2009年1月9日金曜日

トリアージについて


トリアージをご存知でしょうか?一人を助けるために十人を死なせてはならない(ナポレオン),という考え方に則った救助活動のことです.手遅れ,死に掛けはほっといて,助かりそうな人だけを助け,明らか助かるやつは適当に対処するという「患者の優先順位付け」です.命の選別とも呼ばれます.

大規模な事故・災害が起きた際,軽症の人は近くの病院に駆け込み,すぐに助け出された患者もこれに続くため,病院外来は大混乱になる.ところが,本当に治療処置を施さなければならない患者は,たいてい救助活動が難航していることが多いことから,遅れて病院に搬入される.しかし,その時すでに軽症患者に手がいっぱいの病院では対処ができず,見す見す重症患者を死なせることになる.

このような事態を防ぐためにトリアージが施されるのですが,日本でもトリアージを用いた救助がなかった時代には,大事故の際,助かるかもしれなかった人が助けられなかったエピソードはいろいろあり,有名なものでは,1980年の静岡駅前地下街でおきた大規模ガス爆発事故で,死傷者が200人を越える惨事の際,周辺の病院ではこのような事態になったのだそうです.

なんで今日はこのテーマかと言うと,Amazonでやたらと大多数のレビュアーから高得点評価をうけている,仲田和正 著『手・足・腰診療スキルアップ』の一番最初の章がトリアージだったのです.整形外科の本なのに最初の章が「トリアージ」とは.なかなか “できるな…!”と思わせる構成ぶり.医療の基本は大多数の幸福のためだろう.命を救うのが医者の務めだよ.という著者の意気込みが感じられる章立てだったのに感銘しました.トリアージのあとの章は普通に捻挫,骨折,野球肩といった身近に感じらることがメインになっていまして,それでも随所に「現場の医者」の言葉が散りばめられている内容に惚れ惚れしております.

トリアージの話に戻ると,私は命の選別という別称があることからも過酷な判断をしなければならない仕事なのかなあと思っていたのですが,この本を読ませてもらってからは「なんだ別に当たり前のことをしてるだけじゃん」と,考えを変更.「死んでるやつはほっとけ!」「その程度のケガで泣くな!」を遂行するだけなんだなと.選別基準も,当たり前ですけど “助かりそうな人を見捨てる…”,というようなお涙頂戴ではなく,そりゃあ手遅れだろう,という人にブラックラベル(死亡)を貼り付けるだけですから,私ならバンバン貼り付けまくります.

しかし,このトリアージですが,やりゃあいいってものでもないようで,秋葉原通り魔事件の時には,被害者17人全てを周辺の病院でまかないきれるにもかかわらず選別してしまい,もしかしたらもしかして助かる可能性があった人に黒ラベルを貼り付けていたのかもしれないそうです.まさに黒ラベルが秋葉原のメイドならぬ冥土への餞別 (選別) になったご様子.
トリアージの導入も気をつけないと難しそうです.