran

波多国:七星剣が置かれた国

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実家に帰省中.この実家の話を続けましょう. 私は高知県南西部の幡多(はた)地域の出身です.過去に何度か写真なんぞをお見せしてきました. ここが私の実家です↓ 生半可な田舎ではございません.峡谷のようなところです. ドラクエとかFFでは秘境の村みたいなところですね. 今日は送り火でした.これは我が家の送り火↓ なお,京都の大文字の送り火がよく知られますが,この幡多地域では「中村(四万十市)の大文字焼き」が有名です. ■ 大文字焼き (wikipedia) さて,そんな幡多地域.以前, ■ 「昔は海が近かった」を確認できる「Flood Map」 でもお話したように,この地は古代において「 波多国 」と呼ばれる国でした.かつて土佐国は2つに分かれていたんです. この波多国,日本建国上の歴史的において「出雲国」くらい重要な地域である可能性があるのですが,意外とメジャーではありません. 今日はその波多国のお話. 出雲国みたいに地道にキャンペーンを張っていれば,そのうち関心が高まって考古学的な調査が入るようになるかもしれませんので,気長にいきましょう. まず,それらの場所を確認しておきます.こういう感じ↓ 高知県西部が波多国(はたこく).東部が都佐国(とさこく)です. 波多国は都佐国に先駆けて発展していたことは間違いないようで,古代遺跡の多くがこの地域に集中していることと,大和朝廷がこの地に「国造」,つまり地方官を置いたのも波多国が都佐国よりも先であることなどから推察されています. ■ 波多国造 (wikipedia) どうして当時土佐国を一括管理できなかったのかは諸説考えられますが,上図の青線で引いたところに険しい山があるため,都佐国への進出が困難であり,その地域を制圧するのに時間がかかったからではないかと思われます. というのも,かつて首都である畿内から土佐地方に入るためには瀬戸内海・愛媛地域を経由するのが普通だったからです. こんな感じ↓ なので,とりあえず波多国に入ってこの地を管理するんだけど,そこから先に進むには船を使うしかない.つまり,日常的,乃至,一般庶民レベルでの交流が難しかったのでしょう. 事実,高知県は「土佐弁」が有名ですが, 私たち幡多地域の者は土佐弁を使いません . 「幡多弁」と呼

皿鉢料理のある生活|高知県民は飲んでいるわけじゃない,豪華なだけだ

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今日は終戦の日.珍しくテレビで「戦没者追悼式」を見たのですが,天皇陛下が会場を退室される際に,何度も振り返っては参列者に向かって会釈する姿が印象的でした. 今年が最後になるかもしれないと思っていらっしゃるからでしょうかね. ちなみに,8月15日というのは前回まで取り上げていた「竹取物語」においてかぐや姫が月に帰った日でもあります. 不思議な偶然ですね. さて,今私は高知の実家に帰省しています. 昨年亡くなった祖母の初盆だったこともあり,親戚一同が集まる機会もありました. ここ10年来顔を合わせていかなった人もいますので,こういう機会は貴重です. 長机をたくさん出してきて大勢で一緒に昼ごはんを食べることになるのですが,その昼ごはんが「皿鉢料理」です. この料理は最近は県外にも知られるようになりました. ■ 皿鉢料理 大きな鉢皿に料理を盛り付けるというのが特徴だとされています. 何か特別な料理が盛り付けられるわけではありません.刺し身とか寿司とか煮物やフルーツなどが大きな鉢皿に盛られるので「皿鉢料理」と呼ばれるのです. 調べてみたら,やっぱり「皿鉢料理」は土佐・高知独自のものではなく,かつて(江戸時代から古代にかけて)は全国的に見られた「晴れ料理(イベント料理)」だったとのこと. ただ,同じ集落共同体の人々が一堂に会して大きな皿の料理をつつくという風習が「郷土料理」という形で残るほど,飲み会好きなのが高知県民のようです. 以前もご紹介しましたが,高知県民はたしかに酒好きですが,飲用量はいうほど多くありません.むしろ,東京人のほうが高知県民よりたくさん飲んでいます. アルコール消費量 [ 2013年第一位 鹿児島県 ] http://todo-ran.com/t/kiji/14569 一方で,高知県民の特徴は「酒を飲む時にかけるお金(飲酒費用)」が非常に高いんです. ここんところの違い,結構重要です. 飲酒費用 [ 2012年第一位 高知県 ] http://todo-ran.com/t/kiji/16678 ようするに,高知の人はお酒を飲む際は料理を盛大に振る舞うということなんです. よく県外の人から「高知の人はよくお酒を飲むから・・・」などと言われま

もう少し竹取物語と「かぐや姫の物語」を考える

かなりしつこいと思われるでしょうが,言い足りないところがあるので前回の話を続けておきたいと思います. ■ 竹取物語をアニメ映画で観た の続きです. ジブリアニメの 『かぐや姫の物語』 (監督:高畑勲)が非常に興味深かったので取り上げました. 原作である『竹取物語(竹取の翁の物語)』に忠実な展開で,かぐや姫という女性の心情にスポットライトをあてた作品だと評価されています. ですが,前回の記事では その物語が破綻している ことを論じました(これはジブリアニメではよくあることですが). その原因は, 「かぐや姫を人間の女性として描いてしまった」 ことによるものだというのが前回の記事で言いたかったことです. 「月の民」であり,そして「天上界の高貴な姫君」という出自を持つかぐや姫を,我々が住む穢れた地である下界の女性と同じような心情として描けるわけがない.ざっくり言うと,そういうことです. では逆に, どうすれば『かぐや姫の物語』は破綻しなかったのでしょうか? まず,件の作品『かぐや姫の物語』で描いていたような,「自立した女性の生き方」を見せたかったのであれば, かぐや姫は月の民ではなく,普通の田舎娘として描かれるべきでした. そうでなければ,「成金オヤジにつれられて都にやってきたけど,都会生活や貴族のしきたりに辟易し,素朴で自立した女性の生き方を貫く」というコンセプトが成り立ちません. だって,彼女は天上界の姫君なのですから. あれだけ「保守的な生活は嫌だ!慣習に縛られたくない!どうして自然のなかで素朴に生きてはいけないの?」と言っているのですから,本気でそう思っているのならさっさと田舎暮らしに戻れば良かったのです. でも,そうできなかった. なぜなら, 「下界での生き方,言い換えれば,《人生》というのはそういうものだから」 です. 『かぐや姫の物語』において,「かぐや姫」には全く救いがないんですよ. もっと言えば, 彼女に救いはいらない .彼女は天上界における高貴な姫君だから.そこに帰っていっただけのこと. 私は『かぐや姫の物語』が悪いと言っているわけではありません.極めて常識的なことを伝えている. ヒトには人の,イヌには犬の,ネコには猫の生き方がある.そういうアニメ映画なのです. 私が問いたいのは,結局あのアニメ映画は

竹取物語をアニメ映画で観た

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今日の今日まで全然知らなかったんですけど,「竹取物語」をジブリがアニメ映画にしていました. 『かぐや姫の物語』です.監督は高畑勲氏です. DVDと小説が出ています↓   ひょんなことからこのアニメ映画を知って,評判が良いようなので見てみたんです. 今回は,その映画感想文を書いてみたいと思います. この作品は「映像がきれい」であることと,原作「竹取物語」が抱えているメッセージを高畑監督なりに解釈して見せたということで注目されています. 原作「竹取物語」は,淡々と第三者の目から述べられていますが,この作品ではヒロインである 「かぐや姫」という女性の心情から描いてみた というもの. 毛筆で描かれたような絵はさすがにきれいで,たしかに素晴らしい映像でした. ただ,さすがは「ジブリ」の作った物語. そのメッセージが「自己矛盾」に陥っている ところが可愛らしい. この作品に限らず,ジブリ(高畑勲や宮﨑駿)が描く作品には 「良いこと言っているように聞こえるんだけど,よくよく考えたらその論理は破綻している」 というものが散見されます. 高畑勲監督であれば,「平成狸合戦ぽんぽこ」なんてその典型です. 自然との共生をタヌキの視点で語っているのですが,タヌキたちが「あの時代は良かった」と懐古する原風景が「昭和の農村」なんです.原生林じゃなく,農村. あれって人間が自然を相手に奮闘して作り出した,血と汗と涙の結晶ですよね.しかもタヌキを害獣として追い払っているのが農村ですから,これは大いなる矛盾です. 農村とは,いかに自然をコントロールするかに苦心している現場です.自然と仲良くする気なんてさらさら無い. 農家である私の父は,田畑を荒らすイノシシ退治が日課です.こうした害獣をいかに抹殺するかが農家の仕事と言っていいでしょう. そんな「猪神:乙事主様」を『もののけ姫』で描いていた宮﨑駿監督の作品にもそれがあります.典型的なのは「風の谷のナウシカ」. 腐海の森に覆われている地球を人間の手に取り戻すため,軍事大国の司令官であるクシャナは「腐海の森を焼き払う」と言います. それに難癖つけて抵抗するのが風の谷と,ナウシカです.自然を破壊してはいけない,腐海の森に手を出してはいけない,などと扇動する余命いくばく無いババアに導かれて頑なに反対します. でも

井戸端スポーツ会議 part 36「イチローの3000本安打」

天皇陛下が重大なお言葉を述べられた日ではありますが,それについて論じるのはおこがましいのでスポーツの話題にします. ついにこの日がやってきましたね. イチロー,メジャー3000本安打 です. 類稀なる素晴らしい選手をリアルタイムで見れていることに感謝. この記録の偉大さがどれほどかと言うと・・・・. などと言い出すのは野暮です. 野暮どころか最悪です. イチローが3000本安打を打った.これはもの凄い偉業です.奇跡的な御業を目の当たりにできた.その価値が分かるものがその価値を噛みしめればいい. 以下,前回の■ 井戸端スポーツ会議 part 35「リオデジャネイロ大会」 とも関連するのでそちらも一緒にどうぞ. よく,野球界の偉業に対して, 「でも野球は世界的にはマイナーなスポーツだから,そこでの記録なんて大したことではないんだ」 などと言い出す人がいます. たいてい,その比較対象はサッカーであることが多いんですけど,別にここでサッカー・ファンを批判したいわけではありません.私もサッカー・ファンの一人ですから. わざわざ他の競技種目と比べようとする根性が腐っているのです. ピカソとゴッホ,フルトヴェングラーとマイケル・ジャクソンを比べることに意味が無いように,同じスポーツの中でも競技種目をまたいで比較することに価値はありません. すきやばし次郎の寿司を食って「こんな寿司より二郎ラーメンの方が旨いぞ」と文句を言ってもバカなだけです. でも,こういう比較をやらかす奴はたくさんいます.Yahoo!ニュースのコメント欄を見ていたら結構いる. どの競技が最も高度なパフォーマンスを発揮しているのか,なんて議論をしている時点で,その人が浅薄な人間であることを明らかに示しています. 学生にもそんなことを質問に来る者がいます. なので,どのようなもので比較しようとしているのか問いただしてみたら, 「競技人口の多さ」 「年俸」 「動いているマネーの大きさ」 「運動量・運動強度」 「経済への波及効果」 「選手の犯罪率」 といったものを出してきます. なので丁寧に叱ります.「君は人間として下劣だよ」ってことを,オブラートに幾重にも包んで叱ります. いや,これ結構大学教育において重要だと思うんです. 人間にとって,スポーツ

井戸端スポーツ会議 part 35「リオデジャネイロ大会」

オリンピック・パラリンピック・リオデジャネイロ大会が始まったらしい. でも,TV持っていないし興味ないので観戦するつもりはありません. まったく関心がないわけではありません. こういう仕事していますから気になる部分があるところはたしかで. 知り合いが試合に出てたりするし. でも,だからといって情熱的に眺めるものではないと,そういうことです. オリンピックに興味がなくなったのは中学生くらいからです. 大騒ぎするほどのものではないなと,そういうことです. それ以上に,スポーツは「観る」ものではない.そう捉え始めたところが大きいです. オリンピックだけじゃありません. 高校生くらいからプロスポーツ全般を見なくなりました. プロ野球はもちろん,サッカー・ワールドカップもバレーボール・グランドチャンピオンズカップも見ません. そもそもTV持っていないので見れません. 頑張ってスポーツ観戦に興味を持つように務めたこともあります.今思うと無駄な努力でした. こういう仕事していますから,周りがそういう話をすることがあります.「あの試合,凄かったよねぇ」って. その度,「ですよねぇ」などと適当な相槌を打っています. 一応,高校球児でしたので,WBCとかイチローの3000本安打には興味はあります.でも,わざわざリアルタイムで確認,観戦するほどではないですかね. 必竟,スポーツは「観る」ものではなく,「する」ものだということにしたんです. 自分で取り組んでこその「スポーツ」. 観ることに楽しみを見出すことは諦めました. 観戦なんて邪道.そういうスタイルにしています. 実は,我々のように体育・スポーツ学を専門にしている人には,こういう考え方の人が結構います. 同志多数が心強い. 「スポーツ観戦は邪道」 これは重要なスタンスではないかと思うんです. 否,スポーツ観戦そのものを批判しているのではありません. スポーツ観戦する姿勢を問うているのです. 誰かがスポーツをしている様子を観ること,それ自体に「注力」すること. ルールも経緯も意義もわからず,ひたすら観戦することに価値を見出す姿勢. これは「バカ」を生み出すことにつながります. よく,そのスポーツのルールや経緯や意義なんて細かいことは気にせず,盛り上がって観

「昔は海が近かった」を確認できる「Flood Map」

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ここ最近,古代日本・四国ファンタジーを取り上げていたので, ■ 鳥無き島の蝙蝠たち(1)古代四国人 ■ 鳥無き島の蝙蝠たち(11)邇邇芸命(ニニギノミコト) そのネタ集めの途中に出たったのが,「Flood Map」というサイト. ■ Flood Map グーグルマップの海抜高度情報を用いた海面水位シミュレートができるものです. 古代日本(に限らず,世界)は今より3〜5メートルほど海面水位が高かったようでして,その状況を確認するためのものとして有用です. この海面水位が高かった時代が日本では縄文時代のあたりだったので,「縄文海進」と呼びます. ■ 縄文海進 (wikipedia) もともとは,丘の上にあった遺跡から海産物の遺物(貝塚)が出てきたりしたので,「もしかしたら昔は海が近かったのではないか」というところから始まったのだそうです. その後,世界的に約1800年前までは地球は温暖であり,地球の海面水位が高いことが判明しました.地球温暖化の影響を語る際によく引き合いに出されるやつです. Flood Mapを使って古代の海面水位をシミュレートしてみると,「昔,この地域は海が近かった」というのがよく分かります. もちろん地盤沈下・隆起,人工的な開発などの影響もあるのでしょうが,だいたいの状況を察するに十分なものが得られます. 以下,いずれも海面水位を「+5メートル」にして見てみました. まずは,水没で有名なの 関東平野 . 今でこそ開発などによって地図上では海抜が高くなっている部分も多いのですが,かつてはその大部分が海の底でした. しかも,江戸を作るまでは利根川が東京湾に流れ込んでいて一面湿地帯だったようで,人が住めるような場所ではなかったのだそうです. 遺跡として最大級の規模である「 吉野ヶ里遺跡 」. 今ではここは佐賀県の内陸部ですが,古代の海面水位をシミュレートすると,ここが浜辺の街であったことが分かります.貝塚が出るのも当然です. 逆に,佐賀県と福岡県南部の大部分が水没していたようです. 大阪 です. 遠い昔,門真から東大阪,八尾にかけて内海があったというのはどうやら本当のようです. かつてはそれを「難波津」と呼んでいたのではないかとされています. ■ 難波津 (wikipedia) 関東平野と

井戸端スポーツ会議 part 34「甲子園の女マネの件」

私にとっての青春でもあります高校野球について,こんなニュースがありました. ■ 大分の女子マネが甲子園のグラウンドに 大会関係者慌てて制止 (ヤフー・ニュース2016.8.2) 第98回全国高校野球選手権大会の甲子園練習が2日、甲子園球場で行われ、大分の女子マネジャーがユニホームを着てグラウンドに立ち、大会関係者から制止される一幕があった。大会規定では危険防止のため、グラウンドに立つのは男子のみと明記されている。甲子園練習も準じる形になるが、手引きには男女の明記がなく、ジャージーでの参加は禁止、ユニホーム着用とだけ書かれていた。 こんなアンケートまでやってる↓ ■ 甲子園練習で女子マネージャーの練習補助を制止、どう思う? (ヤフー意識調査) 世論としては,圧倒的な差をつけて「規定を変更し、女子マネージャーの練習補助を認めるべき」というのが大勢のようです. どうでもいいですよ,こんなの. むしろ,ずっと問題無かったのだから今までどおりでいいです. この高校は,女マネが補助に入らなければ練習がままらない事態にでもなっていたのでしょうか? そうでなければ今までどおりの規定で問題ないということです. いちいち気にしすぎ. それにね,実際ああいう 慣れない試合会場での練習って危ない んです. まして,気分が高揚してしまう甲子園球場でしょ.注意散漫になりやすいし,特に外野からのバックホームとか,グラウンドの隅っこでの簡単なティーバッティングの「流れ弾(球)」が飛んできて,顔面にぶつけて出血,なんてことがある. 硬式球ですから,当たりどころが悪いとケガも大きいんですよ. 男子なら「おまえマヌケだなぁ(笑)」で済まされますが,女子だと大事になるでしょ? 私も野球のポジションは1〜9まで一通りやってきましたが,特に外野だと試合会場では普段以上に思い切って遠投したくなるものです.気分盛り上げるために. 周りも周りで,浮足立っているからボールの往来を確認しきれないところがあって.気づいたら鼻血ブーな状況に遭遇します. まぁ,野球経験者なら分かってくれるんじゃないかと思います. 「そういう調査データがあるのか?」って言われたら言い返せないんですけど,経験的によくあるんです. そんなわけで,「麗しき乙女の顔を傷つけたくない」「何かあったらそ

オープンキャンパスの来場者数を想う

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昨日は「映画は自宅で見るもの」と決めている私を映画館まで足を運ばせた『シン・ゴジラ』の話題をしましたが,そう言えば都知事選もあったのですね. 東京はもう終わってる地域なのであんまり興味ないのですけど, ■ やっぱり東京を諦める こういう選挙とよく似たものに大学の オープンキャンパス の来場者数があります. 入試もそんな感じ.「終わってる」というのも同じです. 我々大学教員も,夏は「サマー・オープンキャンパス」と銘打ったイベントに駆り出されます. 私もさっきまで高校生や保護者向けの「模擬授業・体験授業」のパワポスライドを作成していました. もちろん,「体験だから」とバカ正直に大学でやっている授業をそのまま高校生にやると大変な事態になるので,飲み込みやすいように噛み砕いて擦り潰して流動食みたいにして提供します.     オープンキャンパスとは「お見合い」です. 相手の本当のところは分からないイベントです. 「ご趣味は?」 と聞かれて, 「エクセルだけで統計処理作業をする方法をいろいろ模索するのが好きでして,それをブログにアップして閲覧数を稼いで楽しんでいます」 などとバカ正直に言っても私の性的魅力は上がりません. そこはしっかりと, 「フットサルが好きですね.たまにワンデー大会に友達と一緒に出場しています」 って応えるのが正解です. さて,夏にやるので「サマー・オープンキャンパス」と呼ばれているわけですが. ということは,「スプリング」も「オータム」も「ウインター」もある大学があります. 学生募集につながるんだそうです. このオープンキャンパスですが, (1)年間を通して開いている大学ほど経営難 (2)連日開いている大学ほどブラック と解釈してください. より詳細に言いますと,(1)の「年間を通して開いている大学」というのは,受験者数低下や経営状況に焦り始めた大学を意味します. ◯◯大学は春にもやってるらしいぞ.やっぱりたくさんやったほうが広告になって学生募集につながるんだろう,と素人発想で考えるものの,高頻度でやると疲れるし学内から不満が出るので散発的にやる,っていうことです. 年間を通さなくても,(2)のように「特定の時期に集中的に実施する大学」があります.勘違いしてもらっちゃ困るのは,大規模大