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田舎暮らしを始めた曖昧だけど結構大きな理由

土地が「身体化」されていない,って感じてたので


仕事柄,「身体」について考えたり研究してたということもあるんですけど,
「私にとって土地が身体化されていない」
っていう感覚が,大学業界を離れてでも田舎暮らしを始めた結構大きな理由です.

つまり,これまで住居を転々としてきましたが,一部を除いて,住んでいる土地が「自分の体の一部」になっていかない感覚に強烈な違和感を覚えるんですね.
どうしても耐えられない,っていうほどのことではありませんが,避けられるなら避けたい感覚.
それが特に関東にいた際には強かったんです.

例えば関西に住んでいた際にも,たまに自然の中に入りたくて,お気に入りの寺の奥の院まで散策に言って気分転換をよくしていたものです.

その時の写真を探してみましたが,例えばこんなところ.



ちなみに,そのうちの一つは国宝があるような有名なところです.


関東にいた頃だと,アクセスの良さから自然の残っていることで有名なお寺に足繁く通っていました.


紅葉がきれいなことで知られており,天皇陛下も来られたことがある有名なお寺の境内です.

ですが,やっぱり結局のところは他所様の土地.
気分転換に「行く」ための箱でしかない.

ただ植物と自然がそこにあればいいってもんではないのですよ,これは.
私と一緒に呼吸・代謝してくれるところっていうのかな.
そういう,ややスピリチュアルじみたものです.

自分の身体の一部になれたところは,実家のある土地と,学生時代を過ごした土地だけですね.





私の場合,「田舎暮らし」といっても実家に帰ってきただけなので,一念発起の程度はそれほど強くはありません.
「移り住む」っていうより,どっちかと言うと「戻る」っていう感じです.

でも,こういう「私と一緒に生きてくれる土地」って,充実した生活を送る上でかなり重要度が高いと思うんですね.
私の場合,これはかなり重要.

よく,自然災害とか事件とかがあった際に,その土地の爺さん婆さんが,
「この土地を離れたくない」
って頑なに転居を拒否するの,あるじゃないですか.
別に爺さん婆さんじゃなくても,特に女性にそんな人って多いものですよね.

あれって,私にはよく分かるんですよ.
もちろん,行政的にそれが面倒なのもよく分かってるつもりです.

でも人間て,そういう合理的なところの判断だけで生活できるわけじゃないという側面もあるんです.


これはなにも,自然と共に生きていくっていう浅薄な話ではないし,「地球に優しい」スタイルをとればいいっていうことでもありません.
例えば自動車で道路を走っていても,その土地の息遣いとか「流れ」が感じられるんです.

それに,生まれ育った場所が一番いいといいたいわけでもない.
私の場合,例えばスコットランドに出張した際に,とあるなんの変哲も無い地域で「ここはいいなぁ」と思った場所がありますので.

人間には,その人に固有の「住むのに適した土地」っていうのがあって,それがどんな土地なのかは,全ての人に共通しているわけでもないかもしれません.
田舎がダメで,都市部が良いっていう人もいるでしょう.


ですから,よくある「田舎暮らしブーム」とそれに対するアンチ・ネタには注意を呼びかけたいんです.
こういう話って,「田舎と都市の違い」にフォーカスが当たりがちですが,私はそういう問題じゃないと思う.

その人が,この土地と一緒に生きていけるかどうかです.
土地との相性が良くないと,その上に生きている人間や社会とも合わなくなるんです.
結果,「田舎暮らしが上手くいかない」という人は,「近所の人とトラブルがある」「自治体サービスが良くない」などといった,文字通り「表面上」の理由をつくって納得しようとするんですよ.

逆に,土地との相性が良ければ,そこにある人間や社会,草木や地形,気候といったものも「許容」できるようになります.
それが「土地が身体化している」ということでもあります.
何から何まで自分の思い通りには行きませんし,それは「自分の体」も一緒でしょう.
自分の体であれば,思い通りにならないことがあっても,それを許容するしかない.
思い通りにならないこと,それ自体を楽しむことだってできるのが,自分の体というものです.

この感覚が,充実した生活を送る上では無視できないほど重要だと,私は考えています.




コメント

  1. 私自身感じていたことを、腑に落としてくれる文章でした。更新を楽しみにしています。

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    1. コメントありがとうございます.まだ自分自身でも納得できる言葉にはできていないのですが,もっと月日が経てば解決してくれるかもしれません.引き続きよろしくお願いします.

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