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残念!字が読めなかったことに気がついた!

今でも忘れられない,母親に置いてけぼりにされた駅のホーム


2歳の娘を車内に置き忘れて死亡させた,という事件がニュースになっています.
「仕事考え、忘れた」 父親が話す 車内放置の女児死亡(ヤフー・ニュース 朝日新聞 2020.6.18)
茨城県つくば市で17日、2歳の女児が車の中で長時間放置され、その後死亡した事件。会社員の父親(40)は「(女児を)保育所に預けたつもりになっていた」と話した。県警は、女児が約7時間にわたって車内に置かれ、熱中症で死亡した可能性があるとみて、詳しい経緯を調べている。

もう何度も似たような事件がニュースになっているから,最近では,
「育児放棄」
「愛情不足」
「親としての責任が欠如している」
などといった正義感からの糾弾よりも,
「事件にまで至らなかっただけで,実はそういうヒヤッとする経験って親なら誰しもがあるよね」
とか,
「ADHDや性格の問題として考えるべき」
といった指摘もされるようになりました.


子供を置き忘れた事件として有名なのが,元読売ジャイアンツの長嶋茂雄氏が,当時まだ幼かった息子の一茂を球場に置き忘れて帰ったというもの.
何度かテレビでも取り上げられているエピソードで,長嶋氏曰く,
「その日のプレーに納得がいかず,考え事をしていたら忘れていた」
とのことでした.

状況がプロ野球選手というだけで,類似したことは一般の人にもあると思うんです.
長嶋氏の置き忘れ事件にしても,たまたま日本の野球場だったから良かったもので,これが別の場所や時代だったら,もしくは悪意のある人間が一茂少年のそばにいたら大事件になったことでしょう.


私も幼い頃に,置き忘れられた経験があります.
3歳の時の話ですが,なぜか記憶に鮮明に残っていて,事実関係も正確なものですから,その場にいた当事者である母からは「そんな幼い頃のこと,よく覚えているね」と驚かれます.


列車で高知市まで移動するため駅にいたのですが,母と私・弟の3人は,発車間際だったので急いでいたんです.
場所は窪川駅というところ.
今から40年近く前のことですが,その後,駅はなんら発展せず(むしろ寂れて),当時の面影を完全に残しています.
窪川駅(Wikipedia)
画像:窪川駅(Wikipedia)


こういう新幹線みたいな列車があることでも有名です.



3人といっても,当時,弟まだ生まれて間もない頃で,赤ちゃんだったので母が抱きかかえていました.

だいたい,母はこういう時間管理が昔からルーズです.
幼い子供2人を連れての列車移動なのですから,もっと余裕をもって行動すればいいのに,何事もギリギリで行動しようとします.

改札を出ると,そこに既に目的地に向けた列車がホームに入っており,それに焦った母は走り出しました.

私もそのあとを追うのですが,そりゃ3歳の足では出来ることが限られています.
改札のあとは通路とホームをまたぐ階段のある,典型的な駅構造.
大人の足にかなうわけなく,よちよちと登るのが精一杯.

母としては,私のことを,
「きっと一緒に着いて走ってきてくれているはず」
と思っていたそうですが,そりゃ無謀ってものでしょう.
えらくパニクっていたことが容易に想像できます.


さて,登る階段で置いてけぼりをくらった私は,とりあえず方向は合っているだろうからとそのまま後を追うつもりで進みます.
しかし,どんなに田舎の駅とは言え,このあたりでは中心的な駅の一つではあるのでホームが複数あります.
つまり,どこに向かえばいいのか,3歳の子供には分からんのです.

ホームは3つ,階段で降りる先は2箇所だったので,勘で選択.

降りたら降りたで,ホームには列車は上りと下りの両方に止まっています.
ホームに母の姿はなかったので,列車に乗っていたんです.


これには悩みました.
幼いながらも,適当な列車に乗ってしまうと途中で降りることはできない重大案件であることは理解していました.
それに,迷子のような状態になる危険性は避けたい.
(っていうか,既にこの状態が迷子なのだが)

ここで私はひらめきます.
母は「高知」に行くと言っていたんだから,各列車の行き先を確認すればわかるのではないかと.

そこで列車の先頭まで走っていき,その両車両の行先表示器を見てみます.
すると・・・.

「□□」

って書かれていました.
文字化けじゃないですよ.
ようするに,漢字が読めなかったんです.

しまった!
僕はまだ漢字が読めないんだった!
と悔しさと無念さが沸き起こります.

これはちょうど,ゲーム「ドラゴンクエスト5」における,サンタローズの自宅にある本棚を,幼少期に調べてみたような感じ.
「しかし,主人公はまだ字が読めなかった!」
っていうやつ.
あれを初めて見た時,まさに当時の私と一緒だなって親近感がわきました.

今思えば,幼い子供って不思議なことを考えるものだなと微笑ましいし,こういうのって海外旅行と似たような感覚だと思います.

こんな事件があったから,以来私は,漢字が読めない人のためにも,ひらがなも表示しておくのって,けっこう大事ではないかと考えていました.
実際,今でもよみが分からない駅名ってあるわけで,そういうのは日本人でもアルファベット表記で確認してますよね.


これに関連して,私の大学の後輩から聞いた話ですが,彼女が所属する女子バレーボール部が,東京に遠征に行った際のエピソードがあります.
その部活は,1年生が移動時の案内指示をする役目(仕事)だったそうで,例えば電車を乗り継ぐ際には,その都度,
「次は上野で〜す!  常磐線に乗り換えま〜す!」
などと言いながら,移動するそうです.

今どきそんな面倒なこと・・,と思う方も多いでしょうが,大学のアスリート色が強い体育会系というのはそういうものです.

ある時,そんな感じで1年生が指示を出していたのですが,

「次は『ひぐれのさと』で〜す! ひぐれのさとで降りま〜す!」

と意味不明なことを言うではありませんか.

それも東京・山手線の混み合った車内で,19歳くらいの女の子がジャージ着て大声を張り上げるもんだから,余計に違和感がある.

え? 「ひぐれのさと」ってどこ? なに?
ってか,そんな駅あったっけ?

などと皆で混乱していると,車内アナウンスが始まります.
「次は,日暮里.日暮里です.お出口は左側です」


駅名に「ふりがな」は大事だと思います.


窪川駅で迷子状態の私は,結局,どうすることもできずにホーム中央部に戻ってきます.
すると,セーラー服を着た女子学生たち4〜5人が集まってきて私を取り囲み,
「この子,迷子じゃない?」
などと話し出します.
もちろん,あの服を「セーラー服」,そういうのを着た人を「女子中高生」だと認識するのは,もっとあとになってからですが.

「迷子じゃない?」という女子学生のセリフが引き金となって,自分が「迷子」になっていることを認識すると,なんだか悲しさが沸き起こってきたんです.
急に涙がこぼれてきて泣き出しました.

最終的には,私が「いない!」ということに気がついた母が,列車からホームまで出てきて拾い上げました.
こういうのも,本当に発車ギリギリだったら置いてけぼりですし,私が違う列車に乗り込んでいたら面倒な事件になっていたことでしょう.

子供から目を離したり,頭から外れてしまうことは誰にでも起き得ることです.
大事件になるかどうかは,紙一重だと思います.

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