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日本のウイスキーが高いよ

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今,酔っ払って帰ってきたのですが,そう言えば,以前こんな記事を書きました. 大学生向けに,「学生のときに気をつけたほうがいい行動」シリーズの一つで,お酒の飲み方を取り上げたことがあります. ■ 大学生用:二十歳になったらお酒を飲もう できれば,大学の教員と一席を設ける機会を増やしたほうが,結果的に大学生活が充実するんです,という趣旨の話でした. この記事の増補版として,以下を読んでもらえればと思います. ウイスキーの話です. 学生の頃は「ウイスキーとかいう不味い酒,どうしてオッサンたちは好んで飲むんだろう?」と不思議でならなかったのですけど. 貧乏学生だった自分が飲んでいたのは「トリス」とか「富士山麓」とか,お店に行っても何が割られているのか分からない「ハイボール(たいていトリス)」だったから,そりゃ不味くて当然です. ウイスキーってのは,“誠に残念ながら” 美味しさと値段はきれいに比例します. 高いやつは,やっぱり旨い. ところが,ここ数年ほど日本製ウイスキーだけがアホみたいに高くなっていて驚いていたところです. 行きつけの酒屋のお姉さんに聞いてみたら,どうやらNHKのドラマの影響だかなんかで高騰しているとのこと. 響12年を買おうとしたら,8000円とかいう値段がついていまして.「え!これちょっと高いよ!」ってことで聞いたんです.今じゃもっと高くなってる. ずっと「響12年」を愛飲していたのですが,何年か前からの高騰についていけず,そこまで払うくらいなら別のを買うよということで,今は「シーバスリーガル12年」に切り替えていました. 別に妥協しているわけじゃなくて,シーバスリーガルはシーバスリーガルで美味しいウイスキーです.実際,世界的に人気があります. むしろ,最近になって出てきた「響Japanese Harmony」とかいう得体の知れないブレンデッドウイスキーが残念な味です. まあ,好みは人それぞれなところがありますので,なんとも. 上述した記事でも書きましたが,「最も旨い酒」なんてものを語るほどバカな話はありません.自分が旨いと思ったものを飲めばいい話です. ところで,なんだかチャラい感じがしていたので長らく避けていたのですが,一念発起して飲んでみたのが 「シーバスリーガル・ミズ

「キャリーバッグのマナー」とか言い出す傲慢さ

最近,キャリーバッグ(キャリーケース,キャスター付きバッグ)に関するマナーを叫ぶ声がうるさくなってきました. 例えば,こんなウェブ記事があります. ■ キャリーバッグ、絶えないトラブル…100万円の賠償例も (IZA) マナーやエチケットを批判するわけではないのですが,それを声高に訴える奴には嫌悪を覚えます. ここは一つ,「正義は我にあり」とファビョっていきり立つバカに冷水をかけておく必要があると思うのです. 繰り返しますが,キャリーバッグ利用者の側に明らかな非のあるトラブルを擁護するつもりはありません. ですが,キャリーバッグ使用方法のマナーやエチケットを,「非利用者」の感情と都合に合わせて拡大解釈されることが蔓延ることは避けたいところです. 例えば,以下のような無茶苦茶な話が成されています. いずれも,ネットで出回っている「キャリーバッグ利用者への注文」です. 1)人混みでキャリーバッグを引きずるな 2)持ち手を長くするな 3)狭い場所(電車等)での使用は自重しろ 4)小さいキャリーバッグは不要だろ. 5)ファッションで使う奴が多過ぎ 6)日本にキャリーバッグは相応しくない 7)周囲の不快感に気づいていないのでは? キャリーバッグにつまづいて危ない思いをしたとか,存在が邪魔だという類のコメントが出回っています. 私はキャリーバッグが行き交う場所をいつも利用していますが,どうやら皆さんより洞察力や判断力,危険予測能力や運動能力が優れているようなので,キャリーバッグ利用者を危ないと思ったことがないし,それによって迷惑を被った覚えも一度もありません. ちなみに,私自身,キャリーバッグはよく使います. 最近は私もその「役回り」から外れてきたのですが,仕事で大きな荷物を運搬することもあって,キャリーバッグがないとやってられないという状況です. あと,スノーボードやスキーの運搬にも専用キャリーバッグを使っているという背景があることを開示した上で,以下,私の主張です. 皆さん,ちょっと不寛容過ぎやしないでしょうか. もちろん,キャリーバッグを利用している人すべてがそうとは言いませんよ.でも,キャリーバッグじゃないと搬送が大変な労力になるから利用しているという人は多いものです. っていうか,それがキャ

井戸端スポーツ会議 part 47「森友・加計学園問題と野球特待生」

森友とか加計について,やや無理矢理感がありますが,この話題を「スポーツ」で論じてみます. その前に,この件に関する本日のニュース. ■ 加計文書、前次官が感じた圧力 「黒を白にしろと」 (朝日新聞2017.5.25) 加計(かけ)学園の計画を巡る文部科学省の文書が発覚して1週間あまり。同省の官僚トップだった前川喜平・前事務次官(62)が25日、公の場で舞台裏を証言した。(中略)「文科省の中で作成され、幹部の間で共有された文書で間違いない」。冒頭の発言で真っ先に切り出したのは、「総理のご意向」などと伝えられたと記された文書の真偽だった。「あったことをなかったことにはできない」などと会見を開いた理由を述べた。 前川氏がどこまで本当のことをしゃべっているのか定かではありませんが, 政治家の圧力によって「黒いものを白にしろ」と言われること自体は普通のことのはずです. 一般的に,こういうのを「政治家の口利き」と呼び,「民主主義の裏技」とされています. 政治家が,ましてや総理大臣がなんらかの形で意向を示せば,官僚としてはそれに従わなければ自身の身の保障が危うくなりますから「忖度」するものです. 通常,これはバレないように行われます.というか,普通はバレるようなものではありません.関係者が口裏を合わせればバレようがないものだからです.実際,前川氏も上記記事ではこう述べています.  「加計学園ありきだったのか」との質問に、前川氏は淡々と答えた。「暗黙の共通理解としてあったのは確か。内閣府でも文科省においても議論している対象は、加計学園のことだという共通認識のもとで仕事している」「口に出して加計学園という言葉を使ったかどうか、そこは使っていない場合が多いと思う」 安倍晋三が「私はそんなこと言っていない」と反論したとして,おそらくそれは事実でしょう. 言っていないことは事実,だけど,何か別の形で「示す」ことによって相手に忖度させることはできます. 繰り返しますが,それが政治家の口利きです. 私が問題にしたいのは,そんなこと,普通の大人なら誰でも知っている「民主主義の裏技」であるにも関わらず,まるで今まで知らなかったかのようにカマトトぶってる連中が多いことです. これと同じことが展開されたのが,何年か前にニュースとなった「野球部員の特待生制度」です

森友学園とか加計学園問題なんて議論している場合だ

なんか最近,こんな話題が続いているようです. 私は安倍晋三を信用していませんが,別にこの問題で安倍晋三に「違法性があるのではないか?」とか,「不道徳な形で関わっているのではないか?」という観点から問い詰めるつもりはありません. 安倍晋三の存在そのものが違法的だし不道徳だと思っているくらいなので,むしろ,(安倍晋三氏にとって)いい意味でも悪い意味でも,どうでもいいと思っています. 以前,そんな記事も書きました. ■ 森友学園問題をまとめてみた 問題なのは,どうでもいい事件をいつまでも引っ張る「安倍晋三」のことです. そういう意味では,やっぱり安倍晋三が問題なのです. よく,「北朝鮮や原発事故,種子法廃止といった重大問題が山積する中,こんなしょうもないスキャンダルに時間を割いている野党やマスコミが悪い」などという意見を聞きますが,これこそ意味不明です. 安倍支持者に言わせれば「しょうもないスキャンダル」とのことですが. これについては珍しく私も同意するのですけど, そんなしょうもない話をさっさと片付けられない政権や首相に,まともな国家運営理念や判断力・決断力があるとは思えません. そもそも,そんな「しょうもないスキャンダル」が飛び出てくるような政治家に,国のトップを任せられると考える方がおかしい. これは常識的感覚の問題です. まともなバランス感覚がある政治家なら,幼稚園児に教育勅語を合唱させ,田んぼに園児を突き落とすような教育者と懇意にするわけがない.どう考えても異常ですから. もちろん,必然的にコネクションが広くなってしまうのが政治家だ,というところは認めるとして,「知り合いでした」というだけなら言い逃れできるでしょうが,親密な関係ではないというのは通らないでしょう.寄付金渡したり講演会を引き受けたりするのは「親密な関係」と言わざるを得ません. 類は友を呼ぶと言います. 「異常な思想に共鳴しているのが安倍や稲田だ」と受け取られても仕方がないし,実際そうだったのでしょう. ところが,安倍晋三やその夫人,そして稲田朋美などは「私はこの学園とは深い関係にはなかった」という言い訳をしていました. けど,いくらなんでもそりゃ無理があります. こんな言い逃れを考えるような政治家が,北朝鮮や原発事故とまともに向き合えるわけがない

ミサイルを連射している件

2回続けてウンコとかキン◯マの話をしたので,今回はそういうの無しの話をしたいと思います. 北朝鮮がミサイル実験をたて続けに実施していますね. おっかない話です. ■ 北朝鮮が弾道ミサイル発射 中距離の新型か (朝日新聞2017.5.21) 北朝鮮は21日午後4時59分ごろ、西部の平安南道(ピョンアンナムド)・北倉(プクチャン)付近から東方向に向けて弾道ミサイル1発を発射した。高度約560キロまで上がって約500キロ飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)外の日本海に落下した こうした情勢を受けて,こんな話も出ています. ■ 首相は公邸に住むべき? 民進・野田氏と菅長官が応酬 (朝日新聞2017.5.23) 相次ぐ北朝鮮のミサイル発射などに迅速に対応するため、安倍晋三首相は首相官邸に隣接する首相公邸に住むべきかどうか――。首相が東京・富ケ谷の自宅から官邸に通うことを民進党の野田佳彦幹事長が「危機管理上、あり得ない」と批判すれば、菅義偉官房長官は「政府の対応はまったく問題ない」と反論し、応酬を繰り広げた。 どっちでもいい話だとは思うのですが,野田議員の方にやや分があるかなと思います. なぜなら,もし菅官房長官の言うことが正論だというのであれば,緊急時にも迅速な対応ができる設備が整っている首相官邸なんて,そもそもいらないじゃないか,という話になるからです. もっとも,安倍首相がこういう状態であることをもって,日本政府としては「北朝鮮のミサイル実験は脅威ではない」と判断しているであろうことが分かります. 本当に危機感があるのであれば,いくら安倍晋三とは言え官邸に住むはずですから. もっと言えば,そもそも本当にミサイルが飛んできたところで,現在の日本は何もできません. 何か主体的に動けるような状態ではないし,そんな肝の座った政権でもない. 官邸にいようがゴルフコースにいようが,できることなんてないのです. 総理大臣による迅速な対応なんて必要ありません. やれることは地震の時と一緒,所轄・現場レベルでの被害確認と救助. それだけです. ちなみに,私としても北朝鮮のミサイルは脅威と感じていません. 否,脅威と感じたところで何もできないのですから,いっそのこと脅威と思わないようにしています. むしろ,日本政府としても同じことを

やっぱりこうなった農業のこと

最近,徐々にそのヤバさが知られるようになったニュースがあります. 種子法の廃止 です. どうやら日本人には自殺願望があるようなので,国家と民族,その最大の礎である「農業」を壊滅させようとしています. その尖兵が現政権であり,安倍晋三です. こんなネット記事もあります. ■ 【TVで言わない!これはやばい】主要農作物種子法廃止について 農業に関する記事をシリーズで書いていたこともありますが,早いもので,もう4年前になってしまいましたね. どうせいつか,こんなことになるだろうという諦めはありましたが. 2013年の記事はこちら↓ ■ ちょっと本気で農業のこと(食料自給率と食料安全保障) ■ ちょっと本気で農業のこと(ハイテク農業を考える) ■ もうちょっと本気で農業のこと(問題の本質は農業をバカにしていること) ■ もうちょっと本気で農業のこと(農家が農業をしないわけ) ■ ほんのちょっと本気で農業のこと(農協:JAは悪の組織なのか?) ■ やっぱり本気で農業のこと(PL480 通称,残飯処理法) もっと前の記事はこちら↓ ■ 農業のこと ■ 続・農業のこと でも,実は今回の件で完全に「日本」は万事休すです. はっきり言えば終了です. いやマジで. 今までならなんとかなる可能性が僅かでもありましたが,今回の件で完全にダメになってしまいました. 本当に諦めましょう. 今回話題になっている(まだまだ話題になっていないけど)種子法ですが,■ 主要農作物種子法 (日本国)を見るとこうあります. この法律は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うことを目的とする。 というものでして, この法律で「主要農作物」とは、稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆をいう。 文字通り,日本文化と国体を形成する農作物の種子を管轄するものです. ではどのような法律なのかと言えば, この法律で「ほ場審査」とは、都道府県が、種子生産ほ場において栽培中の主要農作物の出穂、穂ぞろい、成熟状況等について審査することをいい、「生産物審査」とは、都道府県が、種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子の発芽の良否、不良な種子及び異物の混入状況等

井戸端スポーツ会議 part46「禁煙とオリンピックとウンコの話」

東京オリンピックに向けて「禁煙」の話が喧しくなっています. 本件については,いろいろな人がいろいろな意見を述べているので,私もひとつコメントしておこうと思いました. オリンピックというスポーツの話題でもあるので. まずはニュースを確認. ■ 東京五輪は原則、全面禁煙 分煙論外 初の制度案 (毎日新聞) 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、厚生労働省がたばこの全面禁煙を原則とする初の制度案をまとめた。たばこを吸わない人が喫煙者の煙にさらされる受動喫煙を防ぐため、近年の五輪開催都市はすべて罰則付きの対策を講じており、原則禁煙は世界標準。日本の緩い「分煙」は許されそうにない。(毎日新聞2016.12.9) でも,最近はこんな感じになってきました. ■ 「たばこのない五輪」に黄信号-全面禁煙なしに2020年迎える可能性も (ブルームバーグ) 自民党のたばこ議員連盟は、分煙を掲げた対案の基本理念として、受動喫煙を避けたい人の権利を侵害してはいけないが、合法な嗜好(しこう)品であるたばこ喫煙者を社会的悪者として排除することはあってはならないと主張。議連の野田毅会長はホームページで「吸わない人の権利とともに、吸う人の権利も考えて、禁煙より分煙、目指せ分煙先進国になれるよう議連で考えていく」と述べている。(ブルームバーグ2017.4.25) 1964年の東京オリンピックでも,日本に世界基準のマナーとエチケットを浸透させようという動きがあったことはご案内の通りです. そもそもこの「近代オリンピック」には,そういう「グローバリズム」の役割があるとあると言っても過言ではありません.もちろん,良くも悪くもですが. もっと言えば,元来,スポーツという文化にはグローバリズムの機能が内包されています. 昔にそんな記事を書いたことがあります. ■ 井戸端スポーツ会議 part 5「スポーツはグローバリズム」 結論から申しますと,私としては行き過ぎた「禁煙」圧力には反対ですが,だからといって喫煙を野放しにすることは現代文明としていかがなものか,と考えています. ここはひとつ喫煙者には人間としての在り方を見つめてもらいたい.そんなところです. 喫煙者がどのような経緯でタバコを吸い始めたのか,それについては脇に置きましょう. 確認してお

古代四国人・補足(古事記の中巻を推定する)

前回は『古事記』中巻の冒頭「神武東征」を取り上げてきました. 神武天皇による記念すべき「日本建国」のエピソードですから,古事記編纂者としても気合を入れて書いた部分だったはずです. 今もって神武天皇が橿原宮で即位した「2月11日」は,「建国記念の日」として扱われている我が国の記念すべき出来事です. 今回は,神武東征以降の中巻の解釈に入っていきたいと思います. 過去記事の繰り返しになりますが,今一度『古事記』の構成を確認しておきます. 1)序: 編纂目的の記述 2)上巻: 天地開闢 〜 天孫降臨の後,神武天皇の祖父・火遠理命のこと 3)中巻: 神武東征と神武天皇の即位 〜 応神天皇のこと 4)下巻: 仁徳天皇のこと 〜 推古天皇のこと 私はこの3巻構成それ自体に意味があるという説をとっております. その構成は,一般的には以下のように解釈されます. 上巻: 神世の時代(日本各地に散らばる神話をまとめた) 中巻: 伝説の時代(古い言い伝えをまとめた) 下巻: 歴史の時代(記録に残っていることをまとめた) これを古事記の編纂目的から逆算して,私なりに解釈すると,以下のようになります. 上巻: 日本が統合を始めるまでの騒乱の経緯と諸勢力について「神様」を使って暗示 中巻: 近畿地方を首都とするにあたり権力争いをした各地の王族や豪族を,すべて「天皇」として扱った 下巻: 実際に「天皇」という存在だった人達の話 古事記は編纂当時の 「朝廷と権力者,および天皇にとって都合のいい歴史的解釈を普及しつつも,日本各地の豪族のご機嫌取りをする」 という重要な役割を担っていますから,上記のことは以下のように言い換えてもいいでしょう. 上巻: 地名や人名,出来事をダイレクトに書くと角が立つ話を,ぼかしてファンタジーにした 中巻: かつての様々な権力者を「歴代天皇」にしておくことで,ご機嫌取りにつかった 下巻: 今に続く天皇のこと そのように考えると,「上巻」でのエピソードは必ずしも「太古の出来事」ではなく,中巻や下巻に相当する時代に起きた話である可能性もあります. その上で, 中巻に書かれていることを解釈すれば,この部分は何百年にも渡った様々な出来事と素直に読むのではなく,同時期に権力争いをした十数年間のこと なのかもしれません. 実際

古代四国人・補足(神武東征で隠せなくなったこと)

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今回は古事記の神代(上巻)から伝説(中巻)へと話が移るところ,すなわち「神武東征」です. ここまで来ると,過去記事を読んでおかないと意味不明な妄想話(実際そうだけど)にしかならないので,過去記事を読むことを強くオススメします. ■ 古代四国人・補足(国産み神話を深読みする) ■ 古代四国人・補足(三貴神を深読みする) ■ 古代四国人・補足(大国主命の神話の裏を読む) ■ 古代四国人・補足(国譲りと天孫降臨から空想する ) 古事記の中巻に入ると,上巻で展開されていたファンタジー色は薄まり,途端に戦記物になります. きっと,この時代の出来事になってくると,ひと口に膾炙されている話が多くなってくるからだと思われます. 神武東征の流れを簡単に確認しておきましょう. 日向国(宮崎県日向・高千穂)で過ごしていた神武(カムヤマトイワレビコ)が「東に美しい国があるというから,せっかくなので侵略・占領しよう」と思い立ち,船団を伴い遠征することになりました. まずは日向から北上し,「宇沙(大分県・宇佐市)」で休息.その後,さらに北上して「岡田宮(福岡県周辺)」に向かい,そこで1年を過ごします. 神武軍はそこから関門海峡をわたって中国地方に移動.阿岐国(広島県・安芸)で7年,吉備国(岡山県・吉備)で8年の駐留の後,浪速国(大阪)へと侵攻します. 浪速国では土着勢力であるナガスネヒコの軍団と遭遇し,これに敗戦します.しかもこの戦いで神武の兄・イツセが重傷.イツセは神武に「太陽を崇める我ら日向の民が,日(東)に向かって戦うのは縁起が良くない.回り込んで西から攻めよう」と言い残して死亡. 神武軍は熊野(和歌山・三重の境)まで紀伊半島を回り込み,山に入ってここから北上します. 途中,森で熊さんに出会ったところ,不思議な毒気にやられて神武軍は皆して気を失い倒れます.これが「熊に出会ったら死んだふり」の起源なのかもしれませんが,幸いなことに、熊はすぐに消えていなくなりました. ここで土着民のタカクラジが神武の前に現れ,古事記・上巻のエピソードである大国主から葦原中津国を略奪・平定した,あの「タケミカヅチ」から頂戴したという聖剣・フツノミタマを渡してくれます.フツノミタマを神武が手にすると周囲の毒気は消えうせ,兵士たちは意識を取り戻したのです. さらには

古代四国人・補足(国譲りと天孫降臨から空想する)

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今回はいよいよ『古事記』上巻,最後のパートです. 編纂者である当時の朝廷と天皇にとって都合の良い話として ,国譲りと天孫降臨のエピソードから空想してみたいと思います. この一連の記事では繰り返しになりますが,ここから初めて読み始めたという人のために,「どうして古事記から古代日本の裏事情が読み解けるのか?」を説明しておきます. 「神話」とは,それに類似した出来事が過去になければ受け入れられない. つまり,古事記や日本書紀で述べられている神話には,そのモデルとなった出来事が実際にあった可能性が非常に強いということです. 詳しくはこちらをどうぞ↓ 松本直樹 著『神話で読みとく古代日本』 『古事記』とは,編纂当時の朝廷と権力者,および天皇にとって都合のいい歴史的解釈を全国的に普及しつつも,日本各地で伝承されている伝説・神話との整合性をとりながら,しかも各地域とその豪族のご機嫌取りをする という,極めて高度な政治目的を達成するために作成されていると考えられます. では,今回の「国譲り」と「天孫降臨」という日本神話は,そもそもどのような民間伝承を改変させたものなのでしょうか? 国譲りは,葦原中津国平定の物語として語られます. その発端は高天原におわす最高神「アマテラス」による,かなり理不尽なちょっかいでした. 「葦原中津国(日本)を統治するのは,我々天津神である」とかなんとか言い出して,手下共を大国主が統治している葦原中津国に差し向けたのです. 詳細は過去記事を参照してほしいのですが,日本神話においては, アマテラス=九州勢 スサノオ=近畿勢 大国主命=出雲勢 というメタファーが成り立っていると考えられます. 前回記事で扱った 「大国主の国作り」とは,大国主(出雲勢)がスサノオ(近畿勢)を押さえ込んで出雲・近畿地方を平定するが,最終的には近畿地方に都を移した物語 として解釈できることを紹介しました. そう考えると,今回のアマテラスの行動は「 九州勢が出雲・近畿連合が治めている奈良(大和)に侵攻した 」と捉えることができます. この経過を分かりやすくするために,全体像を整理しておくと以下のようなものです. 1)出雲勢が近畿勢と同盟を結び,さらには主導権を奪い取る(大国主がスサノオから剣と弓,琴,そしてスセリヒメを奪

古代四国人・補足(大国主命の神話の裏を読む)

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国産み神話,三貴神と来ましたので,次は大国主(オオクニヌシ)の物語です. ここのエピソードは政治色たっぷりです. 今回始めたこのシリーズは,ここの部分について取り上げておきたかったからと言っても過言ではありません. 前回までの記事,その中でも以下の2つをご覧になっていないと,ちょっと難しいかと思います. ■ 古代四国人・補足(国産み神話を深読みする) ■ 古代四国人・補足(三貴神を深読みする) さて,今回は大国主の物語ですが,この部分を政治的に解釈していくと,非常によくできた「フェイク」であると解釈ができます. 過去記事でも述べたように, 『古事記』とは,編纂当時の朝廷と権力者,および天皇にとって都合のいい歴史的解釈を全国的に普及しつつも,日本各地で伝承されている伝説・神話との整合性をとりながら,しかも各地域とその豪族のご機嫌取りをする という,極めて高度な政治目的を達成するために作成されていると考えられるからです. このフェイクは,厳密には高天原を追い出され,出雲へ降り立ってからのスサノオのエピソードからつながっています. 結論から言えば,この「スサノオの冒険」とそこから続く「大国主の国作り」とは「スサノオ=近畿視点」からの「周辺国との和解・同盟物語」の暗喩になります. 日本神話における「国家統合の経緯」は,血生臭さい戦争の叙事詩ではなく,ファンタジックなメタファーによってぼかされているのです.血生臭さくなるのは『古事記・中巻』から. 大国主の話に入る前に,前回記事の最後である「ヤマタノオロチ」退治後のスサノオの動きを知っておきましょう. 既にそこでファンタジックな平和的解決が始まっています. スサノオは退治したオロチの尻尾から「草薙剣」を取り上げましたよね.スサノオはこの剣をあの(激怒させた)アマテラスに献上しているんです. つまりこれは,敵対関係にあった九州勢と「製鉄技術の共有」という手段によって同盟を結んだと解釈ができます.この時点ですでに「和解と同盟」の暗喩が始まっています. その上で,大国主の神話に入っていきましょう. 大国主の神話も,その要点を追っていくと実に政治的です. 知らない人は,ウィキペディアを参照ください.ちょっと長いのでここには載せません. ■ 大国主 (wikipedia) しかもそれは

古代四国人・補足(三貴神を深読みする)

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これまでの続きです. 前々回は,魏志倭人伝から読み解く邪馬台国の位置を「九州」ではないかと分析しました. ■ 古代四国人・補足(邪馬台国の位置) 前回は,日本神話における国産み神話から,四国・九州を日本建国における重要な地域であることを分析しました. ■ 古代四国人・補足(国産み神話を深読みする) 今回は,古事記・日本書紀における 「三貴神」 についてです. なお,これは以下の過去記事の補足になります. ■ 鳥無き島の蝙蝠たち(15)月読尊(ツクヨミ) なぜ「神話」から日本の古代が読み解けるかというと,ある趣旨をもって語り継がれる「物語」というのは,それに類似した出来事が過去になければ受け入れられないからです. 松本直樹 著『神話で読みとく古代日本』 によれば, 「その『神話』が全くの創作であれば神話としての説得力を持つことはできず,広く民衆に語り継がれている古の事実の欠片を集めたものが『神話』になるはず」 だからです. つまり,古事記や日本書紀で述べられている神話には,そのモデルとなった出来事が実際にあった可能性が非常に強いということ. この観点から古事記と日本書紀を分析してゆきます. まずは「三貴神」について確認しておきましょう. 三貴神というのは,黄泉の国から帰ってきたイザナギが黄泉の汚れを落としたときに最後に生まれ落ちた三柱の神のことで,「アマテラス」「ツクヨミ」「スサノオ」を指します. ■ 三貴子(三貴神) (wikipedia) それぞれの支配領域や特性は一定していないようですが,主には以下のようになります. アマテラス: イザナギの左目から生まれた女神.日本の最高神とされ,天と太陽を司る ツクヨミ: イザナギの右目から生まれた男神.月神とされ,天と夜を司る スサノオ: イザナギの鼻から生まれた男神.海神とされ,海原を司る さて,この三柱の神ですが,これにもそれぞれモデルがあると考えられます. そのモデルが,前回の続きからすれば「四国」「九州」,そして「近畿・出雲」ではないかと思われるのです. 理由を以下に示します. 古事記と日本書紀における「日本神話」が編纂された当時,日本の首都は近畿・奈良でした. しかし,そのように日本統合が進む中においては,必ずや軍事・霊的・政治的な影響力を