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備蓄米を放出しても米価が下がっていないこととかについて
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いやいや..,値段は下がらないでしょ
って感じで,これまで頬杖をつきながら事態を眺めてきました.
かつての私なら,PCを前にして本件についてバリバリ記事を書いていたのでしょうけど,そんな気分にならなくなってしまいました.
せっかく自身がタイムリーにも農家になっているのですから,教育問題とか大学改革問題などと同じ熱量で書いていてもおかしくないのですが,結構な勢いで諦観しています.
もはや米のことなんてどうでもいいからと,自分とこの農園経営を発展させることに注力してきました.
そんなこんなで半年以上が経過.
とはいえ,このブログをいまだに読んでくれている方々や,わざわざ読みに来てくれている人というのは,こう言っちゃなんですけど,やっぱり知的レベルが高い人達が多いので,それなりのクオリティで参考になる情報がご提供できればいいなと思っています.
で,自分が書く代わりに,この令和の米騒動についての的確な解説,もしくは,私達農家が感じている状況と相関性が高い解説をしているネット記事とかYouTube動画はないものだろうかと,ここ数ヶ月の間探しまわっていたのですが,最適なものが見当たらないので困っていました.
なんかその,今の日本は,まともに米騒動について報道する気がないんじゃないか? まともに問題提起する人はいないんじゃないか? なんて考えたりもしました.
しかし,つい先日こんなYouTube動画がアップされていましたので,こちらを皆さんと共有したいと思います.
これこれ,これですよ,農家の感覚に一番近い状況解説をしてくれているのは!
YouTubeの時事通信映像センターというチャンネルがアップした,『ノーカット 農業現場からコメ問題を語る』と題したものです.
日本記者クラブの会見映像ですね.
概要欄には,
山形県の農業法人「庄内こめ工房」代表取締役の齋藤一志さんが、日本記者クラブで会見。農業現場の視点から価格が急騰するコメを取り巻く現状や展望などについて語った。
とあります.
なぜ今までこういう生産・流通・販売の現場そのものに詳しい人に出てきてもらって,取材や会見企画をしなかったのか?
今更感がヤバいです.
演者の齋藤氏の話一つ一つに,いちいち深〜〜く頷きながら聞けた1時間30分.
関心レベルが低い人にはちょっと長い動画かもしれませんが,これを見れば米騒動の現状と改善策への解像度が爆上がりすること間違いありません.
オススメします.
この齋藤氏の話が真に「正しい」かどうかはわかりません.
しかし,氏も会見内でおっしゃるように,一般的な多くの農家は同じような見解だと思います.
むしろ,今までマスメディアに登場したりネット界隈で発信されている情報の多くが,ちょっと奇抜なものや大袈裟なもの,人の目を惹くような内容のものが多いと感じます.
動画を見るのが面倒な人のために,現在関心の高そうな話題について,以下に簡単にまとめておきます.
詳しくは動画を見てください.
・今後,米の価格は下がるか?
→下がりません.むしろ,夏頃に向けてもっと上昇する可能性もあるくらいです.今年の生産量は少ないと予想されているからです.
米の栽培,流通,販売について理解している人であれば,「備蓄米の放出で米価が下がる」なんていう結論には絶対ならないです.
備蓄米の放出で米価は下がらないのは,これは買い取り契約になっているからです.
現時点で流通したところで,今秋には買い取りになるわけですから,その分がまた米不足になることが既に決まっています.つまり,備蓄米の放出政策は,卸や販売店の値付け(価格低下)には影響を与えていません.
・米の価格高騰の主な原因はなにか?
→主な米の買付作業は,毎年秋に終わっています.なので,この時点でその年の米価格は決まっていると言っても過言ではありません.
ということは,今起きている米価の高騰は,卸と販売店の値付けによるものです.
通常,米価が毎月ちょっとずつ上がるということはあり得ません.つまりこれは全国的な便乗値上げ現象だと思います.
価格が高くても「お客さん(消費者,業者,販売店など)」が買ってくれている状況だから,値段を下げずにいられるというのが実態のはずです.
・米の価格を下げるアイデアはあるか?
→米の生産量を増加させるインセンティブを高める政策をとるべきです.米の生産量が多ければ,価格は下がります.
今はそうはなっていません.
とりあえず今年の生産分には間に合いませんので,来年以降のこととして急ぐべきです.
具体的には,生産量を増加させる取り組みをするところに補助金を出し,同時に,米価暴落を恐れて生産調整をする農家が多いはずなので,国が農家の所得を支える仕組みを作るのがよいと思います.
とりあえず直近のこととしては,備蓄米の買い戻し契約を見直すべきです.この仕組みがある以上は,今夏は絶対に米価は高騰するに決まっています.
長期的には,米輸出を強化する方向で進めるといいと思います.輸出できるほど生産量を上げていれば,いざというときには国内向けに回すことができるからです.
・米農家の大規模集約化,経営規模拡大について
→現時点では,規模を拡大したからと言って,米農家の苦境は改善しません.
中小規模の米農家は採算がとれていません.
大規模集約化した法人農家が,ようやくなんとか経営をしている状態です.
そして,米農家の規模拡大は,さまざまなハードルがあって非常に厳しいです.
規模を大きくするには,施設や人的リソースに投資しなければいけませんが,それが難しい状況です.これを打開する法改正や支援・補助などが必要です.
私なりに補足すると,「JA全農が備蓄米を出し渋っているから価格が下がらないのだ」という見解にも異論があります.
齋藤氏が言われているように,そもそも今回の備蓄米放出政策では価格低下は起こせません.
起きたとしても,非常に微々たるものだと思います.
それより,JA全農が入手した備蓄米の「流通が滞っている」というのが,よく耳にすることです.
皆さん,「流通業界の2024年問題」を覚えておいででしょうか?
あれって,2025年になったら無くなるものではないのです.
農業の流通においても,いまだに2024年問題に頭を抱えているんです.
私の農園でも,資材の運搬作業に四苦八苦しています.トラックドライバーの人手不足が深刻だからです.
資材運搬が滞ったから,栽培計画に影響が出ているところもあって,私のところも多少影響しました.
で,その資材運搬に四苦八苦している運送業者が,備蓄米の運搬も担うことになるわけですが,とてもじゃないけど手が回らないのが実情です.
もっと言えば,運送業者だけじゃありません.各都道府県,地域のJA店舗や関連業者にしても,とにかく人件費削減で人手がまったく足りていない状態になっています.
そこに今回の米騒動が直撃しているんですよ.
備蓄米の流通とか,マジでまともに対応できてないんじゃないでしょうか.
そのあたりの実情も,メディアの方々は取材して発信してもらいたいと思います.
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