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事実に基づく教育を

「“ゴルフやゲートボールといった生涯スポーツが盛り上がってきている” というデータを教えてくれないか」
と聞いてきた大学教員がいます.

困るんです.
こういう結論ありきの問いかけは.

この教員は以前にもスキャモンの発育曲線のことを聞いてきた人です.
ちったぁ自分で勉強しろよ,と思いますが,これが日本の大学教員の現実です.

別に民間の広告とかであれば許されるのでしょうけど(程度にもよるけど),まっとうな大学教育をしようという人間がこんなことでは困ります.

教育はとにかく中立であるべきです.
自分の想いや思想を反映させるものではありません.
今回は日教組だのDQN教師の話をしようとしているわけではなく,とにかく「事実に基づく教育をしましょう」というのがテーマです.

上記の問いかけをしてきたのは体育・スポーツ系の大学教員です.
体育・スポーツ系の学科の学生たちに,「自分たちの未来は明るいぞ.活躍できるステージがたくさんあるぞ」ということを教えたいがために,その事実(そんな事実はないが)を示したくって私に相談してきたのです.

まず,上記の件について事実確認をしておきましょう.
公益財団法人 日本生産性本部 編「レジャー白書2011」からの引用です.
図のように,残念ながらゴルフとゲートボールは衰退の一途をたどっています.
ゲートボールに至っては,そもそも繁栄したことがあるのか疑問です.ずっと地を這っています.
ついでにレジャーの大御所であるスキーも入れておきました.これも残念な状態です.
こういった現象はスポーツ系レジャーの典型例で,ほとんどの種目が参加人数を減らしているというのが事実です.

そんななか,逆に参加人数を順調に増やしているのがジョギングやトレーニングといった分野です.
「お金をかけなくて済む」「気軽にできる」「年中できる」「自分の成長がわかりやすい」
といった特長が考えられる種目ですね.

私の専門分野でもあるので,ちょっといい気分.
私もこれは肌で感じる部分でもあります.

最近はフィットネス系に風が来ています.
ただ,いつまで吹くかわからないのと,そんなに強い風ではないことが不安なところですが.
あと,いい加減な理論やめちゃくちゃなメソッドが蔓延している分野でもあるので,ぶり返しも怖いですね.

上記のこと,素直にその教員に話しましたが,「わかりました」との返事だけでした.

事実は時に痛みを伴うものです.

でも教育に携わっている者としては,学生たちにかりそめの希望を見せるよりも,事実をしっかり伝え,「ではどうすればいいか?」と考えさせる教育が必要ではないでしょうか.

なんとなくの印象やマスコミ情報を基に教育する大学教員,以外と多いものです.
たしかに授業準備などに時間を割くことが難しくなっている昨今の大学.簡単に学生たちを喜ばせるコンテンツに手を出したくなるところもあるのでしょう.

でも大学教育のプロとしての誇りを忘れてはいけません.

大学教員は “良いこと” を垂れ流す教育ではいけません.
それは学校教育でやることです.テキスト通りの教育,理想思想の教育,子どもに夢を与える教育.それは学校教育です.
大学教育はそうであってはいけないのです.

「王様は裸だ」と問い続けることが,大学教育のあるべき姿のひとつです.