2009年11月13日金曜日

軍事教育の喪失


長谷川慶太郎氏はその著書である 『軍事頭脳を持っているか』 で,日本の教育課程において一切の軍事教育がなされないことに触れ,「軍事頭脳がないことは国際関係が解らないことと一緒」とし, 「軍事頭脳の喪失は全ての頭脳の喪失」 とまで言います.

この長谷川氏というのは御歳82歳.
それでもまだ多数の著書を出版し,その先見眼は衰えることなく情報技術の先端を行く方です.
別に右の翼が生えている人というわけではなく,国際ビジネスを専門にされている経済学者です.

たしかにTVやニュースを見ていると軍事に関する短絡的な報道が目につきます.

例えば先の護衛艦とコンテナ船の衝突事故にしても,その報道姿勢が腐っていることは無視したとして,軍艦に関する知識の無さには私も驚きました.

コンテナ船とぶつかって,護衛艦の船首が大きく破損したのを見て,
「軍艦がこんなに脆くていいのか?」
などとバカ丸出し発言をするキャスターやコメンテーターが山ほどいました.

さすがに新聞ではそのような記事は目にしませんでしたが,コメントするにも笑われないような事を言ってほしいものです.
というのも,こういうトンチンカン発言も 数が過ぎると,これこそがスタンダードな意見になりかねないからです.

排水量5200tの護衛艦と7400tのコンテナ船,ぶつかるとどうなるのかなんて中学生でも解るでしょう.

でもまぁ,“北極の氷が溶けて地球の海面水位が上昇する” などというトンデモ科学が幅を利かせる世の中になったのですから,そんな報道も許されるのかもしれません.

それに,物理学的に考えなくても,それこそ軍事に関する知識があれば,なぜ今回の事故で護衛艦の破損が大きく見えたのかは推察できるはずです.

まるで軍艦ってのは超合金か何かで出来た装甲を持っているかのように思われていますが,最近の軍艦はこの「装甲防御」にウエイトを置いていないのが実情です.

なぜかって言うと,どんなに装甲を堅くしても,近代戦では火器の方が圧倒的アドバンテージを持っているので,つまりは “着弾=沈没” の図式が成り立つからです.

なので装甲防御よりも妨害電波や電子戦,ダミー射出といった 「回避」.そして,向かってくるミサイルや砲弾を「迎撃」するといった方法で防御します.
その能力がずば抜けて高いのがイージスシステムを搭載した 「イージス艦」 というやつです.

誘爆の恐れがある武器庫や,作戦指示を出すCICには強固な装甲防御が施されていますが,それ以外の部分は軽量化して巡航性や機動性を高めるために装甲は薄く施されています.

他にも,今の軍艦は大きな大砲は付けずに速射砲というのを付けています.しかも火器の主役はミサイルに取って代わられています.
船のサイズも巡航性・機動性を重視するために小型化しており,およそ150m前後です.昔のように200m級がぞろぞろいた時代は終わりました.
それに,潜水艦や駆逐艦といった船自体から攻撃よりも,空母からの航空機による攻撃が戦略上は重要ですので,各国の「空母」の存在と動向というのは軍事上非常に大切なポイントです.

ちなみに,中国は空母の建造に着手しています.けど,このこと報道する日本のメディアは少ないようです.


以前,現在の政権を担っている党の一人が,
「北の国からのミサイルを迎撃すると先制攻撃になりかねない」
とか,頭の中までファンタジーなこと言ってました.

ここまでくると末期症状ですが,少なくとも世界の常識である軍事学については日本人もアレルギーを起こさずに見つめ直す必要があるはずです.